響く声。
ライブに行ってきた。
田中良(たなかまこと)というブルースの人。 恥ずかしながら、わたしはこの人のこと全然知らなかった。 映画祭のメンバーがら「とにかくいいから聴いたほうがいい」と言われて 行こうと思ったのがきっかけ。
先日亡くなった友人も、彼のことが大好きで、一緒に行こうと約束をした。 けれど彼女はわたしたちを置いていなくなってしまった。 行かないこともできたけど。 でも彼女の死を受け止めるためにも行かなきゃと、バスに乗って出かけた。
彼女が亡くなってから何日も過ぎて。 やっと普通の生活ができるようになった。 笑えるし、食べられるし、やっといつもと変わらない日常を送ることが できるようになった。
でもその日は、朝からなんとなく情緒不安定気味で。 会場に着くと、彼女を思い出させる面々が集まっていて、それだけでもう 涙目。彼女は今日ここに来てるかなと思ったりして、また心がざわつく。
初めて聴く彼の声は。 なんていうのか、うねりのある声だった。心に余韻を残す。 ギター1本だというのに、わたしの心をかき乱す。
なんと言っても、あの切ないメロディラインと。 飾らない詩と。(最大限の褒め言葉。詩がまっすぐに届くの) そして彼のあの声と。
何を聴いても彼女を思い出してしまうような曲ばかり。 涙が溢れてどうしようもない。
お店の一番奥の、一番隅っこで、素晴らしい数々の曲を聴きながら、 もうここにはいない彼女を思いながら、ぼろぼろと泣いた。
1部、2部が終わった。 あまりに素晴らしい曲ばかりなので、CDを購入した。
田中さんは、映画祭のメンバーと懇意にしてるので、わたしも早速サインを もらいに行ってきた。彼の顔を見た途端、またぼろぼろ涙がでた。 泣きながら、こう言った。
「今日のこのライブを楽しみにしてた友人が亡くなりました」
田中さんは、「うん、聞いた」と答えた。
「とてもとても楽しみにしてました」 「うん、残念だった。でもね、運命だから。」 「運命?」 「そう、運命。これが彼女の運命だから仕方ないんだよ」 「あぁ、そうですね。そうかもしれません。」 「楽しんでくれてる?」 「はい。素晴らしいです。来年も絶対に来ます」 「ありがとう」 「わたしこそありがとう。本当にありがとうございました。」
握手をしてもらった。 ぐしゃぐしゃに泣いたわたしを、優しく包んでくれた。
3部は、こういう言葉から始まった。
「今日ここに来るはずだった、彼女のためにこの曲を贈ります」
歌った曲は、もうなんと言ったらいいか、このためにあるような曲だった。 言葉にできないほど、素晴らしい曲。 最後にわたしはもう一枚CDを買った。
アンコールも終わったあとで、うちのメンバーからのリクエストで、 彼女のために「川の流れのように」を歌ってくれた。 メンバー同士がっしりと腕を組んで、同じ気持ちでこの曲を聴いた。 みんな泣いてた。きっと。
その後、田中さんと少しだけお酒を飲んだ。ほんと気さくな人だった。 今晩も映画祭のメンバーの家に泊まると言ってた。なんかすごい。
いやー、ほんと素晴らしかったの。 毎年4月にライブに来るから、もうこれから毎年行こうと心に決めた。 そして同じ時期に亡くなった彼女のことを、懐かしく話すんだ。 曲って、人の心を動かすものだよ。本当に。
彼女が亡くなってから、車の中でCDが聴けなかった。 何を聴いても、彼女のことを思い出して泣きそうになるから。 でも明日からは、田中さんのCDを聴いて出勤しようと思う。 リハビリ、リハビリ。
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