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2006年12月31日(日) 大晦日



 蕎麦を打ちながらチャンネル桜の「人間の杜」を見る。
終戦まぢか本土に爆弾を投下しに来たB-29に対して名機「*飛燕」で決死の体当たりをし、二度に渡って生還した板垣政雄 元軍曹そして生野文介元大尉(数々の伝説的な空中戦で帝都防空に活躍。陸軍飛行第244戦隊)がゲスト出演していた。
 一部評論家が書いている特攻の前夜、未練を持ってやけ酒飲んで刀を振り回したなどという幻影はこの244戦隊には無い。板垣・生野さんも語っているが、「微塵もわたくしごころはなかった、怖いと言う事も無かった.ただ一矢報いて道連れにしてやる」と機銃も体を守る装甲板も外して(外さないと高高度まであがって行けない)B-29のいる高度一万メートルに飛んで行く。

そして真正面から近づき(後方からだとスピードの差だけで接近するため時間がかかりその間に撃たれるため)交差するや否や反転し、なんと敵機の上に馬乗りになり、プロペラで敵の胴体をかっ捌(さば)いた。板垣さんは一度目は衝撃で機内から放り出され、落下する時に正気に戻りパラシュートを開き助かる。後また特攻する。運のいい事にまた生還する。

「ここに恐怖などというものは一切無かった。特攻の前日、生への未練で泣いた人も中にはいたかもしれない、が多くはそんな事無く果敢に飛び立って行った」と淡々と語った。

 評論家の立花隆は、特攻隊の最後の写真を見て、「死にに行くのにこんな清々しい顔など出来ない、これは*ヒロポンをやったためで、戦後この軍にあったヒロボンが市井に流れて民間に中毒者が多くでた」等とまるで軍を悪者扱いして書いているが、馬鹿を言え。ヒロポンは*昭和17年に既に一般に向けて「覚せい剤」として広告され売りに出ている。

 その往時を語る佇まいに感動してしまって、涙が打っている蕎麦に入ってしまい、今年の暮れの年越し蕎麦は少ししょっぱかった。
東京上空で果敢に突っ込んで行った光景を見た人は多い。


    除夜の鐘重なるを聞きつつ食す蕎麦飲むモンラッシェ。


*飛燕< ドイツのメッサシュミットの改良型。エンジン部は高額な契約金を二重に支払って(既に海軍がライセンスを取得しており、ダイムラーベンツ社もそちらから譲って貰うよう忠告してくれたにも拘らず、海軍への対抗意識から独自に契約を結んだ。故障が相次ぎ、稼働率は低かったが高高度には向いていた。川崎重工製。

*ヒロポン「アサヒグラフ」昭和17年8月26日号に掲載されたヒロポンの広告

 頭脳の明晰化
 作業能の亢進
 疲労除去
 睡気一掃

 本剤は、未だ曾つて知られざる特異なる中枢神経興奮作用を有する最新の薬剤であって、その服用により、気分爽快・明朗となり、意想の奔流、思考力の増強を来し、同時に体力の昂揚と作業欲の亢進を促す。のみならず、疲労感、倦怠感の防止及び睡気一掃に効果があり、従って非常時に於ける精神的及び肉体的活動には勿論、徹宵、夜間作業等に甚だ好適である。その他乗物酔、宿酔、頭重、憂鬱時等にも奏功し、医界、産業界等各方面に異常なる注目と愛用を喚起しつつある。

参考web … 兵器生活




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