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2003年09月26日(金)
◆ スペイン国立バレエ団【Bプロ】 『ムヘーレス』『エントレベラオ』『ボレロ』他O・ヒメネス、F・ベラスコ… (03/10/6up)


19:00開演、Bunkamuraオーチャードホール、

当日引き換えのチケットで、急遽観に行った公演。
席番号を見たら、最前列だったで、案の定サパテアードを打ち付ける足先が見づらかったのは残念でしたが、飛び散る汗か水?(男性は初めから髪の毛がビショビショだった)がライトに当たったときの輝きとか、熱気、リアルなパルマの音、迫力に満ちたダンサー達を間近で観ることが出来、臨場感を味わいました。

このバレエ団は今年で創設25周年とのことで、意外に新しかったと驚いたのですが、日本にもかなり頻繁に来日して公演を行っていますね。
私は、95年の来日公演の時、初めて足を運び、今回観るのはそれ以来ということになります。
重たい内容の『メデア』とか、お馴染みの『ボレロ』を見たはずでしたが、記憶は所々といった感じです。

ところで、私はいつも公演プログラムはなるべく購入するようにしておりますが、このバレエ団のパンフ写真は、驚くほど“濃い”面々のオンパレードでした。
ダンサーのプロフィール写真のポーズといい、力の入った表情の“その気ぶり”は圧巻!
皆こちらをにらんでる…(笑)

会場の雰囲気は熱気に満ち、観客の年齢層はとても幅広かったです。
毎回楽しみにしてらっしゃる方も、新作が多いので興味深くご覧になれるのではないでしょうか。


◆『ムヘーレス』 Mujeres 〔日本初演〕
ダンサー: ペネロペ・サンチェス、 サラ・アルコン、 クリスティーナ・ゴメス、 エスメラルダ・グティエレス、 タマラ・ロペス、 アンパロ・ルイス

「ムヘーレス」とは女性たちという意味だといいます。
“女性”の感受性や強靭さetc…それらに着想を得てエルビラ・アンドレスが創作したものです。
6人の女性ダンサーによる現代的な作品に仕上がっていました。
衣装はグレーのシンプルなもので、それぞれ微妙に形が違っていすが、全員女性の身体のラインを描いたようなデザインは共通しています。

ピアノ等の繊細な音にのせ、民族的な踊りではなく、バレエに近い動きを多く使った、意欲的な作品でした。 
はじめはまるで、青い炎が立ち上るような雰囲気。
目に映るのは、音の“間”を意識した静かな世界ですが、実は大変な情熱と揺るぎのない意思の強さを感じました。
リズムを刻むというより、やはり“音と音の間”が際立つ作品ですので、カスタネットを打つ時も完璧な正確さを要求されるように思います。 

モダン・バレエを観たときのような集中力を、自分でも感じる作品。
全体的には段々と盛り上がって面白かったです。 
ダンサーたちの表情も踊りの一部だなぁと感じました。


◆『エントレベラオ』(ファルーカ) Entreverao (Farruca) 〔日本初演〕
ダンサー: オスカル・ヒメネス

いやもう、この踊りを観る事ができたというだけで、この公演に足を運んだ甲斐があったというほど、素晴らしい踊りを堪能できました。
男性ソロの作品ですが、この踊りを踊ったオスカル・ヒメネス氏の力量とパーソナリティに観客がのみこまれたという感じです。

強烈なサパテアードの細かなリズム、目を瞠るほどキレのよいブエルタ(ターン)、そういった技術もさることながら、哀愁を秘めたような彼の醸し出す雰囲気が独特で、激しい踊りの中で、苦悩、孤独、情熱、思いの全てを爆発させ、観る者を彼の世界に引き込んでしまいます。
雰囲気がスペインのルジマートフという感じかな。
兎に角、上手とかそういうレベルの踊りではなく、観客はさらけ出された心の内を見てしまった感覚に陥るというか、凄まじい熱情や苦しみを、踊りという表現を通してズンズン伝わってくるというか、本当に見事でした。

ヒメネス氏は、95年来日公演のパンフレットを見ると、そのときはファースト・ソリストをされていて、今回はプリンシパルとして踊られています。 ですがこの間、このバレエ団を離れていたり、再び再入団されていたりと様々な舞踊団で経験を高めていたようですので、より深みや味わいが増したのではないでしょうか。
また、歌とギター等による生演奏も、スペインの世界に誘ってくれましたし、大変素晴らしい踊りの余韻が長く続きました。 


◆『タラント』 Trant 〔日本初演〕
ダンサー: エステル・フラド、 クリステイアン・ロサノ

「タラント」は深い“鉱山のカンテ(歌)”に由来しているとのこと。 
しかし今回のこの作品は、惹き付けられ合う男女の世界を、様々な場面を通してストーリーも感じられるように表現した作品になっていました。
 
女性のエステル・フラドはプリンシパル・ダンサー、相対するクリステイアン・ロサノは、コール・ド・バレエという階級の違いはありますが、抜擢にみあう活躍をみせていたと思います。
情熱的な男女の心の葛藤や熱情を表現するのに、スペイン舞踊というのは大変適していると改めて思いました。
心の高ぶりを全身で伝える力にズッシリ感がありますね。
それと、大きな渦巻き模様のフリルが付いた女性の衣装が素敵で個人的にとても気に入りました。


◆『ボレロ』 Bolero
ダンサー: フランシスコ・ベラスコ、 ペネロペ・サンチェス
アスセナ・ウイドブロ、 タマラ・ロペス、 アンパロ・ルイス、 シルビア・デ・ラ・ロサ、他…


日本公演では必ず踊られるおなじみのラヴェル作曲の「ボレロ」
単純なあのメロディ、壮大なクレッシェンドと共に色彩が増えていく面白さがありますが、初見感覚で拝見しました。(前回の印象が、鏡の美術しか残らなかったので)

始まったときは音が小さかったのよくわかりませんでしたが、暗めの照明に浮かび上がった大勢の男性によるパートは、おぉ〜という壮麗感があります。
人数の多い部分は、足でリズムを合わせるのも大変ですね。

舞台上には回転ドアの役目もはたすアール・デコ風の鏡のセットが3つおいてあります。
女性の衣装はローマ風のような、たっぷり生地をとった胸元と、多くドレープが入った腰周りと裾部分が優美です。男性も袖がゆったりしたデザインでした。

次々と繰り出される色艶やかなダンサーたち、ソロで見せたり、ペア、或いは大勢のパートと鏡のセットを使って現れては消える、まさにミラージュといった感じ…。 
幻?夢?現実?そんなイメージでしょうか。 
群舞のサパテアードでは音楽が聞こえなくなるときもありますが、その群舞が見所といったところ…。
作られた当時、民族的な踊りというイメージを取り去って新たなスペイン舞踊の世界を作り上げた、記念碑的な作品だったのではないでしょうか。


◆『イルシオネス・F.M.』 Ilusiones F.M. 〔日本初演〕
ダンサー: クリスティーナ・ゴメス、 マリアノ・ベルナル、
 エステル・フラド、 ダビッド・ガルシア、 クリステイアン・ロサノ、他...


大変明るく、ちょっと不思議で楽しい作品。 こういう作品もあるのだなぁと驚きも感じました。

ラジオから流れる王子の結婚式の放送。 
レストラン働いている“彼女”はうたた寝の中、まるでシンデレラの物語のようにあこがれの王子の花嫁になる夢をみる。
目覚めた後も、夢を引きずるかのように、レストラン従業員達と共に、男は王子に、女は王妃になったつもりでラジオが伝える式典を自分に置き換えて、気持ちよく踊りまくる。 
宴が終わると皆が現実の世界に戻っていきます。

お店のキッチンの模様とラジオが伝える宮殿での結婚式がシンクロするような面白い作品に仕上がっていました。 
ギター、パーカッション、カンテを歌う人たちまで舞台ではレストランの従業員役を演じていて、ダンサーは、ウエイトレス、給仕などの衣装です。
フラメンコを踊るのにミニスカートであったり、舞台上はキッチンと食事テーブルがあったりと生活観のある風景。(でも彼らはこの時間、空想の中にいる)

ラジオから流れる曲ということで、踊る音楽も様々。
シャルパンティエやラヴェル等のクラシック音楽から、ジャズ音楽とかジョン・レノンの「イマジン」を使ったりと幅広いところから選んでいます。(それでも振り付けはやはりスパニッシュ)
あんなに表情に喜びを湛えて踊るフラメンコはあまり見たことがなかったので新鮮に感じました。
爽やかでキュートな作品です。


【最後に】

今公演を観て感じた事は、演目によるせいかもしれませんが、以前観た時よりも民族的なフラメンコいうダンスのエッセンスは残しつつも、よりモダンで自由な発想に移行しており、“バレエ”の色が強くなったように思いました。 
ですが、とても人間的で、色気も強く感じられますし、内なる心情を伝える“踊り”としてはストレートに観客に伝わります。 男女問わず、誰にでも受け入れやすい面白さもありました。
今回、チャレンジのような意欲的なプログラムも増えているようですし、バレエ団の未来も益々楽しみですね。

“スペイン”という国のにおいや、喜怒哀楽の表現のくっきりとした強さが、なんとも魅力的。 
よくスペイン人は“生と死”について身近に意識していると聞きますが、“今を生きる”という爆発力には非常に惹かれるものがありますね。 
観た後は、活力が沸いてきますよ!



2003年09月20日(土)
◆チェコ国立プルゼーニュ歌劇場 『蝶々夫人』ヴァレンチナ・ハヴダロヴァー、ヤン・アダメッツ、他(03/09/25up)


(全2幕3場、イタリア語上演、字幕付き)
マチネ、Bunkamuraオーチャードホール


蝶々夫人: ヴァレンチナ・ハヴダロヴァー
ピンカートン(アメリカ海軍士官): ヤン・アダメッツ
スズキ(蝶々さんの召使): パヴラ・アウニッカー
シャープレス(アメリカ領事): ダリボル・トラシ

ゴロー(結婚仲介人): ヤン・オンドラーチェク
ボンゾ(蝶々さんの叔父、僧侶): イェヴヘン・ショカロ
ヤマドリ公: ロベルト・アダメッツ
神官: トマーシ・インドラ

チェコ国立プルゼーニュ歌劇場合唱団、

〔指揮:イジー・シュトルンツ、演奏:チェコ国立プルゼーニュ歌劇場管弦楽団〕



実は、歌劇『蝶々夫人』を観るのは初めてで、有名なアリア《ある晴れた日に》や、可愛らしい《ハミング・コーラス》くらいしか知りませんでした。勿論ストーリーはだいたい知っていましたけれど…。
それで、まぁ今回の公演の料金が非常に安かったですし、良い機会なので通しで観てみようと思ったわけです。
『蝶々夫人』は有名な作品ですが、私の中ではあまりピンとくる作品ではありませんでした。
主人公のアリアが他の有名な作品に比べて多くないように感じていたことと、そんなに思ったほど上演してないように感じたせいもあります。(実際にはよくわかりませんですが)
興味は“外国から見た日本”の描き方(突っ込みどころも含めて)とか、プッチーニ節ぶりなどですね…。

さて、観た印象は、先日拝見したこちらの劇場の『椿姫』が私にはイマイチだったので、そんなに期待していなかったのですが、『蝶々夫人』は音楽の美しさ、直球で心に刺さる哀しいストーリーにのめりこんで観ることが出来て大変感動できました。
まぁ、他の大きな一流劇場版や色々な演出版に、これよりも更に良いものも沢山あるとますが、作品そのものの美しさ、観る者から主人公への肩入れ度は、かなり高い作品だと思います。
2幕1場&2幕2場(1場と2場の間に休憩が入る)の夫の帰りを待つ蝶々さんを観ていたら、自然に涙がこみ上げてくるのを抑えられませんでした。
どんどん主人公に思い入れを持ってしまう作品です。

蝶々さん役のハヴダロヴァーさんは、声量はそんなに感じられませんが、しっとりしたまろやかな質の良い声で、繊細で可憐なタイトルロールを演じていらっしゃいました。
席が遠かったので、姿かたちに関しては良くわからなかったですが、パンフレットの写真では熟練した歌手という感じです。

そしてピンカートン役のヤン・アダメッツさんはかなり巨漢で、それに比例するようなすごい声量の持ち主でした。ハイ・テノールの良い声ですが歌い方に少々乱暴さも感じました。迫力と存在感はとてもある方です。

全編、蝶々さんはピンカートンに対して、周りが何と言おうと、疑いのないほど純粋に愛を捧げ信じきっている可憐さが、よけいに悲劇色を濃く印象付けてしまうのでしょう。
更に蝶々さんの年齢設定が結婚したとき、わずか15歳というのも哀れですよね。


1幕は、ピンカートンと蝶々さんの結婚式と初夜。
こちらの舞台美術はとても簡素でしたが、全く気にならなかったです。
美しかったと感じた場面は、幕切れの蝶々さんとピンカートンによる愛に満ちた二重唱
結婚式の日、蝶々さんは自分の宗教を勝手にピンカートンと同じキリスト教に改宗してしまった為、一族から見捨てられてしまいますが、これからはただピンカートンだけを信じていこうと決心します。
その夜、ピンカートンが思いやりを持って親族との絶縁に悲しむ蝶々さんを慰め、蝶々さんもそれにこたえる内容の歌。お互いの愛の深さを輝く星空の下で歌い上げます。
幸福に満ち溢れた甘い音楽がとても美しかったですね。


2幕1場はピンカートンが日本を離れ、3年の月日が流れ、周りの人々からは再婚を薦められるようになりますが、蝶々さんは夫をひたすら待ち続けています。

アリア《ある晴れた日に》は、2幕が開いてすぐに歌います。
夫が帰ってくるその時の場面を想像し、心配しているスズキに対して語ってきかせる内容の歌ですが、これはハヴダロヴァーさんの歌い方が意外にもあっさりし過ぎていて、かなりもったいなかったですね。
もう少し盛り上げてくれたらなぁ…と感じました。

後半、ピンカートンの乗る軍艦の寄港を告げる大砲の音がした時の喜びの姿、部屋中を花で飾り、子供とスズキと共に障子に覗き穴をあけ、一晩中寝ずに待っているときに流れる可愛い《ハミング・コーラス》も期待感を静かに包み込むかのように、穏やかで美しい場面を彩っていました。
蝶々さんも子供を産んだとはいえ、まだまだ“駒鳥”のエピソードといい、幼さが見え隠れする人物像が後に痛々しく感じてしまいます。

2幕2場は、帰って来てくれたと期待した分、絶望へ突き落とされる場面や、子供へ愛情を見せつけられるところなど、涙が溢れてきますね。
しかも音楽がプッチーニなので、情緒的で泣かせどころが上手い。


初演時では、アメリカ海軍士官ピンカートンの描かれかたが今より軽薄で酷かったらしく、今日では改定されているようですが、それでもやっぱり別れ際も情けない人物像。
それに対し、蝶々さんの可憐さや純粋さ、そして潔い描かれかたは、ものすごく好意的で、世界中での日本女性のイメージアップに大きく貢献しているような気がします。

「プッチーニさん、このような美しい作品を残してくれてありがとう!」とお礼を述べておきましょう。



2003年09月07日(日)
◆JAL『 萬福寺 音舞台』サラ・ブライトマン、ユンディ・リ、姜小青、萬福寺全山の僧侶、他(03/09/15 up)



毎年、京都や奈良の歴史的な空間の中で、たった一夜かぎり、音楽やパフォーマンスのコラボレーションを行うイヴェント、JAL『音舞台』
今年で16回目(1989年〜)を向えますが、 “東洋と西洋が出会うとき” をテーマとし、今まで世界中の著名なアーティストが、夢のような饗宴を繰り広げてきてくれました。

過去の出演者を、一部例に挙げますと、NYシティ・バレエ、S・ブーニン(ピアノ)、林英哲(和太鼓)、久石譲(作曲家・ピアノ)、野村萬斎(狂言師)、マルセル・マルソー(パントマイム)、ディープ・フォレスト(ワールドミュージック)、さらに、キリ・テ・カナワ(ソプラノ)や、ホセ・カレーラス(テノール)まで参加されました。
まだまだ他にも素晴らしいアーティストが出演しています。

1997年の『金閣寺音舞台』はTV番組として国際エミー賞に入賞し、広く世界に紹介されたそうです。ちなみに、今年もTV放送されます。
(MBS、TBS系にて、03年9月21日(日)深夜0:30〜1:24 番組ナビゲーターは優香)
ただし、パフォーマンスはかなり編集でカットされるはず。あきらかに放送時間が短いようなので…。


さて今年は、何といっても私の大好きなサラ・ブライトマンが出演、それに、15年ぶりにショパン・コンクールで最年少優勝した天才ピアニスト、ユンディ・り、他にも興味深かった古筝奏者、姜小青(ジャン・シャオキン)や僧による梵唄などが聴けるとなると、どうしても見て聴いて味わいたくなります。

ということで、航空券と音舞台鑑賞券、ホテル宿泊券の付いたJALのツアーに参加して観に行く事にしました。(応募による抽選では、当たらないと思いましたので…)
泊まったホテルも豪華だし、自由に過ごせるので、けっこう良かったですよ。

萬福寺は宇治の黄檗(おうばく)にある、日本三禅宗の1つ、中国の名僧を原点とする黄檗宗の大本山だそうです。中国からの影響がいたる所に感じられる造りで、今回のゲストに中国のアーティストが多く出演していたのも、このお寺のセレクトとマッチしていたと思います。

そして“サラ”も新しいアルバム『ハレム』ではオリエンタルなカラーを打ち出していましたので、「音舞台」のテーマ、“東洋と西洋が出会うとき”にピッタリなゲストと言えるのではないでしょうか。


コンサートの開場時刻は20:00、開演は20:30。全部で2公演あり、後の回を見る予定でした。
京都駅近くの観光、チェックイン、遅いランチを済ませ、15:30過ぎに黄檗を越して、宇治観光をしてから会場のお寺に行くつもりでした。
平等院を見学して出た頃には、17:00近くになっており、他の観光スポットの見学はおろか、休憩するお店も早々とクローズばかりで、時間を潰す場所がありません。
うろうろした後しょうがなく宇治川の中の島で座って休み、暫らくは今年最後の鵜飼いを見た後、ゆっくりと萬福寺に向いました。


黄檗に到着した時、微かに前(1回目)のステージの歌声が漏れていました。ちょっと興奮! 受付を済まして開場を待ちます。

もう辺りは真っ暗で大きく冴えた月が頭上に輝いています。(先程までま朧月だったのに...)
ようやく時間になったので、入場する行列に混じって中に入りました。
まず大きな山門をくぐり、正面の天王殿で番号によって左右に分かれ、ずらりと椅子が並べられた、大雄宝殿前の座席を、どの辺りになるかドキドキしながら探します。
見つけた場所はステージ中央の後方の場所。段差が無いですし、遠いなと思いましたが、真ん中というのが嬉しい。

実はこの会場、大きくて立派な松が所々に植えられていて、中央か、前の方にならないと、とても見難い(見えない)と思われる配置の座席が多い。しかも、左右かなり横に広く席をセッティングされていたので、そこよりは断然見やすいと、やや安心しました。

まだ、照明が客席にあてられていて、ワサワサと話し声がしていましたが、「梵唄」の鳴り物の音がこだましだしたら、徐々に、静かになってきました。


♪萬福寺全山の僧侶 (Monks at Manpukuji)
【梵唄】(Bonbai)

黄檗宗では、僧侶による声楽を「声明」(しょうみょう)ではなく「梵唄」(ぼんばい)と呼ぶらしい。
そして様々な鳴り物が使用されるのが特徴のようです。木魚、磐子、銅鑼、太鼓などetc….
お寺の広い敷地の色々なところから、静寂を際立たせるように、法器の音が響いてきました。やがてとても鮮やかな法衣をまとった僧侶達がズラリと列になって現れ、経文に節をつけて歌って?(唱えて)いらっしゃいました。
凛とした独自の世界を垣間見れて、「音舞台」ならではの演出だと思います。


♪ユンディ・リ (Yundi Li)♪

【スケルツォ第2番変ロ短調 作品31】 作曲:F・ショパン
【ラ・カンパネラ】 作曲:F・リスト
【サン・フラワー】 中国民謡


ユンディ・リは中国重慶生まれ。2000年のポーランド、ワルシャワで行われた第14回ショパン国際ピアノコンクールで、会場の熱狂的な支持も集めての15年ぶり(コンクールは5年に1度開催)の第1位優勝を勝ち取ったことで、世界中に大反響を巻き起こしました。(ちなみに彼の前の1位獲得者は、85年のS・ブーニン)
また、彼はビジュアル的にも人気が高いらしいですね。

ショパン・コンクールの時の模様は、コンクールに参加した梯剛之さんを中心として追ったドキュメンタリーに、ユンディ・リさんの演奏も収録されていて、コンクール全体を巻き込むほどの、彼に対する観客の熱狂が凄かったのを覚えていています。
映像からでも素晴らしかったので、是非生で演奏を聴いてみたいと以前から思っていました。
このような特別な舞台で聴く事が出来て嬉しかったですね。
ただ、野外ということで、マイクや機材が入っていたのが音的には少し残念でしたが、しょうがありませんね。

「スケルツォ第2番変ロ短調 作品31」は非常に力強さと、緊張感のある演奏でした。音と音の“間”の部分になんともいえないニュアンスが込められていて、強く惹きつけられます。

「ラ・カンパネラ」は、色々なピアニストが演奏され、望郷の思い、切なさなど様々な表現なさいますが、彼はとにかく生き生きとした、しかも繊細さも感じさせる演奏で、更にその凄まじいテクニックでは圧倒されました。もう、とにかく凄かったです。
小指で鍵盤を弾く音の強さも驚きですし、若さが溢れていて、現在のユンディ・リそのものの姿を体現しているようなとても印象的な演奏でした。
素晴らしかった。ブラヴォーです!

「サン・フラワー」は中国民謡ということで、優しくて懐かしいような曲でした。
最後に激しい情熱的な曲で終わらないで、あえて可愛らしい曲を最後に持ってきたところは、素敵な演出ですね。


♪神戸華僑総会舞獅隊♪
【中国獅子舞】

客席の両端から、鮮やかな赤と青の大きな中国獅子舞が登場。
日本のものと違っていて、曲芸的で、しかも愛らしさもある獅子です。
まぶたが開いたり閉じたりするのがとても可愛い! 立ち上がると大きい獅子なので迫力がありました。


♪姜小青 (Jiang Xiao-Qing)♪

【風のように】 作曲:姜小青
【ムカム散序与舞曲】 作曲:周吉、他
【ラスト・エンペラー】 作曲:坂本龍一


姜小青(ジャン・シャオチン)は北京出身女性アーティスト。
「古筝」の名手で、世界中で演奏活動を行っている方だそうで、今回初めて演奏を聴きました。古筝の他、バイオリン、シンセサイザー、パーカッションによる演奏で、新しいイメージの優しくて、心地良い、映像作品に合いそうな音楽だと思いました。

1曲目の「風のように」はとても爽やかな曲調で穏やかな気持ちにさせてくれそうな作品。伸びやかなバイオリンの音色も素敵でした。

2曲目の「ムカム散序与舞曲」はアジアンティックで独自の雰囲気を持った作品。

3曲目は「ラスト・エンペラー」。あの有名な同名映画の音楽を担当した、坂本龍一氏のサウンド・トラックに参加し、同氏のコンサート・ツアーにも参加した、ジャン・シャオチンさんが高い評価を得た作品。
いゃー、素敵でした。一番なじみのある曲というのもありますが、映画とは違ったアレンジですが、これはこれで良かったですし、大変盛り上がりました。


♪萬福寺全山の僧侶 (Monks at Manpukuji)
【梵唄】(Bonbai)

客席の左右から、沢山の僧侶が列になって登場。先程の「梵唄」とは違い、シンプルな感じで、普通に聞くお経に近い気がしました。


♪サラ・ブライトマン (Sarah Brightman)♪

【ラ・ルーナ】(La Luna)
作曲:A.Dovorak 作詞:C.Ferrau
編曲:F. Peterson / P. Batema


スモークが焚かれ、より幻想的な雰囲気になったところで、黒いドレスでサラが現れました。
最初の曲は、『ラ・ルーナ』。月にちなんだ曲で、元は歌劇『ルサルカ』の《月に寄せる歌》をチェコ語の歌詞からイタリア語のオリジナル歌詞をつけて歌っています。(『ルサルカ』は、水の精オンディーヌの話)
ドヴォルザークのこの名曲は前から好きだったので、『LA LUNA』というアルバムにこの曲が入っていたときは大変感激したものです。

この日の『ラ・ルーナ』の歌声は、アルバムやDVDで見た時と、歌詞の発音が違っていて、聞きなれた感じではありませんでしたが、美しいメロディをしっとりと歌い上げてくれました。発声はオペラ調で歌っています
明るく輝く月の下でのコンサートに相応しい選曲といえるでしょう。
はじめの曲ですが、ブラヴォーがとんでました。

そして、ここ萬福寺『音舞台』のステージとなる大雄宝殿前の月台(げったい)は月を象徴する場所だそうで、月の光を反射させて、大雄宝殿の中のお釈迦様を照らす意味合いがあるらしいとのこと。

演出家の下山啓さんのプログラムに寄せた挨拶には、
「このステージから紡ぎだされる音楽は、まるでお釈迦様の微笑みのように、心を解き放ち、安らぎをあたえてくれるものとなりましょう。
その音楽が、萬福寺の空に照る月の鏡として、世界中の人々の心に届く事を願わずにはいられません。
今宵は、世界の平和と、人々の心の平穏を月に祈る音舞台です」

という文章が載せられていました。
 
『月』がキーワードだったのですね…。


【ストレンジャー・イン・パラダイス】(Stranger In Paradise)
作詞・作曲:R. Wright / G. Forrest/ A. Glazunov / N. A. Rimsky-Korsakov / A. Borodin
編曲:F. Peterson/ S. Brightman


この曲もクラシカルな曲で原曲は、有名なロシア歌劇『イーゴリ公』の中の《だったん人の踊りor ポロヴェッツ人の踊り》をアレンジしたもの。友人はこの曲が一番気に入ったとのこと。
オペラでは、合唱とバレエの入るシーンですね。
コンサートでは、ただただ美しく澄み切った、広がり感のある声に感激しました。
暫らくはずっとこの声とメロディーが耳から離れず、時間が経ってもつい口ずさんでしまいました。(笑)
とくに野外の素晴らしいシチュエーションの中で聴けたことは、貴重な経験ですよね。暑さも忘れて幸福感に浸りました。


♪オーケストラ演奏
【“カヴァレリア・ルスティカーナ”間奏曲】(“ Cavalleria rusticana” Intermezzo)

作曲:マスカーニ(P. Mascagni)


サラが下がり、オーケストラによる演奏。
プログラムにはこの曲名は書いてありませんでした。
(書いてあるものでも順番がバラバラで知っている人でないと間違えるかも…)
でも、よく耳にする曲ですので、このオペラを見たことがない人でも聴いた事がある人は多いはず…。
たいへん美しいメロディーで、オペラでは間奏曲部分ですが、歌詞をつけて歌っているソプラノ歌手のCDも聴いた事があります。
演奏は強弱をつけて、後半にいくにつれどんどん盛り上がり、とても素晴らしいものでした。


【ハレム】(Harem) 
作詞・作曲:F. Brito / F. Trinidade  編曲:F. Peterson
英語訳詞:S. Brightman / F. Peterson / P. Bateman


びっくりしました。衣装を変えて登場したサラは、黒のビスチェ?レオタードのような脚を出した衣装で、下部分にはきらきら光るフリンジをつけた、とてもセクシーなお姿。一緒に登場した4人の女性ダンサーも“ハレム”を連想させるような、妖艶な衣装で滑らかに全身をくねらせ踊っています。
一瞬、「お寺でいいの?」と頭をよぎりましたが、素晴らしいパフォーマンスに酔いしれてしまいます。

先程のクラシカルな世界とは違い、「ハレム」の濃厚な饗宴を艶やかに激しく歌い踊る姿、多才なサラならではの表現力は本当に素晴らしいと思いました。
曲の方も、ポップス調なので、リズムやベースなど大音響がこだまし、ここまで大きな音は、このお寺始まって以来の出来事になるのではないでしょうか。
私はこの曲、けっこう好きです。元になったオリジナル歌手バージョンも素晴らしいですよ。
それと、サラのダンス、特に腕の動きの滑らかさと腰の柔らかさも見逃せないところです。
バレエをしっかり学んでいらっしゃるとのことなので、あのような滑らかな動きも見事なのですね。


【イッツ・ア・ビューティフル・デイ】(It’s A Beautiful Day)
作曲:G. Puccini 編曲:C. Deylen / F. Peterson
英語訳詞:S. Brightman / F. Peterson/ C. Deylen


こちらもポップス調の曲。プッチーニの歌劇『蝶々夫人』の有名なアリア《ある晴れた日に》の一部分を、アレンジして、サラらしく全く違った作品に仕上げた曲です。しかも、とってもカッコイイ!
突き抜けるようなオペラ部分の声が、辺りに響き渡っていました。


♪オーケストラ演奏
【ガブリエルのオーボエ】(Gabriel’s Oboe、映画「ミッションより」)

作曲:E. Morricone 編曲:P. Bateman


サラに関連付ければ、アルバム『エデン』(Eden)の中の『NELLA FANTASIA』という曲の歌なしバージョン。オーケストラのみで演奏されました。
空気に溶け込むかのような柔らかで温かな曲調に辺りが包み込まれ、心地良さと穏やかな気持ちになります。
作曲者の映画音楽の巨匠モリコーネ自身が、最も好きな曲と『エデン』の解説に書いてありました。
ファンの中でも人気のある曲で、とにかく優しい雰囲気の音楽です。(実際に歌って欲しかったかも)
オーボエの音色に酔いしれました。


【タイム・トゥ・セイ・グッバイ】(Time To Say Goodbye)、(Con Te Partiro)
作詞・作曲:L. Quarantotto / F. Sartori / F. Peterson
編曲:F. Sartori / F.Peterson / P. Bateman


黒い細身のドレスをまとい、再びサラが登場。
サラといえば『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。アンドレア・ボチェッリとのデュエットで有名な曲ですが、コンサートやアルバムではソロで歌ってもいますので、今回はそのバージョンです。

曲のイントロが流れると、会場からも待ってましたとばかりの大きな拍手があがり、アンコールのような盛り上がりをみせました。
サラが登場する際は、この曲を歌わないとファンが納得しないのでしょうか。
必ず歌っていらっしゃるようですね。
そしてやっぱり高揚感と興奮をもたらす曲だと改めて感じました。


♪【最後に】
今回のコンサートはおまけのアンコールが無くて、最後に出演者が順番に登場したものが、いわばカーテン・コールになるのでしょうか。
大変満足しましたが、サラとユンディのコラボレーションが見られたら、もっと良かったのに…などと更なる欲が出てしまいます。
2人とも一流の卓越したアーティストなので、たしかに無理かもしれませんが、あのピアノにサラの声が聴けたらどんなに素敵かしら…と妄想してしまいますね。
それとデュエットの相手がもしいらしたら、平和を祈る意味でも是非、『THE WAR IS OVER』を聴きたかったな…。(お寺で歌うなんていいと思いません?)
次回の来日公演を、気長に待つしかありませんね。

早朝東京を出発し、コンサートが終了したのは22:00頃。
一日をフルに使って少々疲れましたが、大変大満足でした。
同行した友人も、今回初めて知ったゲストたちに心奪われたようで、この京都の暑い夜が素晴らしかったと漏らしていていました。よかった〜

お寺のステージを彩るライティングの美しさ、夜の澄んだ空気に包まれた静寂の地に、数々の美しい音楽とパフォーマンス。
贅沢な時間を過ごすことができて本当に幸せでした。
出演されたゲストの方たちも観客と同じように、きっと良い思いでになったことでしょう。


◆尚、この文章は、「サラ・ブライトマン」のファンサイト 【 DIVE to Sarah Brightman 】 を運営されているRYO様 こちらのページ にも掲載されております。
大変有名な老舗サイトで、サラに関しての情報量の凄さ(早い&正確!)には圧倒されるばかり。
バレエにも大変お詳しい管理人様です。