エンターテイメント日誌

2000年10月29日(日) 神戸にて

神戸に出張で行き、ついでに映画館に立ち寄り「シベリアの理髪師」を観た。劇場は狭く汚く、これなら地方に続々出来ているシネマ・コンプレックスの方がよっぽどいい環境だなあと半ば呆れた。古くからの映画館が老朽化したまま存続する、都会の欠点を垣間見た想いがした。
映画は大甘のメロドラマ。これを撮ったロシアの監督は、大評判だった「黒い瞳」の頃は(やはりメロドラマ仕立てだったが)まだその作風に品格があったように想う。この作品で致命的なのはヒロインのジュリア・オーモンドが貴婦人としての気品に欠けることだ。厚かましくて、米国からロシアにやって来たくせに全て英語で通そうという態度にも腹が立つ。大層むかつく女だ。舞台は革命前のロシアなのに、英語のダイアログが不自然に多いのが気になった。ロシア国内だけでは映画の制作費が調達できず、外国の資本に頼らざるを得ない現在の監督の苦渋もよく判るんだが。



2000年10月13日(金) インディーズからメジャーへ

「X-メン」のブライアン・シンガー監督は独立系の映画「ユージュアル・サスペクツ」で名を馳せた人だ。「X-メン」は心地よい娯楽映画に仕上がっており上映中退屈せず、満足のいく作品であった。ミュータントの技がバラエティの富んでるのが良い。「ピアノ・レッスン」の少女、アンナ・パキンも美しく成長したものだ。手に触れた人間が死んでいくという定めに生まれたミュータントの哀しみが切なかった。

シンガー同様 インディーズからメジャーへというと想い出すのが「マトリックス」のウォウシャウスキー兄弟だ。彼らの出世作「バウンド」は緻密な脚本によるタイトな映画で、僕は物語の舞台となる世界の紹介だけで終始し、肩すかしを喰らった「マトリックス」より断然「バウンド」の方が出来が良く、面白いと信じて疑わない。

「X-メン」vs.「マトリックス」なら断然前者に軍配を揚げる。



2000年10月10日(火) 日本産ミステリイ映画

今、日本のミステリイ小説のレベルは凄い。世界的にもトップクラスなのでは?

「ホワイトアウト」は原作の方が断然面白かった。緻密なプロット、硬質な文章が素晴らしい。映画版は・・・。とにかく、演出をテレビのディレクターに任せたのが失敗の最大の原因だ。バスト・ショット、クローズ・アップが多用され、映画的スケール感、迫力に欠ける。脚色を原作者が担当しているが、どうも疑問が残る出来なのが残念。どうしてテロリストのボスが車椅子に乗っている必然性があるのか?クライマックスのまるでターミネーターみたいな不死身ぶりも、殆どギャグでしかない。テロリストの中に裏切り者が潜んでいるという設定が全く活きていないし、人情を押しつけてくる地元の警察副署長の存在も鬱陶しかった。映画に失望した人には是非原作を読むことをお勧めする。

「破線のマリス」は非常に後味の悪い結末で嫌な映画であった。これも原作者で人気シナリオライターでもある野沢尚が脚本を書いているのだが、こんなプロットで江戸川乱歩賞を受賞したなんて信じられない!物語の発端となる事件が、結局解決されることなく脇に押しやられて、最後は本筋がマスコミ批判にすり替えられてしまうのだ。ヒロインにテープを送ってきた謎の人物が映画の最後に明かされるんだけれど、そんな筈あり得る訳ないでしょ!ご都合主義もいい加減にしてくれ。どうしてあの時間に、あのアングルで撮影できるの?編集はどうやったの?匿名で送りつける必然性は?もう疑問符だらけ。本当に腹立ったっ!



2000年10月01日(日) 処女航海 & 徳間社長がホーホケキョ

今日から新しい日記帳に記載することにする。
「風の谷のナウシカ」以降、スタジオジブリ作品のプロデューサーであった徳間社長が遂先日お亡くなりになった。合掌。非常に惜しい方を無くしたと想う。徳間社長無くして、今の宮崎アニメは存在しなかっただろう。そしてその人柄も大変ユニークで面白い方で僕は非常にその御発言を愉しませて頂いたものだった。
1997年10月末、「もののけ姫」が配給収入のそれまでの最高記録だった「E.T.」を抜かした時、製作総指揮をした徳間社長は 
「米映画を完全に負かしたと言うこと。野球で言えば10対1。米に勝ったのは真珠湾以来ということです。『E・T・』は3年がかりの記録だったが、我々は最短距離で達成した。21世紀、22世紀が来ても抜かれることのない大きな数字だろう。」
と胸を張られた。それから約半年後、「もののけ姫」の打ち立てた記録が「タイタニック」にあっさりと抜かれたことは皆さんご存知の通り(^^;。
「ホーホケキョ となりの山田くん」は当初「スターウォーズ/エピソード1」と同じ日に公開予定で徳間社長は
「『スターウォーズ』を叩きのめす。」
と意気軒昂だったのに、結局何故か公開を1週間遅らせることとなった。蓋を開けてみると公開第1週の興行成績は2週目のスターウォーズにもはるかに及ばず、同時期に公開されたポケモンの方が人気が上だった。制作費23億円、目標興行収入60億円に対して、結局興行成績が7〜8億円止まりだったそうだ。これは惨憺たる敗北と云わねばるまい。それでも徳間社長は落ち込むことなく、その後も精力的にご活躍されていたみたいなので、やっぱり大物だ。
最後のプロデュース作品、宮崎駿監督の新作は来年の夏公開。今からワクワク楽しみだ。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]