西方見聞録...マルコ

 

 

黄金の日々(2022)ゴールデンカムイ評 ネタばれ注意 - 2022年05月08日(日)

あれ、また1年近く開いてしまった。
日記じゃなくて年記だな。

この1年いろいろありました。昨夏の韓国と結んで行ったオンライン研修はすごく私にとって重要な出来事でした。今年は渡航してやりますよ。

それから2022年の初めにエルザ夫であるところの私の父が亡くなり、亡くなるまでの半月間に危篤呼び出しと正月の帰省と合わせて4回東京と往復したのでその車中で1本投稿論文が書きあがっちゃうという椿事が出来した。父の死はそれなりに切なくもあったけど、あっぱれな大往生だなあ〜と思った。あとちょっと実家の片づけで祖父や曽祖父の書いたものに触れる機会があってやっぱり私的には顔も知らない曽祖父と言う人に心惹かれた。真面目でそれなりに頭もいいけど、なんか思うように人生が進んでいかない感じでがむしゃらしちゃう焦燥的な感じとか。

さて何の話だっけ?そうそう今年のゴールデンウィークの出来事をね、書いとこうかな、と思って久しぶりに日記をあけたんですな。

とりあえず家の片づけとか掃除とか庭の草刈りとか自治体の会費集めとか(今年は会計)なんかをしつつ(ちなみに草刈と自治会仕事はあめでおさんがやったので私は応援だけした)科研の実績報告書を書いたり、職場の持ち帰り仕事したり、あと比叡山延暦寺の延暦寺会館に泊りがけで行ったり、家の近所の薬師寺や唐招提寺や山の辺の道を歩いたりそれなりに楽しく過ごしたんだけど、
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今回書きたいのはそれではなく「ゴールデンカムイ」なんですよ。

ヤングジャンプで連載されてた「ゴールデンカムイ」が最終回を迎えたとかでヤンジャンのアプリでゴールデンウィーク期間、全編無料公開されてたので、全314話一気読みしちゃいましたよ。ふう。

いやかなり時間をささげちゃいましたが、これは読んでみて大変に面白かったです。日本の帝国主義の末端で先住民の金塊めぐって大変に「西部劇」が行われるのですが描かれるアイヌコミュニティやアイヌの登場人物に注目して読みました。以前アフリカを舞台にした映画群「ナイロビの蜂」とか「ブラッドダイヤモンド」でアフリカが背景だけど個性的な欲望を持ったアフリカ人はえがかれてない!で白人ばっかりが描かれている、き〜!と怒ってた自分といまもあんまりかわってないなあ、と思いつつ。

和人(シサム)側の人々の因縁はこれでもかと描かれるのに、アイヌ側の登場人物はわりと造詣が浅い。主人公の一人のアシリパ(リは小さいリ)さんもアイヌというよりはポーランドの出自を持つカラフト系先住民でパルチザンの経歴を持った父ウィルクの教育を受けて普通のアイヌの少女ではない。元パルチザンで日本軍工兵の経験を持つキラロンケも、ネイティブアイヌではない。

謎のインカラマッ(ラは小さいラ)と青年キラウシがネイティブアイヌの人々なんだけど彼らの行動原理とかもうちょっと掘り下げてくれたらな、と思った。結局インカラマッは鶴見中尉の手下だったの?

私が一番熱く応援したのはアイヌ出身の日本兵で八甲田の遭難者捜索に当たった有古力松一等兵なんですが、有古の父やウィルク達7人のアイヌの族長たちの話を鶴見中尉の信奉者の半分でもいいからページを割いて書いてくれるともっと嬉しかったかもしれません。

(いや連載物であれだけ調べてあれば、それはまあ作者の熱量には頭が下がるのではあるけれど)

この話で、私が「なるほど」と思ったのはアシリパさんとともに非アイヌの主人公杉元や準主人公のもとマタギの谷垣がラストでアイヌとして生きることを選んでいき、出自は違っても、アイヌとなる予定の者たちがこの活劇をけん引したのだとラストで示されるところだった。ネイティブであろうとなかろうと心と体と自らの未来の所在をアイヌのコミュニティに選ぶってのは重要な要素かもと思う。ウィルクが娘(アシリパ)に戦い方を教え、戦闘を念頭にした簒奪的・支配的にまなざしたアイヌの未来とも異なる。杉元が平和に暮らすためにアイヌでの人生を選んでいるところが。

 だがしかし、20世紀初頭そういう選択肢は実在したのか?そして20世紀半ばまでの日本でアイヌがどういう道をたどったのかなど考えるとこの漫画のラストのように「大団円」と明るい気持ちで本を(アプリだけど)閉じるのは難しそうだな、と思った。

歴史を語るのは誰なのか、

語られた他者の言葉は誰が文字にするのか、

さきごろベトナム系の青少年のライフストーリーから論文書いた私にもいろいろとブーメランの帰ってくる主題で、マイノリティの語りを私たちはいかに聞くのか、私自身の問いに続く物語でもあったのでした。

314話、読んで悔いなし。

参考文献:FACEBOOKで友人がシェアしてたゴールデンカムイ評
勉強になります。

しかしキラロンケより私は有古推しだな。




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