隣家との堺のギリギリにモミジが一本生えていた。
タネが飛んで芽を出して、ひっそりと成長したらしい。 40センチぐらいにもなっただろうか。 庭の冬終いのついでにふと堀りあげて見たら、 横張りの根っこと細い幹に小さな鎖が絡まっていた。 ハンギング材の小さな細い鎖。
絡まっているというより、幹は鎖の輪にがっちり食い込んでいた。
モミジのタネは着地して鎖の輪の隙間から 芽を出したのだろう。 モミジは日光を求めて一生懸命伸びた。 成長と共に幹に鎖は食い込むばかりだった。 人知れず、物置小屋の隣でモミジと鎖は 何年間も静かに戦っていた。
植物は物を言えない。 あ、モミジが生えてる、と何年も私は見ていた。 隣家の持ち主が変わって、草取りが頻繁にされるようになり、 モミジの近くにミニトマトが植えられるようになり、 私は初めて 「うちの敷地のモミジだから植え替えてあげよう」と思った。 つまり所有欲で掘ったのだ。
そしたらそんな有様だった。可哀想に、もっと早く 気づいてあげればよかった。
植木鋏でこじ開けて、鎖はなんなくはずすことができた。 幹にはくっきり痕が残った。幹の半分以上がくびれていた。
鉢に植え替え、日光にあてた。 来年の紅葉を今から楽しみにしている。
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