橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を突然、中止し、帰国した。中国外務省はキャンセルの理由を「日本の指導者の最近の言論で会談に必要な雰囲気がなくなったためだ」と発表した。せっかく関係改善に向けて動いていただけに残念である。
小泉首相は会談を直前にして、国会で「靖国参拝を今後も行いたい」と発言している。自民党の武部勤幹事長も王家瑞・中国共産党対外連絡部長との北京での会談で、「首相の靖国参拝に対する中国側の批判は内政干渉だという人もいる」と述べ、反発する王氏と激しい応酬になったという。これらが会談中止の原因らしい。
小泉首相や与党の多くの議員は、首相の靖国参拝は当然で、これを中国政府が批判するのは「内政干渉」だと思っているらしい。少なからぬ国民もそう思っているようだ。しかし、これは彼らが靖国神社の本質を知らないからだ。
戦争中の靖国神社は天皇のために死ねる兵士をつくるための教育機関だった。また、他国を侵略する過程で夥しく生産された理不尽な死を、国民の目をあざむいて「英霊」として祭り上げるために作られた巧妙な擬似宗教機関だった。
靖国神社に限らず、日本人は古来より、時の権力者の手で非業の死をとげた人を、加害者である権力者そのものの手で神にまつりあげ、その怨霊から逃れようとして数々の神社を作ってきた。非業の死を遂げた人の魂を安らかにするためと称して彼らを神に祭り上げてきた。
靖国神社もこうした傾向をもっている。とくにA級戦犯の人々を神としてあがめようという心性は、彼らが東京裁判によって絞首刑になったという事実とわかちがたく結びついているように思われる。それは靖国神社のウェブサイトを覗いてみればわかる。
<日本と戦った連合軍の、形ばかりの裁判によって一方的に“戦争犯罪人”という、ぬれぎぬを着せられ、無惨にも生命をたたれた1068人の方々…靖国神社ではこれらの方々を「昭和殉難者」とお呼びしていますが、すべて神さまとしてお祀りされています>
戦後の靖国神社は、A級戦犯を神に祭り上げるために多大な貢献をしている。これに被侵略国である中国や韓国が反発しているわけだ。もし、靖国神社にA級戦犯が祭られていなければ、首相の参拝発言がこれほど問題になることもなかっただろう。
小泉首相は国会答弁で、「罪を憎んで人を憎まず」と言ったが、死んだ人を悪く言わないのも、日本人の美風のようでいて、じつは祟りが怖いからというのが原点だった。死者の魂を鎮めるためと称しながら、実は生き残った自分たちの平安を求め、さらに死者を神にまつりあげることで、すべての悪行を隠蔽しようとするわけだ。
靖国神社もそのような悪事隠蔽のための機能をもっている。戦争という悪事をむしろ神聖化しようとするだけに、とてもたちのわるい存在である。国民や政治家がこうしたものを容認していては、いくら口先で「反省」を唱え、ODAで多額のお金をばらまいても、近隣諸国には信用してもらえないだろう。
|