 |
|
■■■
■■
■ かくて、時は流れたり� 薪畦紕廝腺�
テラと天羅の戦争、いわゆる「第二次契約戦争」。
テラ東部と西部の境に存在する、ここ“Ｐｒｏｍｉｓｅｄ Ｌａｎｄ（約束の地）”にも、戦火は過たず飛び火した。
広大な“貴族”の遺跡を擁するこの街に、牙を剥いて襲いかかったのは、天羅は蔵天の地の名代二人。
彼らが同じ親から生まれた兄弟であることを知る者は、まだ誰もいない。
１．天羅にて
一般に、鼎中興の祖として知られる名君、竹中伊織。
彼の失踪から始まった鼎の名代の座を巡る争い…鼎南北朝時代は、実に２００年以上の長きに渡って続いた。
南北朝の開戦当初、最強の戦闘集団「天狼」を擁する鼎南朝が有利に戦いを進め、北朝勢力を清河の城一つ残すまでに追いつめた。
しかし、ここで異変が起こる。中央大陸で間空仁堂による乱が起き、神来山が爆発したのだ。世に言う南北朝争乱である。
括島と呼ばれるシノビの里、いわば情報機関を抱えていた鼎北朝の鶴来麗華は、この事実をいち早く察知。神宮家北朝から、機面鏡と機面ヨロイ、そして機人の技術を手に入れることに成功した。厚い忠誠心と並外れた戦闘力を持つ“天狼”の攻勢を、鼎北朝は高い技術力で補い、戦線を南に押し戻して領地を奪還する。
鼎南朝は竹中伊織の教えから、金剛機やヨロイといった不自然な超兵器群に嫌悪感を抱いており、それが南朝の技術刷新を遅らせてしまう。
これには、南北朝それぞれについた、二人の「天幻」の性格の違いも現れている。北朝天幻、天幻・緋は目的のために手段を選ばない性格であり、南朝の天幻・月は美学や精神性を重んじる性格であった。
高い技術を持ちながら、臣下である大領預たちの疑心暗鬼によって決め手を欠く北朝。
変わることない忠誠心によって領地を守りながら、技術力の差による不利を埋めきれない南朝。
決着は、２００年経っても着かなかった。
中央大陸の南北争乱と、蔵天州の鼎南北朝時代。
二つの図式は奇妙に似ている。二つの争乱はほぼ同じ時期に始まり、そしてその終わりもほぼ同時だった。
エンタープライズ号の漂着と神宮家の統合。そして、それに続く南蛮討伐の勅命。
始めのうちは、鼎南北朝とも、この勅命に乗り気ではなかった。お互い、自分の喉首を掻き切ろうとする隣人への対処で精一杯であり、他に出かけて戦争をする余裕などなかった。
しかし、２００年の間に鼎の大地は荒れ果て、民草は疲れ果てていた。
名城と呼ばれた石動城は、２機の大ヨロイと共に吹き飛んで巨大な湖となった。
交易都市として栄えた西岐の街は、式の暴走によって樹海に飲み込まれた。
失われて戻らないモノは、他にも数えきれないほどあった。
言い替えるなら、彼らは、終わりのない戦乱に飽きていたのだ。
そして、テラ討伐のための戦力が欲しかった神宮家は、最後の切り札を切る。すなわち、南北朝それぞれの領主を名代と認め、名鏡を与え、領土を安堵しよう、というのだ。
南北朝は、名代の座を巡って争っていた。その最大の理由の一つが、ここに消えた。
鼎はそれぞれ“鶴来”と“各務”という、二つの国となり、そして。
遥かテラの地を目指したのである。
２．テラにて
“Ｐｒｏｍｉｓｅｄ Ｌａｎｄ”…約束の地。
“貴族”の遺跡に築かれた、かつてウエストエンドと呼ばれたことのある街。この巨大な街が築かれたのもまた、２００年ほど前のことである。
エドワード・Ｄ・グレナディアと名乗る男がマーシャル（司法官）となり、遺跡に集う無法者を取りまとめて街を作った。法と秩序を作った。しかし、このエドワードという男の経歴は謎に包まれており、その真の目的が何だったのかも、今もって明らかではない。
彼が没した後、プロミストランドは富豪たちの集団合議制による統治へと切り替わった。
そして２００年。
企業は腐敗し、人々は終わらない遺跡の探索を半ば諦めていた。
倦怠と停滞が街を覆っていた。
３．開戦
２０７１年８月。テラ東部の進攻に約１年遅れ、鶴来軍の航空ヨロイを中心とする航空兵団が、プロミストランドの上空に突如飛来した。
彼らが何故、大軍団の投入しやすい東部でなく、西部を狙ったのかはわからない。神宮家の干渉を嫌ったとも、既に上陸している名代たちとのいさかいを嫌ったためともいう。
星蓮級空母から飛び立った、エンタープライズもかくやという飛空艇の数々、そしてそこから放たれる何機ものヨロイ。
東部での戦争については聞き知っていたテラ人にとっても、この攻勢は晴天の霹靂だった。
天幻・緋の率いる陰陽師団による爆裂型式による爆撃と、続くヨロイによる降下作戦で、開戦からわずか１時間の間に、プロミストランドの兵力は９９．７％が壊滅した。
プロミストランドの運命は風前の灯だった。
しかし、鶴来軍の侵略は、思わぬ敵の前に頓挫する。
市庁舎、教会などの重要施設をまたたく間に制圧した鶴来軍だったが、この街の構造、つまり「遺跡」そのものに手を焼く羽目になった。テラ側には２００年の地の利があり、ヨロイの砲撃でもびくともしない建造物の内部には、ヨロイでは入れない。サムライや金剛機は投入できるが、数に限界がある。
遺跡の奥に逃げ込んで息を潜めるテラ人への特効薬は、天羅側にはなかった。
2007年04月11日(水)
|
|
|
