橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
| 2004年06月29日(火) |
エシュロンと監視社会 |
今日、アメリカ政府はセキュリティ機関 NSAで、全世界のインターネットや電話などの通信を傍受し、高性能のコンピュータ・システムを使って解析している。これによってテロを未然に防ぎ、世界の平和と安定に寄与するのが目的だというが、フランスやドイツなどのヨーロッパの国々はこれを軍事的、政治的、経済的脅威と感じている。
たとえば、94年、欧州企業のエアバス社がサウジアラビアに旅客機を売り込むため、わいろを贈ろうとしていることがこうした盗聴監視システム(エシュロン)によって捕捉され、代わって米ボーイング社が受注に成功したといわれている。また、ワシントン・ポスト紙によれば、ダイアナ妃も死ぬまで傍受の対象とされ、NSAは今も1056ページに及ぶ「ダイアナ・ファイル」を保管しているらしい。
たしかに、傍受された情報がテロ対策だけに限定して利用されるという保障は何もない。当然ながら、政府の軍事的機密情報や商取引情報としても利用されるだろう。これによってアメリカ政府や経済界はインサイダーとして特別の利益を受ける。利益だけではなく、情報を一手に握ることで、世界を支配することもできる。
ダイアナ妃ばかりではなく、世界の要人の個人情報もすっかりNSAの情報ファイルに収まってると考えたほうがよい。最近では、イラク戦争のとき、アナン事務総長が盗聴されていたことが問題になった。知らないうちに私たちの個人生活が覗かれ、監視されているというのは、考えてみれば恐ろしい社会である。「エシュロン」と題された2000年3月29日の毎日新聞の記事より引用しよう。
<米国が人工衛星を使って各国の通信情報を傍受しているとされる通信傍受システム「エシュロン」について、被害を受けた欧州連合(EU)は28日、本格的な調査に乗り出すことを明らかにした。この問題の発覚時から積極的な姿勢を示してきたEUの議会組織・欧州議会も、近く専門の調査委員会を設置する見通しだ。
EUの執行機関である欧州委員会の報道官は同日、エシュロン疑惑について「欧州でスパイ活動が行われるのは許されることではない」と語り、疑惑の解明に厳しい態度で望む方針を示した。欧州委は30日の議会で欧州委としての見解を表明するが、その中でも加盟国の情報が産業スパイとして傍受され、米国などの利益につながった可能性が指摘される模様だ。加盟国への疑惑解明に向けた協力が促されることになる。
エシュロンは米国・国家安全保障局(NSA)が冷戦時代の対立国の情報入手のために設けたシステムで、英国やカナダ、豪州、ニュージーランドといった英語圏諸国も参加。電話やEメール、FAXなどの通信情報が傍受している。問題は入手した情報が国内産業に渡り、ビジネス界の国際競争に流用された疑惑が高まっていることで、2月には傍受の可能性を指摘した報告書が欧州議会に提出された。
しかし、米国や英国はこの疑惑については否定しており、EU側が明確な証拠を示すには障害も大きい。特に英国に容疑がかかっていることはEU内に亀裂を生む要因ともなりかねず、最も強硬な姿勢を示しているフランスの議員団は「英国からだまされたというショックは大きい」(パスクア議員)と非難する。>
こうした国際的な監視システムによる盗聴に対抗して、各国はハードとソフトの両面から最高級の知能を投入して情報の暗号化技術にしのぎを削っている。通信が傍受されても、これが高度に暗号化されていれば、外部の機関に読まれることはない。しかし暗号化技術を高度化しても、これをうわまわる解読技術が開発されればおしまいである。
ピタゴラス、エラトステネス、ユークリッドなど、ギリシャの数学者たちは素数についてさまざまな思索をめぐらした。そして彼らの素数についての魅力的な研究が出発点となって、RSAの暗号技術がもたらされた。ギリシャの数学者たちも、彼らがこよなく愛した素数たちが、この情報化した21世紀の世界を根底で支え、軍事的、政治的、経済的に利用されているという恐るべき事態までは、とても予想できなかっただろう。
(参考サイト) http://tanakanews.com/a0302echelon.htm
|