Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2010年07月11日(日) 福島・原田・多田セレクトECMベスト@ECMカフェ を味わう (3)

ECMに潜む精神性というか、ヨーロッパの、ゲルマン民族のガイスト、と、書きつけてみたこともあったけど・・・。

ECMカフェの打ち合わせのときに。
福島恵一さんが「ECMにはドイツのロマン主義の系譜がありますよね」と言われる。
多田「そうなんです、明らかにそう感じているんだけど、それを立証することができないでいます・・・」と応じる。
福島「フリードリヒですよね。この絵画と、ECMが確立される盤との酷似があります。この海はドイツからですと北方をまなざす視線です。」
多田「おおお!いわゆる”ECM初期”から脱却したECMの最初の作品であるタウナーのダイアリー、ECM1032、ま、まさに・・・」








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アイヒャー帝国の迷宮

 ECMは創立してから34年が経ち(2003年現在)、カタログは900を超えようとしている。各国のジャズやクラシックの権威ある音楽賞はすべからく手にしている。と同時に、ほとんど無名でありながら聴く者を美に痺れさせる隠しキャラ的名盤も多数存在する。"the most beautiful sound next to silence" この「沈黙に次いで最も美しい音」をサブ・テーマとするECMレーベルの統一感は、アイヒャーの「君たちは意のままに演奏して良い。だが服従せよ」、と言わんばかりの徹底さによる。作品にはそこにもうひとりのミュージシャンが参加していると評され、"produced by Manfred Eicher" のクレジットは、もはや伝説化して語られている。

 しかし問題はこの「美しさ」だ。ツェランやカフカ、ヘルダーリンを引用した解説文やアートワークを含めたドイツ人らしい徹底した仕事には、まさにヨーロッパの、ゲルマン民族のガイストを感じるが、醒めた知性に潜んで狂気に反転するような美しさが問題なのだ。見る者の内面に痕跡を残すかのようなジャケットやインナー・スリーヴの選択、これもアイヒャーの監修・判断によるものだ。

 私は読者に助言する、ECMの迷宮に手を伸ばしてはならない――。
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Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

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