びっと日記
びっと

■■■
■■
■　アリアンロッド・トラベルガイドの秘密（追記しました）

　今度新しく発売された、アリアンロッドのサプリメント「トラベルガイド」。タイトルから考えて、たぶん今までのサプリメント同様、Ｂ５版での発売だと思いきや、なんと基本ルールと同じ文庫本サイズ。

基本ルール／トラベルガイド
　：初心者向け、ライトユーザー向け。
　　ルールに慣れさせ、世界を理解してもらうために敷居を低くする。

上級ルール／シナリオ集など、その他のサプリ
　：アリアンロッドに慣れた人間、あるいはＧＭ向け。
　　そのため、多少ハードルが高めでもよい。

　という差別化を図ろうということなのだろう(*1)。付言すると、これまでゲーマーズフィールドから発売された、いわば「敷居が高め」のサプリメントに掲載された情報の「プレイヤー向け」の部分もちゃんとこの本にまとめられている。

　書式は今までのＦＥＡＲゲームのフォーマットに近い。後書きによればラーメン屋などを紹介するタウンガイドを参考にしたとあるが…文庫本サイズにこれだけの情報を無理なく詰め込んだことは評価に値する。ただ、さすがにこの版形だと詳細なデータを載せるわけには行かなかったようで、ゲストデータについては簡単なプロフィールの紹介にとどまっている。
　後半はブレイドオブアルカナのランドオブギルティのように、ゲームマスター専用情報が掲載されたページがずらっと続く。他のサプリメントのプレイヤー情報をまとめた部分については、出典となったサプリメントも明記されている。読み応えとしてはＢＯＡほどではないけれど、それは致し方ない。

　そんなことを考えつつ読み進めていくと…。

　ん、これは…地域ごとの専用クラス…？（要は、特定の地域、特定の国出身者などしか選択できないクラスのデータ）
　どこかで…？
　そうか、アレだ！

　もう、覚えている人もほとんどいないかもしれない(*2)。実は、国ごとに特殊クラスがある、というルールを持つゲームが、昔たった一つだけ存在した。
　Ｄ＆Ｄの背景世界、ガゼッタシリーズ(*3)である。これは、世界初のＴＲＰＧのために用意されたスタンダードな世界のはずが、かなりハチャメチャなバランスになっている(*4)というある意味狂ったワールドサプリである。

　…そして私はその狂いっぷりが、ガゼッタが大好きなのだった。(*5)(*6)

　うはｗｗｗｗｗアリアンロッドやりたいｗｗｗｗｗ
　それも文庫本のみ（つまり基本ルール＋トラベルガイドだけ）で！！！

(*1)基本ルールがハードカバーでシナリオ集が文庫本、などという某ゲームに見習わせてやりたい。

(*2)そもそも当時でさえ、Ｄ＆Ｄのことを汎用ＴＲＰＧと考え、ルールブックに世界設定が附属していたことを意識していなかった人も多いのではないだろうか。

(*3)「ガゼッタ」というのは、新和翻訳版の名称である。メディアワークス版ではガゼティアという名称になっていた。メディアワークス版の翻訳を手がけたグループＳＮＥは発音にうるさいので、恐らくガゼティアというのが本来の発音に近いのだと思われる。
　メディアワークスはこのガゼティアシリーズで紹介された「ミスタラ世界」の魅力をかなり前面に押し出すつもりであったらしい。リプレイもミスタラを舞台にしたものになっている。
　…が、しかし。メディアワークスは展開の途中でＤ＆Ｄから撤退。ガゼティアという名称のサプリメント発売は幻のまま終わった。
　私は新和原理主義者ではないから、メディアワークス版の翻訳についてどうこう言うつもりはないし、窓からルールブックを投げ捨てた伝説のプレイヤーの真似をするつもりはない。
　しかし、新和版のことをさんざんけなしておきながら、途中でＤ＆Ｄを投げ捨てたＳＮＥの「ガゼティア」という標記には全く親しみが持てないのである。
　なお、今Ｄ＆Ｄの展開の中心となっている「Ｄ＆Ｄ３ｒｄエディション」は元々ＡＤ＆Ｄの背景世界だった「グレイホーク」「フォーゴットンレルム」を舞台としており、どちらかというとＡＤ＆Ｄの系譜を引く作品であるといえる。

(*4)どれくらいハチャメチャかというと、例えば、ガゼッタの「帝国の曙」には、アルファティア帝国という魔法帝国が存在する。この帝国の設定には「３６レベルマジックユーザー１０００人の評議会が存在する」などとさらりと書かれている。
　３６レベルというのはこのゲームのレベル上限である。３６という数字だけみると凄さがわかりづらいが、海外のゲームなのでとにかく必要経験値だけでも尋常でない。３６レベルの次に待っているのは「神」の領域だ（比喩ではなく、次は神になるためのルールブックが待っている！）。
　その３６レベルが１０００人いるのだ（ちなみにあの灰色の魔女カーラでも恐らくレベル１８程度。アシュラムでさえ１５前後である）。オフィシャルＤ＆Ｄ誌の記事を読んだ当時の私は、空いた口がふさがらなかった。
　それだけではなく、例えば基本ルールではレベル１２までしか上げられないエルフが２５レベルまで成長できるようになったりする（「アルフハイムのエルフ」に収録された、エルフ・ドルイドのルールによる）。
　圧巻はハーフリング。基本ルールではレベル８までしか上げられないはずのこの種族は、ガゼッタシリーズの追加ルールを使うと３５レベルまで成長が可能になる。クラス名はその名も「ハーフリング・マスター」。呪文を使わずファイアーボールを跳ね返したり、ドラゴンブレスを受けても無傷だったり、レイズデットフリー（いわゆる「死者蘇生の呪文」）が使い放題だったりと、ゲームバランスという言葉が裸足で逃げ出すようなとんでもないデータである。

(*5)どれぐらい好きかというと、昔新和版で最後に発売された「アルフハイムのエルフ」という、ボックス版のガゼッタが欲しくて欲しくて仕方なくて、新和の営業を小一時間問い詰めたり、あちこちのゲームショップを放浪したりした挙句、ヤフオクで定価の○倍の価格で落札したりするぐらい。
　しかもそれでも懲りずに冬コミで私訳版を買いあさるぐらい。

(*6)きくたけのゲーム歴の長さから言って、ガゼッタのことを知らないとは思えない。彼と私の古いゲームに対する趣味はよく似ているので、なんとなくそう思うのかも知れないが。パクりというより、これはきくたけ流のＤ＆Ｄへの賛辞なのではないだろうか。
　今回の後書きにあった「昔、よくＴＲＰＧのワールドガイドだけを読んでニヤニヤしていた」なんてくだりはシンクロしすぎで驚いた。

(*おまけ)後書きを読むと、今回の本が文庫で発売された立役者は村山氏（元ＲＰＧマガジン編集長Ｍ氏のこと。その後ＳＮＥに勤める）だとか。
　助言はまったくもって適切だと思うけど、他社製ＴＲＰＧの前に、自社の○○とか××とかの展開でその慧眼を生かすべきじゃないかな…？

　最初の原稿を午前二時に書いたら、途中があまりにも飛躍しすぎていたので追記や修正など入れてみました。

2006年01月19日(木)

■■■
■■
■　カオスフレア・プレイレポート「時計仕掛けのオレンジは電気羊の夢を見るか？」・下

ミドルフェイズ��

　閑話休題。

　スクナヒコとアーシュラが一緒にリサーチを始めたので、遠山とルネを同じシーンに登場させることにします。カストゥルを交えて「異世界からの旅人」ロールプレイを始めたところで、アーシュラが登場。予告通りカストゥルに宣戦布告します。
　これでつながっていないのはヴィヴィだけなので、ヴィヴィのシーンに遠山を登場させ、間接的に全員の顔合わせを済ませます。私の場合、大人数のシナリオで一番気を使う（そして一番失敗しがち）のがここです。慣れていないからなのだと思いますが、こういうテクニックはやはりコンベンションなどで磨くものなのでしょうか。


ミドルフェイズ��

　そろそろ“飛騨”を調べようということになり、調査に赴く５人…もとい、４人。遠山だけは登場していません。ちょうどいいので、予定していた「ダスクフレアとフォーリナーが対面するシーン」を次に挟むことにします。
　戦艦を調べたメンバーは、カストゥルとの会話と会わせて「戦艦の墜落した場所がティラナス領内の封建領主、スヴェン公の領地であること」「戦艦が落ちてからスヴェン公の姿が見えないこと」「ボルドフは元々スヴェンの部下だったこと」を調べます。
　さらにヴィヴィは、バベルストーンを搭載した動力炉の付近で大量のメタビーストが出現したらしいことも突き止めます。

アーシュラ「やっぱり元凶はグレズなのね…」
スクナヒコ「やっぱりね…」
ヴィヴィ「そそそ、そんなことないですじょ？」


ミドルフェイズ��

　今のところ一番シナリオに参加する動機が薄い遠山。それもそのはず、一番重要な「遠山の兄が実はハイゼンガーである」という情報を掴んでいません。もっともこれは予定通りで、最初からリサーチ後半で明かすつもりだったのですが。

　というわけで、スヴェンの城に一人さまよい込んだ遠山。城の一室から兄の声が聞こえてくるのに気がつきます。
　意を決して踏み込むと、そこにいるのはスヴェン公ただ一人。後は大きな鏡しかありません。

ＧＭ「『キミが異世界からの旅人という青年だね？　どうだい、私と手を組まないか？　私と手を組めば、キミを元の世界に返してあげられるぞ』…“砕け散る天”を使用します」
遠山「おお、コンビニだ！」（笑）
ＧＭ「その代わりに条件がある。（魔法で他のＰＣたちの映像を作り）彼らを殺してもらいたい」
遠山「うーん。どうしようかなぁ」
全員「迷うんかい！！」（笑）

　答えを保留し、スヴェンの前を去った遠山は、ばったり他のＰＣたちに出くわします。

ルネ「…どうかしました？　何かありましたか？」
遠山「なんでもない、なんでもない」

　そこに襲いかかる村人＆富嶽兵のゾンビ軍団。これもプロミネンスです。
　とはいえ、ＰＣ５人の前には敵ではありません。

スクナヒコ「やっぱり…みんな、もう殺されてる…？」


ミドルフェイズ��

　そして、次のシーン。マスターシーンっぽい演出でスタートします（かなりズルいなのですが、プレイヤーから「このシーン登場できる？」と言われたら、聞かれた時点で「できます」と答えるつもりで、誰のシーンとも明言せずに描写を始めています）。

　ＰＣたちに先んじ、カストゥルの前に現れるスヴェン。お見せしたいものがある、とカストゥルを呼び寄せて、いきなり斬りつけます。カストゥルもアソウギと剣の腕を競うほどの腕ですから一撃をなんとかしのぎますが、ダスクフレアの猛攻には耐えきれず返す刀で倒れ伏します。
　カストゥルの死を確認したスヴェンはテラスに駆け寄り、狼煙を上げます。すると、湖の対岸で待機していたアムルタートの軍勢が続々と押し寄せ、ティラナスの軍勢を蹴散らします。
　呼応するように、スヴェン指揮下の部隊（実はリターナーの軍勢）が街のあちこちで破壊活動を始めます。

アーシュラ「まだ登場できない？」
ＧＭ「はい、できます」
全員「先に言えーーーーー！！」（笑）

　ごめんなさい、卑怯でしたね。


クライマックスフェイズ

　ティラナスの領主屋敷で、スヴェン＆ボルドフと対面するＰＣたち。５人いるんだからこれくらいの戦力で大丈夫でしょう、たぶん…。

ヴィヴィ「敵は何人？」
ＧＭ「２人です。２人ともダスクフレア」
スクナヒコ「…今、なんて…？」
ＧＭ「（明後日のほうを向き）ダスクフレアが２人」

　スヴェンは遠山に向かって語りかけます。その傍らには飛騨から持ち出したバベルストーンと、ハイゼンガー…遠山の兄の姿が映った、いや閉じ込められた巨大な鏡。

ＧＭ「『さて、答えを聞こうか、遠山くん』」
遠山「断る、お前と手は組まない」
ＧＭ「『…兄に似て愚かな男だ』」

　地面に叩きつけられ、粉々になった鏡が宣戦の合図になります。

ＧＭ「スヴェンは“万軍撃破”で攻撃してきます」
アーシュラ「じゃあ、それを“龍皇軍”で受けようかな…」
ＧＭ「では、それに“因果の果て”を使って達成値を入れ替え…」
全員「え！？」

　…前回アソウギに使われてイヤだった特技をそのまま返したつもりだったのですが…この特技、ＰＣが使うのとＮＰＣが使うのでは、かなり意味が違う特技です。折角稼いだフレアが特技一回の効果で全て無駄になるのは気分のいいものではありません。
　うーん。考えが浅かったです。大反省。加えて「手元のフレアを全て捨てる」のもＮＰＣでは微妙な処理になりますし。


　というわけで、今後は“因果の果てに”“存在しない刻”などの「手元のフレアを全て捨てる」あるいは「フレアを全て消費する」特技のＮＰＣによる使用は自粛しようと思います（ご意見求む）。


　ともあれ、それも悪あがき。今回は「差分値二倍」の特技がないのでさすがに３００は越えませんが、１５０オーバーのダメージを受けて撃砕。
　うーん、やはりダスクフレア２人ぐらいでちょうど、１人だと無理がありますね…（行動が全員回らないうちに戦闘が終了してしまう）。あとはモブで調整を取るぐらいでしょうか。


エンディング��

　スクナヒコは、動くもののなくなった“飛騨”へと向かいます。艦橋には、矢尽き、刀折れ息絶えた三田村の姿と、辺りに散らばる無数のグレズのメタビーストの残骸が残っていました。最後まで抗戦したのでしょう。
　落ちた戦艦の残骸に火を放ってだびに臥し、スクナヒコは富嶽に戻っていきます。
　信長からの次なる命令は、動力炉の開発者、平賀源内を探し出すこと。
　戦艦“打出の小槌”は再び宇宙の闇へと漕ぎ出していきます。

エンディング��

　将軍アーシュラは、浮遊城エヌマ・エリシュでイルルヤンカシュと対面します。
　「甘んじて罰を受ける」というアーシュラにかぶりを振った女帝。
　「ダスクフレアを相手によくやってくれた。人間の策にまんまとはまったハイゼンガーだけは不問とはいかないからジェネラルの地位を剥奪するが…あの男のことだ、すぐにまた這いあがってくるだろう。あの男のような存在が、アムルタートには必要なのじゃ」
と言い、配下の女将軍を労ってその場を後にします。
　その後ろ姿を見送りながら、アーシュラはロシュナードに報いを受けさせることを誓って、浮遊城を後にしたのです…。　

エンディング��

　砕け散ったはずの鏡は元に戻り、中から仮面の男、ハイゼンガーが現れます。「兄さん」と声を掛ける遠山に、その男は冷たく「キミの兄など知らない」と言い放ちます。
「この世界を訪れたフォーリナーで、命を落としたものは大勢いる。キミの兄は、恐らくもう死んだのだろう。諦めることだ」
それだけ言うと、仮面の将軍は自分の冒した過ちを償うため、飛龍に乗って大空に消えていったのでした…。

　そしてしばらくたち、また行き倒れている遠山の前に、馬車に乗った一行が現れます。
「あらまぁ、大丈夫？」
そう言って馬車から降り立った黒髪の女性が、遠山に駆け寄ります。
「多くのものを失った私だけど、食べ物ぐらいならあるわ。一緒に来る？」
その言葉に誘われ、機獣とともに馬車に乗り込む遠山。
　…こうして、カストゥルの妻と娘は、１人のフォーリナーと共にティラナスの地を後にしたのです…。

エンディング��

　スヴェンを倒した後、ルネはカストゥルの私室へと急ぎます。そして、扉を開け「遅かったのね…」と呟きます。
　そこには、明らかに致死量に達する出血の後はありましたが…死体は影も形もなく、そして、開いた窓からは風だけが吹き込んでいたのです。
　領主は死亡、夫人は失踪…うち沈む屋敷に、音を立てて乗り込んで来た者がいます。隣国バーラム伯領を治める、若き…というより、まだ幼い少年領主。ですが、彼は不敵に微笑み、居並ぶ騎士たちにこう宣言します。
「カストゥル殿のこと、心からお悔やみ申し上げる。…それでは、古の盟約に基づき、領主不在の間、ここティラナス領は我々バーラム家が管理すること、異存あるまいな？」

エンディング��

　スヴェンの持っていたバベルストーンを回収したヴィヴィ。破壊するか、それとも…。迷った彼女は、同じようにバベルストーンを持つ、友人のサクラに相談します。
「じゃあ、私が預かってあげる」
そういってバベルストーンに手を伸ばしたサクラですが、その手の中から忽然とバベルストーンが消え去ります。
　壊しておけばよかった、そう言って歯噛みするヴィヴィの前に、一頭の機獣が現れます。そう、あの体内にバベルストーンを宿す、遠山のアイボです。
「バベルストーンは、フォーリナーの手によってしか破壊できない。…いや、むしろ逆に、バベルストーンを破壊するために、フォーリナーはこの世界にやってきた、そうは思わないか？」
アイボは一息つくと、
「もしかしたら彼は、キミと同じように、私を破壊するために私の前に現れたのかもしれないな」
どこか淋しそうにそう言うと、アイボはヴィヴィの前から姿を消したのです…。



2006年01月13日(金)

■■■
■■
■　カオスフレア・プレイレポート「時計仕掛けのオレンジは電気羊の夢を見るか？」・上

　タイトルと内容はあまり関係がありません（爆）。
　いやこの話、本当は二人用の「時計仕掛けの〜」と、もう一つ多人数用の「戦道の終焉」という二つのシナリオのプロットをくっつけたシナリオだったのです（最初の主人公は「機獣の乗り手」と「しろがねの女神」と二人だけでした）。
　最近プレイヤー２人という状況が多かったのですが、ここのところ続けて４人、３人、５人。多人数のシナリオは、慣れていない分腕が鳴ります。

（ハンドアウト作成中）

　むぅ…。詰め込みすぎた（爆）。


ＰＣ�　￣鷸骸］此淵�イックスタート“機獣の乗り手”）

　今回の目標の一つ。今まで登場したことのない“フォーリナー”を登場させること。

　実は、ルールブックに記載されたクイックスタートのＰＣの中で、主人公向けと思われるコロナ“聖戦士”を持つのは、これと“異世界からの戦士”という、二つのフォーリナーしかありません。
　しかし、このフォーリナー。話に絡めるのが非常に難しい。というのは、他のコンキスタドール（孤界侵略者）と違い、彼らはオリジンと対立する立場にありません。なので、反発などのやり取りも生じないのです。
　加えて、彼らはオリジンに縁のあるモノがまったくありません。なので、シナリオに絡む因縁や動機が作りづらいのです。お気づきかも知れませんが、これまで公開されているカオスフレアのシナリオ４本のうち、２本の敵がフォーリナーなのは、そのためです。
　というわけで今回もその例に漏れず、ＰＣ�，蓮峇�にオリジンに存在するフォーリナー」と関係のあるキャラクターということになります（ハンドアウト参照）。

　というわけで、今回の主人公です。数年前、大学生だった兄が失踪してしまったという過去を持つ高校生の少年。

ＧＭ「キャラクターの名前は『遠山次郎』？　じゃあ、お兄さんの名前は…」
遠山「一郎じゃないの？　そう思って自分の名前は次郎にしたんだけど」
ＧＭ「（げぇっ！　ハイゼンガー閣下の本名が「一郎くん」になりましたよ！（笑））」

　異世界に飛ばされた現代人、という立場をうまく表現していたと思います。彼の出す単語の一つ一つに他のＰＣが一斉に反応するという意味で、フレア発生源でした。機獣の命名の仕方などに、プレイヤーの趣味が出ていたような…。

ＰＣ�◆．好�ナヒコ（クイックスタート“宇宙の荒武者”）

スクナヒコ「このハンドアウトだと、ＰＣ�△辰討い�なり船がなくなるの？」
ＧＭ「その予定だけど」
スクナヒコ「それって、天羅でいうと『金剛機が高速機動できない』くらいきつくない？」
ＧＭ「え？（ルールブックを読み直す）た、確かに思ったよりきついかも…。ちょっとシナリオ直すよ（墜落した戦艦の艦長はスクナヒコの友達ということにして…その方が情報収集に「引き」を作れるかな、うん）」

　富嶽の戦艦“打出の小槌”の艦長（スクナヒコ、は一寸法師のこと。私はコロボックルのモデル、というのが浮かびましたが）。身長１２０センチくらいのちみっちゃい女の子。きっと艦長席に座ったら床に足が届かなかったり、軍議机が高すぎたりして、艦橋のクルーを癒しまくってることでしょう。

ＰＣ��　アーシュラ（フルスクラッチ：アムルタート／ジェネラル）

　女性型の龍人ですが、多頭龍なので頭（というか、顔）が三つあり、いつも頭同士で喋っています。どうやら普通、穏健、過激と性格に違いがあり、口論になることもしばしば。ＰＣ�イ離凜�ヴィもそうなのですが、一人で議論ができちゃう人です。
　といっても、今回に限って言えば穏健な部分はほとんどなかったような気もしますが。

ＰＣ�ぁ．襯諭雰兮灰�ャラクター）

　今回唯一の継続ＰＣ。よって、前回のシナリオから経過した５年という時間の影響をまともに受けた唯一のキャラクターでもあります。
　今回一番真面目にシナリオを進行させたＰＣで、しかも言ってることが極めてまとも。加えてちゃんとキャラクターのイメージに沿った特技を習得するという、よいＰＣの鑑。さらに、前の話から引き継がれている設定のほとんどに解説を加えてくれるというおまけつき。素晴らしい。

ＰＣ�ァ．凜�ヴィ（フルスクラッチ：グレズ）

　グレズのマシンライフ。普段は身長３０ｃｍくらいの小さな妖精の姿をしており、必要があると合体して（！）巨大化する（！）という、やっぱり一人で相談も議論もできるキャラクター。
　フレア発生源その２であり、序盤は特に何かするたびにフレアが乱れ飛んでおりました。でも、立ち位置がグレズということで他のキャストと対立しがちなのがキツかったようです。


オープニング��

　スクナヒコのオープニングは変更がありました。最初自分の戦艦が墜落するはずだったのが、友人の三田村という艦長の船が墜落した、ということに。そして、スクナヒコは織田信長から「墜落した戦艦“飛騨”の調査をしてきてくれ」と頼まれます。
　で、お約束のように平手信秀と一悶着。描写して思ったのですが、富嶽も思ったより面白いかも。

オープニング��

　次がアーシュラのオープニング。
　オリジンの「人間」の王国、ロシュナードと手を組んでティラナスを落とすという作戦に、いささかご機嫌斜めのアーシュラ卿。しかもロシュナードのお目付け役であるボルドフという男に煽られてご立腹。
「ちょっと一飛びして、あいつらに宣戦布告してくるわ」
飛龍にまたがり、ティラナス領へと一直線。

ＧＭ「ところで、飛龍の名前なんて言うの？」
アーシュラ「んー（ちょっと考える）『飛べるウイング』なんてどう？（前回までのプレイレポート参照）」
全員「マジヒドスｗｗｗｗｗ」

オープニング��

　さて、フォーリナーの遠山。いきなり行き倒れています。その傍らには、心配そうに寄り沿う機獣のライオンが一頭。

遠山「んー、コンビニどこかなぁ」
全員「異世界ロールプレイキター！」（笑）
ＧＭ「ライオンが、キミを促してどこかに導こうとするよ」
遠山「何、このＡＩＢＯ、ホンダ製？」
全員「それはアシモだ！！！１１１」（爆笑）

　これ以降、機獣の名前はアイボになります。
　アイボが遠山を連れていったのは、近くの街（つまりティラナス）。酒場で（代金を払うあてもなく）飲み食いしている遠山、周りを見てポツリと。

遠山「太秦映画村？」（笑）

　こんな不審な人物が人目を惹かないはずがなく、領主の使いによって、遠山は屋敷まで連れていかれてしまいます。

オープニング��

　ルネのオープニングはティラナス領からスタートなので、ほぼそのままシーンを継続し、カストゥル＝ティラナス公とルネが会話するシーンから始まります。

ルネ「（完全武装のカストゥルを見て）やはり戦、ですか…」
カストゥル「できれば避けたいが…無理だろうな、アムルタートは決して引かぬよ」

　そこに、遠山が連れてこられたところでフェイドアウト。

オープニング��

　ヴィヴィのオープニングはハンドアウトにあるシーンの後…遠山のオープニングのシーンに続きます。遠山のアイボをじっと見つめるヴィヴィ（の一部）。アイボからバベルストーンの気配を感じ取ります。

ヴィヴィ「第１４２３１回、バベルストーン会議〜！」（爆笑）

　ヴィヴィ同士でああでもない、こうでもないと相談した結果、結局アイボを追跡することにしたようです。


ミドルフェイズ��

　さて…ＰＣが５人、バラバラのオープニングのシナリオだと、だいたいミドルフェイズ最初の問題は「誰と誰が組むか」です。今回も例外ではありません。
　一応、動きづらい（この世界での活動の動機が薄い）遠山が、ヴィヴィかルネと組みやすいようにしたつもりです。あとは、ヴィヴィとスクナヒコ、ルネとアーシュラも近い立ち位置にあります。

ＧＭ「じゃあ、最初はスクナヒコのシーン。墜落した“飛騨”の調査に向かったキミは…」

　ところが予想に反し、積極的に動いたアーシュラがスクナヒコとコンビで動き始めます。もっとも、調べ始めれば５人を繋ぐ情報、つまり
Ａ．「“飛騨”が墜落した時期」と
Ｂ．「ハイゼンガーの姿が見えなくなり、ロシュナードが侵略を開始した時期」
が一致すること、また
Ｃ．「“飛騨”の動力がバベルストーンが搭載されている」
ことはすぐにわかるようになっています。それ以上の情報はリサーチが必要なのですが…。

　“飛騨”に近づいた“打出の小槌”は銃撃を受け、艦の火砲がまだ生きていることも確認。

スクナヒコ「あ、ところで『数珠』買っておきますね」

　これ以降、スクナヒコはシーンのたびにアイテムをきっちりと購入。まるでＮＯＶＡのようです（笑）。
　ちなみにここで買ったアイテムのラインナップは、カオスフレアならでは、というアイテムばかりです。


ティーブレイク・「戦いの極意は先手必勝？」

　スクナヒコがここで購入したのは、自分の行動値を上昇させるアイテムです。それもそのはず、カオスフレアにおいては「行動値はいくらフレアを注ぎ込んでも覆らない数値」なのです。

　フレアシステムの原型になっていると思われる「天羅万象」の気合システム。この画期的なシステムには、行動の順番に関して面白いルールがありました。それは「気合を１点消費すると、相手の行動に割り込んで自分の行動が行なえる」というルールです。
　つまり、気合が１点でもあれば、行動の順番を無視して「先に」行動できたのです。ただこのルールには、「同時に複数のキャラクターが気合を使って割り込んだ場合どうなるか」ということについては言及がありませんでした。もっともこのゲームは「敵は気合を持っていない」ルールだったので、問題が発生することはあまりなかったはずです（逆に、ＰＣ同士の戦闘が発生した場合、必ずといっていいほど論争になりました）。

　そこで、次に登場したのが「テラ・ザ・ガンスリンガー」のパワーチップのルール。このゲームでは、複数のキャラクターによる割り込みが同時に発生した場合の解決法として、チップをベットしていき、勝った方が先に行動できる、というルールが追加されました。これはとても面白いルールだったのですが、やはり問題が生じました。
　一つ目は、ルールブックの記述をそのまま読むと「一番早いキャラクターが、一番最後に行動することになる」ことです。割り込みのルールでは「自分自身の行動に対しては割り込みが行なえない」ため、最初に行動しようとする者は、割り込まれると必ず行動順が最後になるのです。
　そしてもう一つが「割り込みのベットに対し、誰もレイズしようとしなくなる」ことです。行動の割り込みに使用したチップは、レイズに負けると消えてしまうルールだったせいでしょう。このゲームでは、他に「使用したチップがまったく無駄になる」というシチュエーションがない（例えばチップを使用した対決に負けても、差分値を減らすという効果はある）ので、割り込みにレイズするぐらいなら「割り込ませて対決にチップを使用」した方がマシなのです。
　
　この二つの教訓を生かしたのでしょう。この後に発売された「エンゼルギア」も「カオスフレア」も「行動の順番を変えるためにチップを使う」ことはできません。

　よって、行動値を上昇させるアイテムは、フレアでは代替できないという意味で、他の達成値やダメージを上げるアイテムよりも重要なのかもしれません。



2006年01月12日(木)

■■■
■■
■　カオスフレアシナリオ「時計仕掛けのオレンジは電気羊の夢を見るか？」

アクトトレーラー

　空を引き裂き、地上に堕ちる二つ目の流星。
　どんなに望んでも、手に入らないはずのもの。それが目の前に現れる時、人は未来を見誤るのか。
　誰かが言った。英雄とは、普通の人間よりも５分だけ勇気が長続きする人間のことであると。
　ならば、普通の人間よりも５セントだけ多くのモノを望む人間は、なんと呼ばれるのだろう。

　時計仕掛けの神の悪意が、この地に再び戦乱を呼ぶ。

　ティラナス公国はここ何年か、戦とは無縁な時間を過ごしている。領主の力量もあるだろうが、最も大きいのはやはり「幸運」なのだろう。
　だが、幸運は長くは続かないものと相場が決まっている。公国に隣接するロシュナード王国が、宣戦布告してきたのだ。公の油断と責めるのは酷だろう。ティラナスとロシュナードの境には「人には越えることのできない」と言われる、アレウル山脈が横たわっている。
　だが、彼らは山脈を越えて兵を進めてきた。そう「人」ではなく、山脈を越えてきたのは「龍」だったのだ。


ＰＣ�　〇慊螢漾璽燹織侫�リナー　推奨クイックスタート“機獣の乗り手”
　　　パス／因縁：兄（名前はキャスト名決定後に決定します）からの期待
　いつもの下校時間。いつもの通学路のはずだった。銀色の蝶に誘われ、今まで通ったことのない道に足を踏み入れた瞬間、キミは見たこともない世界にいた。飛び交う怒号、鳴り止まぬ剣撃の音。
　不意にキミは思い出す。数年前に失踪したキミの兄のことを。
「じゃあ、行ってくるから」
そう言って、普段通り大学に出かけたキミの兄は、そのまま二度と帰ることはなかった。
「もしかして、この世界のどこかに、兄がいるのでは」
右も左もわからないキミのことを助けてくれた機獣を従え、キミは兄を探す旅に出る。

ＰＣ�◆〇慊螢漾璽燹辛掎屐／箴�クイックスタート“宇宙の荒武者”
　　　パス／因縁：織田信長からの好意
　どうしてこんなことに。キミは思い通りにならない艦に毒づきながら、キミに従う武士たちに矢継ぎ早に指示を飛ばす。
　簡単な任務のはずだった。オリジンの辺境にある、排他的な国と戦闘状態に入った富嶽領主に、兵糧を届ける任務。
「お前ならこれぐらい、簡単だろ？」
そう言って主君、織田信長はキミの肩を叩き、あっはっは、と高笑いした。
　それが今や、艦は制御を失い、墜落寸前だ。
　近づいてくる地上を睨みつけ、ふと思う。キミの艦と同型の“駿河”という艦も、確か何年か前に墜落したのではなかったか。あの、新型の動力炉を売り込んできたのは何者なのか…と。
　そして、次の瞬間、キミは轟音と共に意識を失う。

ＰＣ��　指定ミーム／アムルタート　推奨クイックスタート“白き鳳凰”
　　　パス／因縁：ハイゼンガーからの信頼
　キミは、目の前に自軍のプレデターやスカベンジャーが並んでいることを忘れて、大きなため息をつく。
　オリジンに侵攻した当初のような、力と勢いに任せた侵略が難しくなっているのは確かだ。炎龍将ダジ・アハーカのような侵略のやり方では、ネフィリムや富嶽と結んだオリジンの勢力には勝てない。
　しかし…だ。最近のハイゼンガーのやり方は、アムルタートのやり方に反するのではないか…？
　策を弄し、離間を誘い、背後から敵を襲う…。余りにもアムルタートらしくない。
　一言言ってやろうと思い、自陣を歩き出そうとしてふと考える。
　最後に直接彼に出会ったのは、一体いつのことだっただろう？
　戦の始まりを告げる角笛の音が響き始める…。
※継続してキャストを使用する場合、この枠はウィングになります。

ＰＣ�ぁ〇慊螢漾璽燹織�リジン　推奨クイックスタート“剣の乙女”
　　　パス／因縁：ティラナスからの信頼
　アレウル山脈を越えた、ロシュナードの侵攻。ティラナスの誰にとっても、恐らく寝耳に水だったことだろう。前触れのない侵攻に対し、ティラナス公はよく防戦していると言えるだろう。
　そして、神殿に仕えるキミの仕事は減らない。まだ散発的な戦闘が起きるだけとはいえ、死者を弔い、怪我人を癒し…まったく、息つく暇もないとはこのことだ。
　しかし…どうも奇妙だ。本来人間より遥かに屈強な龍の軍団と、まともに伍して戦えているのは、彼らが山脈越えで疲弊しているからだ。だが、そんなことは兵を進める前にわかっていたはずだ。
　ロシュナードにはまだ、何か…隠し玉があるのではないか？
　キミの予感は的中する。
　考えられる限り、最悪の形で。
※継続してキャストを使用する場合、この枠はルネになります。

ＰＣ�ァ〇慊螢漾璽燹織哀譽此／箴�クイックスタート“白銀の女神”
　　　パス／因縁：ヴォーティフからの憎悪
　ガガガ…ピ…ピ…。
　グレズの集合意識に従っていたはずのキミが、初めて“自分で”意識したのは…激しいノイズだった。それが何によってもたらされたものか…キミには分かる。グレズの管理ＡＩの一つだったキミは、その一部始終を見ていたからだ。
　グレズのメインフレームとは違う何かと会話を交わすヴォーティフを。彼の意志と共に、宇宙空間を飛び去るバベルストーンを。
　アレはグレズのためのモノではない。ヴォーティフは過ちを冒した。
　それが、キミの自我の目覚めだった。
　戦闘用の義体に飛び込み、ヴォーティフの目を逃れてバベルストーンを探し続け…ようやく一つ目を、キミは見つけた。

2006年01月07日(土)

■■■
■■
■　ダブルクロス“ファルスアイドル・オルタナティブ”プレイレポート

ダブルクロス“ファルスアイドル・オルタナティブ”プレイレポート

　今回のセッションは、比較的急に決まったセッションでした。このところカオスフレアばかりをやっていたので、ダブルクロスはしばらくぶりです。
　そういえばついこの間、ダブルクロスの新しいサプリメントが発売になったはず。それを使ってみましょう。あとはステージですが、今回の面子が一番親しみやすくて分かりやすいステージといえば…そう、アレしかありません。
　というわけで、新サプリ「コントラストサイド」と「ライブボックス」を使ったシナリオです。なお偶然ですが、今回のプレイヤー３人はそれぞれ「ダブルクロスを初めてプレイする」「ダブルクロスはプレイしたことがあるがライブボックスは知らない」「ライブボックスのシナリオをプレイしたことがある」という情報格差のある３人です。この温度差も興味深いところ。


ＰＣ�　”∧法淵�イックスタート“雷獣の牙”）

　現役高校生のファルスハーツ（以下、ＦＨ）チルドレンの少年であり、ブラックドック／キュマイラ。ディスクリプトロイス（以下、Ｄロイス）は“破壊の子”。
　今回のキャストの中では一番「ダブルクロスっぽい」キャストだったかもしれません。オーヴァードのせいで、誰とも仲良くなれなくて…というわかりやすいキャスト。
　ただ、所属していた組織が悪の組織ファルスハーツだったこと。そして、持っていたＤロイスが「破壊の子」だったことが、彼の命運を分かつ事に…。


ＰＣ�◆．潺�（クイックスタート“堕ちた天使”）

　今回唯一のエージェントであり、ソラリス／ソラリスの女性。Ｄロイスは“装着者”。
　３人の中では一番年長。本当ならまとめ役になるキャストのはずですが、実際は一番のトラブルメーカーだったかも知れません。
　“プランナー”都築京香に忠誠を誓うＦＨエージェントのはずなのですが…敵情視察と称し嬉々としてメイド喫茶（ＵＧＮ秋葉原支部である喫茶「ゆにばーさる」）でバイトするお茶目な人。振り回される部下二人は大変だけど…。


ＰＣ��　赤石英次（クイックスタート“混沌の主”）

　１０歳のＦＨチルドレンにしてブラムストーカー／エグザイル。Ｄロイスは“強化兵”。
　プロフィールをダイスで振って決めたところ「自分の母親を食べちゃった１０歳の子供」という恐ろしい経歴の持ち主に。ＦＨっぽいネ！
　普段は秋葉原の家電量販店「ファイナルハーツ」のゲーム売り場でニンテンドーＤＳをひたすらプレイしながら「これ面白れー」を連呼し、サクラを務めているのだとか。…それは本当に仕事なのか？！


前回のあらすじ

　今回のシナリオは、ダブルクロス・ファンブックに掲載されていたシナリオ「ファルスアイドル」から設定を引き継いでいますので、ここで簡単にあらすじを紹介します。

　秋葉原で人気急上昇中のアイドル声優、桃坂友里。彼女のライブに出かけたファンたちが次々と行方不明になるという事件が発生します。キャストたち（もちろん今回のキャストではありません）事件の真相を探るうちに、桃坂友里がＦＨのエージェント“コンダクター”であることを突き止めます。そして、最後に彼女を倒し、ＦＨの陰謀を阻止することに成功したのです…。


オープニングフェイズ��

　いきなり回想シーンです。
　場所はどこかの地方都市、郊外の公園。友達のいない柊がいつも通っていた公園には、やはりいつもやってくる「近所のお姉さん」がいました。
　その日も、柊が公園にやってくると、お姉さんはやっぱり公園にいて、ブランコに腰掛けて歌を歌っています。
　柊がやってくるのを見ると、淋しげに微笑んでこう言います。
「私ね、歌手になるために東京に行くの。だから、あなたとはもうお別れ」

柊「じゃあ、お姉ちゃんと約束する」
ＧＭ「いや、キミのキャストと“約束”すると後が怖いんだけど（笑）」
柊「（気にせず）また今度東京で会ったら、僕とデートしようよ。約束だよ、お姉ちゃん」

　…ちなみにこの約束の結果はやっぱり怖い事に…。


オープニングフェイズ��

　秋葉原にある、ファイナルハーツ１号店…その医務室。身体に繋がれた検査器具を無造作に取り払う少年と、少年に暖かい視線を注ぐ白衣の女性が一人。
「赤石くん、まだキミの身体は成長期で、完成してないの。だから、あんまり無理をしてはダメよ？」

ＧＭ「そう言いながら、栗林博士は検査の結果をチェックしてる」
赤石「あー、早く売り場に戻ってポケモンやりたいなー」
ＧＭ「（やっぱり仕事じゃないような…）じゃあ、赤石のところに一人の女性がやってくる。不機嫌そうな感じで」

「やれやれ、今回のアタシの仕事は子供のお守りかい。やれやれだよ、まったく…」


オープニングフェイズ��

　ファイナルハーツ１号店の最上階、社長室に呼び出されるミキ、柊、赤石の３人。目の前には社長の桜井晶華が穏やかな笑みを浮かべて立っています。

ＧＭ「キミたちが新しく配属されたセル（組織）のリーダー、菅谷がキミたちをじろじろ見る。で、キミたちの方はまったく見ないで、社長に向かってこう言う。
『子供のお守りは御免ですよ、社長』」
赤石「こっちだって、大人のお守りは御免だよ」
ＧＭ「（この殺伐とした雰囲気…ＦＨって面白いな！）菅谷が『生意気なガキはキライだよ』と言うと、社長の桜井が微笑む。『貴方たちを組ませるのは、プランナーからのご指示よ？』」

　全員が不機嫌そうに黙り込みます。

ＧＭ「菅谷が渋々話し出す。『今回のアタシたちの任務は、ついこの間、とある作戦の失敗でＵＧＮに拉致された、桃坂友里というエージェントの奪回だ』…」


ミドルフェイズ��

　柊と赤石は（ダブルクロス経験者らしく）情報技能を使って手堅くリサーチ。桃坂が連れ去られたという前回の事件の経緯や、栗林がキャストたちと異なるセルに属するＦＨエージェントであること、ＵＧＮに潜入しているスパイであることを調べ上げます。

柊「桃坂がどこに監禁されているかはわからないのか？」
ＧＭ「（まだリサーチ始まったばかりだからなぁ…）うーん、栗林なら分かるかもしれないけど…と、栗林の助手は渋ってる」

　すると、事前にコンストラストサイドについて「ＦＨは、セル同士で手柄争いや足の引っ張りあいをするような組織だ」と説明してあったのが引っかかったらしく…。

柊「タダで情報は渡さないってことか？　じゃあ、交換条件に何をすればいい？」

　…いや、ＧＭとしては後でリサーチしなおしてくれ、という程度の軽い気持ちだったのですが。
　でも、その設定面白いからいただきます。

ＧＭ「助手は『そうだねぇ…“破壊の子”であるキミを実験材料にさせてくれるなら取引に乗ってもいい』と言ってるけど」
赤石「僕じゃダメなのか？」
ＧＭ「だってキミ、もう栗林にさんざん実験されてるじゃん（オープニング参照）」
赤石「ちょっと待て。ということは、僕も誰かの取引の材料になったってことか？（笑）」
柊「セルリーダーの菅谷が取引したんだろうね、普通に考えれば」

　…ＧＭが何も言わないうちに、クライマックスへのモチベーションを高めてくれるキャストたち。いいネ！（笑）

柊「いいだろう。その取引、乗った」


ミドルフェイズ��

　一方、ミキはと言えば。

ミキ「ＵＧＮ…でしたっけ。秋葉原にもその支部があるの？」
ＧＭ「うん。ゆにばーさる、っていうメイド喫茶…」
ミキ「（目がキラリと光る）じゃあ、潜入捜査に向かいます」
ＧＭ「ゆにばーさるに向かうと、メイド姿のウェイトレスが『いらっしゃいませ』と…」
ミキ「（間髪入れず）『お帰りなさいませ、ご主人様』ですよね」
ＧＭ「（し、指摘が早い！！！！１１１１）」

　席につくや否や、「その服が着てみたいんですけど（！）バイトさせてくれませんか？」と言い出すミキ。
　普段、ファイナルハーツ１号店でハチマキしてハッピ着て「３割、４割は当たり前！」と連呼しているミキ、接客は手馴れたものです。
　すっかりゆにばーさるに馴染んでしまったところに、冷気をまとった女性客、菅谷が来店。

ＧＭ「『（ニヤニヤと笑いつつ）似合ってるじゃないか。いっそ宗旨替えしたらどうだ？』」

　そしてミキは、彼女が「ヴァーミリオン」の異名を持ち、「これまで組んだ上官や同僚や部下がことごとく死んでいったＦＨエージェント」であることを思い出します。
　そして、さんざん皮肉を飛ばしたヴァーミリオンが店を去った後に、犬耳をつけた１０歳のショタ少年赤石が登場。もちろん、ニンテンドーＤＳを使って、バイトのメイドさんたちの心をガッチリとキャッチ。

赤石「何か情報掴めた？」

　そこは抜かりなく、ミキはバイト中に、他の店員が「（桃坂らしき人物が）今は土浦にいるが、近いうちに成田経由でＵＧＮアクシズ（中枢）に移送される予定」であることを掴んでいました。


ミドルフェイズ��

　土浦駅に降り立つミキ。隣にいるはずの部下がいません。

ミキ「おかしいわねぇ…二人とも何してるのかしら」

　と呟く場違いなメイドを見て、周りの親子連れたちがそそくさと逃げていきます。
　ミキが仕方なく服を着替えると、何事も無かったかのように現れる柊と赤石。

　郊外に、一見バイオ企業の研究所を装って建てられたＵＧＮの研究所。ガードは固そうです。

ミキ「どうしてこんなに厳重なのかしら。桃坂さんってそんなにすごいエージェントだったの？」
柊「…しまった、まだそれ調べてなかった」

　慌てて情報屋につなぎを取って調べてみると、ある事実が…。

ＧＭ「桃坂はＦＨのエージェントになる前、ＵＧＮに所属していた形跡があるね」
全員「な、なんだってーーーー！！！１１１」
柊「なんだってまた、ＦＨに転向したりしたのさ？！」
ＧＭ「ＵＧＮに潜入していたＦＨのエージェントが、桃坂がＦＨに来るよう仕向けたからだよ」
ミキ「ＵＧＮに潜入してたＦＨのエージェント…？」
柊「まさか栗林博士？！」
赤石「（ぽつっと）まさか、僕も元はＵＧＮ所属だったりしないよね…」

　ごめんなさい。その設定もいただきます。


ミドルフェイズ��

　というわけで急遽挟んだ回想シーン。母親を死なせた直後、ＵＧＮに引き取られ、医療施設で過ごしている赤石の病室に、ふらりと一人の女性が通りかかります。

赤石「（冷たく）あっちいって。僕に近づかないで」
ＧＭ「『そんな悲しい顔しないで。ほら、その力を持っているのは貴方だけじゃないんだから』そう言ってその女性が一声歌うと、窓ガラスにビシッとヒビが入る」
赤石「（気のない風に）どうして僕なんかに構うのさ」
ＧＭ「『昔、私がまだ田舎に住んでいた頃に、貴方と同じような目をした男の子に会ったの。無理に明るく振る舞おうとするのが痛々しくて、見てられなくてね…』」
赤石「…」
ＧＭ「『でもね、その力を持って生まれたのは貴方のせいじゃない。自分を責めないで。あなたの力でもし傷ついた人がいたとしても…その人も同じように思っているはずよ』」
赤石「（キャラシートをじっと見つめていたが、目がキラっと光る）そうか…そうだよね。お母さんもきっと…僕が進化したことを喜んでくれてるよね！（赤石は「欲望：進化」というＦＨ専用データを持っている）」

全員「げぇぇぇぇぇぇぇっ！！」

ＧＭ「（同じく目が光る）じゃあその女性も一瞬えっ、と虚をつかれたようだけど、考え込む。『…そういう考え方もあるかな…』」

全員「ｍｊｄ？？？！！！」

ＧＭ「で、そこに白衣の女性が通りかかる。『桃坂さん。例の話、考えてくれた？　貴方の本当の力を調べるには、ここよりももっと優れた技術とノウハウを持つ組織の力が必要だわ』
　桃坂はしばらく考えていたけど、決意したように肯く。『はい。私、決めました』」

全員「……赤石、お前のせいかぁぁぁぁぁぁ！！！！！１１１１」（爆笑）
赤石「な、なんでぇ！？」（笑）
　

インターミッション��

　さて、ここでキャストたちは作戦タイムに入ります。
　桃坂を奪い返すなら、研究所から出てきた瞬間を狙うのがセオリーでしょう。しかし、ＵＧＮの研究所には、３つの出入り口があります。正面、裏口、通用口。キャストは３人なのでちょうどいいようにも思えますが…。

ミキ「私、戦闘能力ない…」

　そう、支援系のミキの能力では、敵のオーヴァードとぶつかったらあっという間に倒されてしまうでしょう。
　キャストたちはああでもない、こうでもないと言いながら配置を決めます。
　そして、この配置が（プレイヤーの予想とはまったく異なる意味で）彼らの命運を決定したのです。


クライマックスフェイズ��

　裏口に張り込んだ柊の前を、数台の車が通過します。

柊「こっちが当たりか…！」

　すかさずワーディングでゲストとエキストラの動きを止める柊。車の中からゆっくりと一人のオーヴァードが現れます。

ＧＭ「ＵＧＮエージェントがキミを睨みつける。『ＦＨのエージェントか…くそっ』」　

　敵オーヴァードもデータとしては弱くはないのですが、ＦＨ専用ロイス“破壊の子”の力は強力で、柊はあっさりとＵＧＮエージェントを倒します。ただ…“破壊の子”の特徴である「普通より高い侵食率」は、着実に柊を蝕んでいきます。
　そして、ミキと赤石も現場に駆けつけます。

ミキ「大丈夫だった？」
柊「（助けを振り払い）車に近づくよ」
ＧＭ「そうすると、中から病人用の白衣に身を包んだ一人の女性が現れる。彼女の喉にはたぶんエフェクトを封じるための拘束具のようなものがついているんだけど…今は外れてるね」
全員「え？！」
ＧＭ「次の瞬間、“サイレンの魔女”の激しい衝撃がキミたち全員を襲う」


クライマックスフェイズ��

　突然の衝撃で傷つくキャストたち。その前に、奇妙な形のヘッドセットを被った女エージェント、ヴァーミリオンが現れます。

ＧＭ「『ハハハハ！　素晴らしい…素晴らしいぞ！　これが“破壊の女神”の力の完成形か…！』」
ミキ「な、なんのこと…？」
ＧＭ「『彼女…コンダクターの力は、普通の人間が聞けばレネゲイドウィルスを活性化させる力を持つ。しかし、その力を最大まで発揮すると、その力はレネゲイドウィルスを破壊する恐るべき力となるのだ…！』」
柊「最初から、それが目的だったのか？」
ＧＭ「『そうだとも！　ＵＧＮエージェントを倒したお前たちを、あっさりと殺せるこの力を制御できれば、セントラルドグマでの出世も夢ではない！　そう、私が新しい“プランナー”となることさえも…』」
赤石「…アンタ、バカだろ」
ＧＭ「『なにっ…？！』」

　次の瞬間、“サイレンの魔女”が襲いかかり…のたうち回るヴァーミリオン。
　彼女はヘッドセットのインカムに向かって叫びます。
「このヘッドセットがあれば、彼女の力を防げるのではなかったのか！」
　インカムから流れるのは、氷のように冷たい栗林の返答。
「バカね。どうしてそんなモノ、あなたにあげなきゃいけないの？」
　そして…サイレンの魔女の力の前に、ヴァーミリオンは力尽き、動かなくなります。

ＧＭ「桃坂はゆっくり、ゆらりと立ち上がる」

　「私はただ…ただ歌手になりたかっただけなのに…。どうして私がこんな目に会うの…？
　私、ずっと思ってた。こんな力を持ったのは私のせいじゃない。自分を責めないようにしよう、って。
　それで、私頑張った。私の力を生かしてくれる人、私がここにいてもいいんだって言ってくれる人のために。
　でも、みんな私を利用してるだけだった。私の力を。
　そう、悪いのは私の力じゃない。悪いのはみんな。私を利用しようとするみんな。
　…キライよ…みんな大っキライ…」

柊「お姉ちゃん、約束したよね。…これが終わったら、僕とデートしようね。…きっとだよ」

　というわけで戦闘開始です。
　戦闘能力に秀でたＦＨ専用ロイスを持つ、ＦＨチルドレン二人がかりの攻撃は凄まじく、桃坂のＨＰはあっという間に削られ…るのですが、防御力をほとんど持たない彼らもまた、桃坂が倒れるまで“サイレンの魔女”の攻撃をまともに受けてしまいます。タイタスを使ってなんとかしのぐキャストたち。

ＧＭ「桃坂は最後にもう一回だけ『みんな…キライよ…』と呟いて、その場に倒れる」


インターミッション��

　さて、エンディングに入る前に、侵食率の回復ロールです。ここで問題になりそうなのはただ一人。そう、クライマックス前半で一人での戦闘を強いられ、加えて“破壊の子”で通常より多く侵食率を削られている柊です。

柊「侵食率１３０で、残りのロイスが３つか…一応、ダイス倍振ります」

　６個のダイスの合計は…無情にも、２７。

柊「あと３…あと３だけど…堕ちたァ！」


エンディングフェイズ��

　今回の事件でＦＨに嫌気が差したミキ。ファイナルハーツに辞表を叩きつけ、「本当にいいの？」という桜井社長に目もくれず、秋葉原の街へと飛び出します。
「はぁ…勢いで飛び出してきちゃったけど、でもこれからどうしよう…」
ため息をつくミキの方を、誰かがぽんぽんと叩きます。振りかえって見れば、そこに立っていたのは“ゆにばーさる”のメイド。
「探したわ。店長があなたのこと気に入っちゃって…よかったら、ウチでバイトしない？」

　そして…“ゆにばーさる”に、売り込みの巧い新しいメイドが一人増えた、とか。

エンディングフェイズ��

　いずことも知れぬ暗闇の中、一人たたずむ赤石。一本の試験管を手に、あの時拾ったインカムのスイッチを入れます。
「栗林さん？　赤石です。桃坂はＵＧＮに奪還されちゃいました。でも…ここに彼女の血液があります」
試験管を振ると、ちゃぽん、と音を立てて赤い液体が揺れます。
「菅谷さんが死んじゃったから、菅谷さんとあなたの取引はなしですよね？　だから、今度は僕と取引してください」
沈黙の後、インカムから声が聞こえます。
「交換条件は何？」
「もちろん、僕の進化を手伝ってもらいます。僕のデータ、あるんでしょ？」
今度はもう少し長い沈黙。返事を聞いて、赤石は満足げに笑います。
「取引成立、と」
そして、少年は再び、いずことも知れぬ闇の中へと消えていくのでした。


エンディングフェイズ��

　東京タワーの特別展望台。そこから、地上を見下ろす一つの影がありました。桃坂が着ていた血まみれの白衣を羽織った柊です。
「ふふふ…お姉ちゃんとのデート…楽しみだなぁ…」
地上を行き交う無数の人間を、満面の笑みとともに眺め、
「でも…お姉ちゃんとのデートまで、退屈だなぁ…」
はっと気付いたように、地上の一点に視線を注ぎ、
「そうだ！　今度はあの娘にしよう！　あの娘とデートしよう！　うん、そうしよう！」
そう言うと、柊は虚空に身を躍らせ…。


　そして、新しい血の惨劇が幕を開ける…。

2006年01月05日(木)
≪ ≫ 初日 最新 目次