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2005年12月04日(日) 仰天2題(下 -2- )仙人現る !



 1953年に撮られた,の色褪せた一枚の写真。オペデット(Oppedette)村、朝焼けに映えた山あいの谷と谷に挟まれた、断崖絶壁の村。場所はわからないが,南仏の山の奥深くのどこかにあるという事だけははっきりしていた。

 初めてこの村の色褪せた写真を見たとき,ぜひ訪ねてみたいと思った。ボークルーズ県に何十年住んでいる日本人も知らない。名所やミシュランのレストランに載るような店があれば,ガイド本に載るのだが,それもなかった。(後にミシュランのネット地図検索で簡単に発見して唖然としてしまった)あてずっぽうに片端からミシュランの地図を細かく探していった。
似たような名前がある、Oppede、ここなら前から知っている、違う。
 そうしてついに見つけた。山中,ボークルーズ県とアルプス・ド・オー・プロヴァンス県境に発見した。アプトの町からだと,チーズのバノンよりは近いところにあった。近いと行っても,山の奥深くである。

 数日後,車にカメラ機材,食料, 武器(不慮の事故に備えて
−樫の木で出来た木偶の棒?−)、水を積み込んで出かけた。持参した,デジタルの方位計を車に取り付けてあるので,方角は間違いなく出る。またまた野超え山超え走る事数時間、一つの目印にしていた村,Vien村にたどり着いた。がらんとした、小さな駐車場に車を止めていると、山歩き姿のイギリス人がまたいる。歩いている彼らに、山中ほんとうによく出会した。
元祖*ナショナルトラストの国だから、よほど自然を好む国民性なのだろう。
 ここは、城壁に囲まれた小さな村で、Cafeは一軒しかなかった。車を置き城壁内に入って行くと、やたら猫が大きな顔してたむろしている。迷路みたいな細い小径を行くと、RUE DU CHAT NOIR (黒猫通り)と石壁に木の札があった。成る程、合点した。
猫を片端から追いかけ回して、品定めした。家の家来の猫は、主人によく仕えてはや19年と17年。19年は、廃猫、若い頃たん譚とボクシング(お互い、両手(人間は指)に塵紙を巻きグローブとする)のやりすぎか、目は白内障が出て、頭は既にもうろくしているが食欲はすごい。一日のほとんどを寝て過ごし、庭から塀を越えて外に出る事は全くなくなった。

 17年の家来は躾の賜物、100回呼べば100回「にゃあ」と答えて、その所在がたちどころに分かる。悪い事をして隠れても、名を呼べば、縁の下から「にゃあ」、隠れても無駄である。
 ここの猫どもに、少し日本語を教えて、すぐに成果が上がる。「どうだ!この日本の服?」「にゃう!」「よっしゃ」
人影のないVien村を後にして、一路オペデット(Oppedette)村に向けて車を走らせた。


*ナショナルトラスト…1895年に設立された民間非営利団体で、英国の歴史的建造物や自然を後世に 残すことを目的としている。










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