橋本裕の日記
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2003年07月26日(土) 自前の散髪

 これは「幼年時代」にも書いたエピソードだが、幼い頃に近所の少女と散髪屋さんゴッコをしたことがある。私が散髪屋で彼女がお客さんだった。その結果は散々で、彼女はやけに広くなったおでこで家に帰ることになった。その夜、彼女の母親が怖い顔をしてわが家に苦情を言いにきた。

 これにこりて、私はあこがれの散髪屋になる道を断念したわけだが、今から10年ほど前に、名誉挽回とばかり、今度は小学生の長女をお客さんにして再び散髪屋に挑戦した。今度こそと意気込んで始めたが、結果は悪夢の再現だった。鏡を覗き込んだ長女は自分の広いオデコをみて泣き出した。

 その後も名誉挽回とばかり、次女や妻を相手に散髪をやらせてくれと頼むのだが、長女の失敗の例を見ているので、「とんでもない」という顔をして逃げていく。妻に言わせると、私くらい不器用な人間はいないそうだ。その不器用な人間が、自分の不器用さを自覚しないで鋏を振り回すのだから、あぶなくて見ていられないと言う。

 そこで、仕方なく今度は自分の頭で挑戦することにした。しかし、今度ばかりは失敗したら大変なことになる。学校へ行って生徒になにを言われるかわからない。授業どころではなくなるかもしれない。そこで先ずは道具を揃えることにした。昨日ホームセンターへ行って「ヘアカットセット」なるものを1980円で買った来た。カットはさみ、スキはさみ、コームの基本三点セットに15分間のレッスンビデオが付いている。

 昨夜、夕食の後、さっそくビデオで学習した後、妻や次女の「止めた方がいいよ」の声を無視して洗面所で鏡を見ながら果敢に挑戦した。髪の毛の房がまたたくうちに洗面台の上につもっていく。何しろ後頭部は手探りで鋏を入れなければならないから予想した以上にむつかしい。途中から次女を呼び、手鏡を持たせた。あわせ鏡で鋏の位置をたしかめながら慎重に毛すきとカットを続けた。

 およそ1時間後、すべてが終わった。風呂に入り、頭を洗ってさっぱりしたあと、丁寧に整髪した。前から見た感じはそれほど悪くはないのだが、後頭部がなにやらおかしい。「どうだ」と次女に聞くと、「お父さん、やっぱりヘンだよ」と気の毒そうにいう。刈り上げ過ぎて、襟足がやけに出ている。おかっぱのちびまる子ちゃんみたい。それに不揃いだ。

 どうやら3度目の挑戦も失敗したようだ。居間に行くと、妻が私の頭を見て、吹きだした。「やっぱり、こうなるのはわかっていたわ」となかなか笑いが止まらない。「最初はこんなもんだ。上出来だよ。それに人間は見かけなんかどうでもいいんだ。大切なのは中身だからな」と私は負け惜しみを言った。こんなことでめげてはいられない。これからも自分の頭を実験台にして、自前の散髪に挑戦し続けるつもりだ。


橋本裕 |MAILHomePage

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