久々にお色気っぽい文を更新。
ここのところ、ピュア成分多目の文ばかり書いていたので(ハイ嘘ー) 仕上げるまで、たいそうな時間がかかりました。
だって、これってば。 Yコさんへの風邪治癒祈願文だったのです、よ?(言わなきゃいいのに・・・)
しかも昨年12月初旬のね・・・orz ギャボー イマハ イッタイ ナンガツデスカ
文の始まりをみれば、そんなことは一目瞭然、解りますね・・・。 ハハハハ。 直そうかと思いましたが、潔くそのままです。
あまりにも遅くなったせいで、Yコさんの風邪は治ってしm(痛いのでみなまで言うな) しかしその後、Yコさんがまた風邪を召して、萌え薬としてはイケル状況になったんですけれども・・・。 結果、それにも間に合わず(嗚呼・・・) 最終的に、現在を迎えるという、痛い結果になったわけですネ。
ま、そんなこんなで。 忘れ去られた今日この頃の、本日アップと相成りました。 しかし、焦らしプレイすぎた反省として、少しイロをつけて、文を増量しました。 (携帯で間違って送った時のと比べてもらえると、解るかと思われます、Yコさん。そして、エロス分も増量したつもりなんですけど、あんまり代わり映えしまs・・・遮断)
でも、ここで負けじと。 プラスαする悪足掻き全開です。
過日。 コレモ ハルカ カナタ イスカンダル デスガ 絵茶にて、Tまさんと「お互い精進しよう!まずはソフトキティク攻略から!」と語り合ったあの日のことを思い出し。 そんな雰囲気も混ぜ込んでみました。
BUT。 色んな策を講じてみても、不発っッポイ☆ ←痛々しい開き直り ウワァ!痛い!!(笑) Tまさん、ただのセクハラになってしまいましたが。 これってキティクに含まれますか? 却下ですか。 そうですか。
ハ イ 、 攻 略 不 成 功 ・ ・ ・ orz ドンマイケル、ジブン!
えー。 Yコさんに、Tまさん。 ごめんなさい。 もっと精進するので、ご容赦下されたく・・・((orz
一輪の可憐な山茶花を差し出しつつ「今はこれが精一杯」と囁きます。
アッハッハッハー。 でも、楽しかったのもまた事実(笑)
「うー・・・ヤバイ・・・」 トグサは首を竦めると、着古したダウンジャケットの前を掻き合わせた。 擦り切れた袖口は、革手袋に隠されて見えない。 相棒のバトーはもしもの時の事を考えて、手袋するのだけはヤメロと口を酸っぱくしてお小言を言ったが、トグサは聞き入れなかった。 寒さに手がかじかむ事のほうが自分にとっては危険だと思ったからだ。 それに、使い慣れた革手袋をして、何があっても速やかにマテバを抜いて撃つことが可能なようにしてあるのだから、文句はあるまいと思っての事でもあった。 「あー…まじでヤバイ…」 トグサはもう一度、先程と同じ言葉を口にした。
季節は十二月を迎え、クリスマスや年末が迫って来た頃合。 新浜にも寒さが舞い降り、日々、冬色を濃くしていた。 それに呼応するように、巷には急性胃腸炎などを誘発する悪性の風邪もハヤリだして、連日ニュースになっていた。 義体化が当たり前の時代でも、風邪というものは流行する。 病はいつの世にも蔓延する道理だ。 何故なら、義体化したサイボーグだけがこの世にいる訳ではないし。 生身のままの人も多い。 それに。 全身義体化ならいざ知らず、内臓などを残したり、一部分の義体化しかしていない生身の部分を多く持つ者達もいる訳で。 風邪から、病からは、逃れようもないと言う事であろう。
「何がヤバイって?トグサ」 耳元でいきなり響いた相棒の低音に、トグサは飛び上がった。 「ッ・・・バトー・・・」 「ぼーっとしてっと、奴の動きを見落とすぞ」 人目に付かないよう、路地裏に身を潜めていたトグサは、意地の悪い登場の仕方をしたバトーを睨み上げた。 表情を表さないはずの義眼が、からかう様な笑みを浮かべている。 「そんなドジ、踏むかよ」 トグサはむっとしながらも、すぐに視線と意識を元の位置に戻した。
視線の先にいるのは一人の男。 現在、公安9課が追っている事件に係わっている、と推測される男だ。 その二十四時間行確をトグサとバトーは命じられており、三日前からその任務に就いている。
今日は早朝から動き出した男のせいで、二人は朝飯を食いはぐれた。 義体化率の低い、ほぼ生身のトグサを気遣ったのか。 バトーがふらりと姿を消したのが数分前で。 そして今、悪戯でもするかの様に、トグサの背後に戻ってきていた。 「ほれ、コーヒー。食いモンはもう暫く待て」 近くの自販機ででも買ってきたのだろう、その手には缶コーヒーが二本、握られていた。 「サンキュー、バトー。これで充分だ」 目の前で振られた一本をトグサは皮手袋でガードされた手を伸ばして受け取った。 バトーはそれを見ながら、自分の分の缶コーヒーに早速、口をつける。 それから、建物の壁に肩を預けて立つと、トグサの視線の先に目を向けた。 「で?何がヤバイって?」 先程の言葉に戻って問うバトーに男の見張りを任せ、トグサは右の手袋を外し、ポケットに突っ込むとプルタブに指をかけた。 プシッという小気味のいい音、次いでコーヒーの香ばしい匂いが鼻腔を擽る。 「・・・あ?ああ、風邪ひいたかもっと思ってさ」 なんだか寒気がすんだよ、そう言いながら、トグサは美味そうにコーヒーを飲んだ。 ”この一杯がないと生きてられん”と日頃から口にしているコーヒー狂の生身を見下ろして、バトーが呆れたように眉間を寄せた。 「っとに、生身はヤワだなあ」 「ヤワなんじゃねえ、繊細なんだよ、生身は!」 コーヒーをわざわざ買ってきてくれた相棒の優しさをあっさり忘れて、トグサは声を荒げた。 缶を持つ手とは逆の、手袋を外した方の手で、憎たらしいほど厚い胸板を叩く。 「図太いあんたと違ってな」 それにニヤリと笑った義眼の大男は、 「図太い?ナニなら図太いの持ってるけどな〜」 と、その冷え始めたトグサの手を掴んだ。 「・・・・・・はぁ・・・・・・」 大きなその手を振り払う事も忘れて、トグサはただただ、呆れかえった。 目の前の男は、いつだって、トグサの言葉尻を捉えては、こういう言葉をツルツルと吐くのだ。 よくまぁ、瞬時に思いつくものである。 「───なんだよ、その溜息」 バトーが口を尖らせた。 「つまんねえ反応」 お望みで、お好みの反応ではなかったらしい。 「もっと気のキイた反応しろよ。照れるとか、目を伏せるとかよぉ」 しかし、ここでまともに反応すれば後がヤバイことを身を持って知っているトグサとしては、バトーを満足させる為の反応なんてしたくもなかった。 望み通りの反応をしてしまっていた昔を思い出し、トグサはちょっと遠くを見る目をして、傍らの男を見た。 大先輩のセクハラにいちいち、赤面したり動揺したり、慌てふためいていた頃が懐かしい。 慣れ、というのも嫌な気持ちだが、慣れておけばショックも少なくてすむ。 誰が、相手の思うツボに嵌るものか。 トグサはゆっくりとバトーの手を外して、平然とした顔でコーヒーをもう一口、口に含んだ。 「まったく、可愛くなくなっちまって」 そんな態度に、バトーは口許を歪める。 面白くないのだろう。 けれど、バトーを面白くさせる義理はない。 目の前の大男をひたすら無視し、トグサはコーヒーを飲み続けた。
程なくして、小さな缶コーヒーの中身は空になり、トグサは空き缶の始末に困った。 ダストボックスが見つかるまで、とジャケットのポケットに無理やりしまう。 それから、相棒はどうしたろうと様子を伺ってみて、雰囲気がおかしい事に気付いた。 監視対象の男を見ているハズなのだろうが、何やら、不穏な気配がする。 こういう時、視線の解らない義眼は面倒だ。 トグサは、バトーを覗き込むように見上げた。 「・・・・バトー?あんた、ちゃんと見張ってるんだろ──」 怪訝な表情とリンクした言葉は、途中で遮られることになった。
カンッ、という乾いた、やけに甲高い音がした瞬間。
トグサは壁に背を押し付けられていた。 カラカラと転がるその音が、バトーが落とした空き缶の音であると判っても、何の意味もない。 迫る様に、目の前に立ち塞がる巨体に、息を飲んだ。 先程と違い、無表情に自分を見下ろしてくる義眼の、冷たい光に。 「ちょっ…!なんだよ」 トグサは、勝手に震えてしまう声が嫌で、歯噛みしたくなった。 「やめろ、バト…」 「──黙れ」 言葉はあっさりと断ち切られて、トグサの背筋にぞっとした感覚が走る。 大きな手が、顎を捕らえ、目を逸らす事さえ出来ない。 そして、次の瞬間には、無理やりキスされていた。 「ふっ…ッ…ん」 バトーの厚い唇が、トグサの冷えた唇を貪るように塞ぐ。 抵抗の為に振り上げた手は、簡単に封じられ壁に縫い付けられてしまった。 もう一方の手も、虚しく宙をかいた。 顎を捕らえていたはずのバトーの手が、いつの間にか、トグサの首に掛かり、やんわりと押さえ込んで。 その冷えた感触が、じわじわと皮膚を突き通り、身体の奥へと侵入してくる。 乱暴な獣じみたその口付けに、喘ぎながらも、トグサは足掻く事だけは止めなかった。 全身義体の大男に敵わないとしても。 力が抜けそうになるのを堪え、足場を固めると、トグサはバトーの足の甲を踏みつけようとした。 けれど、バトーはそれを容易く察知して、トグサの足の間に自分の足を捻じ込み、身体を密着させた。
すべての抵抗を封じ込まれ、ヤバイ、ヤバイとトグサは思ったが、身体はその意思に反して、力が抜けていく。 路地裏の薄暗がり、その暗がりを背負う様に立ち、自分を追い立てる男に。 トグサは翻弄された。 「っは……ァ」 耳に響いた甘く鼻にかかる声を自分が出しているという事に、トグサは叫び出したい程に羞恥を感じた。
こんなキスを望んでいるわけではないのに。 バトーから与えられる口付けは、トグサを虜にし得る熱があった。 そうして、その熱が、トグサのゴーストを犯していく。
角度を変え、キスは深さを増していき、滑らかな造り物の舌が、トグサの歯列を割った。 逃げる舌を絡めとり、バトーはより貪欲にトグサを求める。 それに抗う術をトグサは持たない。 「…ン…ぅ、は」 耳元で激しく打ち鳴らされる鼓動と、自分の乱れた呼吸。 それが電脳内を埋め尽くそうとした時。 バトーは最後に顎へと伝った唾液を舌で舐めとり、濡れた下唇をなぞるように舌を這わせ、離れた。 首筋を圧迫していた、冷ややかな掌の感触も消えた。 「……は、ぁ…」 トグサの足はみっともなくガクガクと震え、へたりこみそうになるがそれを壁に背を押しつけるようにして、何とか堪えた。 男の意地でもあり、バトーに対する最後の抵抗でもあった。 「どうよ、トグサ。あったかくなったろ?ん?」 冷酷な仮面を脱ぎ、いつもの顔に戻ってニヤーと満足げに笑う男に。 トグサは、心底、心底、怒りを感じた。 それから、この男に翻弄されてしまった自分自身に、言い様のない怒りを感じる。 また、まんまと、ハマってしまった。 まんまと。 どうして、最後まで抵抗しきれないのか。 自分の不甲斐なさに目を背ける為に、トグサは怒鳴り、 「こンのっ…エロサイボーグッ!!!死ね!!!」 いつの間にか寒さを忘れていた、むき出しのままの右手で、拳を作ってバトーの顔面めがけて打ち込んだ。 ごすっという鈍い音の後、気の抜けた、やに下がった声がする。 「おいてッ。お前ねえ、殴る時、グーは止めろって言ってるだろーが?」 「うるせえ!!!」 ぶるぶると震える拳では、たいしたダメージを与えられず、いっそう悔しい。 そんなトグサを煽るように、バトーの笑みは深くなる一方だ。 「まぁまぁ。落ち着け。だいたいなぁ、これはお前の為なんだぞ?」 「・・・・・・・・・・・」 「寒くなったんなら、あったかくなれることをすりゃあいいってコトをだ。実践で示してやったんしょうが♪」 「ッ……」 ムカつく言い分に、バトーの顔など見ていたくもなかったトグサは視線を外し、次の瞬間、固まった。 「あ」 視線の先に在るべき男の姿が無い。 その事に気付いた故に、だ。 「あ?」 トグサの一言に、バトーもやっと事態を飲み込んだようである。 よからぬことをしている間に、行動確認対象の男の姿が、消えてしまっていた。 それをなんとするのか。
二人は、路地裏で、途方にくれた。
「あんたなぁっ!!始末書になんて言い訳書く気だあっ!?」 が、瞬時に復活して、そう噛み付くトグサに、 「・・・トグサに欲情しちゃいました、か?」 バトーはヘラヘラと笑いながら答えた。 引き攣った口許をどうすることも出来ない。 もう一度、トグサは拳を固め、今度は鳩尾に狙いを定めると突き出した。 「俺に訊くなッ、このボケ!!!」 が、その拳はバトーの大きな手に阻まれてしまった。 「ち、くしょうッ」 吐き捨てる様に言い、掴まれた手を力一杯、引き剥がした。 怒髪天を突く勢いのトグサを見下ろすバトーの口が、
「 な ー ん つ っ て 」
おどけた様に言葉を降らせたのは、そんな時だった。 「俺がそんなドジ踏むかよ。お前じゃあるまいし〜」 じゃあ、この落とし前をどうつける気だ!と叫ぼうと、トグサが怒りに爛々と光る目でバトーを睨み上げるのと、同時に。 視界にインターフェイスが開き、赤い思考戦車が小躍りする姿が映し出された。 『バトーくーん!対象者捕捉、街道沿いに徒歩で移動中だよお。次の指示はあ?』 フチコマの視界の映像が転送されてきて、行確すべき男の現在の姿を目の当たりにする。 トグサは怒りを堪える様に俯き、事情を説明しろと怒鳴りたかったが、最早。 「・・・・あんた・・・・」 言葉にならなかった。 この男は、どうしてこうも、フザケタ振る舞いをするのか。 しかも、任務中に、だ。 「こんなこともあろうかと、フチコマ連れてきてたんだなぁ」 バトーは満面の笑みでトグサを見返した。
こんなことをしようかと、コーヒーを買いに行った時に、本部からフチコマを呼び出していたのか。 更に、だ。 必要のないフチコマを勝手に呼び出した始末は、一体、どうするつもりなのか。 この男がそこまで考えているか、いないのか、考えようとして止めた。 代わりに、最後の気力を振り絞り、 「・・・・・・ほんと、いっぺん死んで来い・・・・・・」 それだけを言い、トグサはへたり込みそうになる己の身体を、今度は壁に手をつくことで耐えしのんだ。
朝から、何の冗談なんだろう。 折角の美味いコーヒーの味も消えてしまった。 先程の熱は乾いて、かさかさだ。 その唇を舐めて湿らせる。 トグサは苛立ちを殺して、皮手袋をはめ直し、路地裏から抜け出した。
冗談のように与えられた、本当の熱を振り払い、任務へと意識を戻す。 そうしろと、ゴーストが囁いているのだ。 本当を受け入れたら、トグサには抵抗する為の駒がなくなってしまうから、かもしれない。 肝心な事を曖昧にして。 今にしがみつきたい自分を感じているだけに。
そんな事を考えながら歩くトグサを知らぬ気に、バトーの気配は、いつもの様に飄々とついて来る。 肩越しに義眼を睨み、釘を刺す。 「これ以上、フザケやがったら、マテバが火を吹くからな」 怒気を含んだトグサの声にニヤリと笑うバトーが、頭の後ろで手を組みながら返してきた。 「へいへい〜」 その憎々しい態度に、 「ほんっとに、ロクでもない先輩だよ、あんたは!」 「そんな大先輩が好きなくせに?」 「───大、嫌いの間違いだぜ、先輩」
ぽんぽんと言い合いながら、フチコマが表示する座標に向かって、トグサもバトーも足を速めた。
路地裏に投げ捨てられた空き缶が、二人を見送り、ぽつりと佇んでいる。
END
忘れた頃に。 こっそりと密やかに、捧げちゃっ隊、発動。
Yナギさんに捧ぐ「サイさん→バトグサ」話です。 SSS風味で、トグ隊長就任直後っぽい雰囲気な話になりました。 ワオ。
これは以前、Yナギさんに捧げますよ!と大言壮語してしまった話だったりします。 (↑大風呂敷を広げすぎた自覚アリアリだった模様) 短文ながらも、なんとか書き上げるに至りました。
サイさんを格好良く書こう、と必死になったのが、アダになったようで(笑) 思い入れを強くすると、筆が迷う罠です。 フ。フフ。
しかし、それにしても、遅ッ・・過ぎ・・だロ・・・・・・orz 書き上げるまでの時間が長すぎですよ、自分。 もう、どれだけ日にちが経ったのかすら、不明ですもの・・・(痛)
Yナギさんにしてみても、いきなり、忘れた頃に捧げられても困るというものです。 まったく、迷惑な話ですね。 ←何故か他人事
Yナギさん、本当にあらゆる意味でスミマセン!!!((orz ペコペコ でも、精一杯の愛をこめたので、受け取っていただければ。 幸いです。
いやー、私としては珍しい。 「サイさん→バトグサ」な話ですよ。 いやー、どうなんだろう。 読むのは好きでも、書くのは難しいと悟った、一本(笑)
事件もなく、仮初の平和を漂わせた、曇り空の日。
銃器類の手入れを終え、射撃室に顔を出したサイトーは、そこに一人の男を見つけた。 白いシャツ、幾分か短くなった茶色の髪、その後姿。
「セブロで射撃練習か、トグサ」
構えている銃が、あれほど拘っていたマテバでないことに気付いたサイトーは、そう声をかけた。 隊長という職に就いた今も、この男は現場に立つことを優先させている。 書類仕事に追われながらも、射撃訓練を隙を見ては行っている事をサイトーは知っていたが、その姿を捉えたのは今日が初めてだった。
「サイトー」
振り返り、握る銃把にかかる指を少し動かして見せたトグサは、真剣な目をしていた。
「少しでも慣れておきたくてね」 「義体は、どうだ?」
生身だったトグサは身体の一部を義体化した。 隊長になった事の他に、この男が大きく変わった要因は、それに尽きる。 生身にも拘っていたはずのトグサは、今握っているセブロのように、あっさりと義体化に踏み切っていた。 いや、どれほどの深い葛藤を越えたのか。 一部でも、生身であった部分を捨てたのだから、思い迷わないことはない。 サイトー自身はそれほどの執着はなかったが、トグサの様な男はそうはいかない。 この男は、思い迷いながら、執着を持つことで、己を高めコントロールしているところがあった。 昔なら感情を露わに、そして、隠す事をしていなかったトグサが、今回に至っては。 物の見事に、己を隠し通し、誰にもそのことを読ませなかった。 サイトーですら、読み通す事が出来なかった。
「リハビリには辟易したけど、感覚は掴めたかな。やっと自分に馴染んできた気がする。思考と誤差なく指は動くようになったし」 「そうか」
何でもないことのように語るトグサに、サイトーは頷いた。 その感覚を得るまでに、どれほどの苦痛と苦悩があったのか。 しかし、それを周囲に見せるでなく、この男は淡々と乗り越えていった。 優しい見てくれに反して、強情で意固地、負けず嫌いなゴーストがそうさせるのかもしれない。 そして。 護るという行為の為なら、どんなことも厭いはせず、躊躇いもまた、ないのだろう。 この男が銃を握る理由、それは護る為に闘うという意味以外ない、とそうサイトーは思っている。 自分とはまるで正反対のトグサという男は、サイトーにとって、見ていて好ましい男だった。 自分には持ち得ないモノを持っていながら、それを妬むとか羨むとか、そういう負の感情を抱かせず、実に潔い心持にさせてくれるからだ。
サイトーは壁に背を預け、腕を組むと、トグサを顎で促した。 せっかく得る事の出来た貴重な時間を、邪魔しては申し訳ないと思った。 それに、頷いたトグサはゆっくりとした動作でセブロを構え、照準を絞る。 節くれた細くも太くもない指が、正確に動き、引き金が引かれた。 銃口が腹の底に響く音とともに弾を吐き出し、的を的確に撃ち抜く。
「ふん、悪くないな」
サイトーはそう言って、トグサの訓練の成果を認めた。 狙撃銃だけでなく、あらゆる銃器の扱いに特化しているサイトーに褒められた事がよほど嬉しかったのか。 トグサは久しく見せない、笑顔を浮かべ、振り返った。 隊長に就任して以来、これほど屈託のない、以前のような表情を見たことは無かった。 サイトーも、それに口許に笑みを浮かべて返す。
「サイトーにそう言ってもらえれば、一安心だ」
柔らかい声で、素直な言葉を口にするトグサに、安堵した。 変わったのではない、変わろうと努力しているのだ。 この男なりに。 護る為に。
何の為にか。
それはあえて、サイトーは考えなかった。 消えた女と、追う男。 この二人が係わっている事だけは確実だろうが。
「トグサ、まだ無理はするな」
気配もなく現れた男の重低音が射撃室に響き渡ったのは、サイトーが思考の海に浸ろうとした、そんな時だった。 声のする方を振り仰ぎ、そこに、こちらを見ている義眼を見出す。 バトーだ。 それをちらりと見たトグサは、視線を逸らしてから、小さく頷いた。
「──ああ」
トグサの表情が、一瞬で硬質のものに変化するのをサイトーは見た。 己に甘えを許さない、不器用に一途で、真摯な男。 もう少し、甘えてもいいんじゃねえか。 サイトーは心の内で苦笑した。
「何か用か、バトー」 「・・・課長が呼んでる」 「解った」
そこには簡潔に、何の感情も挟まぬ、二人が対峙する姿があった。 サイトーは静かに、傍観者の位置に立つ。 セブロを脇のホルスターに収め、傍らに置いてあったスーツの上着を取ると、トグサは振り返りもせず、射撃室から出て行った。 バトーと擦れ違う、その一瞬にも、トグサは視線すら合わせることはなかった。 その背を黙ったまま見送るバトーの姿に。 サイトーは思わず笑みを漏らした。
何てことだろう。 過酷な戦場を戦い抜いたレンジャー出の大男が。 感情を殺す事に馴れたはずの男が。 そんな感情だだ洩れの背を、他人に見せるなんて。
電通で全てが済むだろうに、わざわざこんな所まで足を運んだのは。 隊長になろうと足掻く男が、ただただ、心配だからじゃないか。 自分勝手に単独行動をし、トグサを翻弄するくせに。 何故、そんな、寂しげに立つのだ。 背が、バトーの内側を曝け出していた。 この義眼の大男も、ある意味、トグサと同じなのだ。 己に甘えを許せず、不器用なまでに一途で、真摯な男。
声を殺したはずだったが、高性能義体の男の耳には聴こえてしまったらしい。 苦虫を噛み潰したようなカオをして、バトーがこちらを見おろしていた。
「バトー」 「なんだ」
サイトーは不愉快を丸出しにしたバトーに怯みもせず、問いかけた。 長い付き合いだ。 このくらいで、言葉を途切らせるサイトーではなかった。
「お前達、どうなってるんだ?」
バトーとトグサは面白い関係だ。 サイボーグと生身。 教官と訓練生。 同僚、相棒。 今は、部下と隊長という逆転した関係。 それから。 二人の間にある、他人には触れることの出来ない深い繋がり。 それが在ることを、サイトーは感じ取っていた。 野生の嗅覚とでもいおうか。 それともスナイパー特有の感覚とでもいおうか。 最も効果的に相手を狙撃できる場所の選択、相手を取り巻く環境、変化への対応。 天候、風の流れ、それによって受ける空気抵抗、摩擦。弾道。 視線、感情の動き、動作の予測。 そんな事を常日頃から、念頭において生きているせいかもしれない。
「─────どういう意味だ」
暫しの間。 眉間を寄せたバトーの口から、低く地を這うような声が吐き出された。 サイトーは冷えた義眼が間違いなく、自分を見ていることを感じ、また笑い出したくなった。
「お前、今、何を考えた?」 「───────」
バトーの眉間に刻まれた皺が深くなる。 口許が薄っすらと歪むのを、サイトーは残された片方の目で、興味深げに観察した。
「そういう意味で、だ」
真実から遠回りするようにはぐらかし、バトーに会話を続けるように促す。
「それから、あらゆる意味で、とも言っておくか」
バトーは答えない。 ただ、サイトーを睨み、黙っている。 わざとらしく小さく息を吐いてから、口の端を引き上げてみせた。
「寂しかったら、俺が相手してやろうか?レンジャー」
からかいを隠しもせず、言葉に乗せると、バトーの低音が吐き出された。
「・・・スナイパーは寡黙が売りじゃなかったのか」
感情を無理に消したバトーは、それでも、言葉に隠し切れぬ感情を滲ませていた。 そして、先程のトグサと同じように、振り返りもせずに出て行った。
「つれねぇな、バトー」
サイトーはふと俯くと、静かに笑って、バトーの後姿が消えた扉から目を逸らした。
狙撃手の心が放った言葉。 それが何を狙っていたのか。
狙撃手の手の内。 誰もそれを、知る事は出来ない。
END
| 2007年04月04日(水) |
赤服のちょっとした息抜き |
4月4日にこっそり、参加表明な話。
参加したくても出来ないだろうな、と思ってたんですが。 この日が休日だったことにより、行き当たりばったりに話を書いてみる勇者になってみました。 いや、ほんとは日記を書こうと思ったんですけど、いつのまにかこんなことに(笑)
やっぱり、抗えないナニかに引き寄せられたんでしょうかネ。
でも。 書いたはいいが、これでいいのか?と思える出来になったのは、愛嬌ですませたい心境だったり☆
で。 コノ話を書くにあたり。 一応、おかまをネット辞書で調べてみました。 (読むと判りますが、オカマの定義がビミョーな感じに仕上がっております) (それを回避する為に、いろいろ調べてみたんですが、全くソレが生きてません)←致命的
紙媒体の辞書でなく、ヤッフーさんとこで調べたら。 出ました、出ました。
えーまずは。
「かま」「かまど」の丁寧語。
フツウですね。 確かに、その通りです。 私も、職場で、よくコノ言葉使いますから。 「カマが重い!」とか、「今日は9カマもありやがる」とかネ。
で、さらに説明は続くわけです。
� /� の 異 称 。 �◆|法/А � ま た 、 そ の 相 手 。
みなさん、�△法△箸いΔ茲蠅蓮�
� ,法ゞ叩,� ま せ ん で し た か ?
私は、正直、驚きました。 確かに、車の尻=カマっても言いますけどね。 正式に辞書で書かれていると・・・・なんというか。 ある意味、凄い辞書・新解くんに匹敵する力強さだなと思ったわけですよ。(意味不明)
簡単なのに、インパクト大ですよね。 うん。 尻の異称・・・尻・・・・尻か。 てことは、ですよ。
「トグサのカマはそそる」とか。 「トグサのカマに目がいってしまう」とか。
そういう使い方をバトさんもできるということですよね?(そうなのか?) そうに違いない。違いない。(違います)
えー言いたい事から、だいぶズレました(笑) 元に戻します。
このことを利用して、尻をポインツに話を作ろうとしたんですが。 まったく、違う方向で話は展開してしまいました。 これは私のお笑い体質のせいかと思われます。
もしくは、ピ ュ アだから? (石を投げないで!!)
それから、潜入捜査をするトグたちを外野から眺める人々、というのを選択したせいだと思います。
だって!トグの女装にお色気を混合するのは、私の技量では無理!!!
ですからネ!! なので、勢いよく方向転換したら、こんなことになってしまった罠発動・・・。 ドンマイ、ドンマイ自分、です。
でも。あれですよ。 オカマバーに潜入してスバラシイ展開になるのは、他の素敵な絵師さんなり文書きさんだったりがしてくれるに違いないので。 全 面 的 に お 任 せ で (笑) こんな、誤った方向にいっちゃった話があってもいいんジャないかと☆
最初にも言いましたが、ご愛嬌、ってことでナマ温かく笑っていただければ、幸いです(笑)
主催者のZ様に内緒で、こっそり参加のチキンですが。 Z様の素晴らしき提案に、賛同の意を表明です。 Z様、素晴らしきこの日をありがとうございました!!!(深々と礼)
4月4日はトグサの日。 もう、これはみんなのゴーストに刻み込まれましたネ(笑)
「今度の任務はオカマバーに潜入捜査らしいね」 「ああ、そうだって。確か、これから任務につくんだよ」 「今回は僕達の出番はなさそう」 「つまんないねえ」 「そういえば。さっき、バトーさんがにやにや笑いながらトグサ君をからかってたの視た?」 「 「 「 「 み た み たー ー 」 」 」 」 「じゃあ、やっぱり。オカマになって潜入するのはトグサ君に決まったんだ」 「最初はパズ君ってゆってなかったー?」 「パズ君はね女の人の扱いに慣れてるし、いっぱい女の人を知ってるでしょ。だから、どんな女にだったら対象者がカモになって引っ掛かるか、心理を読めるし、成り切れるだろう事で選ばれてたんだけどね」 「途中で代えたみたいだねえ」 「なんでさ?」 「そのオカマバーが素人っぽさを売りにしてるバーだったから、だって」 「 「 「 「 ああ、なっとくー 」 」 」 」 「パズ君じゃ、素人っぽさより玄人っぽさがデチャウだろうしねえ」 「それじゃ、やっぱり」 「 「 「 「 ト グ サ 君 が 適 任 」 」 」 」 「トグサ君て、あらゆる意味で、素人っぽいもんね」 「確かにー」 「・・・・ねえねえ」 「ん?なんだい??」 「おかまばー、って一体なにー?」 「・・・・・・そこから教えるの」 「てか、僕達、並列化上手くいってないんじゃ??」
「・・・あいつら、またモニタリングか」 赤服がハンガーの隅に固まって、しばしの休息に入っていた。 お茶の入った湯呑みと和菓子が、この休憩の友だ。 頭(正確には脳)を酷使する職場だけに、甘いものの補給は欠かせない。 白い粉のたっぷりとかかった大福を片手にクロマティは溜息を吐いた。
目の前には、ハンガー中央に群れ、蠢く青い機体がある。
「禁止事項だと何度言えば、認識してくれるんだろうな?」 それは公安9課が所有し、自分たち赤服が整備等々あらゆる面で任されている思考戦車たちであった。 タチコマと名付けられた彼らは、任務をこなす度、日々を過ごし人と係わる度に、あらゆる情報を吸収し分析し蓄積し、成長をし続け。 そして、厄介なレベルにまで、それが到達しようとしていた。 「クロマティ、それは愚問だ」 とシノズカが溜息をつき大福を一口齧り、ヨシムラが眼鏡を拭きながら言葉を継いだ。 「そうそう。それを言っても詮無いことだ。こいつらが厄介な個性らしきものを持ち出した時点で、発想を転換しないと」 「確かに持ち出してしまったモノは仕方が無い。それも計算の内だったしな。そうなれば、余計なモノは消去するのが一番手っ取り早い。が。それだけでは余りに芸がない」 マツイが茶を啜りながらそう続けて、頷いて見せる。 頬の辺りから額までを多いように着けられたバイザーが一瞬だけ、湯気で曇った。 「だったら、俺達でその都度、処理をし、また経過をみるのが最もいい。取捨選択は俺達で握っておけば」 「面倒も少ないし」 マツイの長広舌に、シノズカが笑って賛意を示す。 そんな同僚たち三人の、ある意味、達観したような言動と態度に、クロマティはなんとも切ない表情になった。 目元は嵌め込み式のバイザーで隠れているが、ヘの字になった口許が、全てを語っている。 「・・・なぁ・・・俺達、バカにされてるんじゃないのか・・・ある意味」 「・・・・・・・・」 クロマティのその一言に、三人はそれぞれに目を見交わし、首を横に数回振った。 「言うな、みなまで」 人間、思っていても、口に出来ない思いが、あるものである。 そして、それを隠す為に、論破されないような理論を構築するのも。 人間のサガと言えよう。
「・・・それにしてもだ。今回は今までにない任務だな」 マツイが気を取り直したように、そう話題を変換した。 考えても答えの出ないことは、無理に考えない。無駄な時間を省き、答えの出るものを追い求めるのが、ある意味、赤服の仕事だ。 「オカマバーで薬の取引だって?」 ヨシムラはそう言ってにたりと笑う。 (眼鏡のフチがキラっと光ったように見えたのは、きっとクロマティの気のせいだろう) 今までの任務で、趣味感の異常に漂うバーやその集まりの現場に潜入した事は何度かあったが、このオカマバーなるものには、公安9課の実動隊が遭遇したことは今まで一度もない。 私的なものでなら、実動隊の隊長でもある草薙少佐に連れられて、ヌードバーにメンバー全員で繰り出した、という話は聞いたことがあったが。 「その麻薬のアガリが、最近名前を売り出し始めたテロリストの財源だって話だな」 そう言いながら、シノズカが二つ目の大福に手を伸ばした。 「昔から変わらんな。やはり薬の売り上げは、楽でワリが良いと見える」 「・・・なんでフツウの場所じゃないんだ?よりにもよってオカマバーとは」 クロマティが湯呑みを口につけながら、首を傾げる。 餡の程よい甘みが、お茶の適度な渋みで溶けていった。 だいたい、だ。 その手の取引の場所といえば、犯罪統計からみても、キャバクラや場末のバー、高級ホテルやモーテルの一室などがオモである。 それなのに何故、アリガチなところをつかわないで、オカマバーなんだ?というクロマティの心理を見て取ったマツイが口を開いた。 「フツウじゃない場所で、フツウじゃない事をすれば、逆に目立たない」 「木は森に、か?」 「まぁ、単純に、好みの問題かもな。世の中には、色んな趣味の人間がいる」 道理だ。 「トグサが餌食になったのは、まぁ、致し方ないだろうな」 シノズカは頷きながら、一つ目の大福を食べ終え、赤服に散った白い粉を払い落とした。 その通りで、トグサはどこにでもいる普通の男に見える。(中身はどうあれだが) こういう組織の中では異色の存在ではあるが、それが役立つ時も多いのは、成功した任務の数が示している。 こういう捜査にも、このフツウ、というのが役に立つわけだ。 「なぁ、少佐がリモート義体に入って潜入すれば良かったんじゃないか?最初から」 トグサが潜入するのは、わりとリスキーではないのか。 失敗すれば、尻に火が点くのは彼であり、彼らということになるのだ。 であれば、全てに長けた草薙が出たほうが、何事も遺漏なくスムーズに事が運ぶのではないか。 クロマティが、またしても、言ってはいけないことを口にした。 三人は、口を揃えて、さっきと同じ言葉を口にする。
「 言 う な 、 み な ま で 」
草薙がその選択肢を捨て、あえて、自分の部下を女装させることを選んだのは。 まぁ、それなりの。 多分、それなりには、正当な(はずの)理由が存在するのだろう。 と思われる。 誰もが、そこにツッコミを入れないのは、きっと口に出すべき言葉ではないと、本能が訴えているからに違いない。 赤服たちは、それだけは口にせず、沈黙を守った。 何処で、彼女の耳が声を拾っているとも限らないからである。
そして、再び、赤服たちは会話を元に戻した。 怖いことから目を逸らすのは、人間の本能だ。 マツイが、 「女装か・・・」 と呟き、腕を組んだ。 そして、 「あのメンバーの中で、女装ってのは、限定されるな」 シノズカの呟きをヨシムラが拾い上げる。 「相手の好みにもよるがね」 「ムキムキが好きだとか、か?」 「マッチョ好みの男なら、そういうのが相手でもいいのかもしれんがなあ」 「それはオカマである意味があるのかね?」 「さぁ?」 二人のその会話に、 「いや、今はキレイなのが多いみたいだな。さっき暇でサイトを拾ってみたんだが・・・これがまたレベルの高いのが多い」 マツイが、自分の探し出したサイトのアドレスをそれぞれの電脳に送る。 それを開きながら、シノズカが眉間を寄せた。 「義体化してるんじゃないのか」 写真で視ただけでは、断定は出来ないが、なんとなく義体かそうでないかの判別はできるものだ。 特に、赤服なんていう職業に就いていて、そういうモノに接する機会が多いい賜物であろう。 「それもあるだろうがな。それに、調べてみると、オカマバーにも種類が色々あるらしい。世間のブームなんかも上手く取り入れているようだ。さっき言ったマッチョ系から、それと判るラインのもの、美少女から女王様系、なんでもある」 「だったら、うちのメンバーでも?」 マツイの語りに引き込まれるように、ヨシムラが話しに乗る。 このヨシムラ。人の話を聞くのが上手い。そして、それを嬉々として、しているふしがあった。 それにマツイはいつも気を良くしてあれこれ語るのがいつものバターンで、今回もその例に洩れなかった。 顎の辺りを撫でながら、マツイが笑って話を続ける。 「ふん・・・化粧と洋服のラインで誤魔化せば、かなりイケるんじゃないのか?」 「どれ、やってみるか?」 いつもは静かなシノズカが、悪戯を唆す子供のような顔で、そう言う。 「そうだな。ちょっとした、息抜きにはなるだろう」 それにマツイが大きく頷き、近くにあるモニター類が搭載されている可動式デスクを引き寄せた。 そしてに額を寄せ合って、キィボードを操り始める。 必要な素材をネットの海から拾い上げ、喧々諤々し、擬似映像を創り始めた。 クロマティは、一抹の不安をもって、その悪乗りを見下ろした。
ばれたら、どうするのか。
その言葉は、三人の耳には届きそうにもなかったので。 クロマティは口にせず、沈黙を纏い、そっとその場を離れた。
言っても仕方ない事は、言わない。 というのも、赤服の仕事のウチである。
「なんだか、マツイさんたちが面白いことしてるよ?」 「ああ、ほんとだー」 「シノズカさんまで混じってるよ。メズラシイねえ」 「ヨシムラさんはいつものことだけどね〜〜」 「みんなの映像使って、オカマな格好させてるみたいだ」 「潜入捜査のシュミレートだね〜」 「単なる興味じゃないか」 「まぁまぁ」 「あーやっぱり、バトーさんとかボーマ君とか、身体がおっきくて義眼だとビミョー」 「サイトーさんはカツラを使えばなんとかなるね?」 「アイパッチがちょっと難点かもしれないけど」 「イシカワさんは・・・ひげを取っても・・・」 「・・・難しいとこだね。うん」 「じゃあ、やっぱり」 「パズ君かトグサ君しか、出来る人いないね」 「ねえねえ、少佐はダメなの?」 「それは言っちゃあだめ」
「 「 「 「 あ ら ゆ る 意 味 で ね 」 」 」 」
後日、その時の赤服たちの悪ノリが、ナニを引き起こしたかは。 あえて、語ることのない、コトである。
END
|