にのらの日記

2007年04月10日(火) この世の春とは





「もっと集めてくる」

そう言うと、元親は我の頭に白い花のついた草を編んで作った
わっかを載せて、野原の丘をのんびりと下って行った。

我は置いてけぼり
一人草の上に腰をおろしている

陽射しは暖かく、空はゆるく霞がかかる
上昇する気温に緩められた大地からは
草の匂いが昇ってくる
先ほどまで元親が座っていた場所の草が折れて
その場所が特に青臭い

そういえば元親はよく草花の匂いをさせている
着物にはいつも香を焚きこめていて、
前に「女に似た匂いがする」と言ったら
次に会うときには何の匂いもさせないで来た

元親が前に花の話をしたときに
「食える花の名前しか知らない」と答えたら
心底気の毒そうな顔をして、それからは時折
見たこともない花を抱えてやってくる事があった。

「(酒も花も、何も持たずとも良いのに)」

そう思ったが、それを口に出すのは気恥ずかしいことのように
思えて、「花と酒だけ置いて帰るが良い」などと返しては
後でつまらない事を言ってしまったと後悔する。

元親が言うには、花には各々に特別な意味が込められているらしい
姫若子の喜びそうな事柄に、我は興味を持たない。

けれど、我の頭を飾っている白い花には「私のことを考えて」と
言う意味があるのだと、大層照れ臭そうに告げられたとき、
「我にそのような暇などないわ」と出かかった言葉がなんとなく
喉奥で引っかかって、そう言うことが元親をひどく傷つける
のかもしれないと気付いて、黙ってうつむいた。

優しい風に似た元親の指先に髪を撫でられて
耳だけがひどく熱くなった。






シロツメクサは江戸時代に入ってきた花らしいので、安土桃山時代
には存在していないようですが・・・。

それ以前にこんな元就が存在していないのでしょうが。





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