橋本裕の日記
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2002年04月04日(木) 気の毒な飲み助

 王子が訪れた三番目の星には、「飲み助」が住んでいた。飲み助の男は、空のビンと、酒の入ったビンを、ずらりと並べて、だまりこくっている。王子さまが「何しているの?」と訊くと、男は泣き出しそうな声で、「酒を飲んでいるよ」と答える。

「なぜ、酒なんか飲むの」
「忘れたいからさ」
「忘れるって、何をさ」
「はずかしいのを忘れるんだよ」
「はずかしいって、何が?」
「酒を飲むのがはずかしいんだよ」

 飲み助は、そう答えるなり、また黙りこくってしまった。王子は言葉を失い、どうしょうもなくて、飲み助のいる星をあとにする。そして、「おとなって、とってもおかしいんだなあ」と、旅を続けながら考える。

 飲み助は自分の恥ずかしさを忘れるために酒を飲み、そのことでさらに自己嫌悪に陥って、酒を飲まないわけにはいかない。酒を飲み続ける限り、自己嫌悪の悪循環から免れることはできないのだが、そのことを知っていながら、どうすることもできない。こうなると、もう、気の毒としかいいようがない。


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