読書の日記 --- READING DIARY
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 ワイズ・チルドレン/アンジェラ・カーター

1)ノーラとドーラは元気な双子の老姉妹。二人はショウ・ガール時代のおしゃれ心を発揮して、舞台俳優である父親の誕生日パーティーに意気揚々とのりこむ。そこに、お色気たっぷりのテレビ女優、放浪癖のある手品師など奇想天外な双子4組に、寄せ集め家族のメンバーが勢ぞろい。歌とダンスにあふれたどんちゃん騒ぎの中で驚くべき家族の秘密が明らかになってゆく・・・。ちょっぴりエッチで饒舌な語り口が楽しい痛快な物語。

これは本の裏表紙に載っていた本の紹介。これを載せるしか、今のところ言葉がないんである。あの文章が饒舌?饒舌とはああいう文章をいうのか?どんちゃん騒ぎは結構だけど、支離滅裂じゃないの???

とにかく冒頭は、もう読むのがいやだなあと思うような書き出し。まるで子供が語っているような文章なのだが、実は75歳のおばあさんが語っているのだ。それを思うと、ぼけてるのか?とまで疑いたくなる。なんとなくこの小説の中でやりたいことはわかるような気がするものの、私には馴染めない。
だんだん興味がわいてきているのも事実だが、これからどうなることやら。登場人物の職業や、その世界に全く興味がないというのも痛いところ。


2)あー、終わったー!
しかし感想となると、もう早く読み終えたい一心だったので、勘弁してーという感じ。

作者は52歳で肺がんで亡くなっているが、昔のことから現在のこと、外国人にはわからない固有名詞、そしてシェークスピアから様々な作家のことまで、自分勝手に書いており(読者が全て知っていると思っているらしい)、そのため、訳注が40ページ近くある。

語り手は72歳の双子の姉妹の片割れで、そのおばあさん達のから騒ぎといったら、ちょっとうっとうしい。双子の「いじわるばあさん」と思っていただこう。日本語訳でわざとそうしたものか詳細はわからないが、原文自体が騒々しいものなのだろうというのは想像がつく。中身はけしてつまらないものではないのに、そういう文体のために、ものすごく損をしてる気がした。
作者はサマセット・モーム賞を取っているが、そういった文学賞が名ばかりであることを、またしても思い知った次第。

この騒々しいから騒ぎが「シャレテル」と思う読者もいるのだろうが、私には苦痛だった。ユーモアのつもりの部分が恥ずかしいほど面白くないし、妙にお下劣だったりするし、でもって、いちいち訳注を見なければならないし、全くもって読み終えて良かったとしか思えない本だった。

しかし、これは私個人のはなはだ独断的な感想であるから、これを読んだ方がそのとおり真に受けては困る。なぜなら、私はとにかく文体とか雰囲気が好きになれなくて、早く読了したいがため、中身をじっくりと読み込んでいないし(訳注もそこそこに切り上げた)、それにこの人はカズオ・イシグロの師でもある人で、そういう意味でもここだけで判断してしまうのは早計だろうと思う。私はイシグロは好きだし、きっとアンジェラ・カーターも、他の作品は面白いに違いない。たぶん。。。


2002年01月31日(木)
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 エスペデア・ストリート(B+)/イアン・バンクス

主人公はダニエル・ウィアー。身長2メートル。ベーシスト兼ソングライターとして加入したバンド「フローズン・ゴールド」は瞬く間に大成功。バンドは英国'70sの伝説となった。

めちゃくちゃです。話があっちに飛び、こっちに飛び、一貫性がないのと同時に、文章も良くない。ハニフ・クレイシとともに、「UKでロングセラー」という小説に、ろくなものはないという見本のようなもの。クレイシよりはむかつくこともないけれど、クレイシよりも下手。それじゃどうしようもないじゃないかって感じ。

中で主人公がジェーン・オースティンの『自負と偏見』(ここでは『高慢と偏見』)を読んでいたのだけれど、てことは作者も読んでるわけなのに、それを作中に取り上げてるわりには、どうしてこうも下手くそなんだろう?

友人が死んだというような重大な事件も、まるで人事のようでリアリティがなく、死んだと書いてあったかと思うと、いきなり別の話になっていたりする。ユーモアのつもりで書いている部分も、陳腐なだけ。

イアン・バンクス、名前だけはよく聞いていたし、おそらくどこかで短編くらいは読んでいると思うが、こんな小説を書く人だとは思わなかった。もっとも、短編で気にいっていなかったのだから、長編が気にいるはずもないのかもしれないが。


2002年01月30日(水)
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 ピンプ(B+)/アイスバーグ・スリム

あー、面白かった!っていうのが正直で端的な感想。自伝なので、ストーリーがどうこうってことは言えないのだけれど、桁外れに波乱万丈の人生を早送りで見ている感じで、実に面白かった。

IQが175もあって勉強もできたスリムが、なぜピンプ(ぽん引き)になることにこだわったのだろう?そこには白人社会における黒人差別の問題がある。黒人が白人の社会の中で白人に認められる生活を送るためには、お金しかないのだ。それにしても、何度刑務所に送られてもピンプにこだわるってのは、本当に懲りないやつだ。

娼婦をこき使い、自分のためにお金を稼がせる手段はまさに冷酷で、ゆえに「アイスバーグ(氷山)」という名前がついた。娼婦を自分のところに繋ぎとめておくため、あらゆる手段を用い、不要になれば捨てるわけだが、逆になぜ、娼婦たちはピンプについて行くのだろう?ピンプは娼婦のための娼夫なのだ。

ここには当然男女の駆け引きがあるのだけれど、私には娼婦たちの気持ちがわからなくもない。自分を必要としている男、自分を愛してくれる男のために、女はどんなことでもできるということだ。売春がいいとはけして言わないが、彼女たちの孤独や寂しさを考えると、必ず自分を守ってくれるピンプがいることは、たとえどんなことをしていようが、心の平安は得られるのだ。黙っていてもわかるなんてのは嘘。口先だけでも信じられれば、女は何だってできる。

前に書いたように、スラング連発、隠語だらけのこの小説、最初はうわあ!と思ったけれど、テンポもリズミカルで淀みがない。エディー・マーフィーのしゃべりみたいな小説だ。まさに私はエディーを思い描いて読んでいたのだけれど。

刑務所で悲惨な目にあっても、アイスバーグの明るさ、前向きさは失われない。困難な状況でも、けして諦めず、それを切り抜ける方法を考え出す。ぽん引きという仕事や、ドラッグ売買など、それはいいとは言えないが、生きていく姿勢は気持ちがいい。

30年ほどピンプをやって、その後はかたぎになり、作家として身を立てたアイスバーグだが、最後はこう締めくくる。

「そろそろ家族が起き出すころだ。暖房をつけておかなきゃ。朝の寒さの中で目覚めさせるわけにはいかないもんな。あったかハートのアイスバーグっていうのは、どんなもんだい?」

冷酷なアイスバーグも、本物の愛に出会って、あったかハートになったらしい。それでこそ書けた自伝だろうと思う。冷酷であるとしながらも、どこかにハートが感じられる。


2002年01月29日(火)
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 世界がもし100人の村だったら/池田 香代子 著;C.ダグラス・ラミス 訳

最初は1000人だったらしい。
『チーズはどこへ消えた?』と同様、読む人によって感じ方は違うだろう。
もともと論文だったので、数字的な部分は興味深いが、そのあとの押し付けがましい文章はいや。もっと読み手に考えさせるような柔軟なものにすればよかったと思うし、数字だけでも十分言いたいことは伝わるはず。


2002年01月28日(月)
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 MOON HUNTER/Deanna Mascle

1) MOONコレクションの一冊ですが、ロマンスものです。
表紙もベタベタのロマンスって感じで、持ち歩くのにはちょっと恥ずかしい。(^^;
ノーラ・ロバーツの主人公にがっかりしていたせいか、こちらの主人公ベッカには好感が持てる。相手の男性マックもまたカッコイイ!単純にわくわくして読んでます。

内容は開拓時代のアメリカ・ケンタッキー。インディアンに襲われたり、いろんな危険に出会うんだけど、筋骨たくましいマックに守られて、赤ん坊を連れて荒野を旅するベッカ。そもそもマックはどうしてベッカを守るようになったのか、いまいち理由がわからないんだけど、まあどうでもいいかって感じ。かよわい女性を守るたくましい男性、それだけでうっとり・・・っていうのがロマンスでしょう。

2) ベッカとマックの間がなかなか進まない。こうしてじらすのもまたロマンスの特徴なのかもしれないけれど、好きなら好きと言えばいいじゃん!てな感じで、もどかしい。子持ちの未亡人じゃ、そうそういい男はつかまえられないんだからさ!みたいな・・・。途中までいい雰囲気になったかと思うと、なぜか男性恐怖症とやらが出てきて、いっさいを拒否。あー、もう!じれったいなあ。といって、ページをめくるという寸法。典型的なロマンスの手法ですね。

3) なかなか進まなかったのだけれど、一気に最後まで読んだ。というか、そんなに時間をとってじっくり味わう本でもないので、終わらせた。
結婚なんて絶対しない!と豪語していたマックも、最後はベッカなしには生きられないと気づき、結局はハッピーエンド。
途中、何度も事に及ぶのだけど、「あたしって男嫌いなんだわ!」と思い出してみたり、子どもが泣き出したり、となかなか二人の思いは遂げられない。もう、じれったいなー!と思いながら、ページをめくり、幸せになって良かったね、めでたし、めでたしで終わり。あー!またこんなもの読んでしまった!・・・たまにはいいか。


2002年01月27日(日)
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 ふたりの証拠/アゴタ・クリストフ

1)『悪童日記』の続編。
待ちに待った感がなくもない、非常に楽しみにしていた続編。単行本では出ているけれど、1巻目もepiで読んだので、それで通そうと思って待っていた。相変わらずの淡々としたリズムに、こちらもすぐ馴染む。悪童であった少年たちは、「悪童」の最後で別れ別れになる。ここで父親が爆死するのだが、二人はまるで意に介さないようだ。そんなところが実はぞっとする部分なのだけれど、前作と比較すると、その残酷さがいくらか減少しているのだろうか?まだ半分なので、最後にはどうなることやら。

2巻目は村に残ったほうの少年リュカの話だが、成長するにつれて、非常な美少年になっているらしい。町では彼は白痴だとされているが、実は非常に頭のいい少年で、大人を上手く利用することも心得ている。やはり怖い少年なのだ。


2)『悪童物語』同様、これも一気に読んだ。
意味深な最後なので、再び謎が・・・。いったいあの二人の男の子たちは、本当に二人だったのか?もしかしたら二重人格とか?「LUCAS」と「CLAUS」という名前もまた、さらに謎を深める。

一番の衝撃は、中盤でいなくなった、子どもの母親が実は殺されていたとは最後までわからなかったし、予測もつかなかった。幼い頃に培われてしまった残酷な血は、やはり消えていなかったわけだ。
この後、『第三の嘘』にどうやって続いていくのだろう?リュカとクラウスは再びめぐり会うのだろうか?


2002年01月26日(土)
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 動物農場/ジョージ・オーウェル

「未成年のときに読んで閃光をおぼえた書物を成人に達してから読み返して枯木しか発見できないことがある。その逆もまたあって、未成年のときに道端の石ころしか感じられなかったのが成人になってかたとつぜんそそりたちのしかかってくるような巨岩になっているのを発見することもある。・・・書物も人間と同じようにたえまなく興亡、明滅しているのである」

『動物農場』の巻末にある開高健の「24金の率直─オーウェル瞥見」の出だしである。オーウェルの『動物農場』は私にとって、まさにこの通りの本だった。昔読んだときには、道ばたの石ころだったのだ。開高氏もまた、30代になってオーウェルに目覚めたという。

オーウェルはもともと新聞記者であったため、ルポライターとしての能力に優れていた。そのオーウェルの特徴は、感じたまま、見たままを、類のない率直さで描いたこと。そしてこの『動物農場』においては、「ユーモアと洞察力と観察眼が手を携えあって歩んでいって達することのできたまれな秀作」なのである。

私が読んだ本には、『動物農場』の他、『象を射つ』、『絞首刑』、『貧しいものの最期』の3つの短編が載っているが、この3つはどれも、評論集の中に収められているもので、この本ではそれをあえて短編として紹介している。

しかしこの3作を読むと、オーウェルがいかに鋭い観察眼を持っていたか、いかにシニカルなユーモアを持っていたかがわかるし、それが政治的・思想的に大きな意味を持つ『動物農場』に、どのように反映されたかがわかる。

内容としては、痛烈なスターリン独裁下のソビエトに対する攻撃を寓話化したものだが、そちらの感想は、私がわざわざここで書かなくとも、これまでにさんざん述べられてきた感想と、ほとんど同一のものであると思う。

私がこの本を読んで一番感激したことは、こういった感覚を率直に、またユーモアをもって語れる作家、しかもストーリーも巧妙で、文章もすこぶる上手い作家に、こうして再びめぐり合えたことだ。私にとって道ばたの石ころにすぎなかった作家が、今、私の大きな尊敬の的になり、こんな文章を書いてみたいという気持ちを持たせるほどになったことである。

もとはといえば、創刊当時から出たものはほとんど、義務のように読んでいるブックプラスのラインナップである、ミッシェル・フェイバーの『アンダー・ザ・スキン』を読んで、オーウェルの『動物農場』に似ているかな?と思ったのがきっかけで、再び読むことにしたのだ。

ここに『アンダー・ザ・スキン』がなかったなら、そもそもブックプラスがなかったなら・・・、そう思うと、これからもブックプラスはチェックしなくてはならないシリーズである。もっとも、『アンダー・ザ・スキン』と『動物農場』は似ても似つかないものであったけれども。


2002年01月25日(金)
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 ぼくたちの終わらない夏(B+)/クリストファー・ライス

1)冒頭の書き出しはなかなかいい。ジャンルはヤングアダルトだと思っていたけれど、これってミステリー?と思わせるような、ちょっとゾクゾクした感じ。と思いきや、えっ!ホモ小説?な、なんですって!?とびっくり。

男の子3人、女の子1人の幼馴染が成長していく過程で、さまざまな事件が起こる。その根底に流れているものはやっぱり同性愛というテーマなのだろうか?かといって、そのことが特にクローズアップされているわけでもない。1つの事件に対して4人それぞれの、そのときの状況が克明に描かれている。また、彼らの家族や周囲の人たちについても。場面がころころと変わり、現在と過去を行ったり来たりする小説はよくあるが、これは年代を追って順に書いてあるので、登場人物の多さに比べて混乱は少ない。


2)後半に入り、いよいよ物語も核心にふれてきた。やはりメインのテーマは同性愛というか、ホモ?赤裸々な描写もあるのだけれど、それがあまりえげつなくならないのは、割と淡々とした語り口で、事件を克明に描写することを心がけているせいだろうか?

あまり作者の感情というものは見受けられないが、登場人物ひとりひとりの苦しみや悲しみが、よく表現されている。たたみかけるように語られる物語は、次から次へとページをめくらせる力がある。

しかし、男の子たちの苦悩と共にあるのが母親たちの苦悩だ。ホモという状況を描くのも結構難しいだろうと思ったが、クリストファー・ライスはアン・ライスの息子で、クリストファーにも母親の影響は大きいのだろう。アン・ライスのデビュー作も、バンパイアものだけれど、たしか同性愛を描いていたのではなかったっけ?アン・ライスの息子であるということで、その資質を受け継いでいるとも思えるし、小説を書く環境に恵まれているとも思える。


3)本の好みは人それぞれなので、普段はめったに「おすすめの本」というのは口にしないのだけど、この本はぜひ読んでみて欲しい本だと思った。

ホモやゲイといったテーマなのだが(同性愛についてはここではノーコメントにしておくが)、とにかくよく書かれている。23歳のデビュー作とは思えない、見事なストーリー・テリングだと思う。一度も退屈な部分がなかったのは賞賛に値する。母親譲りの神秘的なイメージと、ミステリーの謎解きとを合わせ持ったこの物語は、淡々と描かれていながらも、作者自身の心の苦悩をあらわしたハイスクール時代の描写がきめ細かく生き生きとしていて、涙さえ誘う。

しかしポイントは、大人になるにつれて周囲がみな屈折していくのに、おそらく著者の分身であろうと思われる主人公だけは現実をしっかり受け止めながらも、何も変わらないことだ。それが今時のポストモダン的な小説とは大きく異なる部分。だいたいは主人公が暴力やドラッグなどに染まり、わざと行儀の悪い生き方をしているような話の多い、ポストモダン小説嫌いの私にとっては驚きでもあり、新鮮でもあり、23歳の今時の若者がこのような小説を書いたことを、非常に嬉しくも思った。

物語は4人の幼馴染みの人生だけでなく、彼らの周囲の人間の人生までも描き出しており、それぞれの年代の苦悩というものもわかる。若干23歳にして、鋭い洞察力だ。もしかしたら、著者自身がいじめられ、悩み、苦しんだ結果なのかもしれない。

余談だけれど、登場する男の子が例えどうしようもない不良でも憎めず、みな魅力的なのは、著者自身が同性愛者のせいなのだろうか?


2002年01月24日(木)
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 テリーと海賊(B+)/ジュリアン・F・トンプスン

1)テリー・タリーは16歳と8ケ月。大人の束縛から逃れて、いざ永遠の楽園、カリブの島を目指して家出を決行! ところが、船は嵐に遭い、海賊に捕まって南の孤島に撮れ去られる。さてさて、テリーの運命やいかに…!

ジャンルはヤングアダルト。
最近ヤングアダルトものの翻訳と言えば、なぜか金原瑞人氏が起用される。たしかにフランチェスカ・リア・ブロックの『ウィーツィー・バット』はよかったが、それを「なかなかいいじゃん!」と学生に褒められてからというもの、全て同じような訳になってしまっていて、この『テリーと海賊』もその例にもれない。

そういう懸念を持って読み始めたので、ああ、やっぱり!と思った時には、がっかりを通り越して、怒りさえ覚えてしまった。少なくともプロの翻訳家なんだから、ひとつ上手くいったからって、全部それと同じように訳さないでよ!ったく!楽しい物語だと思うので、原書で読める人は原書で読んだほうがずっといいだろうと思う。

2)これって、一種の「ブリジット・ジョーンズの日記」的な面白さだと思う。毎日あれして、これして・・・という記述。そこにちょっとした冒険とちょっとエッチな話が混じって、今時の若者言葉で軽く進んでいく。割と正直に赤裸々に感情を表現していて、小説というよりもやっぱり日記に近い感じ。なので、面白い。でも、原書で読めば、もっと面白いだろう。

3)翻訳がどうのこうのと言ってはいたけれど、それをあまりある面白さだった。アメリカの人気コミック『テリーと海賊』をもとに書いた小説なので、コミック的な軽妙さがあり、場面ごとに絵が思い浮かぶよう。登場するキャラクター達もそれぞれ個性的で、それぞれ魅力的。これもまた絵が思い浮かぶようだ。こと細かな描写は、やはり日記的。

これまでの海洋冒険小説と違うのは、行った先が絶望的な無人島というわけではなく、表向きは無人島だが、そこに住んでいた海賊は文明的な生活をしていて、周りにはアメリカの一般的商品があふれているということ。

それと、主人公のテリーの性格が前向きで明るく、けして世をはかなんで・・・というような考えを持たないのと、ちゃんとした常識も持ち合わせているのが救われる。例えば、人を殺してはいけないとか、むやみにエッチしたらいけないとか・・・。家出はしたけれど、大人に反抗したわけじゃない。「翼を広げよう」というあくまでも前向きな一大決心だったりするのだ。人殺しも暴力もあたりまえのように書かれている物語が氾濫している中で、健康的で明るい、ほっとする物語だった。


2002年01月23日(水)
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 アンダー・ザ・スキン(B+)/ミッシェル・フェイバー

1)読み始めはうげげ!と思ったこの小説、だんだんはまってきた。それというのも、主人公のイサーリーという女性は何物なのか?という好奇心がわいてきたから。動物と人間の立場が逆転したら・・・というこの話、イサーリーたちは自分たちを正常な人間と思い、我々人間を動物だと見なしているのだ。

ここで疑問なのは、「人間」という言葉はどんな生物に対して使われるものなのだろうかということ。我々人類は自分たちを「人間」だと思うが、我々が動物だと思うであろうイサーリーたちは、自分たちこそ「人間」だと思っている。ここには翻訳上の問題もあるのかもしれないが、原文ではどうなっているのだろう?

そして、動物を人間に変身させるほどの外科手術のできる高度な文明を持つ、イサーリーたちは何物?どうやら人間(ヴォドセル)を捕まえ、太らせて食料にしているらしいのだ。生々しい記述もあって、たしかにうげげ!なのだが、彼女たちが何物かを知りたいという欲求が、先へと進ませる。ジャンルとしてはSFっぽい。

2)結局、主人公は何者なのか最後までわからなかった。文章のあちこちからなんとなく想像するところでは、犬のような生物で、地球の地下からやって来ているのではないかということ。なので、地下にはない地上の自然を非常に美しいと思っている。

それにしても、例えば元の姿が犬だとして、それを二足歩行にし、顔も体も人間に近い状態に整形するというのは、考えるだけでも大変。なぜそこまでして人間の肉が食べたいのか?少なくとも主食ではないようで、明らかに贅沢品のようだ。それに、動物が人間を襲う事件もないわけではないのだから、動物の姿のままでも十分狩はできるだろう・・・なんて思ってしまうと、この話は成り立たないのか。

奇妙な小説で興味はそそられたけれど、やっぱり気持ち悪いし、最後まで正体が明かされないのは欲求不満になる。話の起承転結の起と承で終わってしまったという感じ。


2002年01月22日(火)
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 絵本

The Great Goose Hunt/Selina Young
Before Goldilocks/Vivian French
Little, Trirrill and the Birds/Lucy Coats
The Twins and the Wet, Wet, Wet/Alan Gibbons
The Topsy-Turvies/Francesca Simon
Wolfman/Michael Rosen
Quacky Duck/Paul and Emma Rogers



2002年01月21日(月)
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