Land of Riches


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 2018年10月25日(木)   葛藤 [改題] 

昨夜、豚汁を喉に詰まらせるという信じ難い危機を味わいました。
月曜に打った予防接種の跡がいまだに腫れ上がって熱を帯びてますし、
内部破損著しいです(日付が変わる前に就寝するようには努めてます)

ストレスで自壊するのも、ここまで来ると我ながら他人事のようにすら映ります。
長く噛んで食事をする、ってやってみると案外難しいんですよ。

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今日はBSプレミアム「英雄たちの選択」で2回目の刀剣特集でした。
あまりTVを見ないので、受信料勿体無いと思うのですが、こういう時だけ救われます。

取っ掛かりこそとうらぶ、実装刀を所蔵元で見たがる(by末兼さん)
刀剣女子―信濃の現在の“大将”が刀を可愛いと評する擬人的な見方を
否定していなかったのが印象的―でしたが、殺人を唯一の用途としながら
戦乱の時代でもそれが十分に果たされたとは言えず、まして平和な時代では
どうして作られ続けるのか、刀鍛冶ですら言葉に詰まる代物である刀が
はらむ矛盾を巡っての文化論は、スタジオに集ったメンバーの幅広さも相まって、
どんどん広がっていく、とても面白い番組となったのでした。
君が代は石の成長を描いた擬人化大好き日本人らしい国歌説は斬新すぎる。

生物である人間最大の倫理違反である殺人(同士討ち)を肯定するためにか、
切れ味と共に古くから美も追及され、また積み重なる時間で編まれた
物語という“虚”の伝承者たる“実”であった刀。刃に名声を付与するのは
日本刀以前の万葉集での大友家持の和歌ですら歌われてるというから衝撃でした。
(刀の価値を左右するのは銘だったのに、いつしか物語がその上をいくように)

ネアンデルタール人はホモサピエンスより脳の容量が大きかったのに、
前頭葉が発達し、見えないもの(国家とか宗教とか)まで想いを馳せられるようになった、
狩りの合間にビーズという生命活動と関係ないものを生産できるようになった
新人類によって駆逐されたという話も印象的でした。美の追求はホモサピエンスの本能…?

スタジオゲストに脳科学者がいて興味深い話がいくつも聞けました。
彼女は初めて真剣を持たされるのですが、アメリカ人男性は銃を持つだけで
唾に含まれるテストステロン(男性ホルモン)が増加するのだとか。
また人間は虚によって実を左右される生き物で、ワインはラベルを変えるだけで
知覚できる味が変わってしまうのだそうです。ブランドを認識するんですね。

SWはアメリカ人が作った映画ですけど、デススターなど巨大兵器が活躍する戦争なのに、
強くなりすぎるとダークサイドに落ちるフォースという精神論がまかり通り、
ラストは刀っぽい武器で一騎打ちをする(これをしたからと言って、
戦争全体の戦況に大きく影響があるわけではないが、物語の根幹にはなる)という
突然出てきた橋本副館長のSW論には頷けましたし(EP7以降がつまらないのは、
ここを踏まえてないからだと思ったり)、そこでテンション上がるSWオタの
女性MCにはとても好感が持てました。同類だと(笑) 鉄や土をこねくり回した産物を
有難がる不思議な民族である日本人ですが、決して普遍性がないわけでもなさそうです。

今も御刀と呼ぶ本阿弥家の当主や刀鍛冶、真剣居合の宗家、幕末の剣術ブームにあって
刀は抜かないのが第一と説いた人物の存在等々、その存在に矛盾を抱えた刀が許容する
多様な切り口による文化論(今回は刀身そのものよりも、それを取り巻く人々の
精神性が主なテーマだった気がする)の果てに、神に捧げる刀のそばにある
巫女的な存在としての刀剣女子という定義が出されたのでした。
ある意味で、最も太古の位置づけに回帰したのかもしれません。
昭和の刀剣が利害や金と共にあった中年男性中心のものであったならば、
今のブームは知ることが第一の目的となっていて、未来に繋げられる可能性も含んでいると。

刀と茶道具は桃山時代、贈答品として重宝された点や材料が貴金属でないこと、
第二次大戦以降に男性から女性へ担い手が変わったりとかなり近い立ち位置ですが、
持つだけで死と隣り合わせになるわけではない茶道具は包有する物語で、
常に崖っぷちに立たされる刀ほど豊かになれないから擬人化には適していない、という
橋本副館長の分析、結構当たっているような気がします。
そう言えば以前ラジオで、刀はずっと女性的なものとして見なされていたと話題だったような…?

今日やっと10万人動員して、目標の30万行けるかどうか危ぶまれている
キョーハクのかたな展。11月に2日連続で入場するか、思案中です。


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