エンターテイメント日誌

2005年02月26日(土) アカデミー賞直前大予想大会!

さて、恒例の直前オスカー予想である。今年一番予想しにくくて、悩んだのは作曲賞と歌曲賞なんだな。

映画についての日記やブログを書いている者たちへ告ぐ。受賞結果が出た後になって「やっぱり予想通り『アビエーター』が受賞したね。」なんて訳知り顔で書かないように。厚顔無恥も甚だしい。事前に予想を書いている者にしか、それを語る資格はないのである。

作品賞 
 本命 アビエーター
 対抗 ミリオンダラー・ベイビー
監督賞
 本命 マーティン・スコセッシ(アビエーター)
 対抗 クリント・イーストウッド(ミリオンダラー・ベイビー)
主演女優賞
 本命 ヒラリー・スワンク(ミリオンダラー・ベイビー)
 対抗 アネット・ベニング(ビーイング・ジュリア)
助演女優賞
 本命 ケイト・ブランシェット(アビエイター)
 対抗 ナタリー・ポートマン(クローサー)
主演男優賞
 本命 ジェイミー・フォックス(Ray/レイ)
 対抗 レオナルド・ディカプリオ(アビエイター)
助演男優賞
 本命 モーガン・フリーマン(ミリオンダラー・ベイビー)
 対抗 クライブ・オーウェン(クローサー)
オリジナル脚本賞  
 本命 エターナル・サンシャイン
 対抗 ヴェラ・ドレイク
脚色賞  
 本命 サイドウェイ
 対抗 ミリオンダラー・ベイビー
外国語映画賞
 本命 「海を飛ぶ夢」(スペイン)
 対抗 「コーラス」(フランス)
美術賞  
 本命 アビエイター
 対抗 レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
撮影賞   
 本命 アビエイター
 対抗 ロング・エンゲージメント
衣装デザイン賞 
 本命 レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
 対抗 アビエイター
編集賞   
 本命 アビエイター
 対抗 エターナル・サンシャン
メイクアップ賞
 本命 レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
作曲賞
 本命 ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
 対抗 ネバーランド
歌曲賞
 本命 “Believe”(ポーラー・エクスプレス)
 対抗 “Learn to be Lonely”(オペラ座の怪人)
音響賞
 本命 アビエイター
 対抗 Ray/レイ
音響編集賞
 本命 Mr.インクレディブル
視覚効果賞
 本命 スパイダーマン2
長編アニメ映画賞
 本命 Mr.インクレディブル
短編アニメ映画賞
 本命 Birthday Boy
 対抗 Gopher Broke
長編ドキュメンタリー映画賞
 本命 Born into Brothels
 対抗 スーパーサイズ・ミー

*短編ドキュメンタリー映画賞と短編実写映画賞は全く情報がないので棄権する。

「アビエーター」の受賞数は6±1が着地点であると考える。



2005年02月19日(土) 日本から世界へ〜最恐映画は伝播する

世界最恐映画、「呪怨」を当サイトが最初に取り上げたのは2002年8月30日の日誌である。当時はまだ「呪怨」シリーズは東映オリジナルビデオ版しかなかった。

その後「呪怨」は増殖し、劇場映画版「呪怨」「呪怨2」が完成。さらに今回のハリウッド版「THE JUON/呪怨」に至るのである。ヒロインも最初の三輪姉妹(三輪ひとみ&明日美)から映画版の奥菜恵、酒井法子、そしてサラ・ミッシェル・ゲラーと飛躍的にグレード・アップしていったのである。

今までの「呪怨」で一番どれが怖かったかと問われたら筆者は躊躇なくオリジナルビデオ(OV)版を選んだであろう。ハリウッド版ではそのOV版のエピソードを沢山盛り込んだお陰で、背筋が凍り付くような怖さが醸し出されており成功していると想う。ハリウッド版の評価はB+を進呈する。

清水監督はハリウッド版を製作するに当たり、舞台を日本のままで、日本人スタッフでやることを決断した。これは実に賢明な判断だったと想う。アメリカの住居が舞台ではこの作品の要である、日本家屋の仄暗く、ジトッとした湿度が出なかっただろう。ハリウッドでは組合(ギルド)が煩いので、監督と気心が知れたスタッフで仕事が出来なかった筈だ。

加耶子や俊雄くんをCGでするようにプロデューサー・サイドから勧められたそうだが、それも監督は断固拒否した。その頑なさ・信念が見事に功を奏している。だからハリウッド資本ながら映画はさながら日本映画にアメリカ人が出演しているような印象を受ける。

「呪怨」シリーズはビデオの2作品を含めてこれで5作目になる。だから清水監督のスタイルも確乎たるものが完成しており、表現はさらに洗練されている印象を受けた。上映時間は99分とコンパクトであるが、内容はてんこ盛りである。これまでの集大成としてスピード感が加速しているのだ。

2週連続全米興行成績ナンバーワン・ヒットという快挙を成し遂げハリウッド版も続編製作が決定したようだ。筆者が実は期待しているのは加耶子と俊雄くんもこれで世界規模で有名になったので、「最終絶叫計画」みたいな形でパロディ映画に取り上げられないだろうかということである。あのふたりはパロディにしたら最高に可笑しいだろうな。貴方もそう想いませんか?



2005年02月15日(火) コール・ポーターとミュージカル映画

作曲家コール・ポーターで即座に想い出すのは、RKO映画「コンチネンタル」でアステアが唄い踊る<夜も昼も>のナンバーとか、「踊るニューヨーク」 (BROADWAY MELODY OF 1940)でアステアとエリノア・パウエルがタップで火花を散らす<ビギン・ザ・ビギン>、あるいはジュディ・ガーランドとジーン・ケリーが道化姿に扮装しての掛け合いが実に愉しい「踊る海賊」の "Be a Clown"や「上流社会」でのビング・クロスビーとフランク・シナトラの夢のデュエットなどである。これらは<夜も昼も>を除いて映画「ザッツ・エンターテイメント」シリーズに収録されている。DVDも先日発売されたので未見の方は是非ご覧戴きたい。ウットリと見惚れ、出るのは溜息ばかりである。

映画「五線譜のラブレター」はそんなコール・ポーターの伝記映画であり、妻リンダとの夫婦愛を主軸にミュージカル仕立てで描かれる。これが実に素晴らしい。映画の終盤はもう滂沱の涙である。評価は謹んでAを進呈する。映画「オペラ座の怪人」よりも格調高く、衣装など洗練されている。

ハリウッドの赤狩りを題材にした「真実の瞬間(とき)」(1991)なんて実に凡庸な出来だったけれど、今回は監督のアーウィン・ウィンクラーを見直した。巧みな編集で実に映画的でありながら、と同時に劇場への愛が全編に貫かれるという離れ業を成し遂げたのである。

ポーターを演じるケビン・クラインが実に良いし、「ミス・サイゴン」「マイ・フェア・レディ(再演)」など舞台ミュージカルでも大活躍のジョナサン・プライスが脇を固めるのも嬉しい。惜しむらくはジョナサンの唄をもっと聴きたかったなぁ。ただその分、ナタリー・コール、エルヴィス・コステロ、シェリル・クロウなど豪華ゲスト(←クリック)の唄が愉しめる。

実は本人が存命中だった1946年に、ワーナーで「夜も昼も」というポーターの半生を描いた映画が作られている。しかしこれはメロドラマ仕立ての駄作であった。今回の映画ではポーターが同性愛者だったことなど、「夜も昼も」で描かれなかった真実が白日の下に晒されているのだが、それが作品の品格を貶めることなく、偉大な作曲家に敬意を払った仕上がりになっていることに深い感銘を受けた。



2005年02月12日(土) 出来損ないのファンタジー <ネバーランド>

映画「ネバーランド」の評価はC-である。

筆者は基本的に幻想映画は大好きである。「ネバーランド」も「ピーターパン」で有名な劇作家のジェームズ・バリを主人公に、超現実的な場面を加味して描いている。それは想像力の飛翔であり、そこから<夢はきっと叶う、だからそれを信じなさい。>というメッセージが投げかけられる。

・・・と、それはそれでファンタジーとしての体面は保ってはいるのだが、描写が実に陳腐なんだよね。メッセージも今まで語り尽くされた以上のものはなにもない。映画の質としてはスピルバーグが「ピーターパン」の後日談を映画化したあの、救いようのない駄作「フック」と同レベル。ちなみにダスティン・ホフマンは両者に出演している。

「ネバーランド」を観るくらいならウォルト・ディズニーが製作した「ピーターパン」のアニメーション版をビデオで観るか、フライングが愉しいミュージカル版を劇場に観に往った方が有意義な時間を過ごせるだろう。だって言いたいことは全く同じなのだから。

「ネバーランド」はアカデミー賞で7部門ノミネートされてはいるが、筆者は映画芸術科学アカデミー協会の名誉のためにも1部門も受賞出来ないことを切に願う。だってこんな質の低い映画を受賞させたら後々までの恥辱だもんね。

ジョニー・デップのファンタジーなら、ティム・バートンと組んだ新作「チャーリーとチョコレート工場(チョコレート工場の秘密)」の方を期待したい。ダニー・エルフマンの音楽が超ご機嫌だからね!

「ネバーランド」で唯一良かったのはケイト・ウィンスレットの母親役を演じたジュリー・クリスティ。デイビッド・リーン監督の不朽の名作「ドクトル・ジバゴ」(1965)の、あのラーラがこんなに美しく老いたんだと、感慨ひとしおであった。



2005年02月04日(金) 邦画二題 <湖畔で頭突き>

「レイクサイド・マーダ−ケース」評価:C-

まあ、重厚で風格はある。でもそれだけ。中身は空っぽ。

監督の青山真治ってカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞した「EUREKA(ユリイカ)」でも感じたのだが、なんだか思わせぶりな雰囲気はあるんだけれど、実は大したことを語っていないんだよね。観客を煙に巻いているだけで見かけ倒しの薄っぺらな人なんだと想う。原作とは異なるエンディングにしても「だから何なんだ?」という白けた感想しか残らない。

原作者の東野圭吾は大好きな作家なのだが、こと映画化に関しては不運な人だよね。「秘密」、「g@me」、WOWOWで映像化された「宿命」、そして本作といい、ろくな作品がない。作者自身が映画については実に投げやりな態度なのも災いしているのかも知れない。多分東野圭吾は自分自身しか信じていない作家なのだろう。「映画になっても俺の小説を超えられるはずないさ」という高笑いが聞こえてくるような気さえする。

直木賞候補になった「白夜行」や「手紙」なんか実に良い小説なので、上手く映画化すれば傑作になると想うんだけれどな。特にノワール「白夜行」については「害虫」「黄泉がえり」の塩田明彦監督に映画化して欲しい。竹内結子が雑誌「ダヴィンチ」における東野圭吾との対談で「白夜行」のヒロイン、雪穂を演じたいとアピールしているのだがこれは断固反対する。でもなぁ、広末涼子に文庫版「秘密」の解説を書かせた事実でも分かるとおり、東野はミーハーだから竹内結子でもO.K.するかも。あな恐ろしや。

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「パッチギ!」評価:B

井筒和幸監督って関西弁の映画を撮らせると生き生きした傑作に仕上げるなぁとつくづく感心した。関西弁が出てこない井筒映画は全く魅力がないのに。これはパワーに溢れた青春映画の瑞々しい快作である。

ただね、ちょっとだけ文句を言わせて貰うと在日朝鮮人を題材するに当たって朝鮮人=侵略戦争の犠牲者・絶対弱者であり日本人を非難する権利が当然ある人々、日本人=朝鮮人に対して極悪非道の限りを尽くした加害者であり、ただただ土下座して卑屈に謝罪し続ければならない存在という単純な図式、自虐史観というのはもう時代遅れなんじゃないかなぁ。真の友好とはお互いに対等な立場に立ち、相手の立場を尊重しあうことからしか生まれないのではないだろうか?

そういう意味ではしょせん井筒監督も心情左翼なんだよね。福井晴敏原作の映画「ローレライ」をキナ臭いと言っているそうだから、それが井筒の限界なのだろう。朝日新聞とは気が合うかも。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]