「男女は、最初はフランス料理だの和食だの、気取った料理を食べてのち肉体的結合となるのを定番とし、焼肉に来る男女はすでにできておる」。
今日帰りの電車でだらだら読んだダカーポに、嵐山光三郎が面白いことを書いていた。(私はこの人が食べ物の事を書いているのしか読んだことがありません。)だから今日は、「私は付き合う前にも後にも、焼肉やお好み焼きやデニーズに連れていってもらうことはあっても、一度としてフレンチやイタリアンや、寿司を食わせてもらったことがないぜ畜生」、という話を書くつもりだった。
男女の関係とかいう幻想風景の初めから終わりまで、とにかくデニーズ以上を経験したことがないですよあたしゃ。
何年前だか、生まれて初めて"彼氏のいたクリスマスイブ"というものがあったけれどもその時でさえ、ああ、夕食は早稲田のお好み焼き屋(一応おごり--別に払っても良かったけど)。おばちゃんと私と彼と、三人だけの空間で他に客などいるわけもなく、その時はたしか田代まさしが捕まったりテポドンが打ち込まれたりしていて、だからお好み焼きとテポドンと田代まさしなイブだった記憶がある。
・・・こんなとほほ話を、書くつもりだった。
今日、友達から電話をもらった。大変な内容の話だった。これまで何度か長電話したことについて、「ありがとう、麗子のおかげでずいぶん助かったんだよ」と言われる。私がだらだらと垂れ流した不毛な話に、感謝をしていただいたのはもちろん嬉しかったけれど、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。本当に私は、不毛な話しかしていない。
それでも、無条件に私という存在に対して「ありがとう」と言葉に出して言ってもらったのはおそらく生まれて初めてで、とても嬉しかった。もう涙でぐしゃぐしゃで、こちらこそありがとう、と感謝した。
私はこれまで、そのひとにきちんと向き合っていなかった自分を恥じた。辛いことや抱え込んでいることを、べつに癒したり分けたりしなくてもいいからそっと気がついて、向き合うべきだったのだ。これからは友達として、気持ち悪くても誠実で真直ぐな気持ちを注いでいくのだと決めた。
人と人の関係は様々である。私にはきっとどこか欠陥があって、男の子たちはフレンチやイタリアンや和食に連れていって口説こうという気にはならないのだと思う。でも、まあ焼肉やお好み焼きやデニーズで、楽しくお話できるのもまたそれはそれ、という気がしている。今日「ありがとう」とおっしゃって頂き、さらにそう感じる。届かない気持ちや会えない人を数えるうち、私は根っこから斜に構えるようになってしまっていたのかもしれない。痛くても、寂しい人にはなりたくない。
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