家族進化論
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2026年08月13日(木) 【引用】shifting baseline syndrome

【M先生のメルマガより引用】
昨年(2025年)の夏は、日本では統計開始以来もっとも暑い夏でした。
夏平均気温偏差は+2.36℃だったと気象庁のデータにあり、2023年
と2024年が+1.76℃とのことなので、それまでを大きく上回って
暑かったのが昨年です。

体感では今年も昨年に負けず劣らず暑いという気がしますが、データ
上ではどうなるのでしょうか。

shifting baseline syndrome という興味深い概念があります。
今年度の福井県立大学の入試問題がこれを扱っていて、そこで知りま
した。
出典は 2025年度に出た National Geographic の記事です。

2024年が観測史上もっとも暑い年で、地球の気温上昇が、パリ協定
で定められた1.5℃という目標値を初めて上回った年でもあったこと
を告げた後、shifting baseline syndrome という概念が紹介されます。

本文の説明では、「それがどんなものであれ、現在経験している環境
状態に人びとが慣れてしまい、それを普通だと思うようになること」
とありました。
結果として、より高い大気汚染の水準を受け入れたり、海の魚がより
少なくなった状態を受け入れたり、といったことが起きてきます。

もちろん同じことは気温上昇に関してもいえて、小学生の頃の夏を思
い出すたび、私はどう考えても現在の暑さを「異常」と感じるのです
が、いつしかこれに慣れてしまい、焼くような日差しを顔に受けても
「異常」と感じにくくなっていくらしい。

さらに世代が進むと、若い世代ほど悪化した後の環境を基準にして考
えていくことになりますから、「環境問題への危機感や、環境問題の
対策に寄せられる支持が弱まる可能性がある」と著者は懸念します。

人間が大気中に二酸化炭素を加え続けるかぎり、気温は上昇し続けま
す。NASAゴダード宇宙科学研究所所長のギャビン・シュミットに
よれば、今後10年以内に、世界は1.5℃という温暖化の基準値を恒
常的に超える可能性が高いとのこと。
その先もさらに暑くなると予想され、現在の気候政策のままでは、
2100年までにおよそ3℃の温暖化につながるそうです。
現在の子どもたち、大丈夫なのでしょうか…考え出すととても不安
です。

文章の最後はカリフォルニア大学サンディエゴ校のアダム・アロン
氏のコメントでした。
彼は、気候変動についての人々の考え方だけでなく、実際の行動ま
で変えたいのであれば、「分析的ではない」方法が必要だと考えて
います。
「分析的ではない方法」とは「社会規範」であり、例えば近所の人
たちがみな太陽光パネルを設置し、家を電化した。それを見て自分
もやろうとする、といった行動変容がありうると提案されていまし
た。

太陽光パネル…100年後を考えた時、はたして今どういう行動をと
ることが望ましいのか。なかなか答えは出ませんが、この暑さの中
でこんな文章を生徒たちに紹介するのも一興かと思います。

shifting baseline syndrome。
もともと環境・生態学で使われる概念であるようですが、「少しず
つ状態が変化し、その変化に慣れ、 新しい状態を普通とみなすよう
になって以前の基準を忘れる」ことを「症候群」とみなす見方は、
「説明の枠組み」としてもおもしろいと感じました。

・1日1時間だったスマホの利用時間が2時間、3時間と増えていき、
いつの間にか「毎日4時間くらい普通」と感じる。

・より短く、刺激的なソーシャルメディア上のコンテンツを、最初は
おそるおそる見ていたのが慣れていき、以前なら十分面白かったもの
を退屈に感じる。

・残業が少しずつ増え、毎日遅くまで働くことが「これくらい普通か」
と感じられていく。

・値上げが続くと、以前なら高いと感じた価格がいつしか「普通」に
なる。

気温の上昇も物価の上昇も心配ですが、まずはやるべきことをしっか
りやっていくしかないのかなとも思っています。
生徒たちは生徒たちでそれぞれに考えていると思いますが、それでも
これからの社会を担う人たちに考える材料を提供することには、大
事な意味があるはず。


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