J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年12月31日(水)    ホテルのエレベーターの中にふたりきり。

J (3.秘密の恋愛)

3. 想い出の夜 (14)


「工藤さん、やっぱり、飲み足らないんでしょ、」
レイはニコっとしてそう言いました。

いや、そういうわけじゃなくて、僕としてはだな、君のためにと思ってなのだが。
ああ、でも、いいか、それでも、それでレイが納得するならば。
それに、さっきの話も気になるし。

「ん?、分かっちゃった?、、、アハ、おい、少し付き合ってくれないかな、」
私は愛嬌を崩してそう言いました。

「少しだけですよ、時間も遅いんだから、」
「分かっている、って。」
「飲み過ぎ、注意ですよ、」
「はい、はい、じゃ、行こ、」

私はほっとしてエレベーターに向かう。
レイの背を押すようにして。

エレベーターに乗り込んで。
最上階へのボタンを押して。

そしてドアが閉まる。

ホテルのエレベーターの中にふたりきり。


「なんだか、恋人同士みないだな、」

私はつい気を許してそんな言葉を言ってしまう。
言ってしまってからすぐに、これは失言と気がついて。

「そうそう、レイちゃん、“彼”とは、うまくいってるの?」と聞く。

レイは私の顔を見上げて、ただにこりと頷いて。
そして。
「工藤さんは、友美さんとユキちゃんと、幸せいっぱいですねっ、」
「うん、まあね、、、。普通だよ。」


私には妻がいる。子どもがいる。
レイには“彼”がいる。
私とレイはただの上司と部下の関係。


この時、私とレイははっきりとそれを認め合いました。

エレベーターの中で。



***

みなさま、よいお年をお迎えください。
明年もよろしくお願いいたします。

2003/12/31 JeanJacques Azur



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