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■ 引き金を引く物語、交差する物語��
９．クロノクロスとは何か？
やっと本題にたどりついた。
クロノトリガーで、クロノたちは敵である龍人を倒し、ラヴォスを滅ぼした。
クロノたちはラヴォスに向かって言い放つ。
「星に寄生し、その進化の都合のいいところだけを集めて子を生み、やがてその星を滅ぼして他の星へと飛び去る、そんな都合のいい進化は認めない」と。
ならば、自ら葬り去ったラヴォスのかけらを使って文明を発展させた人類は、それに輪をかけて「都合のいい進化を遂げる存在」だとは言えないか？
クロノトリガーでは疑問の余地もなく「正義」とされる行動…それに対するアンチテーゼ。
クロノクロスでプレイヤーに突きつけられるのは、前作で自分がやったことが、どのような結果をもたらしたか、だ。
龍人たちが生み出した龍神は、サラ同様「時食い」と呼ばれる時空の狭間に住まう存在に呑まれ、人類を滅ぼそうと牙を剥く。サラの分身であるキッドが、死や闇へと傾斜していくように。
しかし、クロノクロスは前作で起きたことを、時間を遡って「なかったこと」にはしない。ラヴォスの恩恵を否定し、原始時代に戻れとも言わない。
割れた氷は元には戻らない。
その上で、星と凍てつく炎の架け橋になれ、というのがセルジュに…プレイヤーに課せられた使命となる。
ツクヨミがセルジュを助けた理由。本来人類を滅ぼすべき月龍がセルジュの元を去り、姿を消す理由。
それはすなわち、セルジュを人と龍の架け橋である調停者の資格ありと認めたということに他ならない。
このゲームもクロノトリガー同様、マルチエンディングである。そしてこのゲームのテーマを反映する形で、分岐条件が用意されている。
ラスボスを戦闘で撃破するとバッドエンドになるのだ。
真のエンディングを迎えるためには、クロノクロスを使って、戦闘以外の方法で「時食い」と、そしてそれに取り込まれている「サラ」と和解しなければならない。
それを為し得たとき、プレイヤーの前に姿を現すのは、前作で救われなかったサラ王女と、そして星の救いの姿なのである。
１０．最後に
このゲームの改善すべき点はどう控えめに見ても多い。
まず、ストーリーが難解すぎる。
前述のストーリープロットはごく簡略化したものだが、それでも理解するのは大変だ。まして本編はもっと複雑である。
具体的には、サブキャラクターに関してここでは一切踏み込んでいない。また、説明をわかりやすくするためヤマネコ＝フェイトという前提で論じているが、実際にはこの二者は単純に同じ存在ではない。
また、何度もプレイすることを前提としているためか、一回目のプレイでは気付き得ない点も多い。ツクヨミの目的や行動原理などは特にそうだ。
そして、真のエンディングにたどり着く方法へのヒントがあまりにも少ない。これはかなりきつい。
正解は「クロノクロスを装備し、ラストダンジョンの手前で流れるＢＧＭ等をヒントにエレメント（という能力）を順番どおりに発動させる」である。クロノクロス装備時のみ、エレメント使用のＳＥが「音階」になっている、ということに気付かなければ、これは一生たどりつけないのではないかという気がする。
次に、製作スタンスが途中でブレたのではないかと思わせる部分がある。
本来、クロノクロスとクロノトリガーの密接な関係を読み解くことを前提にするなら、主人公の数が多い必要はない。前作と同じか、１，２人多い１０人くらいで十分だ。それが、なんと５０人。しかも、誰を仲間にしてもエンディングまでいける。
しかし、肝心のメッセージは特定のメンバーが特定のタイミングで仲間になっていないと出てこなかったりする。これでははっきり言って意味がない（前作からたった一人、継続して使用できるキャラクター…魔王＝アルフという情報さえ、限定された状況でないと判明しない）。
なぜ、自動台詞生成システムまで用意して、こんなシステムにしたのか？
情報の出し惜しみや、隠し設定を山ほど作ってマニアを喜ばせるというためだけの理由ではないだろう。
クロノクロスのテーマは、前作のテーマとあまりにも正面から向き合いすぎている。だから、これを前面に押し出すのをためらったからではないか。そんな気がするのだ。
クロノトリガー２と銘打たなかったのも、その表れではないか。
しかし。
クロノクロスが「クロノトリガーを無視している」だとか、ましてや「加藤氏が堀井氏のことを嫌いだからこんなストーリーにしたんだ」などという批判はあまりにも短絡的だ。
クロノトリガーが時間移動をテーマにしている以上、単純に「前作から何年経ちました、その頃〜」という続編が作りにくいことは明白だ。さらに、ストーリーの基本のプロットを作った人間が参加しないことで、なおさら話は作りづらかったはずだ。
そうでなければ、
「クロノトリガー２。
主人公はクロノとマールの間にできたセルジュという少年と、ルッカの孤児院で育てられたキッドという少女。ある日、セルジュとキッド、それに幼馴染のレナの３人は、黒鳥２号というタイムマシンを見つけ…」
なんていうストーリーを展開する方が遥かに簡単だろう。
だが、それでは「クロノトリガー」のテーマと向き合っていることにはならない。
「自分たちの都合のいいように歴史を変えてしまって、本当にいいの？」
「自分たちに都合の悪い存在の、都合の悪い部分だけを時間の流れから消し去ってしまって、本当にいいの？」
クロノトリガーをプレイして生じる、この最大の疑問に向き合って、ちゃんと一つの答えを出したクロノクロス。
間違いなくこれはクロノトリガーの続編だ。私はそう思う。
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このエントリを書くにあたっては、以下の資料を参考にしました。
「クロノクロスアルティマニア」（攻略＋設定資料集）
「ラジカルドリーマーの小部屋」（更新停止のＨＰようなのでリンクは貼りませんが、面白い考証をしており、大変参考になりました）
2008年03月26日(水)
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