rioshimanの日記
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真夜中に目覚め、昨日のような絵はもう二度と描けないような気がして、売ってしまったこと反省しきりだった。絵というものは良いものがいつも描けるとは限らない。やはりその時の精神状態が一番大切で描く線の一本一本の表情が強くなり柔らかくなりその時によって微妙に変化する。色彩の濃度も何度も変え全体のバランスを考えながらようやく出来た絵。やはり作品は作者の分身なのだ。そう簡単に手放せるものではない。大切な人への思いがそこには籠っていたのだ。もうあの夢中で描いた同じ精神にはとても戻れないのではないか。
今朝はカストロの方に行ってみる。が、どこから登って行くのか途中でストップになってしまった。振り返ると港が割合にいいので、そちらを描く。
水彩用紙でアルシュのような高級なものが画材屋でよく売られているが、この紙を使いこなすには本物の技を要求する。生半可な書き方ではノッペラボウな薄く滲んだような平面が出来るだけだ。そこからさらに先に行くには大変な技術と情熱を要求するが、それをまともに受け入れ答えてくれるこれは紙だ。 今日午前中に書いた絵も最初は見られないような内容だったが、手を入れてゆくうちにどんどん良い方向に変わって行った。まだ使いこなすには精神・技術不足。
午後昨日に譲ってしまった絵のことがやはり気になり、もう一度同じ場所で挑戦しようと思った。それでその場所に行こうとするが、その花が咲いていた場所を見当をつけて探るがどこだったかなかなか見つからない。 昨日最初にホテルから歩いた記憶をたどりながらもう一度同じ道を歩く。その場所はホテルから相当西の方に行った町の端の方で、花は人が普段だと何気なく通り過ぎてしまう荒廃した家屋の側にポツンと咲いていた。 この色彩的な町では花は遠慮がちに存在し、まして紫系の花は珍しかった。昨日も偶然に目に留まったものだった。花は雑草のように可憐に咲いていて、そこにバックに島々の陰影が重なり合って初めて絵となっているのが分かった。
だが描く絵は昨日よりすっきりと奇麗なのだがイラスト的な味のないものになり、これ以上続けても仕方ないので途中で作業を止めてしまった。いわばどこか機械的作業になってしまうのである。
新しい気持ちでもう一度明日ここに来て挑戦し、もし駄目だったら今回は諦めよう。 ここモリヴォスの滞在を一日延期することにした。もっともっと長く滞在したい気分なのだが、次の島へのフェリーの関係でどうしても発たなくてはならない。何せ次に目指すリムノス島へのフェリーはこの時期には週に1度、土曜日にしか出航しないのだから。
「翌日へ」
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