+シコウカイロ+
此花



 汚。

汚れているのはこの世界だった。

美しい世界に もしも生きていたなら
誰もその身に黒ずんだ罪を纏わなくてすんだろうに。

汚水の流れ込むドロドロとした水の中で
呼吸できずに苦しむ魚のように
喘ぐ必要もなかっただろうに。

奪い合いを繰り返し
何時の間にか何が欲しかったのかすら
忘れてしまった人々よ

語り掛けた言葉は
意味も無く沈んでいく
音も出さずに

死んだコトバの配列が
まるで墓標のようにたたずむ・・・

2001年04月28日(土)



 

静寂の中
水面に黒く澱んだ

投げ入れた遺物に
精神は反発した

静かだった水面に広がる波紋は
共鳴し響き合い
やがて覆い尽くす

吐いた火は消えること無く
毒は身体を犯し続ける

過ちと解かっていても
屈辱に耐えるのに飽きたのだろう

信じることの行為も
掛け違えている ボタンのようにズレている

ただ
君が吐いた ため息が
君を信じている人を侮辱した

それが
空しかった

そして
許せなかった

この世界を愛していたのは
君だけではないのに
君のため息一つで崩そうとしないで

修正することにも飽きた
足並みを揃えるのもウンザリだ
身勝手な政治家の決断に
躍らされる
「貴方が戦地へ赴くわけでもない」

見下すだけなら誰でもできる


ここにきて
ちゃんと見て

君にとって何が一番重要で
大事だったのか

消えていく大地も
風も 鳥も 人も
全ては 空しく声を上げる

君は自分だけを見ている。




ここにきて
初めて胸の痛みを知る。

自分のではなく
血を流し消えていく人々の
痛みを。



僕の周りの 血の塊を。

2001年04月26日(木)



 人の価値。

遺伝子関係の研究をしている友達に
この未来に起こりうる
または
世界を考えてくれと言われて その時は
翼が欲しいと言った。
そしたら空で交通渋滞が起きんだゼーとか
冗談で言ったが

現実には羽のある異端者として
存在する事が許されずに
居場所を求めてさまようのだろう

大体羽がどこから生えるかもわかんねーじゃん?
くちばしかもしんないし
鳥の足 爬虫類の肌
醜い鼻

在るものは有るべき者が所有し
そこに在るから美しいのに。
造り替えたところで
それは
君の一部にすら成り得ないといのに。
たとえ背に生えても
白く美しい天使のような羽とは限らない。
そうした幾人もの犠牲者をひた隠して
一握りの完全なる者が世界を支配する。

人は人を超えられないし
人を創ることも出来ない。

過ちを犯しては
都合よく懺悔を繰り返す
ここに神が創り出した
愚かで滑稽な遺伝子組替生物が
生きていることにも気付かずに

作り出した可哀相な生物を
支配して楽しむ君は

どちらが
手のひらに囲われているのかを
知らないで生きていく

ちょっと視点を変えれば
わかることなのにね

人はそんなことも
忘れてしまったんだね

2001年04月25日(水)



 空想

おいてかれるのに慣れていて
追いかけることはしなかった。
今のここに嫌気は差しても
そこから出る勇気を持てなかった。
今がシアワセだと無理矢理思い込ませた自分に
吐いて出る嘘ばかりが空しく消えていく。

真実を見ようとしない私に
誰が何を投げても
答えることは出来ない。
かたくなに閉ざし続ける
この世界を守り続ける

悪戯に手を出す
君達が嫌いでたまらない。
それでもそんな中に
必要性を垣間見たり夢見たり

滑稽な生き様だけが
人々の目に映るのだろうか

ここには在らず。

夢を見て跳ぶ世界は
電車の入るホームのざわめきからの
脱出口だった。


痛ましい姿を
万人の目にさらし

朝の
つまらない日常に
グロテスクな華を添えよう。

朱色の血潮が
灰色の空を鮮やかに染める

暗く湿った空気が空に昇り
熱い雨が
カラダにささる。





夢は現実に見るもの。








起こることのない
理想の空想

伸びる影だけがただ長く
闇に広がる。

2001年04月19日(木)



 月の雫。

秋の夜は
空気が澄んでいる

静まり返った
冷たい空気が心地よく

明るい月が
地上を照らしている

月下美人の花が咲いた

白い透ける肌のような
その美しくなめらかな肢体からは
夢見心地になるほどに
甘い香が溢れている

月の雫のように
輝くその姿は

一夜の幻

命とは
何と儚く美しいのだろう

それは夢へ誘う甘い香

遠い 異国の地
アルハンブラ宮殿の庭園の
真珠の受け皿を溢れさせる
噴水のたもとに

この花が満開で
月下に照らされている

そんな夢を見る。




2001年04月15日(日)



 回路


浮世離れした思考回路の中で
かなりキチガイじみた生活をしていた。
気がする。
現実逃避は今さっき始まったゲームではないのだが
最近は妄想が暴走する辺りヤバイかもしんない。

認めちまえば楽なのに
悪魔が耳でササヤクのさ

「お前ならできる」
ってね!性質が悪ぃゼホントにさー
何を根拠に言ってんだっつーの。
お陰でヤバイくらい自信過剰のアイツは調子に乗るし
ドウシヨウモナク落ち込みの激しいアイツは
恐ろしく凹んでる。

オーバーヒートしながら最悪のコンディションで
疾走する真紅のスポーツカー
オープンウィンドウから身体を乗り出して
叫び声がモーターと絡み合って
流れる熱い血はニトロの匂いがする。


悪魔のささやきは
極限まで俺を追いつめていく
上り詰めた坂の先にあるのは
DEATH or HEAVEN?
落胆する太陽を嘲笑いながら
空しい声は海に吐き捨てて

要らないしがらみも全部
お前ごと
捨てたら

出会った頃の俺より
更に恐ろしく冷たい血が
このカラダの中 廻って

二度と笑わないと誓うよ
お前にだけに見せたかったものだから。


俺の心は永遠に閉ざされ
俺はまたあの闇の中へ戻る。


2001年04月14日(土)



 煌。

死んだコトバを
いくら書いても
伝わるものは
何も無い。

蠢いた 言の葉の
そのつぶやきに耳を傾け
生きた証を
そこに標した

生きたコトバを
書き連ねた

はずなのに

そこには何も残らなかった。

描いた夢も
生きたコトバも
望んだものも
果たされないことで
煌くと言うのか

それはチガウ。

ただ
環境に馴染む肌のように
その時の流れに
左右されているだけで。

死んでいったコトバ達は
一瞬の煌きのために
生まれては消え
また生まれ変わる。

そして
発せられたその瞬間に
煌きが押し寄せて
波に浮かぶ光のように
静かに輝くのだ

波間を跳ねる
魚のように

躍動する鼓動が聞こえるだろう

遠く さざめく
波の音に




2001年04月13日(金)



 終止符

足に食らいついてきた
俺に
「捨てないで」
としがみ付いた。

何もかもがウザかった。
お前のその瞳はいつだって
俺を監視して
言いたいことの一つも吐かずに
ただ黙って寄り添っていた

それが愛だとお前は言った。

そんなモノ 必要なかった
ただ一緒にいれば
数倍楽しいんじゃないかと思ったから
前より確実に近づける方法を選んだだけだ
なのに
お前は前より愛を意識して
どんどん慎重になって
やがて何も言わなくなった

そうさせたのは俺なんだろう

だから「別れよう」と言った。

お前は泣いた。
俺の心もどこかで泣いていた。


2001年04月11日(水)



 雪蝶

雪下の花を求め

紅い蝶がひらひらと舞っている

春はまだ先だというのに
何故か生まれ出でたソレは

ひらひらと舞いながら
雪が溶けて 露となり消えるように
美しくも儚いのであろう

しかし
この違和感たる景色が
妙に胸を打つのは

そこに
生命の神秘と
たくましいまでの
生命力が

限りなく広がる灰色の空を
艶やかに彩っているからなのかもしれない。


2001年04月10日(火)



 流。

人として生きるには
人の中で生きなくてはならない。

それぞれの境界線は
ゆるやかにあたたかく
その流れを少しずつ交わらせながら
お互いの存在を認識し
そこに己の存在を確認する。

人として生まれたがために
味わう業苦もまた
人であるため。

故に そのなかにほのかにある
潔い流れの中に光るものの価値を
知ることができるは
人であるからこそ。

その境界線を広げて両手に受け入れる物が
今よりも多くなれば
傷つきもするし 苦しみもする。
されど
柔らかな温かい感情に
抱擁されることもある。


見出される輝きは 十人十色。


人として生まれたことは
人でしか味わえない幸福のためにあるのだろう






2001年04月09日(月)



 死体検証。

生活様式

紫斑 カラダ

死亡推定時刻

午後三時。

死因

空腹につき
ガシ。

夕方
息を吹き返す。

犯人の追跡

反対に襲われ
本日二度目の検死。

死因

退屈により
自滅。
そのまま霊安室のベッドに横になる。

明日の起床は7時。
目覚ましは枕元に置いてクダサイ
という遺書を発見。

翌朝、
朝叩き壊された時計のみ発見される。

死体は行方不明。



朝食を食べているのは
生きているから死体じゃないもの。

2001年04月07日(土)



 人間横丁

根性曲がりの部屋は
随分歪んでいて
お茶を入れてもらったんだけど
注がれるお茶まで根性曲がってるから
カップに入らずみんなテーブルに落ちてしまいました。
花瓶のお花もあらぬ方向を向いているし
その部屋に住んでいるトモダチも
やっぱり曲がってしまって
何だか苦笑いな一日でした。

ちなみにお隣に住んでいるのは
「融通利かない」さんで、
お向かいには
「嘘ばっかり」さんでした。

生活するのが大変そうな町だな
と思いながら
帰り道をいそぐ。
夕やけが尾をひく
背が伸びた影法師。


根性曲がりの角を曲がれば
そこは人間横丁


色んな人に出会う場所。

2001年04月06日(金)



 自尊心とエゴ

自分にはプライドなど無いと思っていたのだが
ある日、友人にこの中で一番あるのは
ワタシだと言われてそれから少し考えるようになった。
プライドって何?
私のイメージではコウマンチキで自慢話ばかりする
ような人だと思っていたのだが
そういうことでは無いらしい。
自分の考えが絶対でそれに反発する者に敵意を持つでもないらしい。

結論として
頑固に似ているものらしい。

自分の意見を曲げなかったり
認めなかったり
何かにポリシーがあって
それに対しては正論で勝負する。
結局、
譲れない何かがあってそれを外敵から
守ろうとする
守っているということが
プライドの塊〜
ということのようだ。

自信過剰。

何かと悪いイメージで使われる「プライド」だが
他人と比較して、皮肉になったり
自己不信になったりして落ち込むより
アンタなんかには負けない!
と頑張る方が、潔く気持ちがいい。
(まぁ言われた方はえらい不愉快だと思いますが(笑))
我を通し過ぎて周りの意見を全く聞かないのではなくて
良いトコだけは認めて吸収するのが
頭の良い人になるコツでしょう(笑)

プライド=エゴっていうのもある。
傷つきたくないという思いが強すぎて
自分を否定する人を敵視してしまうということもある。
エゴで作った壁は先のミエナイ迷宮みたいなものだ。
そこに迷い込んだのは確かに壁の向こうの人だったかもしれない。
でも
そこから君を救い出し、手を差し伸べる人もまた
壁の向こう側にいる。

待ってるだけじゃ
気付いてもらえない。

せめて壁の上まで登らなきゃ
君の姿が見えないよ?
壁の下で君を見上げてる人がいるよ?

君を探している人に会うために
自分から壁の向こうに探しに行く。

自分のためじゃない。
僕を探している君のためにね!


2001年04月05日(木)



 壁の手

ふと横をみると手が生えていた。
私の部屋の壁からだ。
ノックしてみたが返事はない。
壁に大穴をあけて寒い思いもしたくないので
そのままにしておいた。
外は雨。
ジメジメする空気は重くて
カビでも生えそうな勢い。

カビ・・・

ふと壁の手を見る。
カビてはいないようだ。
そういえば生きているものには
そういったものは寄生できないという話を聞いたことがある。
じゃあ少なくともこれは
ユニークな人が、私の部屋に手を突っ込んでいる
ということになるのだろう。
脈を取って見るが、ない。
そんな気がする。
まぁいっか。
きっと低血圧か何かだろ。

夜中に何かカタカタと音がした。
なんだろうと思って
見上げたら、壁の手が揺れている。
出て行くのかなぁ〜と思ったら
手は壁の向こうに消えていった。
その日は
電気を消して寝直した。

次の日
友達にそんな話をして
ふと思い出したのだが、
私の部屋はちょうど端なので壁の向こうは
外だ。
しかも私が住んでいるのは14階。

きっとロッククライビングかスパイダーマンだったんだろう
ということになって
今も同じ部屋でこれを打っている。


2001年04月04日(水)



 二つ目のキュクロプスの話。

高い嶺の連なる オリンポスの山々の一つに
巨人キュクロプス達の住む国がありました。
キュプロスには目が一つしかありません。
でも彼にはどういうわけか、目が二つありました。
仲間のキュクロプス達は、二つ目の彼が自分たちの姿と違うので
除け者にしました。
彼はいつも一人ぼっちでした。
ある日、仲間のキュクロプスの一人が
「お前は二つも目があるなんて、人間みたいだ」
とからかいました。
それを聞いた彼は、住み慣れた山を離れ
人間達の住む町へと降りていきました。

町に来てみると、どこを見ても二つ目を持った生物が
たくさんいます。
彼は喜びました。
でも生まれて初めて見る自分以外の二つ目の生物達に、
どうしたものかと山かげからこっそり様子をうかがっていました。
するとどうでしょう、向こうから一つ目の人間がやって来ました。
その男は顔に黒い眼帯をまいていたので、キュクロプスは自分の仲間だと
思い、声をかけました。
「おい、そこの一つ目、どこへ行く」
眼帯の男は山かげから自分をのぞく大きな男に驚きましたが
これが噂に聞く巨人キュクロプスだと思い、平静を装って答えました。
「私は今から家に帰るところだ。しかし、あまりにも長く人間の中で
暮らしていたので帰り道を忘れてしまった」
それを聞いたキュクロプスは、豪快な笑い声を立てたので
辺りの地面を揺らしました。
「俺はその家から今来たところだ。お前、人間の所に住んでいたのか」
「ああそうだ」
と男は答えました。
辺りは暗くなり、二人は火を焚き近くの洞窟で一夜を明かすことにしました。二つ目のキュクロプスは、自分が何故仲間のいる国から出てきたのかを男に話すと、
あれやこれやと人間について訪ねました。
「人間は恐ろしい生物だ」
と男はキュクロプスに言いました。
「あんな小さい愚かな奴等になにができる」
キュクロプスは小馬鹿にして信じようとはしませんでした。
「そうか、信じないならそれでもよかろう。ところで
もしお前が私に家への帰り道を教えてくれたなら、俺はお前を
一つ目にしてやることが出来る」
と男が言いました。
「なんだと、そんなことできるものか。でも聞いてやる言ってみろ」
「まずは家の場所が先だ」
男に言われキュクプロスは少し悩みましたが、
教えてやりました。
「さあ教えたぞ。次はお前の番だ」
男は準備に時間がかかると言って、キュクロプスに先に眠るようにいいました。
よく眠れるように酒も与えました。
そのせいかキュクロプスはすぐに横になってしまいました。
「なぁ相棒、そういや宝物はどこに隠したっけなぁ」
心地よいまどろみの中、キュクロプスはうわごとのように
三本の川が交わる山の中と答えました。

キュクロプスが寝入ったのを見ると、男は町に飛んで帰り町中の人間を集めて
三本の川の交わる山に行き、キュクロプスの宝を奪いました。
それから町で一番強い槍を持ち、その矛を火で真っ赤になるまで焼き、
キュクロプスの眼目掛けて突き刺しました。
地獄の底から湧きあがるような恐ろしい声を上げ、キュクロプスは
叫び男を呼びました。
男は岩陰に隠れながら
「人間だ!人間が来た!」
と大声で叫びました。
見ると山のなかに、たくさんの人間達が松明を持ってこちらの様子を
うかがっているのが見えます。これは男が宝物を奪うのに集めた
人間だったのですが、キュクロプスは自分を殺しに来たのだ思ったものですから
キュクロプスは吃驚して、
「俺はこんな恐ろしい所はたくさんだ」
と叫ぶと一目散にキュクロプスの国へ帰ってしまいました。

二つ目のキュクロプスは、片方の眼がなくなって一つ目になり、
今も仲間と一緒に暮らしています。


2001年04月03日(火)
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