ノート

2002年02月23日(土) 光と影

ソルトレークオリンピック。
野球に限らず,スポーツが大好きな私にとって
改めて,選手の光と影を知った。

「光」それは,勝利の女神が微笑んだとき。

例えば,スキージャンプのアマン。
W杯1度も勝っていない彼が,五輪で事実上の3冠を獲得。
ノーマルヒル,ラージヒルで金メダル,
団体ではメダルに手が届かなかったものの
個人として考えれば堂々の1位に相当する成績だったそうだ。
自宅にはテレビが無い。自分が金メダルを取ったことを
母親は知らないんじゃないかなと言っていた。
気軽にサインに応じ,笑顔でインタビューに答える
20歳の若者には,まだ少しだけあどけなさが残っている。

例えば,フィギュア女子のサラ・ヒューズ。
SPは4位。メダルを狙える位置ではあるが
そびえたつ壁は高い。
今シーズン,たった1度だけ,その壁を乗り越えることができた。
グランプリシリーズカナダ大会で
クワンとスルツカヤを破り優勝していた。
フリーでは,見事な3回転-3回転を2度も成功させた。
後に滑るクワンを控え室で見ていたヒューズは
自分の金メダルが決まると,コーチと抱き合い喜んだ。
長野につづき,女子フィギュアの金メダルは
またもや伸び盛りの16歳だった。

「影」それは,五輪に潜む魔物が姿を現したとき。

世界選手権4度の優勝と圧倒的な強さを見せてきた
女子フィギュアのミッシェル・クワン。
長野では完璧な演技を見せた銀メダリスト。
そのとき流した涙は,自分が悔いの無い演技をしたからだ。
“ソルトレークで金メダル”長野を終えてから
自分も周囲もそれを求めて励んできた。
だが,ソルトレークの氷は彼女を頂点へ導くことを妨げた。
SP1位のクワンが,フリーで着氷時に手がついた。
どの大会でも,ほぼ完璧な演技をする彼女にとって
大きなミスだった。結果は銅メダル。
翌日のエキシビションで見せた涙は,何を意味するのだろう。
昨晩のことが夢ではなかった。
今やっと,銅メダルの悔しさを痛感したのかもしれない。

1月の世界スプリントでは3つのレースで優勝し
スピードスケート500mの優勝候補にもあげられていた
ジェレミー・ウォーザースプーン。
スタートから5歩目,テレビ画面から彼の姿が消えた。
リンク以上の寒気が見ている人を襲った。
立ちあがったウォーザースプーンはスタートしようとしない。
ゴーグルを投げ捨て・・・悔しがった。
翌日の2回目。彼はスタートラインに立っていた。
そして,この日の最高記録を出した。
まさに,王者の滑りだった。しかし,滑り終えた背中を
称える観衆は,彼にとって,ただの励ましにしか聞こえなかったかもしれない。
「彼の転倒には驚いたけど,気にしなかった。
でも,凄くショックでした。」
「彼を倒して,金メダルを取りたかった。」
メダルを獲得した,清水とケーシー・フィッツランドルフの
言葉を聞くとあの転倒は,氷の中に潜んでいた魔物の
仕業だったと思った。実力的にはメダル争いのできる選手なのに…

「影」の主役となってしまった2人が
4年後のトリノの舞台に立っているかは年齢的に微妙なところだ。
ただ,今は光の射す方へつづく道を歩くしかない。


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