橋本裕の日記
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9年前の今ごろ、私は高血圧からくる眩暈や動機、不眠などに苦しんでいたが、それ以外にも、歯茎の腫れによる痛みや、腰痛にも襲われ、いわば満身創痍の状態だった。とくに苦しかったのは腰痛である。
朝起きると、まず起き上がれない。少しでも腰を曲げると激痛におそわれるからだ。それでどうするかというと、寝たまま体を横向きに90度回転させ、それから膝を曲げる。そしてさらに90度回転して、うつ伏せのまま腕の力を使って起き上がるわけだ。
着替えをするときも腰を曲げることができないので大変だった。靴下を履くときは椅子に腰掛け、足を膝の上に持ち上げてどうにか靴下をはいた。食事の後、車で学校に出かけたが、運転をしながらも腰の鈍痛に悩まされた。
学校に着くと、仕事に追われているうちにしだいに腰痛を忘れていたが、それでもときおり襲い掛かってくる。歯茎が腫れて医者に行ったときも、診察台の上で起き上がれなくて困った。口を水ですすぐために、いちいち体を半身にして、腕の力で起き上がるのだから大変である。
こういう体験をしているので、腰が痛いという人の話を聞くと大いに同情する。これは体験者でなければわからない辛さである。
腰痛は腰の筋肉が退化もあるのだろうが、やはりこの時期に発病したのは、過労によるストレスが主な原因だと考えられる。長い教員生活のなかでも、この一年間は私にとって特別だった。新しい高校に転勤して最初の年で、問題の多い1年生のクラスをかかえ、それこそ毎日のように発生する問題に追われ、精神的にも苦労した一年だった。
このストレスを私は押し殺して、家人にも友人にも告げなかったが、私の肉体は正直に悲鳴をあげて、これが腰痛や歯痛などの症状として現れたのだろう。それが証拠に、次の年に担任を外れて心が軽くなると、腰痛も歯の痛みも嘘のように消えてしまった。
ただ、高血圧だけはそう簡単におさまらなかった。この後遺症を克服するために、現在に至るまでおよそ9年間も要したたわけだが、今から振り返ってみればこれも貴重な体験だった。こんな悲惨な一年を体験し、これを乗り越えたので、もうたいていのことには驚かない。
たんに精神的に強くなっただけではなく、人生を見る視野が広がり、いろいろなことを深く考えられるようになった。実のところ、こうしてインターネット日記を書き始めたのも、その頃からである。この足かけ9年間におよぶ日記も、その貴重な人生体験の果実だといえないことはない。
(今日の一首)
病得てはじめて分かる憂きことを 忍んで耐える人のつらさを
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