J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年01月27日(月)    友美さんはふとんからそっと出て身繕いをしました。

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (16)


私は友美さんの胸からお腹へ、そして“友美さん自身”に触れてゆくうちに、

性的対象としての友美さんの、性への感情が薄らいで、

私の子どもを産んでくれる、母としての友美さんを感じていたのです。


、、、友美さんのお腹には子どもがいるのだ、、、

、、、ここから、子どもは生まれてくるのだ、、、


そう思う私には、自らの欲望を果たそうという自我は存在しませんでした。

私の“私自身”は、力を失いました。



私が身体を離すと、
友美さんは、じれたように身体を私にすり寄せました。

(どうして?)

友美さんの身体はそういうふうに私の身体に聞いてくるのです。



ですが、

私の“私自身”はもう力がない、

、、、私は、そういうことは、言えなかった、


私は友美さんに背中を向けました。

そして、「今夜はもう遅い、早く寝なくちゃ、」と、つれなく言い放ちました。

友美さんは私の背中に身体を寄せて、
「ね、ちょっとだけ、」と、小声で言いました。


ちょっとだけ、いれて、、、

ちょっとだけ、、、



、、、でも、私の“私自身”は、もうそういう状態には戻らなかった、


私は友美さんに向き直り、固く抱き締めて、優しくキスをしました。

そして言いました。

「大切なトモミさん、愛してる、とっても、、、
 今夜はオヤスミ、ね、オレ、疲れているみたいなんだ、」


ぴたりと合わせた私の身体から、
友美さんは“私自身”に元気のないことを感じとりました。
そして、申し訳なさそうに言いました。

「ありがとう、、、疲れているのに、、、」

「いや、うれしかったよ、来てくれてありがとう、早く一緒に暮らしたいね、」

「うん、」

「じゃ、ね、あした、たのむよ、」

「うん。おやすみなさい。」

「おやすみ。」


友美さんはふとんからそっと出て身繕いをしました。

そして、「もう一回、」と言って私にキスをせがみました。

私が軽く額にキスをしてあげると、うれしそうにして、

「おやすみなさい、」ともう一度言って静かに部屋を出てゆきました。



私はそんな友美さんを愛しいと思いました。



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