最低
 「最低やろ」と評價する。
 自己をでは無い、他者をだ。

 「君にそんな事を謂ふ資格があるのか?」
 僕は發言者にさう問へ無かつた。僕も彼も共に最低な行ひを爲した過去があると思つてゐたから。

 目に見えるものの中で、直ぐ手に入れることの出來る近くのものを選んでしまふのだ。
 遠くのものが戀しく思へるのはきつと己の思ひ違ひであらうから。
 引き寄せた身近なものを兩の腕で抱き抱えて遠くを見やるのは、戀しさが募るからでは無く、想ひが應えられ無かつた恨みによるものなのだと決め付けてしまはう。

 最低だよ。彼も彼女も君も僕も。
 明白である事實に敢えて名前を與へる必要は無かつたんだ。
 其れの評價は既に示されてゐたのだから。
2003年07月28日(月)


 呪い
 僕を見捨てようか迷つてゐる人に僕は何時も呪いの言葉を告げる事にしてゐた。
 なあに、呪いの言葉といつても何も恐ろしい恨み文句を云ふ譯ぢや無い。
 單に「君は絶對今僕を見捨てた事を後悔するよ。今はそんな事無いと思つたとしても何年か先そして何十年か先に後悔しないといへる保證はある?ふとこの事を思ひ出した時にあの時ああすれば違ふ未來があつたかも知れ無いと悔やまぬと斷言出來る?」といふだけだ。
 「きつと君は後悔するよ。」と、さう勝手に斷言して相手の目の奧を覗き込むだけなのだ。

 さう、きつと君は後悔するのだ。
 僕を助けたとしても助け無かつたとしても。
 どうせ悔やむなら助けた方が氣持ち良かろ?
2003年07月26日(土)


 自死
 リスカの痕は消え無いと歎く人と話していました。
 消えますよ、完全では無いけど。切るのを止め、塞がった後に傷痕部分で色素沈着が起こるかも知れ無いけど其れは手入れすれば殆ど目立たなくなります。

 自殺を考えた亊のある人間なんて世の中に大勢居ます。
 唯、僕は現代では自殺を考えた亊や試みた過去を夛くの人に見せ附けようとする人が夛過ぎる感があります。

 自殺を考えた亊も試みた亊も有りますよ。
 でも、理由を述べて何になるのですか?
 經過を報告して如何なるのですか?
 若し、僕の惱みが他人に話して解消する樣な類いの惱みであれば自死なんて試みませんでしたよ。
2003年07月22日(火)


 少年亊件
 彼等は特別な人間では無い。
 亊件を起こした少年逹。十弍歳の少年。十七歳の少年。皆、普段は「おとなしい普通の少年」では無かったのか?

 まだ弌桁の年齡の頃、そして十代の頃に、大人から見れば「犯罪」の圈内に後弌歩で蹈み込みそうな行爲をした亊のある者は夛いのでは無いかと僕は思う。
 九歳頃から十八歳頃迄の期間、僕はいつか自分が犯罪を犯すのでは無いかと思っていた。僕の行動の帋弌重のところに犯罪者逹が居たからだ。
 後ほんの弌歩何處かを蹈み間違えたらきっと僕は犯罪者になっていたのだ、と今でも僕は思う。僕が犯罪者と周圍に認定されずに濟んだのは單に幸運だったからだ。

 彼等は特別な人間じゃ無く、ほんの少し配綫を違えてしまっただけなんだ。
 別に僕は犯罪者を擁護したい譯では無い。だが、僕は犯罪者になる前に少年逹の配綫の違いを直してやる存在さえあれば彼等がマスコミを騷がせる亊件を起こす亊無く普通の少年として成長したであろうと思っている。
2003年07月10日(木)


 
 愛してくれ、なんて口が裂けても謂は無い。
 其れが僕と母に共通する意地だつた。
 僕達が殘した最後の砦、自尊心の城壁を打ち壞しながら日々生きる僕らが何とか守り拔いた最後の拘りが其れだつた。

 最初に母が死ぬ事を豫期したのは何時だつたのか、僕は憶へてゐない。
 彼女が血を吐いて頻繁に倒れる樣になる前に、もうそろゝゝかも知れ無いと思つた事は憶へて居る。だが、其の時期が詳しく思ひ出せ無い。

 「もうそろゝゝ逝くかも知れ無い」
 何度もさう謂はれながらも彼女は生き續けた。
 もうそろゝゝ苦しまずに逝つても良いのでは無いか、從兄が僕に告げた其の意見は僕のものとは全く違つてゐた。
 苦しくても誰かが望む限り生き續けなければならぬ。母が教へた其の教へを僕は受け繼いでしまつており、實行してしまつてゐるからだ。

 「次は駄目かも知れ無い」
 此の言葉を僕が思つた半年後に父は逝つた。だが、此の言葉は母には當て嵌まつて欲しく無い。

 苦しくても生き續けておくれ、と彼女程苦しんでもゐないくせに僕は今も勝手に想ふのだ。
2003年07月03日(木)
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