SS‐DIARY

2003年10月30日(木) 神様!

生きててよかった。ヒカアキやっててよかったー(TT)
神様どうもありがとう!!

頭痛でよろよろと一階に下りて、いきなり幸せになって部屋にもどりました。

まだ頭痛してるけど、こんなもんもうどうでもいいや!



2003年10月25日(土) 愛に焦がれた胸を貫けG43−A4

指導碁が終わり家に着いたのは、夜の九時を少しまわった頃だった。

何度か請け負った方だったので、約束の時間に遅れたことは笑って許され、丁度もらいものの良い松茸があるからと、夕食をごちそうになってしまった。
その上、奥さんが出先で買ってきたという草餅までもらってしまって、これでは碁の指導ではなく客に行ったようだと帰り道、一人笑ってしまった。

甘いものはそんなに好きではないはずだけれど、餡の入っていない草餅は確か進藤の好物で、じゃあ帰ったら、途中になってしまった検討をしながら二人で食べようと思った。

(そう言えば、ありがとうもまだ言っていなかった)

焦って足を滑らせた棋院の階段、危うく頭から落ちる所をぼくは進藤に助けられたのだ。
けれど時間が迫っていたのと、進藤自身が「早く行け」と追い立てるものだから、一言の礼も言わず指導先に向かってしまった。

(進藤のおかげで怪我をしないですんだのに)

もしまだ進藤が夕食を食べていないようなら、何か作ってやろうと思った。
いつもは仕事のある日は疲れているからと、すり寄ってくるのを邪険にしてしまっていたけれど、思い切り甘えさせてやってもいいとそんなことも考えた。



ところが家に帰ってみると、ぼくの部屋の窓は明かりが灯っていなくて真っ暗だった。
いつものように待っているものだとばかり思っていたので、少しがっかりして隣の部屋の様子をうかがう。
するとそちらもしんと静まりかえっていて、帰っていないのだとわかった。

「和谷くんたちと食事に行ってしまったのかな」
明日は和谷くんの研究会だし、そのまま泊まりに行ってしまったのかもしれない。

なんだ、そうか。

そう思った瞬間、自分でも驚くほど落胆してしまった。

(進藤だって、進藤の生活があるんだから)

自分で自分を慰めつつ、ではこの草餅は一人で食べなければならないのかと、わびしい気持ちで包みをながめていると、唐突に電話が鳴った。

出てみると和谷くんで、疲れたような声で「やっと出たよ〜」と言われた。
見れば留守録のボタンが点滅していて、それが彼の吹き込んだメッセージなのだと気がつく。
「ごめん、今帰ってきた所だから。それで…なに?」
「あー、いやさぁ、実は進藤がちょっと入院しちゃってさぁ」


階段から落ちて、肋骨にひびが入ったのだと、聞いて顔から血の気がひいてしまった。
「おい、塔矢、聞いてる? 大したことないみたいだけど、出来たら着替えとか持ってきてやってくんねぇ?」

どう返事をしたのか実はよく覚えていないのだけれど、進藤の部屋に行き、ほとんど機械的に着替えを詰め込むと、ぼくは言われた病院にかけつけた。

病室には和谷くんがいて、ぼくを見るとほっとしたように笑って、「じゃあ後はまかせたから」と帰って行った。

進藤は…というと、ベッドの中、何故かこれから叱られる子どものような顔をしてぼくを見ている。

「…言わなくっていいって言ったのにさぁ…和谷のヤツが勝手に連絡しちゃってさぁ」

気まずそうにぼそぼそと言いわけめいたことを言う。

「大…丈夫…なの?」
「んー? 一週間くらいって言ってたけど」

ヒビって言ってもほんのちょっとだからと進藤は人の顔を伺うように言う。

「ごめ…」
微かに見える包帯が痛々しい。

あの時、進藤は笑ってぼくを見送ってくれたけれど、実際はひどく痛んだはずなのだ。

「ごめんね…ぼくが…悪いのに」

自分のことしか考えなかった、それが辛く、進藤に怪我をさせてしまった、それが悲しかった。気がつけば目から涙があふれていて―。

「わーっ、だから教えたくなかったんだよぅ」

泣いてしまったぼくを見て、進藤が、がばっと起きあがりかける。けれどすぐに「いててててっ」と顔をしかめて墜落するようにベッドに伏してしまった。

「大丈夫?」

そばに行き、包帯の上をそっと指でなぜる。

「へーき、ヒビ入るなんざガキの頃からしょっちゅうだったから」

こんなの怪我にも入んねーよと進藤は笑うけれど、嘘だと思った。

「痛いはずだよ、きっとすごく痛かったはずだよ」

どちらかと言えば痩せ気味とは言え、ほとんど自分と同じくらいの背丈のぼくを受け止めたのだ、平気なはずなんか絶対無いのに。

「んー、マジでさぁ、おれ平気だから泣くなよ」

お前が怪我する方がおれはよっぽど痛いんだからと、言って進藤はベッドサイドに立つぼくの腕をそっと掴んだ。

「指導碁、間に合った?」
「…うん」
「ちっとはおもしろい打ち筋だった?」
「うん…まあね。ずっと打ってらっしゃる方だから」
「後で棋譜、並べてみせてな。おれもうここ退屈でさぁ」

ぼくが気にしないように、わざと明るい物言いをしている。怪我をしたのだから自分のことだけ考えていればいいのに、どうしてキミはこんな時までぼくのことを気遣うのだろうと哀しくなった。

「…進藤」
「ん?」

こぼれ落ちる涙を片手でぬぐいながら言う。

「キミを…大切にする」
「え?」
「一生、キミだけを好きでいる。キミのことを誰よりも絶対、大切にするよ」
「なんだよ、それ…それじゃまるでプロポーズじゃん?」

おどけたように言いかけるのに、ぼくは泣きながら言葉を重ねた。

「そう…思ってくれてもいいよ」

進藤は一瞬、驚いたように目を見開いて、その顔を真っ赤に染めた。

「ば…おまえ、何言って…」
「嘘じゃないよ、本当にぼくは…」

キミが好き。キミをずっと大事にしたい。そう言うと、進藤は呆然としたようにぼくの顔をしばらく見つめ、やがて声も出さずに、静かに涙をこぼしたのだった。



2003年10月24日(金) 愛に焦がれた胸を貫けG43−A3

進藤は柄に合わず心配性だと思う。

少し咳をしただけで「薬を飲め」「温かくしろ」と言うし、手合いが続いて過労気味になれば「休め」と言う。

「ちゃんと食え」「早めに寝ろ」と、それはどちらかと言えばぼくの方が彼に言いたいことばかりなのに、自分のことは棚に置いて進藤はぼくの心配ばかりしている。

「そんなに気にかけてくれなくてもぼくは大丈夫だよ」
こう見えても小さい頃から大病はしたことないのだからと、そう言っても聞く耳をもたない。

「ダメっ! おまえ自分のこと全然かまわないんだから」と、随分なことを言ってはぼくを布団に押し込めたり、ぼくの口に何か食べ物を詰め込もうとするのだ。

(なんであんなに過保護なんだろう)

ぼくを好きだから。

(本当にそうなんだろうか?)

好意でしてくれているのはわかるのだけれど、進藤のそれは少し神経質ではないかと思うのだ。


―その日、ぼくは焦っていた。
六時から指導碁の予定が入っているのに、ついうっかり検討にのめり込んでしまい約束の時間を忘れてしまったからだ。

「おまえ何時からって言ってたっけ…」
しかも対局相手であった進藤にそれを言われるまで気がつかなかったのだから始末が悪い。

頭の中で移動時間を計算して青くなる。
「ごめん、進藤、まだ途中だけど」
「いいって、早く行けよおまえ」

それでも慌ただしく片づけをして、まろび出るようにして対局室を出る。
上着の袖に腕を通しながらエレベーターのボタンを押すが、一階で止まったままのそれはなかなか上がっては来なくて、仕方なく階段を使うことにした。

「おい、塔矢。おまえそんな焦って降りると危ねぇぞ」
別に付き合ってくれなくてもいいのに、進藤はぼくに着いてきて、一緒に階段を駆け下りている。

棋院の階段は薄暗くて、遠近感が今ひとつわかりにくい。
三階から二階へ下りる途中、あっと思った時に靴の底が滑った。

頭から落ちそうになった所を進藤が腕を掴み、そのままぼくを抱え込むようにしてそのまま数段落ちた。
どさっと重い音がして、瞬間、進藤はうめき声をあげた。

大丈夫?と尋ねるより先に、進藤の声が降った。
「塔矢っ、大丈夫? おまえ」

心配そうな声に、ふとぼくは開きかけた目を閉じてしまった。
だって進藤の声は本当に心配そうで、おろおろとしていたからだ。

「塔矢、おい、塔矢ってば」

返事をしないでいたら、進藤はますます心配そうな声になり、ぼくの体をがくがくと揺さぶった。

「おい、冗談よせよ、おいってば」

こんな時間が無い時に何をやっているのだろうかと思いつつ、あまりにも進藤が心配するので、それがおかしくて、つい数回呼びかける声を無視してしまった。

「塔矢…」
「嘘だよ、別になんとも―」

目を開けた瞬間、ぼくは驚きのあまり絶句してしまった。

「―あ」

進藤が泣いていたからだ。

「進藤…」

進藤は大きく目を見開いて、それからぼくの顔をじっと見つめると安心したように息を吐いた。
紙のように白くなっていた頬に赤みが差すのを見た瞬間、自分がしたことを激しく後悔した。

「進藤…ごめ…」
「よかった―おまえ、目ぇさめなかったらど…しよって」

泣きながらぼくをぎゅっと抱きしめる進藤に、ぼくは初めてわかったような気がした。

進藤がどうしてあんなに神経質にぼくのことを気遣うのかそれがやっとわかった。

失ったことがあるのだ。
だれか大切な人を―。

だから進藤は、あんなにもぼくのことを心配したのだ。
もう二度と失くしたくないから。

「ごめん…ごめんね…進藤」

まだ泣き続けている進藤の背に腕をまわし、そっと抱き返しながら、傷つけてごめんとぼくは何度もつぶやいた。



(後ちょっとだけ)つづく。



2003年10月23日(木) 今頃「カノン」

交通事故に遭ったあかりの母親は、まだ手術室から帰っては来なかった。
泣き疲れて眠ってしまったあかりに上着をかけてやると、おれは起こさないようにそっと一人、その場を離れて一階の待合室に降りて行った。

非常灯がついただけの待合室。自動販売機に金を入れて、コーヒーを買った。

「…寒ぃ」

静かで静かで静かで、こんなに静かだと誰も生きている者はいないのではないかと縁起の悪いことを思ってしまう。

「おれって…本当になんにもできないんだな」

さっきまで泣いていたあかりの顔を思い出してつぶやく。

「塔矢のことだってずっと忘れていて…おれ…。あいつはずっとおれのこと待っていてくれたのに」

再会しても傷つけることしか出来なかった。

「おれになんか会わなければよかったんだ。あいつ。会ったって悲しい思いしかさせることができなかったんだから。会わないほうがきっと」

あいつ幸せだったと、そこまで考えた時、ふいに耳元で声がした。

「そんなことないよ」
「塔矢っ」

振り返った先には、少し照れくさそうに笑って塔矢が立っていた。

「キミに出会えたから、ぼくは救われたし、キミがいない間も幸せな気持ちで待つことができた。いつかまた会える。それはぼくに生きる気力と目標をくれたんだよ」

「だって、そんな」

じいちゃんの見舞いでふらりと行った病院。
そこでたった数回、碁を打っただけなのに。

「あの頃のぼくは病気を抱えて、同じ年頃の友達もいず、孤独で…孤独で潰されてしまいそうだった」

それを救ってくれたのがキミだったんだよとそう言って塔矢は静かに笑った。

「なのにおれ、そんなお前を裏切ったんだ」

「また打とうね」そう約束したのに、おれは夏休みに入ってしまって目先の楽しいことに気を奪われてあいつのことを忘れた。

秋になり、久しぶりに訪ねた病院で、でもあいつの病室には違うヤツが眠っていて…。
『あの子はどうしたの?』そう言った時に看護師は「ああ」と口をにごした。

「辛かった。辛かった。あんなふうに急におまえが死んでいなくなっゃうなんて、おれは思いもしなかったから。だから―」

今日の続きはいつも明日で。だからいつでもまたおまえに会えると思っていた。

「…進藤」

ぎゅっと塔矢がしがみついてきて、おれは持っていたコーヒーを床に落とした。
ほとんど口もつけていないそれがリノリウムの床を汚すのを見つめながら、ふいにたまらなくなって吠えるように泣いてしまった。

「なのにおれ、7年間もそのことを忘れてたんだ。おまえは生きている時と同じに、ずっとおれのこと待ってたのに。なんでおれ―どうして―」

記憶を封印してしまったんだろう。辛すぎて、辛すぎて、塔矢がこの世にいないということが辛すぎて覚えていることができなかったのかもしれない。



「進藤、大好き」

ずっとキミが好きだったよ。そうおれにしがみついたまま塔矢は言った。

「おじいさんのお見舞いに来るキミのことをずっと見てた。キミはいつでも元気がよくてお日様みたいで。キミと…話してみたいってずっと」
「おれだっておまえのことずっと―」

塔矢は顔を上げると、おれが言いかけた言葉を指で塞いだ。

「なんでも願いごとを叶えてくれるって言ったよね」
「あ…ああ」
「じゃあ最後に一つだけ言ってもいいかな」
「最後って!」

塔矢はおれの顔をじっと見つめると、ふいにくしゃっと泣きそうな顔になって言った。

「ぼくのことを忘れて」
「と―」
「出会った時から今までのこと、全部忘れてしまって。キミとぼくは最初から出会わなかったって―」

それがぼくがキミに願う、たった一つのの願いごとだよと、そう言って塔矢はおれの目の前からかき消すようにいなくなってしまった。

「塔矢っ、塔矢ぁ」

泣いても泣いてもあいつはもう帰っては来ない。

一人上の階にもどったおれは、手術室の明かりが消えていることに気がついた。

「ヒカル…お母さんが」

あかりの母親が助かったと。そう聞かされながら、あいつが助けてくれたのだとそう―思った。

―end





と、すみません。ゲームとアニメにもなった「カノン」のパロです。かなり変わってしまっています。
絵はあんまり好きじゃなかったですが、いい話でした。
あれ見ると鯛焼き食べたくなるよね。

今日、後ろでダンナが久しぶりにずーっとアニメの「カノン」を見ていたので、ついこんなもんを書いてしまいました。

で、ご心配もしくは心痛めている方のために。あーでも「カノン」をやる予定、もしくは見る予定がある人はネタバレになるので見ないでね。










死んでしまったものと思われたアキラは、実は植物人間になって7年間、同じこの病院に入院していたのです。で、それを偶然知ったあかりちゃんがヒカルに教えてあげて、ヒカルとアキラは再会し、アキラは意識を取り戻して二人は恋人同士になるんです。(いや、マジでそういう話しなんですよ「カノン」)なのでご心配なく〜。



2003年10月22日(水) ちょびっと

ごめんなさい、ちょびっと疲れました。
なので休憩するかもしれません。




昨日行けなくて今日、テレ東とエイベックスに北斗杯の署名・アンケートを送付してきました。
あー、これで送るべき所には全部送ったんだーと思ったら、なんだか気が抜けたような、不思議な気持ちになりました。
ご協力いただいた皆様ありがとうございました。




2003年10月16日(木) こんな夢なら何度でも見たい

果たして夢と言っていいものかどうか…。

どうも今朝、私は眠りながらヒカアキ話を考えていたようなのです。
それはアキラをだまくらかしてスカートをはかせて、押し倒すというものでした(←最近の自分はどうなっているのやら)。

どうやってはかせるかのパターンを考えて、そこからどうやるのか考えて、出だしの文章を考えた所で目が覚めて(ものすごくスムーズに眠りから覚醒に至ったわけです。つなぎ目が無かった)そのままぱっと起きて、その三行を書きました。

こういうの、人の話で聞いたことはあるけれど自分では初めてでちょっとびっくりしました。

ただ、そのまま話にはできないので何か形を変えてそのうちお目見えするやもしれません。

スカートヒカアキ。いやはや。



2003年10月14日(火) G43A‐1(これならいいじゃろう)

【無人島に行くなら】


「無人島に行くなら何を持っていく?」

雑誌を見ていた進藤がふとぼくに尋ねた。
昔からよくあるその手の質問に対するぼくの答えはいつも一つで。

「ポータブル碁盤」

そう言うと、進藤は「えー?進藤ヒカルくんて言えよ」と口を尖らせて言った。

「言ったって言わなくたって、キミは着いてくるじゃないか」と言うと、進藤は一瞬黙り、それから「うん、そうだな。おれきっとおまえが嫌だって言っても着いて行くと思う」と笑った。

それはぼくたちの間の不思議な確信で、例えば逆にもし進藤が行けば、ぼくは追っていくのだろうと思う。
それが地の果ての、それこそ無人島だとしても。

「無人島に行ったら、まず家を作んなくちゃだよな」
「それから水を確保して。南の方ならスコールが来るから大丈夫かもしれないけど、井戸も掘った方がいいかもね」

「それで取りあえず、猛獣はいないということにして、でも動物なんてそうそう捕れるもんじゃないから、イモぐらい植えた方がいいよな」
「病気になった時に困るから、薬草の類も持って行った方がいいかも」

まるで子どもが遠足にでも行くかのように、ぼくと進藤は想像の無人島の話をし続けた。

「ゴム長だろう? 軍手だろう? ナイフの類はもちろんとして、出来れば寝袋も欲しいな」
「進藤…キャンプに行くわけじゃないんだから」
「でも最初からいきなり地べただと体痛いじゃん?」
「そうだね。急に環境が変わるとストレスで体調がおかしくなるって言うし」
「いや、そうじゃなくて、するのにさぁ」

ごすっと殴って黙らせて、でもまた話を続ける。
行くわけでも無い、ありもしない無人島の話をどれだけしただろうか、ふと気がついたように進藤が笑った。

「なに?」
「ん? おれら、暮らすことばっかりで、帰ること全然考えてねぇなあと思って」
言われてみれば確かに、不便な無人島でいかに生活していくかという計画をたてはするものの、どうやって帰るかとかという話はカケラも出ない。

「なんで? 塔矢」
じっと見つめられて少し赤くなる。

「じゃあキミこそなんでなんだ」
「えー、だってさあ…」

見つめ合い、笑って、それから秘め事のようにキスをした。

「だって」
「だってさ」

せっかく二人きりになったのに、どうしてそこから出ようなんて考えるだろうか?

与えられた永遠。

そこで朽ちるまで生きられたら、それ以上の幸せは無いと、期せずしてぼくたちは同時に言い、それからまた笑ったのだった。



2003年10月09日(木) 恋をしただけ、ただそれだけのこと(アキラ)

キミが好きだと言ったら、進藤は少し驚いた顔をして、それから「嘘だ」と言った。

言うのはかなり決心が言ったので腹が立ち、どうして嘘だなんて言うのだと責めたら「だってそんな嬉しすぎる話、嘘に決まってる」と進藤はぼくの顔を見ないように目を逸らせながら言ったのだった。

「そんなの、本当だったら、おれ嬉しすぎて死ぬ」

死んだら困るけれど、でも本当だよと、少し俯き加減に歩きながら言うと、いきなり進藤は立ち止まって、それからぼくの顎を指で掴んだ。

初めてしたキスのことはもうよく覚えていない。


ただ、ただ切なくて、嬉しいのに悲しいような気持ちがしたことだけ覚えている。
キミが好きだと、本当に好きだと、泣きながら言ったようなそんな気がする。


あれからもうどれくらい月日がたったのかわからないけれど、秋の日、二人で手をつないで広い公園を歩く。

キミのことが好きだよと言うと、進藤はもう「嘘だ」とは言わずに、でもやはりまだ少し照れくさそうに笑いながら、ぼくをぎゅっと抱きしめて、「おれも大好き」と言ったのだった。



2003年10月08日(水) ちょっとだけヒカアキ(ヒカル)

その日は秋晴れの気持ちのいい日で。
だからなんとなく近所に散歩に行った。

歩いて行ける所に大きな池のある公園があり、そのまわりを二人でゆっくりと歩いた。

同じこの公園に、春は満開になる桜を見に来た。
「会社員じゃないってのはこういう時いいよな」
そう言いながら水面に散る花のひらを見ながら弁当なんか食べたような気がする。
「キレイだね」とあいつはそう言って、ずっと池を見つめていたけれど、おれはそう言うあいつの顔だけを見つめていた。


夏も夏で「日焼けしちゃうな」と言いながら、やはり散歩に来て、東屋の中から釣りをしている子どもたちをながめた。
暑くて暑くて暑かったけれど、通りかかったアイスキャンディー売りから、みぞれ味のアイスを買って二人で食べた。
「こんなの食べるの子どもの時以来だ」とそう笑う顔がかわいくて、でも言うと怒るので黙ってアイスを食べ続けた。


そして今、秋に同じようにこの公園に来て、色づいた木々をながめている。
暑くもなく、寒くもない。

ただ染みるような青空の下、手をつないでゆっくりと他愛ないことをしゃべりながら歩いた。

幸せだと思った。


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