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2005年04月30日(土) 4月のまとめ

ゴールデンウィーク前で仕事が比較的忙しかった。「マナー」とか「冠婚葬祭」とかいう文字をもう見たくない。



4月に見た映画
『ライフ・アクアティック』(試写)
『ミリオンダラー・ベイビー』(試写・2回目)

4月によかった本
森まゆみ『小さな雑誌で町づくり』
夏目漱石『草枕』

4月の恋
ついにいない歴4年目に突入、いい加減誰か付き合ってくれ
彼女のいる男性は、もう嫌だ

反省点
結局前の彼には私しかいないといまだに思っていること
走れなかった

来月の目標
各方面に手紙を書く
クマを消す(そのために高い化粧品が欲しい)



2005年04月27日(水) 素晴らしい文章

先日友人のりかちゃんから、「同期としみったれたサシ飲みをするからバナナちゃんも来る?」と誘われたので行ってみた。相手の男性はしみったれた元アイスホッケー部で、特別な会話はしなかったけれどなんとなく私とも気が合いそうな感触だった。

りかちゃんは「ナカガワくんと私で話してても、いつも仕事のことや将来のことには全然答えが出なくて、どこまでいっても堂々巡りで、それが凄く安心するの」と言っていた。チャッピーというペット犬しか愛せないりかちゃんと、彼女がいなくてデリヘル嬢を呼んでいるナカガワくん。二人だけで飲んでいると確かに答えが出なくて危ない感じなので、「私もまた誘ってください」とお願いしておいた。

ナカガワくんはホームページを作っているというので拝見した。読んでいたら夢中になる文章ばかりだった。あんまり素晴らしいので、「こっそり転載させていただいてもいいですか?」とおそるおそるお願いしたら、「名前も全部出していいよ」という。強い人とはこういう人をいう。才能に少し嫉妬している。(以下、ある日の日記から引用)






「広告主がエラくご立腹らしい」

と、広告部の人が狼狽した様子でやってきた。

怒っているのは先方の新製品を紹介したレポート記事についてらしく、取材・執筆オレ。広告主に直接電話をして事情を訊くと、ご立腹の理由は、商品に対する批判的な意図が感じられたからだと不機嫌な声で説明があった。

どんな商品かというと、「これをつけるだけでイオンの力が働いて燃費が良くなる」というもの。

記事ではその商品を実際に試してみて、その時は「効果なし」という結果だったからそう書いた。ただ、テストは反復して行わないと正確なデータは得られないから今回の結果だけを参考にすることはできないということ、同時にメーカー発表の測定結果も同程度のスペースで掲載しておいた。

メーカー側の説明やプレスリリース(雑誌などの媒体向けに「これはこんな商品ですよ」と紹介する文書)は、「γ線」「β波」「流体力学」「放射性物質」「分子間移動」なんかの難解な言葉が何十行にもわたって並び完全に理解不能。これはおそらくわざとだろう。

難しい言葉を羅列して、読んでもいない英語の論文(先方によれば「論文の内容については把握しきれていない」との回答)を参考文献として紹介し、消費者や媒体に「よくわからないけど効くんだろうな」と思わせるのが目的だ。

「携帯電話に貼るだけでイオンの力が働き電池が長持ち」という触れ込みの「電ピタ」という商品がある。大阪市のお墨付きももらい爆発的にヒットした。でも、関西大の教授の実験で効果が無いことが明らかになり、報道番組が追求したところ、メーカー側は科学的な根拠がないことを知りつつ販売していたことを認めた(逆ギレ気味で)。大阪市は商品審査すらしないでメーカーの発表を鵜呑みにしてお墨付きを与えていた。利用者が感じた効果は完全に気のせいだった。

今、というかここ5〜6年、そういう科学的な根拠が曖昧な商品が無数に発売され、万単位の高額にも関わらず飛ぶように売れている。特徴としては、難解な理屈(そもそも“理屈”にならないようにしている。先の大学教授の実験のように正統派の理屈で攻められるとマズイから)をこねくり回して消費者と雑誌をまるめ込もうとしていること。高額な価格設定は「これだけ払ったんだから効果がないはずはない」という思い込みを助長するのに有効だ。

なめるなよ、と思う。

全ての人をなめきった商品だ。

今回のクレームには「うちは広告主なんだから手放しで褒めるのが当然だ」という意味も含まれている。確かに雑誌にとって広告主はなくてはならない大事な存在だ。彼らにソッポを向かれたら、広告収入がかなりの割合を占めるような雑誌はあっという間に立ち行かなくなる。しかし、“黒い”ものを“白い”と書くことはできない。だから今回も編集長の手直しが入って、明らかなクズ商品もあくまで“グレー”なものとして紹介するにとどまった。ちょっと悔しいけど妥当な流れだと思う。

書こうと思ったらいくらでも書けるんだ、嘘は。自分が「変だな」と思っても、先方の言っていることを右から左で垂れ流し「とりあえず褒めておけば相手も満足だし、どうせ読者もわからないんだからオーケーオーケー」ってさ。

でも、それだけは勘弁してくれと思う。

今やってる雑誌は誌面も恐ろしくダサいし、オレにとっては興味も知識もない分野だ。残業や休日取材も多いから会社の偉い人々からも良く思われていない。出版業界全体での立ち位置もかなり端っこの方だろう。不満だらけだ。ここで「オーケーオーケー」と読者に対して平気で嘘をつけるようになってしまったら、オレは何にプライドを見出して仕事をすればいいのか完全に見失う。読者のためというよりも、むしろ自分のためにこの最後の一線だけは守り抜きたいと思っている。




[余談]
……思っている、とコブシを握り締めてプルプルしていると、ガゴーンと机を蹴る音が聞こえて副編集長が憤怒の形相。「なかがわぁ、てめえ、ここ(別のページ)のホームページアドレス間違ってるじゃねえか!」とのこと。もふー、やってもうた。それは嘘じゃなくて過失ってことでひとつ夜露死苦! と先方に謝りの電話&心の中で読者に謝罪。しかし、本当に人のこと“てめえ”って言うんだわ、うちの副編。



2005年04月26日(火) 原稿

インタビュー原稿をまるまる2本、書き直しを命じられる。別々の原稿を、別々の先輩に見せたのに、同じような注意を受けた。私はこの1年、何をやっていたのだろうと、情けなくて泣きそうになった。

文章に限らず、ラフでも写真のディレクションでも、何かを「構成」していく力が足りない。ここの日記もそうだが、勢いだけで押せるほど、仕事は甘くないということ。忘れないように、これから注意することを書いておく。



■文章を勢いで書いている→構成がバラバラ

話し手の言葉、ノリに引っ張られて、「この記事で書くべきことはなにか?」が見えていない。聞いてきた情報からこの記事で「読者は何を知りたいのか?」を選んで文字に起こす。



■しばしば主語、目的語が欠ける→口語的表現、唐突な表現が多い

自分は分かっている情報でも、読者にとっては始めて読む記事。伝えるときに補うべき言葉を考える。



■ありふれた言葉を何も考えずに使っている→文章が浅い印象に

「人と接する」「明るい人」「豊富」など、一見きれいだが結局誰も想像できないような、ありふれた表現を使いがち(特に語彙にこまったとき)。人と接するというのはその人にとってどういうことか、明るいとはどのような明るさなのかをインタビュー時にしっかり聞き込むこと。もっと泥臭い言葉で、事実の詰まった一文一文を積み重ねよ。(※事実や裏付けないなら、大げさな表現は×。引きがあることと言葉だけ大げさなことはちがう)



■誰でも知っている(想像が付く)情報を入れてしまう→引きがない

わざわざ取材に行っているのだから、「その人にしかない情報」「その店にしかない情報」を入れなければ書く意味がない。たとえばメイクアップアーティストが、たくさんアイシャドウを持っていることは誰でも知っている。だから「アイシャドウが豊富」と書いても何も言っていないのと同じ。読者が知りたいのは、たとえば「アイシャドウはどこで買うのか」といった、普段は聞く機会がない情報である。



■補

すべての取材で、質問票を用意する。

なるべくたくさんのインタビュー記事に目を通し、会話文と地の文をつなぐ語彙を増やす。(「**です」と○○さん、と○○だという、ばかりでは芸がない)



2005年04月25日(月) 今日は母からのメール

れいこさんへ

「こんばんは」 お疲れさま

日曜日は伊奈町の取材ごくろうさまでした。
悲惨な鉄道事故のニュ−スを見て、「平凡な日々が送れること」って
本当にありがたいと、つくづく感じました。

れいちゃんが、無事に毎日が送れることを祈っています。

今日、 
「いしかわこうじ展・わんこ+にゃんこ」
2005.4/28(thu)〜5/10(tue)10:00〜21:00
玉川高島屋s.c本館R階ル−フギャラリ− 03-3709-2222
のハガキが来ました。
後日ハガキは送りますが、予めお知らせしました。

今日、「無印」で、しわ加工したプリ−ツスカ−ト買って来たけれど、
多分、れいちゃんには「いらない」と言われるかもしれないので、
返品を前提に買いました。
「見るだけね」でいいよ。  グリ−ン系のチェックです。

連休の旅行は、気をつけてね。
安全第一で行って来て下さい。
                         ひさこ  



2005年04月18日(月) 父からのメール

実家にいたころ(今でもだが)父とはほとんど話さなかった。話しても、ごくごく日常的、事務的なことくらい。「リモコンとって」とか、そういうこと。私は無愛想な娘だ。でも、父が私のことを大好きなことはよく知っている。自慢の一人娘であることも知っている。大学入試でも就職活動でも、私が好き勝手やっているのことに興味があるのかないのか、口出しせずに好きなことをさせてくれた。

父は昨年定年退職をした。家で仕事のことを何も言わなかったから、私は彼が何をしていたのか知らない。地方公務員の教育局だから、おそらく、教員の給与計算などをしていたんだろう。その仕事にやりがいがあったのかなかったのか、それもよく知らない。そんなことは家で一度も口にしたことはない。父はただ、職場に行って帰ってきた。退職したら、何もすることがないと言い出すのではないかと思っていた。

ところが、「老後」を迎えた父は楽しそうだ。淡々と日々を過ごしている。それが特技なんだろう。母と二人でしょっちゅう旅行に行き、報告をしてくる。時刻表を調べるのと、写真が好きらしい。母は地図も時刻表も読めないから、けっこう助かっているんじゃないだろうか。

父がどんな文章を書くのかも知らなかった。ひとり暮らしを始めてから、少しずつメールをやりとりするようになった。私は父のメールが好きだ。文章が素直で、温かい。





4月18日

れいこさん こんばんわ
暑くなったり寒くなったり変わりやすい春の天気。

仕事は順調ですか。

どこへ行っても、きれいな花が満開です。
今日は、秩父・羊山公園の芝桜と皆野・美の山の桜を見てきました。
どこへ行っても、暇なジイ・バアがいっぱいです。(こちらも同じだけど)

愛知万博は、パビリオンの予約は ?

じゃあ また   おとうより    電話をネ





4月12日

れいこさん こんばんわ
暑くなったり寒くなったり 体温調節が大変だネ

先週の旅行の報告です。
金曜日は愛知万博をマルマル1日楽しみました。

グロ−バル・ハウスでマンモスを観て、長久手日本館、
名古屋市の「大地の塔」、三菱未来館、電力館、韓国館、
アメリカ館、瀬戸日本館、瀬戸愛知県館等
ゴンドラやリニアも乗りました。
トヨタ館や日立館は予約してないと大変かな 次回のお楽しみ

土曜日は、奈良県吉野山の桜見物  人の波のなかを右往左往
日曜日は、京都 醍醐寺の桜・平安神宮のシダレザクラ・
円山公園・八坂神社・清水寺の桜を見て、鈍行列車の旅でした。
とても有意義なたびだったよ。
 
以上  簡単な報告まで     おとう
  




3月17日

れいこさんへ
体調はその後いかがでしょうか。
私の胸の再検査の結果は、異常なしでした。安心してください。
老化現象により、背骨の一部が横に飛び出した部分が、
レントゲンに写ってしまったらしいのです。
だいぶ春めいて来て、花粉も大暴れしているネ。
花粉よ早く去れ。
それでは又。        ひさこ

明後日からの三連休は、仕事ですか。 ?
全部休めるといいね−。
じゃあね        おとう



2005年04月15日(金) まあどうでもいいメモ

■これはどうでもよくないね

FACT
ロッキング・オンを辞めた鹿野先生のサイト。
いずれは雑誌にしたいとか?



■oasis



oasisの新しいロゴ……
3D風らしい……
意味が分からない……
といったらりんちゃんに、
「おまえは修行が足りん!」と怒られた……



■NEW ORDER新譜

日本語詞の、聞いた?
意味が分かりません2。



■2週間くらい前の朝日新聞『be』(土曜版)

渡哲哉の趣味のところに「たき火」って書いてあった……
本当に意味が分からない……



■BECKの新譜

やばい、すっごいかっこいい。
ベストは『girl』。



■面白い雑誌

雑誌は「これは保存版になる」と思わないと買わなくなったんだが、ここ最近面白いのばっかでどんどん散財しちゃいました。

・『DTP WORLD』4月号(特大号)
別冊付録の、DTP&印刷ルールブックがすっごく便利。よくぞ作った!

・『InRed』
カップル特集。こういうなりふり構わない特集組む大人の雑誌って他にない気が。

・『coyote』
買った日は「サイゼリア」に寄って、ドリンクバーで粘りつつ読破しました。

・『oz magazine』
鎌倉&湘南特集。は、迷わず買っちゃう人。

・『BRUTUS』
好きな仕事してますか? 特集。面白いよー。全ての仕事に、「労働時間」「賃金」「休日」「楽しいこと」「辛いこと」のデータ入りなのがいい。最近人材系とかキャリア系とかのインタビュー(つまりお仕事について聞く)をしてみたいなと思ってきている。



花粉症少し改善されました。
また頑張って書きますので、お暇な時は遊びに来てくださいまし。



2005年04月11日(月) 会いたい人に会う

チエコの誕生日祝いで、家でぐだぐだ話した。

「ウルルン」の窪塚弟に向かって、「ぶさいく〜」とさんざん文句を言ったくせに、「慶応大学卒業の……」と徳光さんが言った瞬間眼の色が変わった。そういう二人です。

特別なことなんて話さないし、べたべた電話もしない。駅で、「また会うんだろう」と思って別れる。24歳。この人とももう7年。




2005年04月10日(日) 琥珀色

「1月になったら新年会しようね」と昨年約束したまま音信不通だった、前の彼にようやく会った。ハゲとデブが進行していた。

付き合っていた頃、私はこの人のことを分かろう、分かろうとして、「それってどういうこと?」という簡単な一言が出なかった。虚勢を張っていたのだろう。最近、素直に聞いたら答えてくれるし、質問したくらいで相手をばかにするような人ではないと気付いた。それから、話すのがとても楽しくなったと思う。

目を見ずにぽつりぽつりと話すので、こちらはずっと目を見ていた。あまりきれいで吸い込まれそうだ。琥珀色というのか、色素の薄い焦げ茶色。一点の濁りなく透き通っている。この人の心は澄んでいると分かる。



彼は昔から、「コンビニでおにぎりを買うことがだれかを傷つけているかもしれない”間違った”世界に僕らは生きている」ということを言い続けている。私はそのことを未だに実感できないままだ。

部屋の片づけをしていたら村上春樹の『アンダーグラウンド』が出てきたそうだ。「すっごいおもしろくてさ、掃除の途中なのに夢中で再読しちゃったよ」と苦笑いしていた。「今、再び読みかえしてみたら『アンダーグラウンド』は戦後日本が共有してきたひとつの価値観のお葬式、とむらいの本だったんだと気付いた。つまり『プロジェクトX』だったんだね、高校生の頃は分からなかったけれど」。

「『アンダーグラウンド』に出てくるサリンの被害者たちが「おかしい」と思い始めてから気分が悪くなって倒れるまでの時間差は、オウム事件(何が起こっているんだろう?)から9.11(これは絶対おかしいぞ!)までの時間差にそのまま当てはまる。こじつけっぽいかなあ」という。面白い。こういう、ひらめき系テーマの連結が、彼は本当にうまい。

被害者という言葉で思い出して、石牟礼道子の話をした。「石牟礼さんの小説に出てくるいわゆる”聞き書き”に見えるところって、実は石牟礼さんが考えて書いているんだって。被害者のセリフをだよ? ある意味とんでも本でしょ? でもね、それをアフリカ(の貧困などについて)の研究している子に話したら、「他者を表象する際の立場性について考えさせられた、っていうの。つまりね、彼らがどんなに第三世界の人の声を代弁しようとしても、その代弁にはどこか、我々、先進国側からの視点が入ってしまう、という壁にぶつかる。対して、石牟礼さんやり方は全く新しい可能性を示しているのではないかって」。「それって客観はないってことだよね」と彼はいう。「ひとつとして客観的な記事はない」ということを頭に置いて、いつも文章を書いているそうだ。

『苦海浄土』を貸してあげた。読んでくれるといいな、と思う。感想を聞いてみたい。



バナナは自信がないくせに自分の思うことを絶対に曲げないよね。最近はそのタガが外れて面白い人になってきたけど、とか、頭が良さそうに見せてるけどけっこうやばいよね、とか、欲望を抑圧しすぎ、とか、俺は砂糖を入れた卵焼きが好きなのを忘れちゃったの?とか色々言われた。一番昔から言われているのが、「君の話は何を言っているのか分からない」ということ。編集者としてそれは致命的でしょ、と説教される。「私の話が分からないっていうのサンバくんだけだよ、と反論したら、「みんな思ってても面倒くさいからいわないんだ。俺は言ってあげてるだけありがたいと思いなさい」と。



彼はとてもまじめだった。そしてとても弱くて、まっすぐで、音楽が好きな男の子だった。「俺は社会から外れている」と繰り返す彼を、私はとてもまっとうだと思った。

「最近ね、気付いたんだけど」小さい声で、思い出したように、いくつか自分のことを話してくれた。聞いているうちにぽろぽろぽろぽろ涙が出た。特別なことではない。人ときちんと話すという行為を、久しぶりにした気がしたのだ。



2005年04月09日(土) 花見






『坊ちゃんの時代』は、「明治の文豪」とまとめられてしまう文学者たちが、私と同じように日々(明治という時代、なんて大きなものではなく)を「生きていた」という当たり前の事実を教えてくれた、素晴らしい漫画だった。恋をして破れたり神経痛を病んだり、金に困ったりしている彼らの生の近景は、学校で覚えさせられた文学史とは全く違う文学の一側面を教えてくれた。

雑司ヶ谷霊園に行った。夏目漱石、森田草平、小泉八雲、金田一京助……漫画『坊ちゃんの時代』に登場する「有名人」たちがたくさん埋まっている。

管理事務所もらった案内図片手に、広い敷地内を散策する。漱石の墓はやたら立派で、墓石のまわりは塀(?)で囲われていた。比して、金田一京助の墓はうっかり通り過ぎてしまうほど小さくて、なんとなく、(とても勝手な解釈だが)好感が持てた。ここへ参る理由が何もない自分に、少し照れくさいなあ、と思いながら手を合わせる。墓にはさまざまな植物が植えてあった。さくらの木が1本立っていた。満開だった。その下で、散ってくる花びらをつかまえようと子どもたちが走り回っていた。白い肌に、きらきらと光が反射した。

喪服を着た集団に会い、初めて自分が墓にいることに気付いた。ここにいると、怖いことがないなあと思った。少なくとも、死ぬのは怖くない。





雑司ヶ谷へは、都電荒川線に乗っていく。一日乗車券(400円)を買って、終点の三ノ輪橋まで行こうと決めた。途中、何度も途中下車をする。車内は満員だった。この沿線には飛鳥山や荒川遊園地など、お花見の名所が多いらしい。





町屋では、野球のユニフォームをした少年3人が路地にいた。ベビースターラーメンとよっちゃんを食べながら、都電の線路に降りたりまた上がったりとスリリングな遊びをしている。春の風は夕焼けと一緒になって彼らを包む。

石田千『踏切趣味』に出てきた踏切を見たいと思って、交番のおまわりさんに尋ねたら、「踏切って何、結局君はどこに行きたいの?」とけげんな顔で聞き返される。「踏切です」「いや、だから、踏切を渡ってどこに行きたいかってこと」「踏切を見たいんです」。ようやく辿り着いた小さな踏切のそばには、同じエッセイにあった古本屋が建っていて、段ボールにただ雑然と本を詰め込み、路上で(つまりは青空古書店)売っているその店に、私は2時間も長居した。ほとんどが100円から300円なのに、いい本がたくさんあった。おじさんと猫が店番をしていた。近寄りがたい雰囲気だったので、おじさんからちょっと遠い位置にある段ボールばかり覗いていた。





満開の神田川の桜を見ながら、「面影橋」から家まで歩いた。オレンジ色の提灯が花弁を照らす。小さな橋の向こうに路地がある。



2005年04月06日(水) 3月のまとめ

仕事で九段下まで歩き、たまたま千鳥ケ淵を通った。お堀沿いの細い道を歩く。午後7時前、ライトアップされた桜が美しい。6分咲きも7分咲きも夜桜になれば変わらない。缶ビール片手にゆらゆらと歩くサラリーマンやOLさんとすれちがう。半分くらいのに、まだボートに乗っている人もいる。そこらへんのベンチでだらだら飲む人もいる。皆、会社が終わって優しい顔だ。

土曜日のことを考える。都電で雑司ヶ谷霊園に行こうか。





3月のまとめ

全体的に花粉症にやられ続けた。ほぼ毎日、鼻が詰まって目が覚めた。くしゃみがとまらず、頭痛までひどくなって会社を早退した。様々な面でやる気がうせ、暴飲暴食のみが続いた。活字(本と新聞)を読む量が減ってしまった。

3月に見た映画
『MOOG』
『デーモンラバー』
『ミリオンダラー・ベイビー』(試写)

3月によかった漫画
『坊ちゃんの時代』
『シガテラ』

3月の恋
元ラブリーと電話したとき「あのね」と話を切り出すと必ず
「え? 彼氏できた?」と聞かれた。
早く責任を逃れたいらしい。

反省点
反省も何もスギ花粉が悪い。

来月の目標
走り始めたいと思うのだが……



2005年04月02日(土) 無題

「やりがいのある仕事をしています」「文章を書くのが得意です、好きです」という内容をしばしば日記に書いているが、実は仕事について、自分について、少しも自信が持てずにいる。自分はとても中途半端だと思う。洋服が好きだけれどおしゃれなわけではない。本が好きだけれどあるレベル以上の学術書は、意味がよく分からない。映画は見るけれどマニアではない。一体、自分には何があるのだろうといつも考えながら過ごしている。

彼氏もいない。振られてばっかりだ。3年も彼がいないなんて、ちょとおかしいんじゃないか。お腹のあたりが太っていたり背が大きくて猫背だったり、人より鼻が低かったりすることだけが原因ではないはずだ。「そういう、自分に自信がないところがだめなんだよ」と昔はよく言われたから、最近は「かわいいね」と褒められたら「そんなことないよ」ではなく「ありがとう」と答えているし、太っても気にしないで楽しく食べて生きているつもりだ。それでも、最後の最後のところで、頭の隅の隅で「こんな私ですみません」と思ってしまうことがある。

上記のようなことを書いているウェブ日記を見つけるたびに、憤りを感じてきた。「大丈夫だよ」と慰めて欲しいんでしょ? ふざけんじゃないわよ、と思った。みんなそんなの前提なんだから、それでも日々過ごしているんだから、わざわざ書くなよ、と。でも今日は書いてしまった。慰めて欲しいのだろうか。

ひとりで一日家にいたから、余計なことを考えたのかもしれない。花粉症はひどくない日だった。


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