hazuki's diary

2016年02月14日(日) 一年で一番特別な日・・・・のうちの一つ


「あの・・・」

背後から、おまえの声がする
すぐに振り返るべきだろう
いや、普通、すぐに振り返るものなのだけれど・・・
今の俺は、立ち止まって・・・ワンテンポ置かなければいけないと思う
え?
何故って・・・

「あの、葉月くん」

あ、やばい、反応が遅すぎるか
・・・よし、そろそろ大丈夫か
俺は、ようやく、立ち止まり・・・声のするほうに振り返る



10分前
はばたき公園の入り口横で、ちょっと大きめの木の裏側に隠れているおまえを見つけた
公園に俺を呼び出したのはおまえで、待ち合わせは公園の真ん中にある噴水の前だ
その待ち合わせ場所までは歩いて8分
時間通りに到着している俺
明らかに早く来ているであろうが、何故か入り口で隠れているおまえ
しかも、隠れきれずにばれている

こういう場合は、どうしたらいいものなのか
通常であったら声を掛けて「何してるんだ?」と聞くだろう
でも・・・今日はまあ、多分、聞いてはいけないだろう

木の後ろに隠れているおまえをあえて見ない振りをして、俺は公園の真ん中へそのまま進んだ
とりあえず、約束の時間に噴水の前に行こう

真冬のはずの2月14日
本来ならば厚手のコートを着ていても寒い、そんな時期なのに、今年の今日はまるで初夏のような気温になると天気予報で言っていた
その予報にあわせてなのか、半袖でジョギングをする人が数人

こんな日だったら、公園で昼寝でもいいよな
そんな気持ちになるくらい、穏やかで、いい天気の朝だ

ゆっくりと歩く俺の後ろで、おまえの携帯の呼び出し音が聞こえた
ここでもやはり、振り返ってはいけない
このタイミングで携帯が鳴る、非常に慌てているであろうおまえを見てはいけない、そんな気がする

とにかく、知らない振りをしようにも、隠れられそうな木の後ろをおまえが移動するたびに慌てた足音が聞こえるわけで、おかしくてたまらないのだけれど、それは、気づかないでいることにしておこう

公園の入り口から銀杏並木を抜けて、少しうっそうとした雑木林のエリアの先、曲がりくねった小道を下ると、公園の大噴水が見えてくる


「あの、日曜日・・・葉月くん、予定ある?」

2月12日、金曜日の放課後
下駄箱で靴を履き替えていた俺に、おまえが声を掛けてきた

「別に・・・」
「それなら、朝10時にはばたき公園へきて欲しいんだけど、大丈夫?」
「・・・構わない」
「じゃ、公園の噴水の前に朝10時に!お願いします!」


おまえが二度強調した「朝10時」・・・
その、朝10時にそろそろなろうかという2月14日
公園の真ん中の噴水の前まで、あと30m
背後で駆けてくる足音が聞こえる・・・・・


「あの・・・・」

俺はまだ振り返らない

「あの、葉月くん」

振り返ると、息を弾ませ頬を染めたおまえがいた

「・・おはよう」
「あ、おはよう、きてくれて、ありがとう」
「ん・・・」
「待った?」

俺が待ったかどうか、おまえが一番知っているだろ
そう、突っ込みたくなるような台詞を言う

「・・・・ん」
「え?待ったの?」

人に聞いて、その返答をさらに聞き返すおまえ
俺は、おまえをまじまじと見て頷いた

「ごめんね、待たせちゃったみたいで、葉月くん、あの、これ」

おまえがピンクの小さな袋を差し出す

「今日、バレンタインだから
 あの、今年が高校最後だし
 葉月くんに、あの、えっと」

「サンキュ・・・」

俺は、差し出されたおまえの手を引き寄せて
そのまま、おまえを抱きしめた

「は、は、葉月くん!」

「・・・待った」

待った

ずっと、待ってた

あの日から・・・ずっと



俺の腕の中でもがいていたおまえは、やがておとなしくなって
胸に、おまえのぬくもりが伝わってきて・・・

「あの・・・」
「ん?」
「葉月くん」
「ん・・・」
「さっき、何で笑ってたの?」
「え?」
「さっき、葉月くん、おはようって言ったとき、笑ってたの」

・・・しくじった
おまえが後ろから追いかけてくるのがおかしくて、顔がにやけていたなんて、絶対言えない

「噴水の前に鳩が居たから・・・」
「え?そうなの、全然知らなかった!」

鳩だけに、平和だろ
そんな俺の嘘を信じるおまえが、可愛くて仕方なくて、俺はまたにやにやしてしまったかもしれないって事は、もう、永遠に内緒で・・・・


END


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 拍手をここにも置いてみた・・・思う存分使ってくれ



LM 葉月 珪 [MAIL] [HOMEPAGE]