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友キタコレ    …2006年02月01日(水)

「つれもてしよら シートベルト」
県外のよそ者にはその意味さえ正確に伝わらない交通標識を堂々といたるところに掲げる和歌山シティで絶望的な人生が終わる日をただただ静かに待つばかりの俺に帰国後はじめての、そして若人のお友だちが現れていました。やれやれママン、俺はやればできる子だって言った通りでしょう。

日没と同時に起床し近隣の家庭から漂ってくるハートウォーミングなカレーの香りに切なさを募らせ、小学生が教室で白痴のように口をだらしなく開いて九九を暗唱しているまだ日の高い時間に就寝と、古来から受け継がれてきた伝統的な無職タイムテーブルを忠実に刻むオデが最も活発に行動する深夜帯に連日通い詰めるコンビニのレジが彼でした。仮に源氏名はヨシダくん。若いのに深夜シフトて高校中退のフリーターか、いつ行ってもいるしきっと砂壁4畳半で生涯を終えるタイプNE。だとか自らが29歳の投げやりな無職であることを脳裏から追いやって、途方もなく上からの目線で彼の不憫な末路を憐れみながらも同類めいた親近感をおぼえ、やがてコツコツと話をするようになるとあれよあれよと親交は深まって判明したのは彼は数代つづく総合病院の跡取り息子。毛並のよい一族にありがちな親族総出の白衣マニア。冬はタミフルタミフル。ヨシダくんご自身もどんなクズでもご存知の国立大医学部に在籍。現在は「親の言いなりになるのはまっぴら、医者になる以外の可能性も探ってみたい」とかテラテラした脂が焦げるような臭気を放つ若者の主張を高らかに唱え、実家に帰省し休学中と要は生粋の苦悩したがるヒエラルキー上層部に属するヤングでした。こσ間ぉぅちに行ったら∋→□ッハoσふ〃→ふ〃→か〃す〃らりと並ωτ〃ぃたょοおまけに愛くるしい同郷の恋人までおいでと暴力的なまでの勝ち試合ップリです。エリカちゃんぐてお名前までめまいがするほど無駄に愛らしいこと極まりない。ヨシダくんはいわば男根に真珠を内蔵したテクニシャン、あるいは幸福の王子から金箔を根こそぎ剥いでゆく強欲なツバメ。つうか深夜のデイリーヤマザキで肉まん売ってんなよ。あ、だけどデイリーヤマザキのパンはおいしいよね。ね?つうか敷かれたレールを敢えて踏み外すというしょせんは自己満足の範疇にすぎない試みすなわち反骨マン気取り?みたいなみたいな。それでも完全には脱線できずに結局は中途半端な理想に燃えて20年後は無医村の診療所に勤めているに違いないと1ミリも揺らぐことなく確信しています。そうあってほしいと強く願っています。

そんなヨシダくんとエリカちゃんぐ夫妻にロイヤルホストへ呼び出され、席につくやいなやエリカちゃんぐが唐突に期間限定の苺チョトスを食べたくなったから今すぐ買ってこいとヨシダくんに上目遣いで可愛らしくせがみます。いかにもマンドクセーそぶりを装いながらもどこか嬉しそうにいそいそと苺チョトス探索に奔走するヨシダくん、そして取り残されうっかり目を合わせることすら躊躇われるエリカちゃんぐと俺。超もじもじしながら何か話があるんだろうなと身構えていたらよりにもよってこの俺に甘酸っぱい色恋沙汰の相談ごとを持ちかけるという見る目のなさです。「彼が大学に戻ったとしたら遠距離になるしアタシ高卒だし貧乏だし釣り合わないキャモ、でも大好きなんです」とコバルト文庫じみた苦しい胸の内を打ち明けられてもな。人生の最前線から撤退した俺にはぴりりと気の利いたスパイシートークなんてできやしないのです。うら若き娘さんの苦悩を受けとめるおねえさんポジションに舞い上がって熱心に相槌をうつのもおとなの女を粉飾して凡庸な意見を陳述するのも話に興味があるふりをつづけるのも20分が限度でした。だって心底どうでもいいじゃない。キスいや!にでも出りゃあいいんだよ、と。20分前の俺ちょっと浮かれ杉。東さんも何か悩みあったら聞きますよ!アタシでよかったら!て悩みごとを分かち合おうとなんてなさらないで。顎にできたクリトリスみたいな吹き出ものが目下最大の悩みかな、それからー髪の分け目変えたらてっぺんが変に盛り上がって頭部のシルエットが亀頭みたいなんだよねー。あ、あと食後にアイスティーください。ミルクで。

そうしてコンビニ4軒もまわっちゃったよーと情けないツラをさげて席に戻ってきたヨシダくんが手にしていたのは苺チョトスではありませんでした。なじられたら3秒で土下座体制に入れる心構えができている先天性パシリ体質、苺チョトスが見つからなかった代わりにダースチョコを買ってくるという決定的能力のなさ。新しいお友だちはちょっぺりヴァキャです。

▲トツプパゲ