橋本裕の日記
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| 2004年11月29日(月) |
足し算と引き算の遊園地 |
今日は足し算と引き算のワンダー・ワールドの話をしよう。もっとも、足し算や引き算の面白さを知るためには、子供たちは「物の個数を数えること」ができていなければならない。そしてこれはそんなにむつかしいことではない。
誰でもお風呂の中で1から100まで数えさせられた経験があるだろう。父親や母親はこうして子供に数字を順番に覚えさせたあと、ミカンやリンゴなどの実物を見せて、「これいくつ?」と質問を繰り返す。これは家庭でもできる。
散歩の途中に、「あっ、カラスがいるわよ。全部で何羽いる」と質問したり、「お皿5枚持ってきて」とさりげなく訊く。文字盤のある時計を居間に置いておいて、「3時になったらおやつを食べましょうね」とか、「4時からピイポンパンが始まるので、教えてね」とか、日常の生活の中で子供たちに様々な「数字体験」をさせるのである。
物の数が数えられるようになったら、足し算と引き算を教えることができる。たとえば右手に2本の指を立て、左手に3本の指を立てて、「合わせて何本あるかな」と質問すればよい。子供は立てられた指の個数を数えて、「5本」と答えるだろう。
引き算も同じ要領で教えることができる。左右で7本の指を立てて置いて、「3本取ったら何本のこるかな?」と質問すればよい。子供が「4本」と答えたら、「よくできたわね」と、大いに誉めてやればよい。
この他、計算に役立つ身近な小道具として「一円玉」がある。硬貨はどこの家庭にでもあるし、子供にとってもお金は関心が深い。それに「十円玉」や「百円玉」と併用することで、後々のもっと高度な「位取りの計算」のとき大いに役立つ。
昔の人は計算をするにも小石を使ったようだ。計算のことを英語でカリキュラスというが、これはカルシュウムやカラットなどの語根につかわれている「石」という語から派生したものだという。そして、昔の貨幣は石でできていたらしい。
さらに、この段階で、もうひとつ是非使いたい小道具がある。それが「物差し」(定規)である。これもどこの家庭にでもあるし、子供はこれによって物の長さを測るという大事な学習をするわけだ。
たとえば母親はクリスマスの飾り付けのとき、子供と一緒に折紙の鎖をつくる。そのとき、定規と鉛筆、ハサミを使って、折紙を一定の幅に切らなければならない。そのとき、「2センチの幅に切ってくれる」と子供に物差しを使わせるのである。
そのとき、少し逸脱して、いろいろな長さを測ってみるとよい。「あなたの中指の長さは何センチあるかな」と計ってみて、「2センチよりも長くて、3センチよりも短いわね。3センチに近いかな」と言いながら、定規を子供に渡して、「お母さんの指の長さも測ってみてくれる」と促すのである。こうした親子の対話と共同体験が子供の「数字」についてのゆたかな感覚を育てるわけだ。
この物差し(定規)は数の計算にも使うことができる。定規がなければ、紙に直線を一本引いて、そこに等間隔に「0,1,2,3,4,・・・・」といった目盛りを書けばよい。数学ではこれを「数直線」という。実はこの「物差し」こそが数の演算のしくみを体系的に理解させるために必要な道具なのだ。このことが分かっている教師は、この段階で、定規を使って計算ができることを教えておこうと考えるだろう。そのためには、次のように指示すればよい。
「まず、鉛筆の先を<0>に置いて下さい。さて、そこから、右に2目盛り進みましょう。そうすると、鉛筆の先が<2>という目盛りを指していることがわかりますね。さて、次ぎに、引き続き右へ3目盛り移動して下さい。このとき鉛筆が指している目盛りは何ですか。たぶん<5>ですね。これが<2+3>の答えです、どうです。同じ答えが出たでしょう」
こうしたゲームを他の問題で何度も繰り返すことで、生徒は数字の足し算を手先の運動感覚として覚えることができる。そして、さらに体全体で覚えさせるには、教室を飛び出して、校庭に描いた巨大な定規(数直線)を使えばよい。あるいは、階段に番号札をおいて、そこで練習してもよいだろう。
定規を使うと、<9+8>といった大きな数の計算もできる。たとえばカードの表に<9+8>などと書いてあれば、生徒はその位置に移動して、その目盛りを確認してから、カードを裏返しにして、<17>という答えを確認する。小学生1,2年生の子供たちは体を動かすのが大好きだから、こうした授業は結構楽しいのではないだろうか。
引き算についても、同様のゲームをすればよい。たとえば<13−5>の場合は、<0>から右に13移動したあと、今度は左側に5だけ移動する。そのときの目盛りの値を生徒に答えさせるのである。<8>と答えた生徒にはみんなで拍手をしてやればよい。
こうしたことを繰り返していれば、生徒はそのうちに紙に書かれた数直線の場合でも、実際に移動しているような感覚を味わうことができるだろう。そして、紙に書かれた「数直線」が、校庭に描かれた定規の代用品となりうることにも気付くはずだ。この「代用品」という考え方が、実は「抽象化」ということのたいせつな第一歩になっている。
子供たちはこうして、さまざまな小道具を使って計算することができるようになると、次には、この計算の結果を、数式で「2+3=5」のように記録することを学ぶ。そして、これができるようになると、いよいよ「4+5=?」などの計算問題に取り組むわけだ。
計算問題を与えられたとき、最初生徒達は両手の指を折り曲げて答えを探すだろう。しかし、指を使った計算には限界がある。なぜなら両手の指は10本しかないからだ。たとえば「12+23」などの計算を指を使ってするのはむつかしい。「物差し」でもむつかしいだろう。
そこで、「十円玉」と「一円玉」を使う方法が役立つ。硬貨を使えば、12円は10円玉一個と1円玉2個であり、23円は10円玉2枚と1円玉3枚である。これを足せば、10円玉3枚と1円玉5枚になるから、12+23=35であることがわかる。
ここで強調しておきたいのは、「足し算」や「引き算」を「具体的な行動(操作)」を通して理解させるということである。そして、その「行動(操作)の約束事」として計算規則を示してやるということである。こうして生徒たちはさまざまな「操作」で、数の足し算や引き算ができることに気付くはずである。こうして一段一段と、抽象化の階段を学習していく。
数の足し算や引き算が出来るようになったら、次ぎにかけ算を教えるわけだが、このときも「一円玉」や「物差し」などの道具を使って、具体的な操作をとおして体験的に教えることが大切である。数のかけ算や割り算の楽しみ方について、明日の日記に書くことにしよう。
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