Diary?
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2007年04月22日(日) 夜の青空

 東京の夜は明るい。
 雲のない夜はいつまでたっても藍色の膜が貼り付いて剥がれないみたいに見える。薄い雲が広がっている夜には、頭上がほの白くドームの中にいるようだったり、不気味に赤く光って別の惑星かと思ったりする。

 田舎にも明るい夜がある。
 満月で風が強い夜、空はどこまでも深い紺色で、空の高いところを白い雲がちぎれて飛んで行くのが見える。もし雪が積もっていれば、地上まで薄い青色に満たされる。なんとなくしんとして、死んだらこんなかしらと思う。

 明るい夜空を作り出すこともできる。
 通っていた大学は、高校野球で有名な宗教団体の本部のすぐ近くにあった。その団体は夏に10万発以上の花火を打ち上げるお祭りを催す。大学の屋上は特等席で、学生たちは学校に忍び込んで見物していた。花火大会のフィナーレ、まるでやけくそのように次から次へと間をおかずに打ち上げられる花火のせいで、あたりは急に昼間のような明るさになり、青空に白い雲が浮かぶ。

 田舎に育ったけれど、満天の星空や天の川よりも、そんな明るい夜の青空ばかり憶えている。だからなのか、東京の夜空が嫌いではない。この明るい夜空は「ほんとの夜空」のような気がすると、見上げながらそんなことを思う。


2007年04月17日(火) まだいた

何度か日記に書いた、例の彼である。
2004年3月23日
2005年7月4日

最近、この店から足が遠のいていた。あまりにも暖冬で、カムジャタンやチゲを食す気分にならなかったのだ。しかし今日は予想外に寒くて、シーズン最後に辛くて熱いものを食べようじゃないかと、ひさしぶりにこの店に向かった。道中、「彼はいるのかね」「どうだろう、そろそろ定年ではないのだろうか」などと勝手なことを話しながら店に入れば、やっぱりいたのである。

やっぱりビールばかり飲んでいた。やっぱり自由奔放に席を立ってしばらく戻ってこなかった。やっぱり何かのテキストっぽい本を読んでいた。私たちは10年近く彼を観察していて、あまりの不変に感動すら覚えるのだった。業態がどう変わろうとも同じ店に通い、ビールだけを注文する。これはいったい何なのか。そしてそれを観察し続ける私たちも。なんだかストーカーみたいな気分。

ただ、今日は今まで見られなかった場面もあった。
・体の前で両腕を大きくバッテンにクロスさせるので、変身でもするのかと思ったら「お勘定」のジェスチャーだった。私たちより先に帰るのは初めて見た。
・そうは見えなかったが実はかなり酔っ払っているらしく、小銭をありったけ掌に載せて店の人に要るだけ取ってもらっていた。

ああ、来年は会社が引っ越してしまうからこの店に来ることはなくなるのだなあ。感慨深い。


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