橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
部屋でパソコンに向かって、むつかしい文章を考えていると、高校2年生の次女が入ってきて、「詩らしいきものを書いてみたけど、ちゃんとできているか読んでみて」と言う。おやおやと思いながら、彼女のノートを受け取って、読み始めた。
「夏、あなたから一枚の絵葉書が届いた。 そこには私が見たこともない、真っ青で、どこまでも澄み切った海が、優しく、大地を浄化させるかのように続いていた。 私はホッとため息を漏らし、ゆっくり絵はがきを回した。同じコバルトブルーで書かれた文字に、思わず目が和み、高鳴る鼓動を感じながら、一つ一つを丁寧にゆっくり読んでいく・・・。思わず私の顔から笑みが零れる。 ーー目を閉じてあなたの声を追懐する。それは頭の中に響き渡り、やがて心の奥底にあなたの優しさを感じさせた。ーーー」
一読後、「もう少し無駄な文字を削ったほうがいいね。そうすれば、少しは詩らしくなるよ」と私。首を傾げる次女に、「たとえば、こんな風に書いてはどうかな」と、傍らの紙に書き付けたのが、つぎの文章である。
一枚の絵葉書
夏、あなたから一枚の絵葉書が届いた 見たこともない真っ青で澄み切った空 大地を浄化させるような優しい海 ため息をもらし、絵葉書をゆっくり裏返すと・・・ コバルトブルーの文字に目が和み、鼓動が高まった ーー目を閉じて、あなたの声を追懐する あなたの声は私の頭の中に響き渡り 私の心の奥底に あなたの優しさがしみとおる 思わず私の笑みがこぼれる・・・
次女は「ほんとうだね」と素直に感心して引き下がった。あとで居間に行き、妻の感想を聞くと、「あなたの書いた詩より、もとの文章の方がいい」という。その理由は、「なんだかきれいに整いすぎて、個性がなくて、面白くないから」だそうだ。「そうかなぁ」と少しがっかりした私。
絵葉書に君のいる海しのびつつ 裕
|