株式会社JOYWOW
椰子の実日記【JOYWOW】
椰子の実日記 INDEXPASTwill

2003年06月30日(月)


暇つぶしの時代

橘川幸夫大先輩とぼくは普段全く違う道を歩き、違う
人種の人とおつきあいをしているのだが、向いている
方向は同じなので不思議である。先輩の「参加型社会」
というコンセプトに対してぼくは「お祭り型市場」。
ぼくが2001年にお子様たちのeビジネス批判を出した
ら(『スロビ』)、『インターネットは儲からない』
を上梓。そして今年、『暇つぶしの時代』(平凡社)。
ぼくが『五感商品』で主張している、「物量経済
から価値経済へ」「人づくりが仕事品質を高める」
と同じ方向である。ビジュアルに「来るべき
社会」を描いている。内橋克人『もうひとつの日本
は可能だ』と共に、強くお勧めしたい良書だ。
何度でも、繰り返して読みたい。そして、ちらちら
と脳への刺激を楽しみたい。

 

2003年06月29日(日)
眠たいスリッパどもの妄言

内閣府は、学識経験者による景気動向指数研究会を
開き、景気後退局面から拡大局面に移った転換点で
ある「景気の谷」は2002年1月だった、と判定した。
これで00年11月から15ヶ月間が後退期間と認定され
た。ただ、02年2月から始まった今回の拡大局面は
一般に回復実感が薄く、すでに後退局面に入っている
可能性もある。

以上、6月7日付朝日新聞記事による。

この宙返りしているような勘違い平行棒は一体
どういう思考をすれば出てくるのか。内閣府におる
のはアホばっかりか。「学識経験者」は普段スーパー
に行ったこともないのか。「拡大局面」とはどの
お口が言っているのでちゅか。

いやはや全く、役人と学者の言うこと、なすこと、
なぜこうも頓珍漢なのか。スリッパはいて仕事
しているとこうなるのである。

 

2003年06月28日(土)
椅子取りゲーム

昨日「漢字で表現できるかどうか」という秘策を書いた。
その続き。これらはSurfin'ネタなのだが、とにかく滅法忙しく、
Surfin'にまとめる時間がないのでここに書く。

要するに、university(総合大学)からcollege(単科大学
カレッジ)になれ、ということだ。あれもできます、これ
もできます、では、目の肥えた日本人を始めとする、感度
高い生活者にアピールできない。かつ、そのカテゴリーの
中で2つの中に入らなければ記憶してもらえない。

ハンバーガーショップ。
コンビニ。

いまあなたは一つか二つのブランド名を浮かべている。
三つめは、ない。つまり、あるカテゴリーの中にある
椅子はたったの二つということだ。そう、ブランド戦略は
椅子取りゲームなのである。
英会話学校数あれど、2003年6月28日現在、多くの人は
「ノバ」を思い浮かべる。椅子取りゲームの勝者(だけ)が
マインドに残っているのである。

 

2003年06月27日(金)
特別に奮発

あまり明かしたくない大切な秘密なのだが、本サイト
へせっかく来てくださった皆さんだけ特別に
「使えるブランド戦略」を伝授しよう。

ブランドが生活者・顧客のマインドでポジショニング
に成功するか、一敗地にまみれるかの境目は
「漢字で表現できるかどうか」である。

(断っておくが、ここでいう成功する・しないは、
あくまでポジショニングについての話である。
ブランドとしての成功はまた話が違う)

例えば、JRは漢字で表現できる。「階段」である。
ダイソーは「百円」だ。

ここから先は、また何かの折に。


 

2003年06月26日(木)
家賃なんて、儲かってからでいいや

駅前のさびれた商店街に、若者たちが中華料理店を
開店した。今年1月末のことだ。以来ずっと気には
なっていながらなかなか行くチャンスがなかったの
だが、今日ようやく行けた。中国人ばかりでやって
いるので日本語がややあやしいが、しかし、フロア
を動くさまを見ているだけで、ああこの店は旨そうだ
なあ、とわかる。ランチメニューをプリントした紙が
ダイソーで買ったコピー用紙の表紙(ダイソー
とか、『A4』とか印刷されたもの)の裏を使っている
姿勢からして、好感がもてた。開店当初に無用の
お金を使わない。いいことだ。
営業時間は午前11時から午前零時まで。がんがん
働いている。好ましい。

味は予想通り、良かった。ここは昨年まで呉服屋
だった場所だ。典型的な「昔の商店街の呉服屋」
で、何の努力も勉強も経営上の工夫もしていない
店だった。思うに、苦戦している商店街の商店主
は後継者がいないだのなんだのと怠けていないで、
このように、若者へ店を貸してやったらいいと
思う。開店一年間は家賃は要らねえし、商売
のイロハをおれから盗み取れ、というくらいの
未来を見ることの出来る商店主、少なくない
はずである。お金はないが、元気はある若者との
このようなコラボレーションができれば、商店街
の明日は明るいと思う。

 

2003年06月25日(水)
Norwegian Wood(This bird has flown)

これまでだれか人のために演奏する、という意識は
あまり持ったことがなかったが、今度の
人生劇場ライブ(7/19)で、やる。
『Norwegian Wood』。
「その人」はビートルズが好きだった。
「その人」の亡くなったある日、街を歩いて
いたら、どこか商業施設のBGMで、『Norwegian』が
流れ始めた。「その人」が聴きたい、と言っている
ように聞こえた。

ハープを中心にするか、それとも歌か。
真剣にアレンジを考えている。

村上春樹『ノルウェイの森』は「死」について
色濃く描かれた小説だったんだなあ、とあらためて
思う。そして、ジョンの書いた詩も、また。

PS.
上の文章を書きながら、英語で書いたほうが
ぴったりくる文章ってあるんだなあ、と
初めて思った。英語が似合う内容だったね。

 

2003年06月24日(火)
フセインさん、おでかけですかあ?

「真なるものは創られたものである」
veruum=facutuum。中世イタリアの哲学者
ヴィーコ(Vico)の言葉だ。彼は世の中の
ことはすべて説明できる、と主張するデカルト
に対して、そんなもんじゃあねえだろう、と
反旗を翻した男である。

別の意味で、「真なるものは創られる」と
いう実感を感じている。米国ブッシュ政権の
なりふり構わぬ情報操作には、本当に嫌気が
さすぜ。今頃になってフセインが息子と
のこのこ出かけたりするものか。

 

2003年06月23日(月)
福田恆存版『オセロ』

翻訳する際常に先達の上質日本語翻訳を参考に
することをならわしとしている。デビュー作
『パーミションマーケティング』は鴎外だった。
『舞姫』を熟読し、香り高い日本語を身体に注入し
てから翻訳にかかった。

さて、現在翻訳中の作品では『オセロ』だ。
中学の時読んで以来だが、いまあらためて手にする
福田恆存氏の訳は見事というほかない。舌を巻く。
福田氏はご自身も演劇演出をされるので、「声に
出して読める」脚本となって訳出されている。
あまりに面白く、翻訳仕事にさしさわりが出るほど
である。

翻訳は、英語ができればできるというものではない。
同じ日本語でも私が医学書を理解できないように、
英語が得意だからといって良質の翻訳ができると
いうものではない。その意味で、最新マーケティング
の潮流も知っておかねばならず、はなはだ労力のかかる
仕事なのである。でも楽しい。いわば、「しんど楽しい」
しあわせな仕事といえる。

 

2003年06月22日(日)
小僧から修行しなさい

「学問所」と表札を掲げると近所の小学生が
きませんか、とある人から言われた。

歓迎だ。来たら入門を許可する。そして、
まずPalmtreeの小僧として掃除、洗濯、炊事、
靴磨きから教える。おつかいも時々してもら
おう。近所の顧客への手紙配りもやらせよう。
郵便局など煩わせず、手配りさせるのだ。
スタッフが腹減った時には夜食も作らせる。

明るい日本のために必要な子供への教育は、
実はこういうことなのだ。

 

2003年06月21日(土)
蚊と相撲を取る

蚊と相撲を取るなどという発想が、はて一体どこから
来るのか。かと思えばきのこがにょきにょきにょき
地面から生えてくる。いずれも夢には出てきそう
なイメージである。実際、きのこが地面から生える夢を
観た知人が「変な夢を見てね・・・」と話すのを聞いた
ことがある。

蚊と相撲(蚊相撲)も、きのこ(くさびら)も共に
狂言だ。あの独特の能舞台で演じられる。本で読んだ
だけなので、舞台になった時の異空間の出現には立ち
会っていない。しかし、本だけでも充分想像力を刺激
してくれる。そういえば昨夜観た夢では壁前面がガラス
窓のオフィス。窓に向かって机が並び、社員は一所懸命
に仕事している。ビルの5Fだか何かだ。窓は海に面して
いる。洪水らしく、窓を海の高波が叩く。ぐわっしゃーー
んと叩く。窓ガラスの隙間から海水が漏れている。
にもかかわらず、皆、仕事している。

 

2003年06月20日(金)
待たせる

仕事で某大手総合病院に朝9時10分前に入った。
患者行動をシュミレーションするため、初診者として受付に行った。

病院を出ることができたのは午後12時10分である。医師あるいは看護士
と接触していたのは20分。あとは「待ち」。いつ呼び出されるかわから
ないのでずっと椅子で待たねばならない。待つこと90分。通常のぼくの
講演一本分の時間だ。

「**時ごろになる予定なので、そのころまたお戻りください」
とか、TDLのファースト・パスシステムとか、いわゆる「人をさばく」
ノウハウはいくらでも世の中にある。にもかかわらずこの有様。
顧客(患者)と接触する人たちは皆忙しそうにしているが、実は
ひまな人はたくさんうろついている。民間企業であればおそらく
この人数の半分以下でがんばっているはずだ。
総合病院の改革案についてはいずれどこかで発表できるはずだ。

 

2003年06月19日(木)
自転車の国

大阪は自転車の国である。出張時など郷に入っては郷に従えで、
朝出かけるとき自転車に乗ると周囲全員が自転車で並んで走る。
「上海の朝は早い・・・」といったテレビCMのナレーションが聞こえ
てきそうな感じだ。そう、大阪はまんまアジアだ。そういえば
みんな怒ったような口調で話す。スーパーは貨幣単位が円ではない
のかと思うくらい安い。大阪を離れて3年になるが、じっくり現場を
見てみると、新しい発見が一杯である。現在のぼくの楽しみは
スーパーの棚調査だが、まず売れそうもないもんじゃ焼セットなど
が置いてあるのも楽しい。一家に一台というたこ焼きセットが売って
いるのもさすがである。

 

2003年06月18日(水)
のこぎりを引く? 押す?

米国GEに勤務したことのある人と話していて面白いことに
気づいた。ぼくがGE製冷蔵庫のぽんこつぶりをSurfin'で書いた
ことをもとに話していたのだが、米国では電球は切れることが
前提で商品および付属品の設計をする。ところが日本では「長持ち」
させることを商品設計の基本思想とする(実際に長持ちするか
どうかは別の話である)。この話をしていて、日本人はのこぎりを
「引く」が、米国人は「押す」と発想することを思い出した。

 

2003年06月17日(火)
死ぬかもしれない

医療現場におけるひどい話。

その1;
救急車でかつぎこまれたばかりの患者が仕切りの向こうに
いるにもかかわらず、
「なぜもっと早く連れてこなかった。あのまま死んだら
死亡診断書にかけなくなるんだ」
「死ぬかもしれない」
などと狼狽している家族に向かって毒を投げる。
人間、どんなに衰弱していても、聴覚はしっかり残っている。
患者にはまる聞こえなのである。
不安な家族に「死ぬ」などという無神経な言葉は
強者によるハラスメントである。

その2;
ナースステーションで大声で笑いあう。
隣は病室で筒抜け。心臓のペースメーカーの音も聞こえない。

その3;
シーツを取り替えながら、そこにいない付き添いの家族の悪口
を、ものも言えないほど衰弱している患者に言う。

いずれも実話である。医療改革、このあたりの現場から進めなけ
れば、医師=強者、患者と家族=弱者 という図式は変わらない。

 

2003年06月16日(月)
つめかける債権者

お勧めの本をご紹介しよう。
『どん底から這い上がった12人の経営者たち「会社復活」』
(経林書房)

本書は畏友原 正紀氏(リクルート)が共著で上梓した関係で
出会うことができた。
ほかの著者も全員中小企業診断士であり、
経営を科学的観点からも観察できる達人ばかりである。
MBAホルダーなどの「秀才」が書いた経営の本は
ややもすると無味乾燥なアタマでっかちになりがちだが、
本書の魅力は現場で働く人々の体温が伝わってくる。
会社のV字回復といえば、日産のゴーン革命がもてはやされているが、
しかし、日本の会社のほとんどが中堅企業であり、ゴーンが
右向こうが左向こうが、関係ないのである。本音で言えば。
本書に登場する会社はみな中堅企業ばかりだ。
和議申請、つめかける債権者、経営者が病に倒れる、
債権回収機構との折衝、言うこときかない古株幹部、など、
「あるよなあ」という話ばかり。
すべての中堅企業経営者に、お勧めだ。
そして大企業にお勤めの人にとっても、
「仕事力」をつけるため、必読と信じる。

 

2003年06月15日(日)
スローなEマーケティングに帰ろう

ここにきてEマーケティングの講演依頼が続いている。
一社は某大手メーカー社内セミナーで、もう一社は
公開だ。バリューコマースが主催する
E-Marketing Seminar 2003
浮ついたパソコン坊や、ネットねえちゃんたちが淘汰
されたいまこそ、地に足のついた「商売力前進」のための
Eマーケティングについて徹底的に語ろう。
限定150名様なので、お申し込みはお早めに。

 

2003年06月14日(土)
赤字を出した幹事はクビ(世間ではね)

道路公団の決算数字を見るとボロボロである。
42路線のうち半分の21路線が赤字だという。
これは利用者として無茶苦茶腹立たしいのだが
気のせいか。本来、道路公団は宴会の幹事、
町内会の会計みたいな役割であり、利用者から
「お預かりした」お金を運用して道路を経営
するのがスジである。経営の結果黒字が出たら
「おかげさまで黒が出たので来年一年間は無料
にします」と言うのが本当の姿だ。間違っても
赤字になってはいけない。宴会幹事が赤字を出した
ら、まず最初にかっこ悪いと思う。次に赤字が
出ましたので追加で徴収します、というのも
美学に反するよなあ。こころある幹事は自腹を
切って穴埋めをする。それが大人のスジである。

公団は赤字を「景気低迷」とかいう眠たい理由で
片付けているが当然来年はSARSとイラク戦争を理由
にするのだろう。なんだか書いていて自分が「正しい
ひと」のようで気恥ずかしくなってきたのでこの
あたりでやめるが、しかし、役人に経営などやら
せるほうが間違っているんだ。そういう意味で
話は飛ぶが慎太郎銀行も結局赤字でした、公的
資金お願い、になるんだろうなあ。やだよなあ。

 

2003年06月13日(金)
機内温度を上げました

休むと言ったもののこれまで毎日欠かさず書いてきたものが
欠けるのはやはり目覚め悪い。何とか時間をやりくりして
この昨日の分を実は土曜日に書いている。それにしても
国内便飛行機が週末、週内かかわらずいつ乗っても満席
なのはやはりSARSの影響で海外に行かなくなった人たちが
乗るからだろうか。先日も伊丹発の羽田行き最終便が満席
で、なぜかというと姥桜たちの団体旅行である。あまりの
重さに離陸するまでニ、三回機体が滑走路をバウンドした
ほどである。姥桜たちが何を望むかというと一斉に膝かけ
毛布だ。たちまち払拭した。当然、文句があがる。彼女
たちは遠慮がない。客室乗務員「申し訳ございません。
規定の枚数がなくなりました」そんなことで許されるほど
姥たちはぬるくない。批難轟々である。どうなったか。
「お客様、機内温度を上げましたのでご容赦ください」
なんだ、やればできるんじゃねえか。

繰り返す。航空会社は客の方向を見ていない。

 

2003年06月12日(木)
足元を見る

急遽飛行機に乗ることになり、当日チケットを買ったら通常
買っている特割より5000円も(!)高かった。これって
おかしいのではないか。当日空いている席を埋めてくださ
ってありがとう、とお礼の一つも言うのがスジではないのか。
「足元を見る」という言葉はこういうときのためにある。
携帯電話利用者6300万人時代、待ち合わせにしてもかなり
アバウトで、何月何日何時、場所はどこで、なんていう
アポはビジネス以外ではもう、少ない。当日の変更なんて、
当たり前だ。
時代の空気が「待ち合わせはゆるゆるに」なってきている。
にもかかわらず旅行が一大イベントだった時代のままの
発想法で料金体系ができている。

そもそも当日どうしても乗らねばならない人に向かって
高く売りつけるなんていうのは心根(こころね)が卑しい。
この「罰金料金体系」一つとってみても、航空会社
がいかに客の立場に立っていないかわかる。やれやれ。

勝手ながら明日からしばらく日記、お休みさせて戴きます。

 

2003年06月11日(水)
ブラジルが面白い

米通商代表部ぜーリック代表がブラジルにFTAAへのお誘い
をするためブラジル入りしたが、ルラ大統領は無視した。
FTAAというのは簡単にいえば、米国の属国となり、グローバリズム
という名のアメリカリズム傘下に入りなさい、ということ
である。マクドナルドやナイキの商品をがんがん買え、
自国は下請け工場でも提供せよ、という意味だ。
まさか自分が無視されようとは思わなかったぜーリック君は
「ぼくたちと組まないなら、ブラジルは南極にしか商品を
売ることができないからな。あっかんべーっだ」と怒った。
ルラ大統領は「アホか。米国の勝手にはさせん。しかも
ブッシュが来るならともかく、下っ端が来て、ナニ生意気
言うとんねん」と、ほうっておいた。

サンパウロの目抜き通りには、ヒトラーになぞらえた
ブッシュの写真があちこちに貼られている。
大拍手である。

「グローバリズム」その実はアメリカニズムの無反省な
蔓延はまるで疫病のごとく人間を蝕む。新しい経済モデル
を、ブラジルには是非、構築してもらいたいと思う。
でも、ブラジル人はしたたかだ。次のようなユーモアを
言って、煙に巻く。

「傲慢なアメリカ人よ、国に帰れ。でも帰るときは私も
連れて行ってくれ」

(朝日新聞2003年6月11日 13版国際面記事を引用しました)

 

2003年06月10日(火)
失敗から学ぶマーケティング

講演に呼ばれた。ベストセラーの自著のおいしい
ネタばかりを満載して話した。ところが、聴衆の温度が
いまいち上がらない。なぜだ。どこがいかんのだ。
戸惑ううちに終了となり、よろよろと演壇から降りる。
主催者がちょっと待っていてくれ、と言う。
会場ホテルのロビーで待つ。講演会場からぞろぞろ出てくる
聴衆はまるで私がウィルスでももっているかのように避けて
いく。主催者がテーブル向かいの席についた。
「お世辞抜きに、素晴らしいお話でした。ただ、一つだけ、
言わせてください」

私の話ではなく、現在翻訳中の作品冒頭部分だ。まるで
自分のことのようで、翻訳にも力が入る。さて、著者は
主催者に何と言われたのか。秋発売の新刊を待て。

 

2003年06月09日(月)
チャンス!

夜までしっかり仕事して名古屋駅に着き、お弁当はクライアントの
ご厚意で頂戴していたものの、何かおつまみでもないか、と売店を
見るが20時30分ごろの時間になると人気のある弁当はことごとく
売り切れ、残っているのはいかにも平凡そうなものばかりである。
これはおかしいのではないか。

思いっきり仕事しての帰りの人にこそうまい弁当を用意して待って
いるのが駅売店の使命のはずだ。それが手前の都合で、早々と
「売り切れ御免」は、そりゃないぜ。

と憤慨しながらつまみを物色するが、なぜこうどれもこれも
不味そうな、学習参考書の回答みたいなつまみばかりなのだ。
つくわ、チーズちくわ、あられ、貝柱・・・。目をつぶっていて
も書ける。もっと知恵を絞ってほしいよなあ。

弁当にせよ、おつまみにせよ、大きな新規参入の「白紙」を
見つけた。まじで、事業を起こそうかと画策中である。

 

2003年06月08日(日)
日焼けした

早朝から塾卒業生総勢約30名と海辺にてBBQ。
協賛いただいた食品メーカー2社からビールやマヨネーズ、
ジャムが届き、スキップ社員卒業生がトマトを始めとする
野菜を持ってきてくれ、買出し部隊は朝市で魚を仕入れ、
焼きたてのパンも揃い、にぎやかな食卓となった。

ぼくの役割は例年通り場所取りである。6時半ごろから
敷物を置き、椅子に座って、近くに来るひとにう〜
わんわんと唸ったりブルースハープを吹いたりしてい
るので、幸いだれも近くに陣地を取ろうとしなかった。
おかげで広く場所を取れた。
天気もがんがん晴れ、気持ち良いBBQだった。
残念なのはブルースハープ演奏が思うように
できなかったこと。ステージでは平気なのだが、
みんなが手をとめ、注目して、じっと聞き耳を立てる、
というシチュエーションに弱いのだ。要するに
アガるのである。ろくな演奏ができず、これでまた
阪本塾軽音学部部員集めに暗雲漂った。軽音、人気なく、
現在部長とぼくの二人しかいない。しかもその部長は
美術部にも在籍しており、いつ寝返るかわからない。

今年は「ゴミをなくす」という目標があったので、
全員、自宅からマイ皿、マイカップ、マイ箸を持参で
参加だ。
おかげで帰りは燃えないゴミやビン以外は殆どゴミが
出ず、気持ち良かった。楽しい一日でした。まる。

 

2003年06月07日(土)
本日は阪本様だけに特別に

二度ほど商品を購入した通販会社から「阪本様だけの
特別企画ご案内」として麗々しくDMが到着した。

『精選 美空ひばりの世界』がご好評につき、在庫
僅少なので阪本様には日ごろご贔屓になっているから
特別にこの限定期間のみ、お分けいたします。

・・・という趣旨である。しかも「いまなら」金時計
がついている。・・・だけではなく、三大特典も
ついている。文面いたるところにある「阪本様」を数えて
みると19あった。ここまでくるとすごい。しかも
「音楽をこよなく愛する阪本様のことですから」という
こちらの趣味まで知った文面である。しかし考えてみると
「音楽は嫌いじゃ」という人のほうが少ないわけで、全員に
向けて送っている文面なのだろう。

人はこれをワン・トゥ・ワン・マーケティングという。
「顧客」ではなく「個客」であり、パーソナルな
タッチで情報を発信する。しかも「期間限定」「今だけ」
「阪本様だけの特別ご案内」で飾る。重要な部分には赤線
を引く。

・・・さらに見ていくと、「ご優待保証番号」
としてアルファベットと数字が並んでいる。申込みハガキに
印刷されているのだが、申込書控えにも保証番号が書いてあり、
「上の申込み書と同一の番号が記載されていることをご確認
ください」とある。つい、「大丈夫か?」と確認して思わず
笑ってしまった。どちらも相手が印刷した番号だ。間違うわけ
ないじゃん。ただ、こうすることによって「注目度」と「あなた
だけ特別度」が高まる。ほんと、通販の世界は日進月歩、
創意工夫に満ちていて、観察していて飽きない。

 

2003年06月06日(金)
シルバー割引はそろそろ破綻するのではないか

調べて驚いたが日本人の平均年齢が42歳という(2002年)。
65歳以上の人口比率が18%。およそ2割が65歳以上なのだ。
2043年、つまり40年後には平均年齢が50歳を超え、65歳
以上が3割以上になる。こどもはどんどん減る。ある試算
によると2050年には日本の就業人口が5000万人以下になる。

普段気になっているのが「シルバー割引」「こども料金」
というやつである。この二つの年齢ゾーンより、現役で
がんがん働いている世代のほうがお金のニーズが高く、
しかも住宅ローン真っ盛りでお金がない。つまり、シルバー
割引と子供料金は、お金がない人から絞り取るシステム
なのである。これって、おかしいのではないか?

お金を使う世代にも春夏秋冬があり、夏真っ盛りの世代が
住宅ローンも払い終えたりして冬を迎えた世代を支えている。

でもこういうことを言い出すと批難轟々になるから企業は
できない。でも、「だれかが先にやったら」ではわが社も
と、なだれのように始まるのだろうなあ。Me, tooが大好き
な日本企業だから。

 

2003年06月05日(木)
「6月1日以降は冷房を入れることとする」

電車が寒いが気のせいか。

東横線でなんだか風が来るなあと思って見たら、天井
で扇風機ががんがん回っていた。JRは冷え冷えして
いて、降りる頃にはすっかりアイスキャンデー状態で
ある。
熱帯の国では、一番のご馳走は冷房だ、ということ
を学んだことがある。たしかにシンガポールではとに
かく寒かった印象がある。
日本は熱帯でもないのに、なぜこうも冷やすのか。
季節はいま、一番気持ちいい青葉の頃。窓を開け放ち、
気持ちいい風を車内に入れたほうがよほどQOLが上がる
と思うのだが「楽なほう、楽なほう」へと現場も経営
も突き進んでいる電鉄会社ではそうはいかないのだろう。
ところがこういう会社の社長と話すと、「顧客の目線
で見る? とても大切なことですなあ」とおっしゃる
のである。何にせよ、もう懲りた。電車で移動する折には
必ず上着かセーターを持参することにしよう。

 

2003年06月04日(水)
「被災地」を歩く

原宿に行くついでがあり、その前が渋谷だったので
歩いていくことにした。明治通りをまっすぐ行けば
いいのだが歩き始めは宮下公園に上る。初めてだ。
ここは日本初の空中公園とのことで、下はよく利用
する駐車場である。隣を電車が走るので地上とみまごう
が実は電車も高架にいるのでお互い空中だ。
歩きながら一種異様な空気に何事かと身構えたら、
なんと、道の両サイドがびっしり青テントである。
まるで何か災害が起こった直後の被災地だ。
さらに寒くなったのが、そこで暮らすホームレス
が、ついこの前まで会社勤めしていました、という
風貌ばかりなのである。そういう目でみてみると、
たしかに「家」の壁には英語でメッセージ
が書かれてあったり、「文化」のにおいがする。
ぼくは大阪出身なのでホームレスをよくみているが
こんなサラリーマン的な人たちばかりで埋まっている
エリアは初めてだ。
1993年ごろ政府のカネや太鼓に踊らされ、ステップ償還
制度を利用して住宅ローンを組み、結局自己破産せざる
を得なくなった人たちが増えているときく。ローンを
組んだ人の数600万人。全員が破綻するわけではない
のだが、恐ろしい数である。サラリーマンの自己破産
理由の最も大きなものが住宅ローンというのも頷ける。
ローンを組んで手に入れた住宅が青テントというのは、
なんとも怖い現実だ。ステップ償還が政府に騙された
「天災」だとすれば、ぼくがいま歩いているここも立派な
「被災地」なのかもしれない。
そうそう、言わずもがなだが、資本金1円で起業できる、
というのもステップ償還と同じ原理で、最初の3年だけ
であり、株式会社なら3年後には1000万円に増資する必要
があるのですぞ。ゆめゆめダマされないように。

 

2003年06月03日(火)
もうひとつの日本は可能だ

内橋克人氏。かつて広島勤務時代、氏の『尊敬おく
あたわざる企業』に感銘を受け、手紙を出したこと
がある。趣旨は「自分はずっと地方に塩漬けにされ
ており、この先いつ転勤できるかわからない。会社の
意のままである。つまらん」みたいな愚痴だ。
なんと、返事がきた。お人柄の出た、いい文字で、
「非常に共感できる」という内容だった。高名な
人から手紙が来るだけで驚きなのに、しかも賛意を
示してくださっていることに大感激した。以来、氏の
発言は常に注目している。自分の著作や発言も、氏の
目に触れて恥ずかしくないものかどうか、気にして
いる。

そういう中、最新作『もうひとつの日本は可能だ』
(光文社)を読み、深くふかく考えさせられた。
帯に曰く、「呼吸する生き物としての人間という原点
に戻らないかぎり、人々が望む経済もないでしょう。
私たちはいま、もうひとつ別の方向にこそ、『未来
への暁光』をみることができるはずです」
私の「スローなビジネス」哲学の土壌に、内橋氏の
主張が色濃くしみこんでいることに、あらためて
気づいた。このような良質の本が、もっともっと
読まれてしかるべきである。

 

2003年06月02日(月)
嗚呼。世界に冠たる田舎者よ

「二ヶ国語話す人を何という?」
「バイリンガル」
「正解。では、一ヶ国語しか話せない人は?」
「アメリカ人」

というくらい、米国人はグローバルな視点が苦手
である。
米国人のアタマの中ではアジア人は全員いまだに
スリッパで歩いているし、ソニーは米国企業だと言い張る。
それを加速するのが日本政府であり、純ちゃんである。
日米首脳会談ではなく、日米主従会談の様相を呈している。

だから米国人が「イラク復興」というとき、それは
バクダッドにマクドナルドのアーチが輝き、ナイキの工場
が建設され、バナナリパブリックの店舗が開店することを
指している。冗談ではなく、本気でそう考えている。
米国人が言う「グローバル化」とは、「米国化」のこと
なのである。

 

2003年06月01日(日)
imprinting(刷り込み)

地方に出張した。JRに乗って、先頭車両運転席後ろ
で進行方向を見ながら乗っていた。『電車でGO!』
の世界である。身体を鍛えるため、常に立つように
しているのだが、どうせ立つなら何か楽しいことを
しながらと思って。
駅ホームに制服の女学生が群れていた。天気が良く、
気持ちのいい眺めだった。まるでサントリーのCM
みたいだなあ、と思っていた。ふと、「サントリー
のCMを後追いして現実をなぞらせている自分」に
気づいた。また、駅のホームで夏を表現しているの
は実はサントリーではなく、現在放映されている
企業で言うならネスレのネスカフェである。なのに
この手の光景は、「南アルプス天然水」以降、サン
トリーであるという刷り込みが自分のマインド内にできて
しまっている。また、現実が先行するべきが、テレビ
のイメージが先行してしまっている。まるでマクルーハンの
メディア論ではないか。
ブランドや広告宣伝を語る際のネタが一つ、増えた。
ちなみに「imprinting(刷り込み)」というコンセプト
は動物学者のローレンツ博士がカモの生態を観察して
発想したものである。

 

Kei Sakamoto |株式会社JOYWOW