きまぐれがき
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2004年03月11日(木) 恋、そして恋

この間、ほっけをむしりながら「もう切った」と自の恋の終焉を宣言した
Y子ちゃんだが(1月21日の日記)、どうもまだ心はゆれてゆれて気持
ちが定まらないらしい。

恋とは、まったく厄介なものですなぁ。と言いながら羨ましかったりして。

そこで思い出すのが油壺夫人のことだ。
油壺夫人というのは、学生時代の一時期を四谷に住んでいたほかは、
生まれた時から結婚した今も油壺に居ついているので、こう呼んでいる。

その油壺夫人が結婚して3年ほど経った頃、スキー場で鉄塔のような
ところにぶっかって鎖骨を折り、とある医大の付属病院に入院したこと
があった。
経過も順調で、さぁ退院という日にご主人がいそいそと迎えに行ったと
ころ、油壺夫人の姿は病院から忽然と消えていて大騒動になった。

支払いを済ませて退院をして行かれた、病院側はそう言った。
が、自宅には帰っていない、実家にも親戚縁者のどこへも油壺夫人は
帰っていなかった。
まるで安手のTVドラマをみているようだった。

オロオロするばかりのご主人やご両親を前に、私ともう一人の友人は
「逃げたな」と感じていた。
ご主人と不仲だったという話は訊いていなかったし、そうは見えな
かったのに、何度か見舞った時の油壺夫人自身の言動から、主治医に
くっついてくる研修医.....あれに違いない。
あれがこの失踪にかかわっているはずだと、女の勘が働いたがまだ
ご主人には黙っていた。

やっぱりそうだった。
その研修医が住むワンルームマンションで、油壺夫人も一緒に住んで
しまっていたのだ。
何も知らないご主人は、消えた日の夜油壺夫人からかかってきた
「一人になって考えたいことがあるから」(ますます安手のTVドラマだ)
との電話に、なにはともあれ一応は安心したようだったが、私と友人の
気持ちは複雑だった。

何故かご主人のもとへは電話が毎日かかってきているようで、油壺夫人
が帰ってくるのを気長に待っているふうなご主人の様子に、私と友人は
とうとう研修医のことは言い出せなくなってしまった。

そんなある日、私のところへご主人から電話があった。
発熱気味でもあるし自宅でできる調べ物をしようと、お昼過ぎに事務所
から家へ帰ってみると、油壺夫人が戻っていたと。
油壺夫人はなんとなんと屈託なくお昼寝の真っ最中であったと。
そして目がさめると、ご主人に「あら お帰り」とけろっと言ってのけたの
だとか。
何だと〜〜〜〜どっちが帰ってきたのだ!?


その後、ご主人は油壺夫人を特に問いただすことはなかったそうだし、
油壺夫人も本当のことを言わないで来たそうだ。

今もこの二人が別れずにいるところをみると、ご主人が研修医のことを
知らなくて幸いってことかもしれないと、都合の良い解釈をしてしまう私
であるが.....

天衣無縫とでもいうのか? 魔が差したとでもいうのか?
「あれは恋だった」なんていったらぶん殴りそうになる私と
「そういうものね恋って」なんて言ってしまいそうになる私。
ご主人のお顔を見ては、チクリと胸が痛んだりもする。

それにしても、胸の奥にどこかすっきりしないものを抱えてしまうこと
になったのは私と友人で、当の本人の油壺夫人はお昼寝から目覚めると
同時に、何事もなかったかのようにスルリと元の生活に、ってなんだか
理不尽じゃないかなあ。ちがうかなあ。





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