橋本裕の日記
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2007年10月19日(金) キレる中高年

 すぐにカッとして怒り出す中高年がふえている。17日、18日の朝日新聞の特集「キレる大人たち」にはその具体例が紹介してある。喧嘩を仲裁していきなりこぶしで顔面をなぐられた駅長や、患者から暴言を浴びせられた医師や看護婦など、どれも私が身近で経験したり、友人や家族から聞いた内容とそっくりである。

警察庁の統計によると暴行事件の検挙者数はこの数年間で、30代、50代が5倍にもなっているそうである。朝日新聞の特集記事から引用しよう。

<98年から06年までの推移をみると、10代がほぼ横ばいなのに20代以上は軒並み増加。60歳以上は約10倍、30代と50代が約5倍と大幅に増加し、実数でも中高年の増加が目立つ>

 ちなみに、各世代の暴行事件検挙者数は98年には、十代が一番多く1800人ほどだった。これが06年には1500人ほどまで減少している。ところが98年に1000人ほどしかいなかった30代が06年には5000人近くにまで増えている。これに続くのが20代、40代で、ほぼ3500人と、実数でも10代を2倍以上多くなっている。もはやキレるのは若者の特権ではなくなってしまった。

 これについて、東京メンタルヘルス・アカデミー所長の武藤清栄さんは「職場でためた不満を、地域や公共の場で爆発させているのではないか」と指摘している。怒りをぶつけたい相手は他にいるのだが、それができない。そこでその不満を公共の場でぶちまけるわけだ。

 早稲田大学教授の加藤諦三さんは、中高年がキレる根本には、「会社や家庭も思うようにならない、というコントロール感のなさ、むなしさがある」という。この10数年間で日本社会はおおきくかわった。その直撃をうけているのが中高年である。これからもますますキレる中高年は増え続けるに違いない。

 それでは、こうした怒りに身を任せている人を前にして、私たちはどう対処したらよいのだろう。そうした人を前にして「失礼じゃないか」と相手を非難してみても余計に怒りの炎に油をそそぐだけだ。少し距離を置いて、「この人はいまとてもつらい体験をしているのだろうな」と同情してあげてはどうだろう。

駅の構内で駅員に難癖をつけて殴りかかったり、デパートの店員に食ってかかったり、公共の場所でさえカッとなって暴言を吐き、暴力に走ってしまうのは、それだけ内面に鬱憤をためこんでいるからだ。それが今、コップから水があふれるようにして流れ出している。

こう考えて、まずは「寛容と忍耐」である。その上で、主張すべきことがあれば、感情的にならずに落ち着いて誠実に話すことが大切だ。相手の怒りに対して怒りを返すのではなく、思いやりと愛情を返すのが理想的である。しかし、これは私のような凡人にはむつかしい。

(今日の一首)

 数しれず辛きことあり壊れたる
 人の心に風吹きつのる


橋本裕 |MAILHomePage

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