”BLACK BEAUTY”な日々
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2006年06月21日(水) 書評 「国家の品格」

著者は藤原正彦氏。お茶の水大学理学部の現職教授の書いた大ベストセラー本である。

書店に行くと必ず平積みされている本書の初版が昨年の11月20日。この日付に注目してほしい。その後約3ヶ月後にライブドアが地検の強制捜査を受け、堀江氏をはじめ幹部の逮捕に至る。さらにその5ヶ月後、村上ファンド代表の村上氏の逮捕を迎え、日銀の福井総裁の進退問題まで波及する。

本書がベストセラーとなったのは、著者が市場原理主義を真っ向から否定し、「マネーゲームは下品かつ卑劣」と斬った上で、武士道精神の復活を主張している点である。
つまりライブドア、村上ファンドの両事件をあたかも予言するかのような記述がなされていた為、ライブドア事件後急速に売り上げを伸ばし、現在に至っているのである。

この数年、M&AだのTOBだのホワイトナイトだの、ついこないだまで海の向こうの出来事だったこれらの言葉がメディア上に踊った。
俺もついに日本にアメリカ式の資本主義経済原理が幕を開けたのかと思った。

ところが、その幕はあっという間に閉じてしまった。
結局、日本人は「右にならえ」が元来大好きで、それが骨の髄までしみ込んでいる為、本能的に競争を回避するDNAが刻まれているのであると思う。

昨年、モトリークルーのライブを観にいった。客は全員ステージを凝視し、お決まりの曲のお決まりの場面で拳をあげていた。
ところが、先日発売されたアメリカ公演のDVDでは観客のスタンスが日本人とは全く異なっていた。
ステージなどろくに見もせずに客同士が向かい合って踊るわ、お姉ちゃんの乳をもむオッサンはいるわ、全員が勝手に好きなようにライブを楽しんでいた。

やはり日本人はたとえアメリカ製のギターを買えても、アメリカ式の思想を取り入れる基盤がない。

本書では後半「武士道精神」について詳細な記述が展開される。
日本人本来の持ち味を再確認せよということか。

そんなこんなで、結構楽しめる一冊ではあった。
ただ、俺には少し右に寄り過ぎてきつい面もあったが。


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