橋本裕の日記
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津田塾大教授・三砂ちづるさんの「オニババ化する女たち」 (光文社新書)によると、神社の参道、お宮、お神輿はそれぞれ産道、子宮、精子を意味しているのだという。お宮は「子宮」を模したものだという説は、私自身の実感とも即している。
樹木に覆われた参道は産道であり、その奥にある聖なる空間が子宮である。お宮に祭られている曲玉は嬰児の象徴だという説を、私は以前にも読んだことがあるが、説かれてみれば、なるほどと納得する。
そうすると、神社の入り口の鳥居は、さしずめ女陰の象徴だということになる。赤く塗られた鳥居が女陰だという説は少し刺激的かもしれないが、大いに考えられる。
沖縄にはウタキ(御嶽)という祈りのための聖なる場所があちこちに残されていた。なかでも世界界遺産に指定された斎場御嶽(セーファウタキ)が有名だ。これは琉球最高の聖域とされ、琉球の創生神アマミキヨが作った7御嶽のひとつと伝えられている。残念ながら、多くのウタキが沖縄戦で破壊されたのだという。
ウタキは周囲を木々で囲まれたなにもない丸い空間で、中央に火を焚く小さな祭壇があり、左右に石がひとつずつ置かれている。私はこれが神社の祖形ではないかと考えているが、まさしく子宮そのものという感じだ。宗教人類学者の中沢新一さんがこんな文章を書いている。
<最初に沖縄を訪れたのは70年代の前半だった。ウタキが見たくて本島北部の国頭村にいった。当時すでにノロの組織は大分崩れてきてはいたけれど、ウタキの空間はきれいに守られていた。はじめてウタキに入っていったときの厳粛な気持ち、心を打たれた感覚を良く覚えている。
うっそうと茂った森の中の、まるで植物に囲まれたトンネルのような細い道を進んでいくと、すうっと開けたこじんまりとした空間があって、それがウタキだった。そこだけ青空に向かって開いているような、建物も神像もない小さな石の祭壇があるだけの空間。本土の神社も、もともとはこういうものなんだということが良く実感できた。
神社というものは森にできるものだ。「社(やしろ)」は「森」。沖縄のウタキがいつの時代までさかのぼるのかわからないけれども、本土でも森の中の少しだけ開けた空間でお祭りをするというのが古い神社の形態だった。伊勢神宮に行くとよくわかるが、森を切り開く範囲をだんだんと広げていって、そこに建物をつくるという形態に変わっていった>(オピニオン)
沖縄の亀甲墓もこのウタキの形をしている。それはまさしく妊婦が足を開いて出産する姿勢をそのままである。霊廟の入り口が子宮の入り口であり、その奥の子宮の部分に死者を葬るわけだ。こうした墓の形は台湾にもあるという。
そもそも古代の人々にとって何が不思議かといえば、新しい生命の誕生だったはずだ。そしてもっとも神聖な場所は、あらたな生命を宿し、育てる場所、つまり子宮だった。神社の境内はまさしくこの命の根源である聖なる空間を模したものだといえる。
なお、鳥居の祖形は遠くインドやエジプトにまで遡るという説があるので、少し長くなるが、最後に引用しておこう。
<インドのサンチーには最古の仏塔(ストーパ)が建ち、その周囲を仏陀のシンボルで飾られた石材で囲まれているが、その入口には2本の柱の上に梁が乗せられ、鳥居の原型が形造られている。
こうした柱の根源にはシヴァ神のリンガが聖なる柱として崇拝されたことがある。シヴァの添名のスターヌ(柱)は、擬人化された男根としてのシヴァを表したものである。また、古代インドでは、寺院または至聖所を表すサンスクリット語はガルバグーラ(子宮)であった。聖地に立つ石柱という組合せ自体が、リンガヨーニの形を表している。
男根の柱はアジア北部とシベリアにも見られ、このような直立した柱に「都市の中心の強力な柱」「鉄の男性柱」という名を与えた。人々はこのような柱を「男」あるいは「父」と呼び、血の生け贄を捧げた。
血は古代においては、男根の柱にとって重要なものと考えられ、ヒンズー教徒は柱を赤く塗ったり、血を塗り付けたりした。古代エジプト神話には「血を流す木」と呼ばれる2本の柱が神殿の入口に立っていたと伝える。この柱が流す血は女性を妊娠させることが出来た。ここには、男性の精液ではなく血が、豊穰をもたらす本質であるという、新石器時代の女性の「月の血」崇拝を模倣した原初の観念の名残が見出せる。
神殿の扉は女陰を表し、「女神の聖なる扉」という名が与えられた。神殿建築の構造自体が、門である女陰から、通路である産道を通り、内部の子宮に到り、そこにはリンガが据えられるという、象徴性が示されているのである。母神の出産には血が必要で、畏敬の念を込めて生贄の首を落とし、女陰である扉を血で染め、産道に血を撒いたのである。また、神殿の塔は男根を表すとも、シヴァ神の聖地であるヒマラヤのカイラス山を表すともされるが、男性的な象徴は女性的なものより後世のものである。>(インドの神殿)
(参考サイト) http://www.dc.ogb.go.jp/kyoku/kairo/ forum/op_nakazawa.html
http://www.mctv.ne.jp/~konron/13_shinden/index.html
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