【Realistic Pillow】
秋野京



 哀しみは雪のように降り積もる

   <ROOM>

  一歩、足を踏み入れた瞬間、どうしようもない焦燥感。
  見回せば、壁には無数のひび割れ。
  まるで俺の心の様だ、そう思った。

  二人で戯れ合いながら過ごした部屋は、過去の遺物。

  置き去りにされた椅子、テーブル、
  その上に上がったままのマグカップ。
  マガジンラックには当時の雑誌が乱雑に放り込まれたまま。

  赤いチェック柄のマグを持ち上げれば、鮮やかに甦る思い出。

  無邪気に笑う貴方の顔。
  
  貴方の笑顔も、
  怒った顔も、
  涙も、
  全部全部愛してた。
  
  …愛してる。
  今はもう傍にいない貴方を、変わらず愛してる。

  俺はバラバラになりそうな心を繋ぎ止めるかの様に
  床に転がったガムテープを壁のひび割れに張り合わせた。

  …貴方を愛してる。


 ×××××××××

昨日の早朝、才能に溢れた、素晴らしい方が急逝なさいました。
多分、私とほぼ同年代であろう方です。
その方は、私が一方的に知っているだけの方です。
私がリョ菊にハマって、リョ菊を求めてウロウロしていた時、
偶然出遭った小説サイトの管理人をなさっていた方です。
彼女の紡ぎ出す言葉、世界、雰囲気、匂いに至るまで…
全てが私の心の琴線に触れてきました。一気に惚れ込みました。

あんな空気の文を書けたらいいな、そう思って友人に貰っていた
お題を使って書いたのが上記のショートショートでした。
考えてみたら、これが私の初めてのリョ菊作品でした。
…初リョ菊が別離した後の王子の話でした。
どうして記念すべき初リョ菊なのに別れの話なんだろう、って
思ってました。
まるでこんな形で、こんな風にこの場にアップされるのを
知っていたかのように。この話の中の王子の心境は私の今の心、
そのものです。

元々、体が丈夫ではない方だという事を知っていました。
体調を崩して、長期入院が決定した事も知っていました。
昨日の日中、私はその事実を知らずに彼女のサイトを訪れて
いました。日記が更新なされていないのを見て、また体調が
芳しくないのか、そんな暢気な事を考えていました。
そして夜、とあるサイトさんでその事を知りました。
心臓が、冷やりとしました。慌てて駆けつけました。
同居人の方からのカキコ、そしてファンの方々からのカキコを
見て、現実なんだと理解して、呆然としました。
先日届いていたメルマガ廃刊のお知らせ。そこに書いてあった
絶対何らかの形で完結します、というお言葉。
…色々な事が頭の中をぐるぐるして…一度も感想のメールや、
お見舞いのメールを送れなかった事に激しく後悔して…
それでも最後のメルマガで見えない糸はしっかり繋がっていると
書いて下さっていた彼女に、もう届かない手紙を書きました。

今でも何度も足を運んでしまいます。そして、彼女の残した
言葉達に、彼女の存在をひしひしと感じています。
確かにあの場所には彼女がいる事が伝わってきます。
心から、彼女のご冥福をお祈りすると同時に、『ROOM』を
彼女に。五十嵐りょうさんへ捧げます。

少しでも多くの皆さんに五十嵐さんを感じて欲しいです。
是非、どうぞ。http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=ANGELXX
神様って何て不公平なんでしょう。




2002年03月03日(日)
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