森川 横峯さくら選手は、マイナスの感情を持ってはいけないという思いが強かった。緊張しても「大丈夫、前向きに」と考えがちで、「1位以外は自信にならない」と考えてしまうくらいにすごくストイック。つまり、求めるレベル、自分にOKをあげるラインが高すぎて「これではだめだ」と自己否定感も強く表れていました。
── そんな横峯さくら選手はどのようなプロセスを踏んでいったのですか? 森川 第一段階として、自分の感情に気づくためのトレーニングをやりました。プレーの中で、どういう感情を実際に持ったかをメモしておいてもらい、そのシートを振り返りながら、「ここのホールで緊張した」などと終わったあとに1つずつ話して、場面ごとの感情を整理していったんです。それから、「1週間、自分の感情を表現する言葉を20個以上つかって日記を書いて」といったように、自分の意識に目を向けていきました。「単一の感情しか覚えていなかった」ということに対しても、実は自分が思った以上に、複数の感情が働いているものです。「自分のことは自分がよくわかっている」と思っていても、そんなことはない。まずは「自分の感情に、自分自身はそれほど気付けていない」ということをわかってもらうことからはじめました。 そして、「緊張してもできた」という経験値を積んでもらうことにしました。僕がサポートして初めての試合で2位になった時も、今までなら「なぜ1位になれない...」と落ち込んでしまうところを、「これだけ不安で緊張していても2位になれた!」と自信に変えた。すると、その自信をもってプレーして、次の試合では優勝できたんです。
── 僕らも受験、就職、プレゼンなどの大一番に向かうと、いくら年をとっても緊張してしまうものですよね。どうすれば「緊張してもできた」という状態にもっていくことができますか。 森川 まず、「自分がどんな時に、どれくらい前から緊張しはじめるか」について、自分の緊張度合いをパーセンテージで書いてみるのはどうでしょう。たとえば、大事なプレゼンがある。その1週間前はまったく緊張していないのか、ちょっとはしているのか。「まだ10%だ、ちょっとどきどきするな」と数字で書いてみる。普通、10%くらいの緊張って忘れてしまうんですね。それをちゃんと書き留めておき、自分が緊張していることを認識した上で日々の生活を送っていく。緊張していることを無視せずに考えながら、当日をむかえていくのが大事だと思います。 あとは、ノートをつける以外にも、緊張する場面で「緊張する、緊張する...」と1分間、自分に語りかけてもらうのも1つの方法です。自分の中で見たくない、認識したくない感覚を受け入れた上で、物事に取り組めると、「緊張していてもできた!」の成功体験を積みやすいですね。
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