6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2006年09月13日(水)   鬼の守人 ─嚆矢─  <八>

あれだけでは、なんか微妙なので。
もいっちょ追加。

ウヒョー (((;´∀`)) これ追加しても、短ッ!!!





















































八、逃走



街中を疾走しながら、脳裏に甦った昨日の事に、兎草は眉間を寄せた。

大輔の放った護法を掻い潜り、姉よりも一歩先んじる、妖し。

それほどに強い妖しには感じないが、一瞬で変質し思いも寄らぬ力を放つ妖しもいる。
兎草は、また上空を仰いだ。
殺気に歪んでいく辺りの気に、顔を顰めた。
が、不思議と恐ろしいとは思わなかった。
それはきっと、馬濤が傍にいてくれるからに違いない。

「どうする、兎草。あの鳥、ここで片付けるか?」

闘える、ということにウズウズしているのか、馬濤の声は妙に嬉しそうで。
兎草は呆れたように眉を寄せた。
根っから、闘う事が好きなのだ、この鬼喰いは。
しかし、眷属に好き放題させる主も情けない。兎草は、主としての威厳を見せようと、馬濤を制した。
「待った!人が多すぎる・・・もっと、人のいないところじゃないと、巻き込まれた人たちが怪我をする」
「じゃ、どうするよ?」
「・・・こういう時は、逃げるが勝ち」
一先ず、逃げることを選択する。
闘うのは、それからでも遅くないはずだ。
けれど、闇雲に逃げるのも、どうかと迷う。
人の居ない場所が、はたして、ここにあるだろうか?
「おにいちゃん、あっち」
そんな兎草の思考を読み取ったかのように、腕の中の美希が前方を指差した。
「美希ちゃん、何?」
「あっちにね、パパがもってるビルがあるのよ。おくじょうにのぼったら、どうかな?」
「おお、チビ。そのビルってのは、人がいっぱいいるんだぞ」
訳知り顔で言う馬濤に、美希は勝ち誇ったように言い切った。
「きょうはおやすみなの。だれもいないの!」
兎草は迷わず、美希の指し示す道を選択した。
「よし、美希ちゃん。そこまで案内して」
美希に絡みつくようにどす黒い気が、纏わりついてくる。
それを断ち切るように、腕の中の少女をしっかりと抱き締め、兎草は足を速めた。



2006年09月12日(火)   鬼の守人 ─嚆矢─  <六>/<七>

久々の更新です。

一体、何ヶ月、更新してないのか。
考えるのが怖いので、考えない方向で・・・(((。。;)))


先代パソから救い出したデータを新しい子に写したので、やっと続き物に手が出せるようになりました。
ので。
まずは、「鬼」から更新再開です。


嗚呼、やっと更新できる・・・(泣)














































六、回想 ─発端─



その家に起きた最初の異変は、一週間前。
黒い羽のついた矢が、始まりだった。

黒々とした光を放つ矢。

まるで悪意が形になったかのような矢は、丁度、玄関の真上あたりに突き立っていた。
家人には、それが何の意味だか全く解らず、誰かがした悪質な悪戯だろうと思った。
しかし、ふだん見慣れぬモノの突然の出現に、なにやら不安を覚える。
気味が悪いし、いい気分もしない。
矢は直ぐに抜き取ったが、不気味に、心に影を落とした。
その拭いきれない不安感は、警察に届けるべきか考えている内に、矢が消えてしまったことでピークに達した。

確かに、あったのに。
まるで、最初から何も無かったかのように、消えた黒い矢。

気味が悪いだけで済むなら良かったのに。
その後、コトは更に悪化し、進展してしまった。


深夜に鳴り響く、ドアを激しく叩く鈍い音。
地震の様に揺れる家。
屋根の上を何かが動く気配。


窓ガラスには大きなひびが入り、割れるに至って。
この家の者は自分達の身に、容易ならざる事が起きていると気付いた。





七、回想 ─依頼─



大輔の旧知の友、久保田から依頼の電話がかかってきたのは、昨日の夕闇迫る頃だった。
久保田は、怯えきった友人のことを大輔に話して聞かせ、電話を切った。
その依頼の奥に、妖しの者の気が淀む。
禍々しい気を読み取った大輔は、すぐさま、眷属の者を送り魔除を施した。

黒羽の矢とは、悪意の塊。

人の子を喰らう妖しの者の放った力が、目に見える形になったもの、獲物を定めたという印でもある。
依頼者となった家には6歳になる少女がいて、その子が運悪く獲物に選ばれてしまったのだ。

子供を喰らう妖し。
それは、人が鬼に変じた者や、猿、鳥であったり、時には、木や花などの植物であったりする。
形は様々だが、清浄な魂を持つ子供を嬉々として喰らう者共は数多い。

魂が清ければ、清いほどに、己の力になるからだった。

大輔からこの話を聞いた素子が、これは自分の仕事だと宣言する。
「任せておいて。退魔は得意だもの」
にっこりと微笑む好戦的な瞳をした素子と、その傍にいる獣の姿をした眷属たちのなにやら楽しげな風情に。
大輔は少々呆れ、兎草は苦笑を浮かべた。
けれども、これで狙われた小さな子供は助かるだろう。
悪しきモノを祓うことを得意とする素子が行けば、間違いはないのだから。
そんな中。
「なぁ、手っ取り早く、俺が喰うか?」
けろっとそんなことを言ったのは馬濤で。
しかし、その提案は大輔の一言で、却下されたのだった。


 < 過去  INDEX  未来 >


武藤なむ