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2005年08月28日(日) そしてまた書き続けよう

二週間経ってしまった。充実していたから、多分書かなくても済んでしまったんだろう。日記は、私には保険なのだ。最後にここに戻ってくれば、他に何がなくとも大丈夫ですよ、という最小限の。

人に会って、「ああこの人はこういう考え方をするんだな」というちいさな発見を積み重ねていると、何も飽きることなんてない。読書や映画鑑賞や、ヨガや一人で行う思考や、そして書くことは、その何倍、何十倍もの労力を使ってやっとその「飽きない」満足に辿り着くというのに。なんて不公平なんだろう。

いわゆる会社で言われるような文章の質うんぬんと、全く関係ないものをここでは書こうと思う。そうでなければ意味がない。できそこないコラムニストみたいなサイトにするんじゃなくて、もっと、誰にも宛てていない感情の、ただ溢れる口にするんだ。もともと、そうだったんだから。

熊谷の花火に行った。花火が始まる前に夕焼けが見えた。暗くなってからは満月が見えて、もちろん花火も見えた。きっと何年か経って、「あああれは幸せだったな」と思い出す類の、とても気持ちいい風が吹いてきた。写真をたくさん撮ってもらって、それがメールで送られてきた。変な顔だったので笑いながら読んだ。

それから『ライフ・イズ・ミラクル』という映画を見た。最近では一番の傑作だった。とてもグロテスクで、大風呂敷を広げたまま閉じないような、だるくだるく続いていく人生の縮図のようなすばらしい作品だった(こういう抽象的な表現も直さないでアップする)。最近、何かを分かりやすく分かりやすく解釈し、具体的に分かりやすく分かりやすく人に向かって書くことに全力を注いでいたから、けっこう参った。見終わった後に、感想が書けないと思った。忘れていたんだ。こういう、複雑で救いがなくて、どうしようもなく涙が出るような感情の動きを。シリアスにならないことばかりが、大人なわけではない。

思考を止めてはいけない。ひっそりと、部屋の隅で一人で本を読み、話しかけても上の空の人を見て思う。私は、こういう内向性を忘れてはいけない。どこまでも誰も踏み込めず、くっついてもくっついてもまだある(曽我部恵一がいう)「埋めれない隙間」を凝視しなければいけない。これから死ぬまで。どれだけ大人になっても。

夏休みは9月の一週目にある。どこか遠くに行こうと思う。そしてまた書き続けよう。







2005年08月14日(日) 夏がずっと続けばいい

7月のまとめもしないまま、お盆に入ってしまった。会社はカレンダー通りなので、土日だけが休みだ。複雑な思いを抱えずに生きている。嫌な気持ちになったらすぐにそれを消せる技を身につけた。

休みの日の昼間はずっと甲子園。高校生が年下になってもう6年が経った。ラジオは、「子ども科学電話相談」を聞く。『働きマン』を買って読んだ。編集者の話なので面白い。

誰かと長い間付き合う(恋愛ということではなく)と、得ることが多いというのが持論だ。ことあるごとに遊んでいて、ぐだぐだ色々なことを話してきたつもりでいても、5年後、10年後に初めて知ることってあるんじゃないだろうか。

久しぶりに前の彼と話して、バドミントン部の話を聞いたとき、そう思った。彼は中学の時バドミントン部で、同じ学年に男子がひとりもいなかったそうだ。女子の中にぽつんと一人、そこまでして打ち込むほど意志が強いタイプにも思えなかったので「どうしてバドミントン部に入ったの?」と聞いてみた。そうしたら、お父さんがバドミントン選手だったという話が出てきた。若い頃は国体で上位の、かなり強い選手だったらしい。そんな、家庭では一大事であるはずの話を、たまたま聞かずにここまで来た。

だからどうということではない。でも、人間関係に「飽きた」とはあまり思わない。私にはまだまだ話すことがあるし聞くべきことがあると思っている。

それに人は変化していくから、断片断片を見るよりも、長期のスパンで眺めた方がきっと面白い。自分のことを振り返っても、大学の時は本当に情緒不安定だったと思う。困るとすぐ人に電話していた。恋愛ついてはその傾向が顕著で、わがままも弱いところも情緒不安定も、全部分かって欲しいし受け止めて欲しい、と思っていた。受け止めるとは、具体的にどういうことだったのだろう。「分かるよ」と言ってくれる人がとても好きだった。

きっと失っているものもあるけれど、知っていることも増えている。先日、首都高速から東京タワーを見た。柄にもなく、「ドライブ」に連れていってもらったのではしゃいだ。オレンジ色の灯りが、とても近くにある。きれいだった。思春期には見逃していた類の。

夏休みの通勤電車で、親子連れをよく見る。「夏休みだねえ」と温かく見守っている内に、ひとつのことに気付いた。彼らはみな「ポケモンスタンプラリー」でJRの駅を巡り歩いているらしい。「次は? つだぬまでしょ? 次?次?」子どもは駅が近づくたびにそわそわして、降りようとする。あれに付き合うのは楽しそうだ、と思う。

こうしてつらつら書いていると、考えていることが無数にあることに気付く。つらつらだらだらというのは、一番書いてはいけない書き方で、おそらく誰も読んでくれない。でも、まとまって起承転結のついた文章ばかりだと、気がおかしくなりそうになるのだ。

そうだ、友人の引っ越しを手伝った。本を片づけながら山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』を読んだ。引っ越し手伝い先の人の家で、セックスしている二人の話を読んでいるのも変な話だ。面白かった。

作家になれるかどうかのいくつかの条件のうち、「セックスを書けるか」というのは一つ、大きく横たわる問題ではないだろうか。私はセックスが書けない(誰も聞いてないと思うけど)。別に潔癖性だからということではない。あまりにも本質的なこと過ぎて、文章がそれで終わってしまう気がする。桃を食べる時に、芯をとるでしょう。まわり中をきれいに切り取って、食べる。ああいう表現が自分には合っていると思う。芯のまわりをぐるっと切って、一口大に分けて、食べる。芯にがりっと歯を付けるのは、あまりに忍びない。

頭が良くなりたい。勉強はけっこうできたほうの筈なのに、社会人になってからほとんどただの阿呆のまま生きている気がする。踊る阿呆と見る阿呆、ああ阿波踊りにいきたいな。夏がずっと続けばいい。



2005年08月08日(月) 王子様への手紙

前略王子様


残暑お見舞い申し上げます。
昨日だかおとといで暦が変わったから
こんなに暑いのにもう「暑中お見舞い」ではないのだそうです。

蝉の鳴き声を聞きながら市ヶ谷のお堀端を歩いて毎日通勤しています。

あらゆる締め切りが順番にやってきて
あっちの構成案を提出しながら
こっちの原稿を書くといった具合で
何かをあまり考える暇もなく仕事をしています。

昨日、NHKの深夜番組を付けたら
ヒロシマの映像を流していました。
それと、今日から甲子園が始まりました。
私は夏が大好きです。

あなたはどうですか。
夏バテしていませんか。

7月の末に、神楽坂のお祭りに行きました。
午前中会社のスタジオで撮影をして、大急ぎで家に帰って浴衣を着て
下駄で走っていきました。

駅に着いたら、数分前にあった地震で電車がとまっていました。
「困ったね」と口では言いながらあまり困ったこともなく
すたすたと30分ほど歩きました。

学生時代に九段下でアルバイトしていた頃から良く歩いた道だったから
なんの迷いもなく、
自分はとても自由だと思った。

お祭りは、地震で誰もいないかと思ったら意外に人が集まっていて
(みんな歩いてきたのだろうか)
毘沙門天の前で「やっこさんやっこさん」と
阿波踊りを踊る人たちを見ていました。

一緒にいた人が写真を撮ってくれた。
とても良く撮れていて驚いた。
自分なのに、自分ではないような笑顔をしていた。

水上のカフェからお堀の向こうを眺めたら
水の上を電車が走っていった。
「沼の底」に向かう電車のようだった。
私は「あ」「あ」と顔なしの真似をした。
相手は笑ってくれた。

夏になると、あなたに教えてもらった『LONG SEASON』という曲を思い出します。
もう一度涙を流し、誰かのことをくまなく聞きだし、
伝えられる限りを尽くして自分のことを知らせ
近づいたり離れたり、胸の骨を触り
突然興味がなくなり、飽きたそばからまた執着する。
くだらない繰り返しを、もう一度できるだろうかと考えながら、
電車ではジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』を読んでいます。

『停電の夜に』は、ある出来事がきっかけで関係が冷えてしまった
夫婦の話。
ラヒリの書く人間達はとてもリアルです。
だから、彼女の小説は先が見えません。
「分からないまま終わらせるんだろう」と想像したり
「きっとこういう落ちだろう」と分かってしまっても
私はそれらの作品をダメだとは思ってきませんでした。

しかし、ラヒリの文学を読むと
そうして読者に「想像の間」を与えようとする小説が
いかに想像力の貧困な筆者により書かれているかを考えさせられるのです。

解決しない問題を、ラヒリは置き去りにしません。
悲しみを悲しみという文章にして
我々の肌にじっとりと塗り込んできます。

また抽象的な文章になってしまいましたね。

あなたのこの間言っていた
ホワイトアルバムの歌詞の件、とても感動しました。
また後日、それについては書こうと思う。

お返事が遅れてしまったことをお許し下さい。
いつもあなたのことを考えながら
窓から夜空を見上げています。


かしこ








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