橋本裕の日記
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2004年12月01日(水) かけ算と足し算の架橋

 「九九」を覚え、かけ算を「面積」のイメージで捉えられるようになったら、次ぎに、「足し算」との関係を学習させるとよい。たとえば、3+3+3+3のような同じ数を繰り返して足し算するとき、かけ算が役に立つことを、「一円玉」を使って教えるのである。

○○○+○○○+○○○+○○○=

○○○
○○○
○○○
○○○

=3×4=12

 このやり方を理解できれば、次のような計算が「九九」を用いて、たちどころに出来てしまう。
 5+5+5+5+5+5=5×6=30
 7+7+7+7=7×4=28
 8+8+8+8+8+8+8+8=8×8=64

 足し算をかけ算で置き換えるこの方法は、子供たちにとって大きな驚きだろう。足し算が「徒歩」だとしたら、九九を使ったかけ算は、まさに「ジェット機」である。地面を離れて、たちどころに私たちを目的地(答え)にまで連れていってくれる。かけ算や九九の威力をまざまざと実感するにちがいない。

 さらに、かけ算のブロックを崩して、かけ算を足し算に直すことも経験させておこう。たとえば、3×4=3+3+3+3=12である。これを「一円玉」であらわしてみる。

○○○
○○○
○○○
○○○

=○○○+○○○+○○○+○○○
=○○○○○○○○○○○○

 ここで大切なことは、「面積」で捉えられていた「かけ算」のイメージが崩されて、一本の線分として与えられたことである。これは本来「面積」を表すと考えられていた3×4という式そのものが、一つの数12に対応していることを示している。言い換えると、3×4という数もまた、「数直線上の1点」として表すことができるということだ。

 これは何でもないように思えるかも知れない。しかし、これは実はそれほど易しいことではない。ギリシャ人は幾何学の天才だったが、このことを知らなかった。そのため、人類はこのことを発見するために何百年という歳月を要している。

 私たちがギリシャ数学の呪縛から完全に自由になれたのは、デカルトのおかげである。彼は「数直線」を発明し、3×4という式が表す数字もまた、この数直線上にまったく同等の資格で席を占めることができると考えた。これによって、本来次元が違うと思われた2次式と1次式をひとつに並べて、a×b+cなどと書けるようになったのである。

 そしてここから、かけ算の新しいイメージが立ち現れてくる。それは、3×4という数を表す点Bは、原点からみて、3という数があらわす点Aまでの距離を4倍に拡大して得られる点に等しいということだ。式で表せば次のようになる。

 OB=4OA

 つまり、「数直線」を使えば、数の足し算はその数だけ「移動する」ことで与えられ、かけ算は原点からの距離をその数だけ「拡大」することによって与えられる。これによって、私たちは一本の「物差し」の上で、数の足し算やかけ算を行う自由を得たのである。

 しかし、この自由はまだ完全なものではない。この物差しの上で「引き算」を行おうとすると、ときどき不都合なことが起こってくるからだ。この不都合を解消するために、私たちは「マイナス」という新たな数を発明することになった。


橋本裕 |MAILHomePage

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