トーキョー・ハッピーデイズ
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2000年12月31日(日)  Last day of the century

07:30
 朝食。
 昨日から正月休み。
 昨日は何もする気になれず、だらだらしてしまったので、今日は働かなくてはならなかった。

08:30
 お風呂、トイレ、台所の掃除。
 本棚のほこりを払う。
 たまった洗濯物の処理。

 1部屋だからそれほどかからず、午前中で大掃除はおしまい。
 年賀状を書く。
 去年届いた年賀状なんかを見てると、本当に年賀状だけの友達もいるなと実感する。

14:00
 駅前の商店街に買い物に出かける。
 思ったより人が少ない。
 もうみんな買い物などとっくに済ませたんだろう。
 それとも海外かな。
 明日食べるお餅と鏡餅と蕎麦とかまぼこと海老と、ちょっと奮発して数の子。
 その他今夜のすきやきに入れるものと、お雑煮その他の用意。
 八海山、発見。買っちゃお。

16:00
 紺野くんは夕方まで仕事で、その後こっちに来る。
 下駄箱の上に鏡餅とみかんを飾ったら、それだけで部屋が正月っぽくなった。
 数の子を塩抜きしたり、蕎麦の出し汁を作ったり、人参の型抜きに没頭したり、かまぼこや椎茸の飾り切りに凝ってみたり。
 田作りはちょっと長く火にかけたために焦げた感じになった。あまりおいしくない。
 今日はこの一年で一番料理してる気がする。

18:00
 紺野くんが来た。
 一緒に近くのお風呂屋さんへ行く。
 久しぶりに広いお風呂でゆっくりあったまる。

19:00
 すき焼き。
 この間に引き続き鍋ばっかり(笑)。
 でも楽なんだよね。
 何もしなくていいし。
 テレビで紅白がやっている。
 今年はピンクレディが出ると聞いた。
 コドモの頃、よく踊ったんだよね。

21:00
 熱燗がおいしい。
 肴はスルメ。失敗した田作り。

23:30
 年越し蕎麦を食べる。
 紺野くんが海老を天ぷらにしてくれた。
 今年最後の食事。

「初詣、行こうか」
「うん。でも今混んでるよ。私、去年大晦日に明治神宮に行ったの。1時間半くらい並んで、もーディズニーランドみたいな気分だったよ。神様に到達するのが大変なんだもん。ちょっとずらして行こうよ」
「そーだね」
「どこ行く? 明治神宮はもういいや。明治神宮といえば、おみくじがつまらないんだよね」
「行ったことないな。つまらないってどうつまらないの?」
「大吉とか凶とかなくて、明治天皇の歌とかが書かれてるの」
「それだけ?」
「それだけ。なんか教訓めいたことが書いてあったかな」
「へー」
「そうだ、神田明神はおもしろいんだよ。生まれる子供の性別まで書いてあるの。私今年は女の子を産むはずだったんだ」
「あはは。何それ」
「あっ。大変。紺野くん、1分前」
「ホントだ」
 テレビでカウントダウンがはじまっていた。
 私たちはおしゃべりをやめて、テレビに映る時計の針に見入った。
 20……15……6、5、4、3、2、1。
「あけましておめでとうございまーす」
「今年もよろしくー」
 私たちは挨拶を交わして、笑った。

 本当に。今年もよろしくね、紺野くん。

2000年12月29日(金)  大掃除&忘年会

 職場の机の周りを片付ける。
 ちょっと机をずらすと、なくしたはずのボールペンやらはさみやらが出てくる。
 片付けの合間にも時折仕事が舞い込み、対応しながら掃除する。
 もう後は来年に持ち越すことに決めた。
 終わらないものは終わらないのだ、と開き直る。

 午後5時からは、近くの居酒屋で忘年会。

 毎度の事ながら、酔うと女子社員に触りたがるセクハラ親父は、藤山課長。
 今も話が盛り上がるついでに隣に座った静ちゃんの足をたたいたりしていた。
 静ちゃんは処理に困って、向かいにいる私に目で救いを求める。
 困ったもんだ。
「課長、そういうことしてるといつか女子社員全員から告訴されますよ」
「ん? なんだ」
「それはセクハラです」
「おお、こわ。こわいなあ、浅井くんは。なあ、岡本くん。君も苦労するな。わっはっは」
 苦労するのはこっちだわい。
「静ちゃん、こっちおいで」
「センパーイ」
 私の隣を無理に空けて、静ちゃんを入れる。
「横に座っちゃダメって言ったでしょ?」
「だって他に席が無かったんですー。助かりましたぁ」
 村田さんはよーく知っているから、ずっと離れたところで一人手酌なんかして飲んでいる。
 やっぱベテランは違う。
 私もベテランの類なのか。
 なんか変なことばかりキャリアがつくなあ。

2000年12月28日(木)  仕事納め

 今日は仕事納め。
 明日も出勤だけど、メインは大掃除だから、ちゃんと仕事をするのは今年は今日が最後。

 経理のマキコちゃんがやってきた。
 入社2年目にして社内での地位は相当高いキレ者だ。
「浅井さん、伝票出しました?」
「あ"。まだ」
「今月分は今日までですよ」
「うう。わかってるよー。……明日じゃダメ?」
「ダメです」
「どうしても?」
「自腹切るつもりなら構いませんけどね」
 鬼だ……。

「先月の集計、出てねーぞ。年越すつもりじゃないだろうな」
と課長。
「た、ただ今作成中です」
 私だってこんなの年越させたくない。

「浅井さーん。すみません。これ、なんかまちがえたようです」
 新人、岡本。聞くのがコワイ一言。
「何のことですか?」
「この印のところをこっちの表に入れるんですよね?」
「そうです」
「間違えてこっちを入れてしまいました」
「……大変だろうけど、やり直してくださいね」
「はい。どうもすみません」
 それくらいで済んで、よかった。ほっ。

 あー。仕事が終わらないー。
 私これでホントに年越せるのかな。大いに不安。

2000年12月26日(火)  25日の夜

 仕事が終わって電話をしたら、紺野くんはまだウチにいた。
 一日寝ていたらしい。
 鍋をしようと言うので、スーパーで買い物をして帰った。
 
 紺野くんは緑色のカーディガンを着ていた。
 出掛けに私も寝ている彼の枕元にプレゼントを置いておいたのだ。
 さすがに靴下には入れなかったけどね。(^_^;)

 水炊き。
 鶏肉の旨みがよく出ておいしい。
 二人なのでノルマが多い。必死で食べる。

「今年分の残業は終わった?」
「うん、たぶんね。」
「たぶん? 大体いつまで仕事なの?」
「28日。でも31日は出勤」
「何それ。マジで? 今更2000年問題とか関係ないでしょ?」
「うん。今作ってるプログラムの動作確認をするんだけど、会社が30日まで営業してるわけ。で、誰もいない31日にしようってことになって」
「30日土曜なんだから、優先してくれればいいのにね」
「そういうわけにもいかないんだよ」
「はー。なんか、かわいそう」
「同情してくれてありがとう」
「たんとお食べ。ちゃんとエネルギーを蓄えとかないとね。ほら、まだ肉あるよ♪」
「……もう腹いっぱいなんだろ」
「ばれた?」

2000年12月25日(月)  Santa Claus is comin' to my house

 よく寝た。
 目覚ましが鳴るまで、一度も目は覚めなかったし、夢も見なかった。

 部屋の空気は冷えている。
 布団から出るの、いやだなあ。
 このままぬくぬくしていたい。

 目覚まし時計を頭の上に置こうとして、伸ばした手が何かに触った。
 ん? なんだろ。
 寝返りをうってそれをつかむ。
 その時初めて、隣に紺野くんが寝ているのに気付いた。

 昨日洗濯して干した私の靴下。
 それに四角い箱が押しこんである。
 指を突っ込んで引っ張り出す。

 こんなもん無理に入れて、靴下の方は伸びちゃってるよー。
 よりによって新しいのを使ってくれちゃって。(:_;)

 靴下の中の包みに入っていたのは、ぺたんと座った格好の男の子がスプーンを持っているピンク色したプラスチックの人形。
 もとい、これはエッグスタンドだ。
 帽子の上に小さな穴が開いていて、ここに塩を入れるらしい。
 帽子をどけるとそこに卵を入れられる。
 めちゃめちゃかわいい。
 私の好きなALESSIの小物だ。

 私は思わず声を上げて笑った。
 紺野くんは、よっぽど疲れているのか寝不足のためか、ぴくりともせず死んだように眠っている。
 
 ありがと。紺野くん。
 忙しい中で私のために時間を作ってプレゼントを選んでくれたことが何よりうれしいと思った。




music:うーへいさん   

2000年12月24日(日)  Christmas Eve?

 明子と朝までカラオケ。
 始発で明子は帰っていった。
 その後私は家に帰って眠って、11時に目を覚ました。

 洗濯。掃除。

 電話が鳴った。
「もしもし」
「あれ、あんたいたの」
「ああ、お母さん」
「一人?」
「うん。なんで?」
「クリスマスイブでしょ、今日。どこも行かないの?」
「日曜だもん。昨日祝ったからもういいよ」
「あっそー。淋しいわね」
「もーうるさい。何の用?」
「あんたに郵便物が来てるけどこっちに戻るなら転送しなくてもいいわね?」
「郵便物?」
「なんかの雑誌みたい」
「DMでしょ。いいよそのままで」
「それで、いつ帰るの?」
「29日まで仕事だから、掃除とかいろいろ片付けて、1日かな」
「そ。じゃ待ってるから」
「うん。じゃーね」

 16時を過ぎていた。
 携帯の着信、なし。
 メールも、なし。

 圏外なのか電源を切っているのか、つながらない紺野くんの携帯に、「生きてる?」とメールを送る。

 夕食はご飯とお味噌汁。鯵の開きを焼いた。
 ケーキでも食べようかと一瞬思ったけど、買ったばかりのあのワンピースを無駄にしないためにもやめておく。

 去年はたしかイブは平日で、残業をしていた。
 実家にいたから早く帰るのもなんだかイヤで、無理やり仕事を作っていたような気がする。
 今年も結局一人か。
 キリスト教の信者でもないから別にどうだっていいんだけど。

 テレビで "パトリオットゲーム" をやっていたのでそれを見たあと、お風呂に入る。
 今日はゆずの香り。

 ちょっとだけネットサーフィンをして、眠りにつく。
 ラジオを聞きながら。
 クリスマスソング特集だった。
  "Winter Wonderland" を聴いたところまでは覚えている。

 何事もない、クリスマスイブ。
 ま、こんなもんか。

2000年12月23日(土)  X'mas Party

 例によって土曜出勤。
 祝日が土曜だなんて、許せない。
 私の休みを返せ!
 思わず来年のカレンダーをチェック。
 するとショッキングな事実が。
 5月5日、ゴールデンウィークのクライマックスともいえるこの日は土曜日。
 他にも9月15日。11月3日。
 なんてことだ。
 この不満はどこにぶつければいいんだろう。

 紺野くんも今日は仕事で、会えない。

 このイヤな発見を明子にメールで知らせたら、すぐに携帯が鳴った。
「今日出社してんの?」
「本日も通常営業しておりますー」
「私も。でも紺野くんとデートすんじゃないの?」
「あっちも仕事ー。どうも泊まりらしくてさ。もうイヤになるよね。世の中クリスマスなのに」
「じゃあ、映画でもどう?“オーロラの彼方へ”、見ようと思ってんだけど」
「行くー。何時にする?」
「7時20分の回があるから6時30分に新宿でどう?」
「OKOK。じゃ、6時30分にいつものとこで」

 “オーロラの彼方へ”。
 思ってたよりずっとよかった。
 子どもの時に父親を亡くして成長したニューヨークの警察官が、偶然無線で、生きている頃の父親と時を越えて交信できてしまう、という摩訶不思議な話。
 設定には驚いたけど、感動する。
 隣で明子が密かに涙を拭いていた。

 映画の後、映画館の近くにある焼き鳥の店に入った。
 いつものようにイタリアンレストランに行く気にはならなかった。
 きっとカップルだらけだと思って。
「ジュンはきっと紺野くんとデートだと思って、連絡しないつもりだったんだ」
「仕事はクリスマス関係ないからねー。あんまり私自身、盛り上がってないからいいんだけど」
「紺野くん、泊まりってことは、明日もダメなんだ?」
「たぶんね。先週もろくに休んでないし、かわいそうだよね」
「彼も忙しいんだねー」
「みたい。そういえば今月、ほとんどまともに顔合わせてないよ」
「あらあら。大丈夫なの?」
「うーん。まあ電話は結構まめにしてるからね」
「そっか。じゃあいいか」

 熱燗登場。
 お互いにお酌し合って、クリスマスに乾杯。
「ちょっとどうするー。日本酒だよ。こんな日に」
「ねー。そしてディナーは焼き鳥」
「相手は女だし」
「やばいかな」
「やばいよ」

「……結局どうすんの、名古屋の彼」
「実は先週ダメになった」
「え。そうなの?」
「うん。ちゃんと会って、話してきた」
「向こうから言われたの?」
「お互いにわかってたんだ。このままじゃダメだって。なんか結局もう気持ちも離れちゃってたし」
「……年も押し迫るこの時期に」
「しょーがないっしょ。来年に持ち越したくないしさ」
「それはそうだね」
「これでよかったんだよ」
 自分自身に納得させるようにつぶやいた明子の姿が、去年の自分とダブる。
 前の彼と別れて一人になった時、私は既にどうしようもないのにしばらく迷っていた。
 別れるという選択は正しかったのか。
 別れるべきではなかったんじゃないのか。

 私は努めて明るく言った。
「じゃあ、今日はオールいっちゃう?」
「マジで?」
「たまにはいいんじゃないの?」
「いいね。久しぶりにカラオケでも行っとく?」
「行っとこ行っとこ」
「もうね、来年はオールとかできないと思うよ。体力的に」
「ホント。今が限界だよね」

 飲んだ後、終電で明子とウチの近所のカラオケに向かう。
 山手線の電車から、新宿高島屋の前に並んだオーナメントの光が見えた。
 先月見たときはそれほど心を動かされなかったけど、今見るとやっぱりキレイ。
 紺野くんと一緒に見たいな。とちらりと思った。

2000年12月22日(金)  Christmas Shopping

 明日どうせ出社するので、今日は早く上がって新宿に買い物に寄った。
 やっぱりクリスマス前の金曜日は混み合っていた。
 先週、いつも服を買いに寄る店からハガキが来ていたので、今日も寄ってみた。

 クリスマスだし、頑張った自分へご褒美のつもりで、美里の結婚式に着ていくパーティ服を買う。
 ハガキを見せたら、思いがけず3割引になって得した気分。
 黒いワンピース。ラインがきれいで、一目で気に入った。
 ……もうこれでこれ以上太れない。
 甘いものは控えよう。

 紺野くんにプレゼント。
 いつも同じ青いセーターばかり着ているから、深い緑色のウールのカーディガンを買った。
 厚手のもので、ジャケットとしても使える。

 あとはかわいいヘアピンやきれいな色のマニキュアや、こまごましたものを買って、軽く夕食を食べて、10時に帰宅。

2000年12月20日(水)  ボーナス

 今日、上司とボーナスの査定で面接。
 一応私のことはちゃんと評価してくれていた。ホッ。
 去年よりは期待できそうだけど、「不況だからね」という上司の一言で大体予測。
 去年、学生の時の男友達は70万もらった、と言っていた。
 今時そんなのウラヤマシイ。
 男と女で違いがあるにしても、ウチはそんなに気前よくはない。
 去年は給料1ヶ月分にも満たなかったところが、今年は1ヶ月分+ちょっとといったところか。
 でも、もらえるものは何だってありがたくイタダキマス。
 これで来年は海外旅行行けるかな。

2000年12月19日(火)  2001年年賀状

 帰りにコンビニで年賀状の注文をした。
 明日で発注が終わりだった。危ないところだった。
 龍の次がヘビなんて、同じようなものが並んでるもんだな、と思いつつ、ヘビのイラストを選んだ。
 年賀状って前は結構いろいろこだわってた気がするけど、今となってはもうなんでもいい気分。
 こんなことじゃいけない?

2000年12月17日(日)  休息日

 昨日も出社して、今日はもう何もする気になれなくて、一日ゴロゴロ。
 ちょっと風邪をもらってきたみたいで、喉の奥が乾く。
 ああ、大掃除もしないと。
 押入もちゃんと整理したいし、あっちの棚はホコリが積もってる……。
 29日まで仕事だし、30日にやるしかないな。

 この間の紺野くんじゃないけど、朝から食パン一枚とみかんしか食べないままで夜を迎えた。
 お腹空かないわけじゃないんだけど、動くのがイヤ。
 だらけきってる……。
 紺野くん来てくれないかな。なんて、便利にしちゃダメだよねー。
 (今日も彼は仕事らしい)

2000年12月15日(金)  年賀状

 お客さんに出す年賀状が支給された。
 もうそんな時期。
 いやだなあ。
 仕事山積みなのに、これで年越せるのかな。……不安だ。

 自分の年賀状は、どうしよう。
 今年は印刷頼んじゃおうかな。
 去年みたいに自宅でパソコンで作るなんてできそうもない。

2000年12月14日(木)  美里へのクリスマスカード

Merry Christmas and a Happy New Year


美里が結婚を決めたことが今年のトップニュース、かな。
とにかく、いい人と出会えてよかったよね。
今度会わせてね!

私は今年も何事もなく無事過ぎ去るようでホッとしています。
来年は26になるし、少しは大人にならないとね。

2001年が美里にとってよい年になりますように。

2000年12月13日(水)  美里からのクリスマスカード

I heartily wish you
a merry Christmas and a happy life
Through the New Year!


今年は仕事では大きなことを任されるようになったし、私生活では結婚を一大決心(?)し、私にとっては忘れられない一年になりました。
ジュンはどうだった?
来年もよろしくお願いしまーす!

2000年12月12日(火)  20世紀最後の満月

 寒い。
 たぶん、この冬一番ってくらい、冷えている。
 帰りの電車で座ることができて居眠りをしたから余計に外の寒さが身にしみた。
 マフラーに口から下をしっかりと埋め、両手はコートのポケットに。
 駅から走って家に帰る。
 鍵を開けて中に入った途端、コートのポケットの中でケータイが鳴った。
 <ユーモレスク>は紺野くんの着メロ。
 靴を脱ぎ捨てながら取る。
「もしもし」
「月、見た?」
「ううん」
「20世紀最後の満月だよ」
「嘘。ホントに?」
 寒いのも忘れて窓を開けてベランダに出る。
 空の高いところに月が円く白く輝いていた。
「そっか。20世紀も終わりなんだね」
「うん」
「……仕事終わったの?」
「まだまだ。これから本腰入れてかかるとこ」
「大変だね。お疲れサマ」
「そっちは?」
「今帰ったとこ」
「お疲れ」
「じゃ頑張ってね」
「うん」
 教えてくれてありがとう。
 空を見上げることも忘れていたよ。

2000年12月11日(月)  そしてまた怒涛の月曜日

 うーん、師走。
 どこもかしこも忙しいね。
 でも昨日ゆっくり休んだためか、まだ気分的に余裕がある。
 忙しい時こそ、焦らずに、気楽にいきたいものだ。

「ちょっと何やってるの。どういうつもり?」
 隣の部署から、ヒステリックな怒鳴り声がパーティションを飛び越えてきた。(というよりは金切り声か)
 お隣は女性ばかり六人のマーケティングリサーチ。
 チーフも勤続年数の長いやり手の女性。
 でも感情的になりすぎるのがタマに傷。
「すみません。こんなことになると思わなくて……」
「わかりそうなものじゃない。こんなこと予測できなくてどうするの。私はあなたを信頼してお願いしていたのに――」
 ……以下、続く。
 かわいそうに。
 被害者は今年入社した新人の女のコらしい。

 ああはなりたくないよなー。
 ミスしたからって頭ごなしにしかりつけたりしたらやる気なくすだけだと思うんだけど。
 私だったら、本人が反省してるんなら、言うべきこと以外言わない。
 ミスした本人が一番ショックなんだから。

2000年12月10日(日)  至福の時

 今日はお昼まで寝ていた。
 睡眠不足もこれで解消。
 寝ようと思えばいくらでも寝ていられる自分がコワイ。

 夕食の後、お風呂に長くつかる。
 海藻パックでお肌に潤い。
 疲れからか近頃肌荒れが出てきている。
 ここでしっかり回復を図らないとね。

 風呂上りには久しぶりに爪のお手入れ。
 ベージュ系のピンク色。前に明子に海外からのお土産でもらったマニキュア。
 ちょっとした緊張感。
 丁寧に、丁寧に。
 はみださず。むらにならないように。

 才能あるかな。きれいに塗れました。
 乾くまではただおとなしくテレビを眺めていること。
 クッションに体をまかせて、ゆったり。
 いやー、幸せだね。

2000年12月09日(土)  土曜出勤

 なんだかんだで仕事が山積みで、本日出勤と相成った。

 休みに出てくるというのは抵抗があるものの、土曜の方が電話や来客に邪魔されないで自分のペースで仕事ができる。
 時々電話してくる無粋者もいるけど。
「営業の○○さんに注文をお願いしたいんですが」
 ……知らんって。
 土日は営業日でないことを丁重に申し上げ、月曜にかけるように仕向ける。

 やっぱり効率がいい。普段の1/2くらいのスピードで仕事が片付いた。

 もう決めた。しばらく土曜出勤覚悟で新人育成に専念しよう。
 早く慣れて働いてもらわないとね。

2000年12月08日(金)  Lunch Time

 久しぶりに村田さんと二人でランチ。
 駅の裏の小さいレストランに入ってみた。
「浅井さんは、入社して何年になるんだった?」
「4年目です」
 デザートのシフォンケーキを頬張る。
 おいしい。
 料理もよかったし値段も手頃だ。
 今度静ちゃんにも教えてあげよう。
「4年かー。もうそんなになるんだねー」
「実はそんなになるんですよ」
「私は9年だよ。もうお局さんの領域でしょ?」
と村田さんは笑う。
 yesともnoとも言えないで私が黙っていると、
「辞めたいと思うことない?」
「ありますよ。もう毎日」
「私もね、ずっと思ってたの。“こんな会社、絶対辞めてやる”って。特に入社3、4年目くらいの頃。でも結局辞めないで今までいるんだからわからないよね」
「今はどうなんですか? 辞めるつもりでいるんですか」
「うーん、どうだろ。もうそろそろあきらめ入ってるかな。この不況で、30過ぎた女を今更採用してくれる会社もないだろうし」
 そっか。
 村田さんも辞めたいと思ったことはあるんだ。
 私だけじゃないってこと。
 仮に辞めたとしても、どうしようという目的は今のところ思いつかないんだけど。

2000年12月07日(木)  work too hard

 もう、イヤ。
 帰らせてー。

 誰もいない。
 一人で居残り。

 なんでこんな残業ばっかり……。
 絶対こんなとこ、辞めてやる!

2000年12月06日(水)  my シェフ

 日々残業。少々うんざり。
 11時近くなってやっと帰宅。
 夕食もまだで、コンビニで買っていこうか食べずに済まそうか迷っていたら、部屋の明かりが見えた。
 あれ、もしかして。
「おかえりー」
 ドアを開けると、足を投げ出してテレビを見ていた紺野くんが振り返った。
「あれー。来てたの」
「来るって言ったじゃん」
「そうだっけ……」
「メシ食った? ピラフあるよ」
「作ったの!?」
 台所に、ピラフの入ったお皿があった。
 感動。
「きゃー。紺野くん、ありがとうー」
 私は思わず紺野くんの背中に抱きつく。
「帰ってきたらごはんがあるなんて、ステキ。幸せー」
「なんかさー、メシ作った時しか感謝されない気がするんだけど」
「えー。そんなことないよう」
 食事作ってくれることに対しては特に感謝してるだけで(笑)。

2000年12月05日(火)  busybusy

 忙しい。
 来年度の予算取りやスケジュールを組むのが大詰め。
 今週中に資料を提出しなくてはならない。

 この時期に新人がつくということがどういうことか、今日実感としてわかった。
 なんでもかんでも一から説明しなくてはならない。
 どれだけ自分の仕事があっても、面倒でも、ちゃんと指示しないと手が空いてしまう。
「次何やったらいいですか?」
「これどうしますか?」
「伝票って、どこにありますか?」

 コドモの頃育てたインコの赤ちゃんの餌付けを思わせる質問攻撃。

 彼も申し訳なさそうにするけど、1分も惜しい時に、これはかなり負担。
 私もそうやってここまで来たんだと思うと、先輩や上司を尊敬する。

 今また彼に与えた一つの仕事が終わり、さて次は何を……と思った時、ちらっと時計を見たらもう6時を過ぎていた。
「じゃ、今日はこれで上がっちゃってください」
「え、でも。僕、時間は大丈夫ですよ」
「最初からそんなに頑張らなくてもいいですよ。慣れないうちは疲れるし。今日お願いする仕事がもうないんで、気にしないで下さい」
「そうですか。じゃあお先に上がります」
「お疲れ様です」

 ――無理やり帰らせちゃった。
 実は仕事なら山ほどある。
 でも教えるよりやっちゃった方が早いんだな。
 質問攻めに合わないで済むし。
 本当は教えなきゃいけないんだけど、そのうちそのうち。

2000年12月04日(月)  ニューフェイス

 今日から30代半ばの男の人が私の下についた。
 ここに来る前は某有名洋菓子メーカーで営業をしていたという。
 畑違いとはいえ私よりキャリアもあるのに、腰が低くて私をちゃんと立てる。
 転職って大変だなと他人事ながら思った。
 それまで積み重ねたキャリアを捨ててゼロからやり直すなんて、私にできるだろうか。
 30過ぎてから、まだ学生みたいな20代のコに使われるって、どんな気分だろう。


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