橋本裕の日記
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4番目の星には実業家が住んでいた。男はとても忙しそうで、王子がやってきても、顔をあげようとしない。そして、ひたすら何か勘定をしている。
「3たす2は5。5たす7は12。・・・いやはや煙草に火をつけるひまもありゃせん。26たす6は28.ウフッ! うまいぞ。これで5億163万2131になったぞ」 「5億って何が?」 「・・・いや、知っちゃいないよ・・・なにしろ、こんなやまほどの仕事だからな。おれは、だいじな仕事をしているんだ。くだらないことに、かかりあっちゃおられん。2たす5は7と・・・・」
実はこの男は、「空に見えるきらきらした小さなもの」を勘定しているらしい。それを勘定し続けて、5億何個かになったというわけだ。しかしまた、どうして、この男は星の数を熱心に勘定しているのだろう。
「そのたくさんの星、どうするの?」 「どうもしやせん。持っているだけさ」 「星を持っているんだって」 「そうだよ。・・・持っている星の数をだな、ちょいとした紙の上に書くということだよ。それから、その紙を引き出しの中に入れて、鍵をかけておくのさ」
「それだけ?」 「うん、それでいいんだ」 「ぼくはね、花をもっていて、毎日水をかけてやる。火山も3つ持っているんだから、7日に一度はすすはらいをする。いつ爆発するかわからないからね。ぼくが、火山や花を持っていると、それが少しは火山や花のためになるんだ。だけど、きみは、星のためにはなってやしない・・・」
実業家は口を開けたが、なにも言うことが見つからない。そもそも王子さまの言葉がまるで分からないようだ。王子さまは王子さまで、「おとなって、まったくかわっているな」と思いながら、旅を続ける。
ここで、王子さまは実業家に向かって、「何のために」という問いかけをしている。何のために仕事をして、何のためにお金を稼ぐのか。お金をためるだけにお金を稼ぎ、そのために忙しくしているおとなの生き方に、王子さまは疑問を抱くのである。
お金のためだけに生きるのは、やはり空しいのではないか。それでは人は何のために生きるのだろう。人が幸せになるために大切なものは何だろう。王子さまはそう考えて、旅を続ける。やがて王子さまは地球へ来てその解答を見出すわけだが、その前に、まだ途中の星が2つ残っている。
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