ノート

2006年04月15日(土) 八木、10回ノーヒットノーラン

日本ハムファイターズ・八木智哉。新人、22歳。
今日、3度目のプロの先発マウンドにのぼった。
相手は強打者ぞろいのソフトバンクホークス。
斉藤との投げあいはつづき
スコアボードにはゼロが並んだ。

先にマウンドを降りたのは斉藤。
それを横目に八木は8回のマウンドにものぼる。
ふ〜と深呼吸をする仕草は大学時代と変わらない。
ストレートは130キロ台後半。
特別速くはないけど、バッターは手が出ない。
8回に2死二塁のピンチを背負うも
本間を空振り三振に。
8回終わってノーヒット。
満員のヤフードームのホークスファンのため息のなか
新人らしく走ってベンチに戻っていった。

春季キャンプのオフは全て返上し、ランニングなどに徹した。
練習の虫っぷりは創価大時代から変わらない。
「何でそんなに練習するのか?野球が好きだから」
間髪入れずに答えられたことがある。
寮にも生活必需品しか無い。
プロの世界でも変わらず野球小僧のままだ。
これがちょっぴりうれしかったりする。

日ハムは毎回のようにチャンスを作るが
あと一本が出ない完璧な負けパターン。
それでも八木は辛抱強く投げてきた。
9回、先頭の柴原にフルカウントから四球、
大村に送られ、2死二塁でバッターはカブレラ。
球が乱れはじめ、構えたところから外れる球が多くなったが
カブレラを138キロストレートで見逃し三振。
一方味方打線は、10回表に1死満塁から無得点。
残塁は12を数えた。

10回、2死二塁で松田を三振にとり、ガッツポーズをしてベンチへ。
この回で球数は150球に到達。
コーチにポンと肩を叩かれ、グローブを手にベンチ裏へ消えていった。

10回 150球 0安打 7三振 4四球 0点

ノーヒットノーラン達成。
パリーグの新人では初の快挙になる。
記録に残らないことはわかっている。
しかし、私のなかでは「八木、おめでとう」なのだ。

日ハム1−0ソフトバンク<延長12回>



2006年04月12日(水) 裏・訪問記

ちょうど2年前の春。
ある高校の練習見学に行った。
バッティングゲージの後ろに座っていたA監督(仮名)。
黒のサングラス、手には軍手、足元にはポカリ1リットル。
ちょっと、いや、かなり怖い。

話をしてみると陽気な方だった。
私が差し入れしたポカリのフタを開け飲み始めた。
1回に飲む量が半端なかったことをおぼえている。

選手たちは、それぞれメニューをこなしている。
ダラダラした感じはないが、のんびり。
ごく普通の県立高校の練習風景だった。

しかし、午後。その光景は一変する。
A監督がノックバットを持つと、選手たちの顔が妙に引き締まり
ポジションへ散っていった。
ノックスタート。
さっきまで穏やかだったA監督が黙々と鋭い打球を飛ばした。

「おめぇー何やっとるんじゃおらぁ!!!」

サングラスこそ付けていなかったが
グリっとした目が本当に怖かった。

「さっきもおんなじようなミスしただろーが!!
こらぁーちょっと来い」
と、レフトの選手をホームベースまで呼び出し
至近距離で同じように叫んだ。
すると、バットのグリップで軽く頭を叩いた。
「すみませんでした!!」と言い、定位置へ走っていく。
レフトだけじゃない。センターもライトもショートも。
熱くなり始めたA監督はグラコンを脱ぐ。
ますます気合いが入る。

気づくと、ノックは1時間も続いていた。
「いや〜疲れた疲れた。マネージャー!ポカリ!」
鬼の形相だったA監督の顔が和らいだ。

帰り際、選手たちと話しをしてみた。
“監督さん、怖いね。ノックすごいね”
「いや〜いつものことです。怖いですけど
でも、身が引き締まるっていうか、気合いが入るんで
僕たちもこれで良いと思ってるんです」
「監督さん天然でかわいいんですよ〜」
さっきまでビクビクしていた選手たちが
A監督をネタに笑っていた・・・

これまでたくさんの練習を見てきたが
間違いなくこの学校のノックが最もインパクトがあった。
部内暴力と思わせるそぶりがあっただけに
公開は控えている。
だが、この高校はその県で公立校の雄として
毎年のように上位に進出している。
「Aさんにはぜひとも甲子園に行ってもらいたいんです」
とは、近くにある私立校の監督さんの言葉。
定年間近のA監督に残された時間は、あと3年だ。


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