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2003年03月14日(金) 換骨奪胎?



 先日、横浜東京そして友人のいる茨城に行って来た。
友人宅の夕食後の、元プロテニス選手の娘さんと、奥様のチェロとピアノ(といっても、グランドピアノ!)のアンサンブルは何とも言へず微笑ましく、仲のいい家族のある幸せを感じてしまった。娘さんが演奏する、バッハの無伴奏チェロ組曲も、こちらがリクエストした、サンサーンスもとても素敵であった。

 次の日夕刻、東京から帰り、その足で観世会館に狂言を見に行った。ちょっとしんどかったが、茂山千作の相も変わらずの「出てくるだけで可笑しい」のおかげで疲れもとんだ。瞠目すべきは、近頃の若い客の入りと、その笑いに対する、あらかじめ解っている落ちを受け止め、喝采する所作が堂にいっている事だった。

 日本文化の継承はなんだか大丈夫な気がしてきた。いつの間にか、若者が戻ってきていた。言の葉の意味は多分全部はわかっていない。昔の言葉だし、たん譚自身も聞き取れなかったり、意味不明で後から調べる言葉も多々ある。

そこで今回もらったパンフレット、現代版狂言の「クローン人間、ナマシマ(野球の監督長嶋をもじったと思われる、同町内に住む、哲学者の梅原猛作、横尾忠則 美術・装束」の解説文中の四字熟語が気になった。
「かんこつだったい」
このコンピュータでも、打ち込み変換すると、
「換骨奪胎」と堂々と出てくる。
これは間違いである。奪胎は脱胎が正しい。辞書も間違って書かれているものがある。その意味となるとほとんどが間違っている。どの辞典も「大漢和辞典」を元にしているからだ。

 この解説文はちゃんと「換骨脱胎」となっているが、使い方が間違っている。
要約すると、…室町から江戸時代にかけて沢山の物語(御伽草子)が作られ、その中に屁を扱った異色の御伽草子があり、それを「換骨脱胎」して…とある。意味は異色の御伽草子を「焼き直し」てこれを仕立て上げたといいたいらしいが、誤用である
本当は違う。
それに本来は、換骨脱胎ではなく脱胎換骨だった。
 凡人が仙人になる修行の結果、外見は変わらないけれども、中身がすぽっと仙人になってしまう状態、すなわち、凡胎から仙胎に、俗骨から仙骨になってこれを、「脱胎換骨」という。言い換えれば、昔映画に「ルシアンの青春」というナチス関連の映画があった。
ルシアンは、正義の味方のレジスタンスに入ろうとしたが、冷たくあしらわれてしまう、ところがゲシュタボ(反ナチ運動を取り締まるために組織された秘密警察)には親切にされて、ルシアンはナチとなってしまう。このルシアンがまさに逆の意味で脱胎換骨したといえる。

 杜甫の詩の錢謙益の評

 「古人脱胎換骨之妙 最宣深味」

 参考文献:キライな言葉勢揃い。高島俊男(文芸春秋社)
 










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